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直観と経験だけに頼るのはやめた!「明確な採用基準」で人材のミスマッチを防ぐ【船井総研が解説】

2024.04.02

著者:弥報編集部

監修者:宮花 宙希

売り手市場が続く昨今、応募があっても決め手に欠けたり、入社したはいいもののすぐに退職されてしまったりと、採用活動に悩みを抱えている中小企業は9割にも上ると言われています。

特に中小企業の場合、採用に割ける時間や人員が少ないので、効率的かつ効果的に採用活動を行う必要がありますが、多くの企業で対応しきれていないのが現状です。では、どのように手を入れていけばよいのでしょうか。

今回は株式会社船井総合研究所HRストラテジー支援部マネージング・ディレクターの宮花宙希さんに、そもそも採用を始めるタイミングで「採用基準を明確化すること」の重要さについてお話を伺いました。


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「良い人が来ない」と落ち込む前に!自社の採用基準は大丈夫?

なぜ「自社に合う人材からの応募がない」と悩む企業が多いのでしょうか。

採用活動の初期段階でうまくいかない原因の1つとして「明確な採用基準」が定まっていないことが考えられます。経営層と採用担当者、現場が求める採用基準がそれぞれ異なる状態で採用を進めている場合、自社に合った人物像がぶれてしまうため、「どうも違うような気がする」という結果につながってしまうのです。

また、適切な人材からの応募がない、入社が決まってもすぐに離職してしまったり、やる気のない勤務態度を取ったりしている際は、人材のミスマッチが発生している証拠です。採用基準をすぐに見直すべきと言ってよいでしょう。

採用基準を正しく設定することで、どのような効果が期待できますか。

採用活動の初期段階でのミスマッチを減らし、採用効率を上げることができます。つまり、「応募者が期待するイメージと違う」「1次面接を通過する候補者がいない」などのような状況を減らせるのです。特に中小企業の場合は、欠員補充のための採用も多いことから、適正な人材を効率良く行わなければ、現場の社員たちも疲弊していきます。

採用基準を正しく設定すれば、迅速に的確な人材確保ができますし、早期退職者の発生率を下げられる可能性も高くなります。もちろん、面接段階や応募者を見極める最終段階にも改善すべき点はあるので、採用基準だけを見直せばすべてが解決するわけではありませんが、結果として安定した体制の下、企業成長を促すことにつながります。

「評価項目」「レベル」を定量化・言語化して、求めるものを明確に!

採用基準の見直しは何から始めればよいのでしょうか。

具体的な見直しに入る前に、持っていただきたい心構えが2つあります。

まず採用基準の見直しで1番重要なことですが、求める人物像をより具体的に「言語化・定量化」することです。改めて自社の採用基準を見直してみましょう。求める項目に抽象的な部分はありませんか? だれが見ても同じ人物像を想像できるようになっているかを確認しましょう。「言語化・定量化」するためには、文字として書き出すのがおすすめです。思考を整理できますし、冷静な採用判断にもつながります。

2つ目は、採用担当者と話し合い、認識をすり合わせることです。社長自らが採用をすべて担当している場合は、現場の社員でも構いません。もちろん経営者の思い描く「求める人物像」が軸になりますが、採用担当者や社員も具体的にそのイメージを共有していないとずれが生じ、採用活動の難航や社員の早期退職につながります。意見を取り入れることで周囲との乖離をなくしましょう。

また、外部のエージェントを使っている場合は、単純に採用基準を共有するだけでなく、エージェント担当者が本質的に理解できるよう、伝える時間を設けましょう。

具体的にはどのように見直すべきでしょうか。

「評価項目」「評価項目の詳細」「評価項目の基準(レベル)」の3つを見直します。新卒採用の場合は「性質」や「価値観」を重視し、中小企業に多い中途採用では「スキル」や「経験」に注目するという違いはありますが、採用基準の概要は同じです。

  • 評価項目

評価基準の要となるのは評価項目です。定量化しやすい業務スキルの他、「主体性」「コミュニケーションスキル」など、自社が重視する性質を決めます。書き出すのはもちろん、採用担当者と話し合いながら決めるのがよいでしょう。

私がおすすめするのは評価項目を3つに絞る方法です。あれもこれも、と求める気持ちはわかりますが、多すぎると人物像がぶれてしまいます。「評価項目を3つにするとしたら、何が必要かな?」という質問を、だれに問いかけても同じ項目が言えるようになれば、会社全体で求める人物像が合致している証拠です。

  • 評価項目の詳細

評価項目を決めたら、それがどのような意味を持つのかを言語化しましょう。業務スキルはある程度定量化できますが、性質の項目は、人によって受け取り方にバラつきが生じる可能性が高いです。そこで項目をより明確に表現し、ピントを合わせていく作業が必要になるのです。

例えば、評価項目を「主体性」と設定したとき、人によっては、主体性を「責任感が強いこと」と捉える人もいれば、「指示待ちではなく、自ら進んで行動できること」と解釈する人もいるでしょう。複数の採用担当者が、同じ主体性を持つ人を選んでいるつもりなのになぜかしっくりこないというのは、ここがずれていることが多いです。

  • 評価項目の基準(レベル)

評価項目やその詳細に関して、どのようなレベル感を求めるかを設定します。具体的なシーンを想像して、どのような立ち回りを期待するのかなどを定量化します。「主体性」の基準イメージは、「新しい学びを得るための努力をしている」「会議の場や、質問された際に進んで発言している」などになるでしょう。

例えば、設定した各基準に対して1~5の数字で評価を付けた表を作成する企業もあります。その場合は、機械的に点数を付けることが目的にならないように注意しましょう。総合点が〇〇点以下はだめ、という形式的な運用は避け、あくまでも採用担当者同士が、定量化したレベルに対する応募者の位置付けを合わせるための資料に留めてください。

その他、決めておくとよいことなどがあれば教えてください。

評価項目を決めるタイミングで、「こんな人はうちに向いていないよね」という懸念条件も話し合うとよいですね。「打たれ弱い」「場の空気を読まない」など、避けたい性質を決めておくことで判断材料が増えます。

なお、採用活動の中で「メールの返信が遅い」「遅刻する」などがあった場合、その人の性質として懸念する会社もありますが、その1場面だけでは判断しきれない可能性も高いです。もちろん懸念点になり得るケースもありますが、何かしらの事情があった可能性も高く、その切り取りだけで採用を却下するのはもったいないですよね。総合的な採用基準から判断するようにしましょう。

自社に合う人材は、自社に合う採用基準から

採用基準の見直しで、注意すべき点があれば教えてください。

「言語化・定量化」は大切ですが、あまりにも事細かく基準を設定してしまうと、理想が高くなりすぎてしまい、すべて合致する人物がいない可能性があります。結果として応募がない、採用が進まないという弊害もありますので注意が必要です。

特に評価項目の基準(レベル)に関しては、特定すぎるシーンの想定は避け、社内である程度の認識が合致したら良しとしましょう。

また、資格保有者などを求める際、業界の採用マーケット感や自社のレベル感を把握してから採用基準を決めることにも目を向けてください。

自社に合った人材を確保するためには、深い自社理解とその共有も大切です。持続的な会社成長を実現するためにも、まずは社員と一緒に自社の価値観や必要なスキルを振り返って採用基準を見直し、採用活動の改善に向けて1歩を踏み出しましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

宮花 宙希(株式会社船井総合研究所 HRストラテジー支援部 マネージング・ディレクター)

2013年船井総合研究所に入社後、採用・育成・評価・組織活性といった人材・組織をテーマにさまざまな業界・規模の企業支援に携わる。現在は部署にて責任者をしており、人材採用から人を育てる評価制度構築支援など総合的なマネジメント強化による業績アップを得意としている。現在所属中のHR支援部において、人財や組織の観点からコンサルティングを実施。企業の持続的な成長は、事業戦略やマーケティングだけでは実現できず、人財・組織に関する戦略や施策も重要性が日に日に高まっているため、主に「採用」・「育成」・「定着」分野にてお客様の成長をサポート実施。

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