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在庫も専門知識も不要!実店舗の限界を超える「ネットショップ開設」実践法

2026.10.30

著者:弥報編集部

監修者:安藤 優

実店舗や既存取引先に依存し、売上を伸ばしにくくなっている中小企業は少なくありません。こうした課題を解決する方法の1つが、ネットショップの開設です。

しかし、初期費用や運用への不安から、一歩踏み出せないケースもあるのではないでしょうか。この記事では、ネットショップの始め方や費用、ASPサービスとECモールの選び方、売れる商品の選び方、集客・リピートの方法、そして売上を約1割押し上げた事例について、日本生産性本部 主任経営コンサルタントの安藤さんにお話を伺いました。


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実店舗や既存取引先への依存で売上が頭打ち?企業がネットショップを始める理由

実店舗営業の限界、問題点を教えてください。

まず、商圏の制約があります。実際に来店できる顧客は、基本的に近隣に限られます。広告や接客を工夫しても、実店舗に来店できる顧客の範囲そのものを大きく変えるのは難しいところです。特に地方では、人口そのものが大きく減少している地域もあり、店舗側の努力だけでは対応しきれない状況です。

また、店舗では営業時間内でなければ販売できませんし、会計や商品の受け渡しなどを人が対応する以上、1日に処理できる購買数にも限界があります。

次に、既存の取引先に売上を依存している企業の問題点を教えてください。

1社への依存度が高いと、取引先の意向や方針変更に左右され、価格決定権を持てなくなりがちです。目安として、1社当たりの売上が4割を超える場合は、経営上のリスクとして認識したほうがよいかもしれません。既存の取引先とは別の販路を持っておくことが大切です。

店舗販売や大口取引先への卸売で、共通する問題点はありますか。

店舗販売や卸売では、だれが、いつ、何を、どれだけ買ったのか、エンドユーザーのデータを把握するのが困難です。

そのため、購入後の適切なタイミングで案内を送るなど、再購入につなげるアプローチが難しくなります。もし購入状況を把握できれば、その後の案内やリピート購入につなげる取り組みもしやすくなるでしょう。

こうした実店舗や既存取引の制約に対して、ネットショップはどのような役割を果たせるのでしょうか。

ネットショップは、今まで届かなかった顧客に商品を届けるための、新しい販路になります。商圏を全国に広げられるほか、24時間注文が可能です。また、既存の取引先とは別の販売経路を持てるため、販路の分散にもつながります。

ただし、ネットショップを始めれば売上が何倍にも増えるというわけではありません。あくまで、実店舗や既存取引だけに頼ることで生じる制約を外し、新しい販売機会を作るための手段と考えるとよいでしょう。

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費用をかけなくてもネットショップは始められる!始め方と注意点

ネットショップに関心はあっても、漠然とした不安から、なかなか始められない企業も多いのではないでしょうか。

はい。実際には、初期費用や手間を具体的に見積もれないこと、専門的な知識がないことが、ハードルになっているケースが多いと思います。中小企業では、特に初期費用が気になる方が多いのではないでしょうか。

ECサイトを一から開発・構築する場合は、パッケージを購入したり、ゼロからシステムを開発したりするため、数百万円以上かかるケースもあります。しかし、初期費用を抑えて利用できるネットショップ作成サービス(以下、ASPサービス)を利用すれば、諸費用を含めても十数万円程度からネットショップを始められます。

さらにAmazonや楽天市場などのECモールに出品する方法もあり、その場合、販売手数料はかかりますが、月額費用は無料から数万円程度で済むため、こちらも少ない初期費用で始められます。

受注対応や発送などの運用には、どのくらい手間がかかるのでしょうか。また、在庫は新たに用意する必要がありますか。

受注の確認、梱包、発送、問い合わせ対応といった作業は確かに発生しますので、どう時間を捻出するかという不安は多く聞かれます。

ただし、立ち上げ直後から大量の注文が来るケースは多くありません。数件程度の注文であれば、受発注から梱包、発送までの作業は30分から1時間程度で回せるケースが多いでしょう。月商が数百万円を超えてくると毎日数時間かかるようになりますが、始めたばかりの段階から心配する必要はないでしょう。

ネットショップ専用に新しく在庫を仕入れる必要もありません。既存の店舗在庫をそのまま販売する形で設計できますので、在庫リスクを増やさずに始められます。

写真撮影や商品説明など、ネットショップ運営に際して専門的なノウハウは必要ですか。

こちらも、専門知識が必要と思われがちですが、商品の魅力を正直に正しく伝えることができれば十分です。むしろ、商品のことをよく知っている製造者や販売者のほうが、魅力を伝えやすいと言えます。写真撮影も、最初から凝りすぎる必要はありません。

ネットショップ開設までの作業内容や準備期間についても教えてください。

販売開始までにはいくつかの準備が必要ですが、作業の大半は商品写真の撮影と商品説明文の作成です。ASPサービスを利用した自社ECサイトの場合、1~2か月程度を見ておくとよいでしょう。

ECモールへの出店であれば、さらに短期間で始められます。必要な情報や商品を準備できていれば、最短で数週間、長くても1〜2か月程度で販売を開始できます。

初期費用を抑えられる方法は、ASPサービスかECモールということですね。それぞれの特徴を教えてください。

ASPサービスには、例えばBASEやSTORES、Shopify、カラーミーショップなどがあります。初期費用はほぼかからず、月額費用は無料~数千円程度です。決済手数料も売上の3~6%程度※と、ECモールと比べて低く設定されているサービスが多いのも特徴です。なお、月額費用が無料の代わりに決済手数料がやや高めのサービスもありますので、固定費型か変動費型かのバランスで選ぶとよいでしょう。また、顧客データを取得・蓄積できるため、今後のリピート購入に向けたアプローチもやりやすくなるでしょう。

ただし、ASPサービスは集客を自社で行う必要があります。検索やSNSからの集客は成果が出るまでに数か月かかることも多く、開設してすぐに売上が立つわけではありません。立ち上げ期は、まず既存のお客さまへのご案内から始めるのが現実的です。

一方でAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのECモールは、状況によりますが、販売手数料が8~15%程度かかるため、ASPサービスと比較して粗利を圧迫します。また類似商品と比較されやすく、価格競争に巻き込まれがちです。

しかし、ECモールはモール自体に大きな集客力があり、自社を知らない顧客にも広く商品を届けるチャンスがあります。物流や決済などの仕組みも整っており、モールによっては出店までの手続きも比較的容易です。自社で集客する必要があるASPサービスと比較すると大きな強みです。

※販売手数料はサービスや料金プランによって異なります。実際の料金は各サービスの最新情報をご確認ください。

サービスの利用料以外にかかる費用はありますか。

細かいところでは、ドメインの取得に年間数千円、段ボールや緩衝材、テープといった梱包資材に数万円程度かかります。商品撮影はスマートフォンで十分ですが、外注する場合は1商品当たり数千円が目安です。ロゴやバナーも内製すれば費用はかかりません。これらを合計しても、十数万円程度に収まるケースが多いでしょう。

なお、小規模事業者持続化補助金などは、EC構築や販路開拓が対象になる場合もあります。活用できる制度がないか、確認してみてください。

ASPサービスとECモール、どちらを選べばよいでしょうか。判断基準を教えてください。

判断基準を4点紹介します。

判断基準1:自社商品の検索のされ方

商品名で指名検索されやすいならばASPサービス、商品名の認知が乏しくカテゴリーから選ばれるなら、集客力があるECモールが向いています。カテゴリー名で検索されるワードがある商品は、自社商品の認知が乏しくともモール内で見つけてもらえます。なお、価格・容量・スペックで比較されたときに優位性を示せる商品や、レビューが積み上がる定番品も、モールとの相性が良い商品です。レビューの評価が蓄積され、購入の判断材料になるためです。

判断基準2:独自性の有無

独自性がある商品であればASPサービス、他社と横並びで比較されやすい商品はECモールが向いています。独自性がある商品というのは、例えば自社にしかない特徴的な商品、原材料のこだわりや製法、開発の経緯などのストーリーを語れる商品、一度ファンになってもらえたら繰り返し購入してもらえる商品などです。リピートを前提にできる商品であれば、自社ECの集客にかけたコストを回収できる見込みが立ちます。このような商品であれば、他社の商品と横並びで比較されにくく、ASPサービスを利用した自社ECサイトから購入してもらいやすくなります。

判断基準3:粗利率

粗利率が低い商品は、販売手数料の高いECモールに出店してしまうと利益が残りません。粗利率が少なくとも4割程度あるかどうかを、モール出店の1つの目安と考えています。

判断基準4:運用コスト

ECモールはセールやキャンペーンがあり、参加すると対応に追われ、受注の波も起こりやすくなります。

どちらもやってみるというのはどうでしょうか。

最初から複数を運用すると管理の手間が増えます。まずはどれか1つを選び、軌道に乗せてから広げていくとよいのではないでしょうか。

ネットショップで販売する商品は、どのように選べばよいでしょうか。

まず、配送しやすい商品かどうかを確認しましょう。例えば、常温で送れる、軽量である、壊れにくいといった商品は、ネットショップとの相性が良いと言えます。反対に、重量がある、大きい、壊れやすい商品は、送料や梱包の負担が大きくなり、破損や返品のリスクも高くなります。

また、販売手数料や送料などを差し引いても、採算が取れる商品かどうかも確認しておきましょう。さらに、ネットショップでは実物を手に取れないため、写真や文章だけで商品の魅力を伝えられるかという点も選定ポイントになります。

ネットショップで販売する商品が、既存の卸先と競合する心配はありませんか。

自社が直接販売を始める場合、既存の取引先(卸先)から反発が起きる可能性はあります。これを避けるには、ネットショップと既存の取引先を競合させない設計にするとよいでしょう。例えば、ネットショップでは卸先で販売していない限定商品を出す方法があります。また、ネットショップでの販売価格を取引先の店頭価格より下げず、定価販売を基本にするのも1つの方法です。

ただ、販売する商品がまったく競合しないことは難しいです。ネットショップを「単なる直販の場」ではなく、ブランドの認知を高め、取引先の顧客も増やすための場として位置付けることを事前に丁寧に説明することで、理解を得られるケースは多くあります。

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売れる商品ページはどう作る?集客、リピート設計の方法

ネットショップでは実際に接客できない分、商品ページの作り方が大切ですよね。

はい。特に最初に表示される部分、いわゆるファーストビューで、商品に興味を持ってもらえるかどうかが決まります。

商品ページを作る際には、ECサイト全体を店舗に、商品ページを「1回の接客」になぞらえるとよいでしょう。単なるスペックの記載ではなく「だれのための商品か」「どのような課題を解決するのか」「なぜこの商品を選ぶのか」などを伝えることが大切です。

例えば「ステンレス製・容量500ml」というスペックだけでは、お客さまに響きません。「朝入れたコーヒーが昼まで温かいまま飲めるサイズ」のように、お客さまにとっての利便性に変換して伝えることが必要です。

そのうえで、商品開発ストーリーなどを伝え、商品の背景に共感してもらう方法もあります。また、文章より先に写真に目が向くため、使用シーンやサイズ比較などを視覚的に見せると、商品の特徴が伝わりやすくなります。お届け時期、返品・交換などのFAQも、購入前の不安を減らす材料になるでしょう。

商品ページに顧客を多く呼び込むには、どうすればよいでしょうか。

まずは実店舗にQRコードを置く、チラシを同封するなどして、既存顧客をネットショップに誘導するのが現実的です。

新規顧客を集めるには、広告や検索流入、SNSなどを活用します。広告は費用がかかるため、予算に応じて他の集客施策と組み合わせるとよいでしょう。

検索してもらうためには、SEO対策として検索数の多い大きなキーワードよりも「地域名×専門店」「贈答用×個包装」「業務用×少量」など、購入意向の明確な掛け合わせワードを狙いましょう。

SNSは、直接販売する場というより、商品や会社を知ってもらう入口です。媒体を1つに絞り、SNSからECサイト、公式LINE、店舗につながる動線を作ります。すぐに効果が出なくても粘り強く運用することが大切です。

また、特に製造業であれば、製造している工程や職人の作業風景、発送の様子など、自社では当たり前に思っていることがそのままコンテンツになります。SNSのネタ探しに悩む必要はありません。

費用をかけずに使える集客の手段はありますか。

実店舗がある事業者であれば、Googleビジネスプロフィールへの登録は必ず行いましょう。無料で利用でき、店舗情報のなかにネットショップの情報を掲載しておくこともできます。公式LINEも無料の範囲から始められます。

購入後にレビューをしてもらうための方法はありますか。

レビューはお客さまの自発的な行動なので、コントロールするのが難しい部分です。そのうえで、レビューを寄せてもらいやすくする工夫はあります。ただ「レビューをお願いします」とだけ伝えるよりも「どんな場面でお使いになりましたか」「以前お使いのものと比べていかがですか」など、具体的な質問を添えると、回答してもらいやすくなります。

ただし、レビュー投稿に対してクーポンなどの特典を提供する場合には注意が必要です。ECモールによっては禁止されているため、実施する際は必ず各モールの規約を確認してください。

どのようにリピートにつなげるとよいですか。

ネットショップでは、1回目の購入から2回目の購入につなげる段階で離脱が起こりやすいため「2回目の購入」を意識した設計が特に大切です。例えば商品を使い切るタイミングに合わせて案内を送ったり、2回目の購入につながる使い方を紹介したりする方法があります。単に「また買ってください」と伝えるのではなく、次に購入する理由を作ることがポイントです。

ただし、値引きに頼ると長期的に定価での販売が難しくなります。使い方の提案や先行案内、限定商品など、価格以外の「買う理由」を伝えていきましょう。

また、2回目に限らず継続的にリピートにつなげるには、顧客と接点を持ち続ける必要があります。そのための手法としてメールマガジンや公式LINEの運用があります。ただしメールマガジンは開封率が上がりにくい傾向があるため、接点を維持する手段としては公式LINEも有力な選択肢です。購入後もお役立ち情報や商品の使い方などを届けることで、次回購入のタイミングまで接点を保てます。

公式LINEは顧客との双方向のやり取りもしやすい一方、商品の案内ばかりになるとブロックされる可能性があります。顧客にとって役立つ情報も組み合わせ、バランスを考えて運用することが大切です。

売上が伸びないときは、どこから見直せばよいでしょうか。

売上は「アクセス数×購入率×客単価」と考えると、どこを改善すべきか見つけやすくなります。例えば、アクセス数が少なければ集客、アクセスはあるのに売れなければ商品ページ、客単価が低ければセット販売や送料無料ラインなどを見直します。

なお、販売価格は実店舗とECサイトで揃えるのが基本です。ECモールでは、モール内の検索で上位に表示されるように広告を出せますが、広告費がかかるため、コストの負担も併せて検討が必要になります。

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常連客への案内から始めて、EC売上で全体を約1割押し上げた事例

実際にネットショップを始めて成果につながった企業の事例を教えてください。

食品製造小売業で、従業員約10名の企業の例を紹介します。

地方で商品を製造し、実店舗で販売していましたが、商圏人口の減少や高齢化によって来店客数が年々減っていました。そこで、以前から関心を持っていたネットショップを、新たな販売経路として始めることにしました。

開設する際に利用したのは、初期費用のかからないASPサービスです。商品はギフトセットと定番の詰め合わせに絞り、単価はやや高めに設定しました。商品の撮影はスマートフォンで行い、商品ページでは、商品の特徴だけでなく、工場での製法や原材料のこだわり、商品への思いもしっかり伝えました。

どのように集客したのでしょうか。

広告には頼らず、実店舗のPOPや同梱チラシ、店頭での案内から、既存顧客にネットショップを紹介しました。立ち上げにかかった費用は、全体で十数万円程度です。初期の注文は既存顧客とその紹介の方からでしたが「地元の味を県外に住む親族に送りたい」という贈答需要があることもわかりました。

売上はどのくらい伸びましたか。

徐々に注文が増え、月商が数百万円規模の企業で、ネットショップの売上は多い時期で月数十万円、全体の売上を約1割押し上げたときもありました。さらに、ネットショップで商品を知り、帰省したタイミングで実店舗を訪れたケースも出てきました。ネットショップが実店舗への来店にもつながったのです。

これからネットショップを始める企業に、この事例から伝えたいことはありますか。

この企業も、最初から大きな投資をしたわけではありません。商品を絞り、既存顧客への案内から始めました。

ネットショップは、実店舗だけでは届かなかった遠方の顧客との接点を作り、新たな売上につなげられます。まずは小さく始め、実際の注文を通じて、どのような需要があるのかを確かめながら育てていくとよいと思います。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

安藤 優(公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 主任経営コンサルタント)

大学卒業後、広告・製薬・化粧品業界でEC・通販事業に約12年間従事。EC統括部長として戦略立案からマーケティング、IT、財務、組織開発まで広く経験。その後、IPビジネスを営む企業の実店舗事業で戦略ディレクターを務め、事業戦略立案・実行、DX推進などを牽引した。
現在は経営コンサルタントとして、企業の診断指導や人材育成に従事。実務経験に基づいた多角的な視点から、事業成長の実行支援を強みとする。

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