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生産性アップ!できるリーダーは実践している「タスクマネジメント」3つのスイッチ

2024.04.04

著者:弥報編集部

監修者:越川 慎司

日々、目の前の業務に追われて本当に取り組みたいことができない、と感じることはありませんか。あるいは、部下のマネジメントがうまくいかず、思うように成果につながらないと思うこともあるでしょう。

これらの悩みは「できるリーダーのタスクマネジメント」で解決するかもしれません。タスクマネジメントと聞くと、仕事の管理方法を意味すると考える方も多いでしょう。しかし、できるリーダーは「仕事の棚卸し・早い初動・作業の効率化」をキーワードに、より俯瞰したマネジメントを行っているのです。

今回は『トップ5%リーダーの習慣』などの著者である越川慎司さんに、リーダーが行うべきタスクマネジメント方法や、改善策などについて解説していただきました。

自分自身のマネジメントはもちろん、社員のマネジメント方法なども紹介いただいたので、ぜひ参考にしてください。


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今、必要なタスクマネジメントは「タイパ」

なぜ日々の業務に追われてしまうリーダーが多いのでしょうか?

中小企業の典型的な事業モデルとして、「働けば働くほど成果が上がる」という仕組みがあります。また、私たちはどうしても「あれもこれも」と取り組んでしまいがちです。結果、時間に追われ、いつまでも仕事が終わらなくなってしまうのです。

加えて、2019年から実施されている働き方改革などの影響で、従業員の労働時間を従来より短縮せざるを得ない状況が続いています。しかし「やればやるほど実績につながる」という仕組みのまま時間短縮してしまうと、売上も比例して下がってしまいますよね。そこでリーダーたちは、他の社員が担っていた仕事を自分でカバーし、売上を維持しようするのです。

すると、やるべきことが必然的に多くなり、結果として仕事に追われる状態が慢性化してしまうのです。実際に働き方改革実施後、一般社員の労働時間は14%減っていますが、管理職の労働時間は17%増えたという調査結果があります。特に人手不足に悩む中小企業にとっては「退職してしまうのでは?」という不安要素から、長時間の勤務を社員に求めづらい状況もあるのでしょう。

では「できるリーダーのタスクマネジメント」とは何を指すのでしょうか?

ずばり「タイムパフォーマンスを上げる手段」です。そもそも、リーダーの役割はチームの目標を達成することです。社会の大きな変容の中で、今必要なのは「タイパ」を上げてゴールを目指す仕組みなのです。解説していきましょう。

マネジメント方法には大きく分けて3種類あります。1つ目は、いわゆる体育会系と言われるような、長時間労働で成果を出すというマネジメント。持続可能性が低く、今後は実施が難しい方法です。2つ目は、冒頭であげたような働き方改革の影響を受け、法令遵守のために労働時間を減らす、時短のマネジメントです。実際に、時短マネジメントを行う中小企業は全体の87%に上りますが、管理職への負担は大きくなる一方です。

また、中小企業からの転職理由の第2位に「成長機会がない」ことをあげる若者が増えていることをご存じでしょうか。単純な時短は、仕事に意欲的な人材を逃してしまう原因にもなりかねないのです。

そこで注目を集めているのが、3つ目の方法であるタイパを上げるマネジメントです。つまり、従来よりも少ないリソース(人・時間)でより大きな成果を出す仕組み作りです。時代が大きく変わっている最中だからこそ、リーダーが改めて仕事を捉え直し、目標達成のために自身やチームの力を最大化するマネジメントと言えるでしょう。

できるリーダーはやっている「3つのスイッチ」

どのようにしてタスクマネジメントを行っていけばよいのでしょうか。

「仕事の見極め」「早いスタート」「業務処理能力」の順に、3つのスイッチを意識して取り組みましょう。

  1. 仕事の見極め

まず最初に仕事の棚卸しを行い「やめること」を決めましょう。実はこのステップが大変重要で最も有効です。

改めて自身の仕事を、ペイオフ・マトリクスを使って整理してみましょう。「重要度」と「緊急度」の2軸で構成された図を用いて、度合いの高低をつけていきます。そもそも、どのような仕事を受けるかどうかも検討しなければいけません。手放すべきは下図のような重要度の低いタスクです。そうして生み出した時間を、重要度の高い仕事に充てましょう。

難しく考えずに、週の終わりにコーヒーでも飲みながら15分程度スケジュールを振り返る、内省時間を設けるだけでも変わります。実際に、内省時間を設けたことで無駄な作業が13%削減されたという実績もあります。もちろん「これは無駄だ」と思って仕事をしているわけではないですが、振り返りをすることで気付くこともあります。成果につながらなかった仕事は思い切ってやめる勇気を持ってください。

大切なのは、時間を削減するという意識ではなく、時間を再配置するという感覚です。多忙な中で、さらに何か取り組むような足し算の施策ではなく、まずは引き算から始めるようにしましょう。

  1. 早いスタート

集中して力を入れる仕事が決まったら、すぐに取り掛かりましょう。可能な限り初速を早めることが重要です。優秀な人は、そうでない人と比べて、すぐに仕事に取りかかる割合が1.8倍から2.3倍も多いとわかっています。早めにスタートすれば、その分早めに終えられる可能性も高くなり、時間に余裕が生まれることも期待できますよね。

自分や部下の漠然としたやる気に頼らず、自然に仕事に取り掛かれるようなルーティンを、自身の行動の中に取り込んでみるのも効果的です。優秀なリーダーは、仕事前の独自ルーティンを持っていることがわかりました。例えば、出社してコーヒーを飲んだらパソコンの電源を入れてすぐに仕事を始める、などの自然な流れを作ってしまうのです。気が乗らないときでも、気分に左右されずに仕事スイッチを入れられるようになるでしょう。これは在宅ワークでも有効ですので、ぜひ取り入れてみてください。

  1. 業務処理能力

最後に、効率を重視した業務の仕組み化を図ります。例えば、ショートカットキーを覚えたり、ITツール導入してみたりと、さまざまな工夫を施してみましょう。毎月の経費精算処理1つにしても、その都度で駅間の運賃を調べて入力するのは手間ですよね。事前に辞書登録などしておくことで、時間効率を高められます。小さな積み重ねが、やがて大きな差になっていきますよ。

「やめること」をなかなか決められないときの考え方はありますか?

私がおすすめしているのは、その週で影響力の大きな仕事を2つだけ決める「ルール・オブ・ツー」です。例えばより取引金額の大きい商談など、優先度が高い仕事を選ぶことで、自然とやめるべきものが定まってきます。

「2つだけ?」と思われるかもしれませんが、それ以上増えると力が分散されてしまい、無駄な仕事をやめる意識が働きにくいことがわかっています。実際の導入実験では、仕事数を2つ以上に増やしたこともありましたが、最も多くの社員が「導入してみて良かった」と回答したのが、2つに絞ったときでした。

まずは行動に移すことが、意識が変わるきっかけにもなります。仕事を2つに絞るなんて無理だと決めつけてしまわずに、小さな行動実験としてチャレンジしてみてください。

「共創・共感」でチームのタスクマネジメント

社員に対して、どのようにタスクマネジメントを行っていけばよいのでしょうか。

大前提として、社員との良好な関係性が構築されている必要があります。明確な正解がある時代と比べて、課題の解決方法が複雑化する昨今、チーム全員の強みや自発性を活かさなければ、目標を達成することが難しくなってきているためです。良い関係性があればチームの力は最大化され、自律型組織として積極的に課題に取り組めるでしょう。

関係性構築のために、できるリーダーは1対1のコミュニケーションの頻度と密度を重要視しています。一緒に物事を決め、感情を共有する「共創・共感」の機会であり、これこそが良い関係性に必要なキーワードだからです。会議などでも、相手の意見に共感してから付け加えて発言をする、などの小さな積み重ねが有効です。

具体的におすすめのマネジメント方法はありますか?

行動目標などは社員と一緒に決めるとよいでしょう。例えば、営業であれば「提案件数を昨年度より10%増やそう。そのため何をすべきだと思う?」など、数字を交えて具体的に示すなどです。

また、社員に「仕事の見せる化」を浸透させましょう。コミュニケーションを増やし、行動目標を一緒に決めることで、自律的に課題に取り組めるようになれば、自ずと社員からの相談や進捗報告などの回数も増えます。その他、タスク管理アプリなどをチームで使うことでも、互いに自分の業務を周囲に見せられますね。

逆に良くないのは、細かな部分まで逐一報告を義務とするようなマイクロマネジメントです。干渉しすぎると自主性が奪われ、結果としてチーム全体の生産性を下げる原因になります。

社員のパフォーマンスを上げる2つの方法

パフォーマンスの低い社員に対しては、どのような対応が必要ですか?

頭ごなしに叱ることは避けましょう。否定から入ってしまうと、相手は萎縮してしまい受け入れる姿勢になりにくいことがわかっています。だからといって、見過ごすわけにはいきません。現在、318社の中小企業で実験を行っているのですが、その中でわかった有効なフィードバック方法が2つあるので紹介します。

1つ目は「承認サンドイッチ」。指摘したい箇所を、相手を承認する言葉で挟んでから伝える方法です。例えば、遅刻してしまった相手に対して、

「この間のプレゼン、わかりやすくてとても良かったよ」(承認)

「でも、遅刻してしまってはダメだよね。もう少し早く来てくれればもっと良かったと思う」(指摘)

「次からは気を付けられるね、いつも頑張ってくれてありがとう」(承認)

という調子です。言われた側はきちんと指摘を受け止め、次回からは時間に注意するようになるでしょう。

2つ目は「フィードフォワード」です。進捗の見せる化に近い点もありますが、タスク実行中の途中で意見を伝え、軌道修正を図る方法です。

例えば、資料作成においては、出来上がってからではなく進捗20%の状態で一度見せてもらうようにしましょう。中間レビューがあれば、完成してからのやり直しなども発生せず、期限に間に合わないなどの事態も起こりません。実際に、フィードフォワードを導入して、資料の差し戻しが74%も減ったという結果もあります。

だれもが能力を持っており、自己効力感が高くないと生産性も上がらないことを忘れないでください。マネジメント次第で、能力を発揮できるかどうかも変わってきます。これらの方法でチームの能力を最大化し、目標達成を目指しましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

越川 慎司(株式会社クロスリバー 代表取締役社長)

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。創業当初から全メンバーが週休3日、複業(専業禁止)、7時間以上の睡眠を実践。約700社の中小企業に対して年間400件以上のオンライン講座を提供。著書『仕事は初速が9割』など29冊。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などメディア出演多数。

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