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コロナ融資が返せない!借換保証を成功させる「事業計画書」のポイントは?【教えて吉田先生!】

2024.03.28

コロナ禍で中小企業の資金繰りの助けとなったのが「民間ゼロゼロ融資」と呼ばれる無担保、3年間実質無利子のコロナ関連融資でした。民間ゼロゼロ融資の多くが元本返済の開始時期を迎えていますが、「まだ業績が回復しておらず、返済が厳しい」と頭を抱える企業も多いのではないでしょうか。

そんなときにおすすめしたいのが「コロナ借換保証制度」です。この制度を利用することで毎月の返済額を減額し、経営状況の改善や新たな資金需要に役立てることができるのです。

しかし、借換は手続きさえすれば自動的に対応してくれるものではなく、申請にあたって押さえるべきポイントがいくつかあります。政府はコロナ関連融資の借換を積極的に推進していますが、実際のところ、思うように金融機関が借換に応じてくれないという声もあがっています。

今回はコロナ借換保証を申請する際に必要な資料やポイントなどについて、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生に伺いました。具体的な必要資料の参考となるフォーマット例などもあげていますので、ぜひ申請の参考にしてください。

※本記事は2024年2月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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コロナ関連の借換制度にはどのようなものがありますか?

基本的には、コロナ禍において日本政策金融公庫で実施された「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に対しては「スーパー低利融資」、信用保証付き融資で実施された「民間ゼロゼロ融資」に対しては「コロナ借換保証制度」にて借換が実施されています。

コロナ関連融資は、無利子および据置期間を最大5年にて実施されていました。その据置期間が終了して、2023年7月~2024年4月に多くの事業者の借入金返済が開始されるといわれています。返済できない事業者の方は、借換をして据置期間を長く取ることができれば事実上、返済を先延ばしすることができます。また他の既往債務についても、制度上は借換可能となっています。

申請すれば必ず借換することができますか?

いいえ。借換に関しては、手続きをすれば簡単に対応してくれるわけではありません。

コロナ禍に実施されたコロナ貸付やゼロゼロ融資、その他の給付金などは事実上「無審査」でした。よって必要書類を提出すれば自動的に資金を獲得することができました。しかし借換は、コロナ禍にて実施された支援制度だからといって同じようには考えてはいけません。そもそも今回の借換支援は「業績が回復していない」事業者への支援策です。よって説得力の高い事業計画を作成して申請することが重要です。

どのような資料を作成すればよいですか?

コロナ借換保証制度については指定の「経営行動計画書」という事業計画書のフォーマットがありますので、しっかりと記入してください。

基本的には日本政策金融公庫や金融機関、信用保証協会から求められている資料を作成するほか、自ら「損益計画表」や「資金繰り計画表」などを作成して提出することをおすすめします。これらの資料によって「借換をしたらどう改善するのか?対応策は?」などについて明確に金融機関にアピールすることができるからです。今後どのように回復させるのかという点において、明確な根拠の基、計画を提示できなければ金融機関を説得することはできません。

具体的には「コロナ禍においてこのような対応策を講じ、業績が回復しつつあったが、直近において物価や燃料費の高騰、インフレなどの影響を受けて業績回復が厳しくなってしまった。コロナ禍では、このような対応で回復したので、今後はこういう対応策を講じて業績を回復させる。具体的な数字(計画)はこうです」という論旨の資料を作成して交渉する必要があります。

「コロナ禍において特に対応しなかった。よって、コロナ融資の返済はできない。だから借換をしてほしい。コロナ融資や給付金のように、手続きさえすれば自動的に借換に応じてくれるのでしょ?」という姿勢だと金融機関は対応してくれません。今や政府の対応は「資金供給」から「経営支援、再生支援」に変化しています。そのことを理解しておきましょう。

説得力を高める資料を作成するためのポイントは?

借換ができれば資金繰りが改善するということが、根拠を持って示されている資料を目指してください。そのためには、今後の計画を「具体的」に「数字」で伝えることが重要です。

まずはコロナ禍前とコロナ禍、直近の過去の実績について「月別」で損益の「実績表」を作成してください。会計ソフトを利用していればアウトプットも可能だと思われます。コロナ禍前とコロナ禍の期間の損益推移を示して「コロナ禍においては、こういう対応策を講じて乗り切ってきた」ということを、数字で説明できるようにしてください。

次に今後3~5か年分の「月別および年別」の「損益計画表」を作成してください。「借換ができれば、このように損益を改善することができます」ということを数字で具体的に説明できるようにしましょう。

なお、損益計画では実際の資金の流れを把握できませんので、資金繰り表(計画表)も作成するとさらに説得力が高まります。企業は損益計算書上で利益が出ていても、資金ショートして「黒字倒産」することもあり得ます。月別にて過去12か月および今後12か月の資金繰りの実績および計画表を作成することをお勧めします。

借換申請に関して、だれに相談すればよいですか?

顧問税理士と契約されている事業者の方は、まずは顧問税理士に相談してください。顧問税理士と契約されていない方は、地元の自治体や商工会・商工会議所などの公的相談窓口に相談することも可能だと思われます。ぜひ地元の窓口を調べてみてください。

また事業再生や融資、資金調達などに詳しい専門家に相談することも強くおすすめします。民間のコンサルタントのほか、中小企業診断士や行政書士などでも支援している専門家もいます。

今回の内容を以下にまとめておきますので、改めて確認してください。

  1. コロナ禍のように、事実上「無審査」のような対応はしてくれない。
  2. 損益については、月別、年別にて、過去の「実績表」および今後の「計画表」を作成する。
  3. 資金繰りについては、月別にて、過去の「実績表」、未来の「計画表」を作成する。
  4. ポイントは今後の計画を「具体的」に「数字」で示すこと。そしてその裏付けとなる具体的な対応策を示すこと。
  5. 自力で作成できない場合は、顧問税理士などに相談してみること。

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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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