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【2024年10月】従業員51人以上の企業で働くパート・アルバイトも「社会保険適用」の対象に!どう対応すべき?
2024.08.15
2024年10月から短時間労働者の社会保険加入の義務化について、従業員数51人以上の会社も対象に含まれます。 この記事では社会保険労務士の篠田恭子さんに、社会保険適用拡大による変更点や、パートタイマー・アルバイト従業員への対応などについて解説いただきました。
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目次
パート・アルバイトも社会保険加入対象者に!その影響は?
社会保険の加入条件はどのように変わるのでしょうか。
2024年10月から、従業員数51~100人の企業で働くパート・アルバイトが、新たに社会保険の適用になります。該当の会社には、2024年9月上旬までに日本年金機構から適用拡大の対象になることの通知があります。新たに加入対象者となるのは、下記の条件をすべて満たすパート・アルバイトの方です。
- 週の所定労働時間が20時間以上(※週所定労働時間が40時間の企業の場合)
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用期間の見込みがある
- 学生ではない
従業員数とは「現在の厚生年金保険の適用対象者」を指し、「フルタイムの従業員数+週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数」で算出した人数です。
今回の変更による影響を教えてください。
まず会社側のメリットとして、求人の際に「社会保険完備」が謳えるようになります。また、社会保険に加入した労働者は扶養の基準を気にしなくてよいため、たくさん働ける人が増えていきます。今は人手不足の会社も多いですし、1人の人に長く働いてもらえると、会社にとってもプラスです。
労働者側のメリットとしては、加入へのハードルが下がることがいえるでしょう。加えて、国民年金より将来の保障が充実します。定額の基礎年金に厚生年金の報酬比例給付による保障もプラスされるため、将来の年金受給額が増えます。障害年金については軽度な保障にまで範囲が広がりますし、また、傷病手当金・出産手当金も受け取れるようになります。日本は何十年も賃金が上がっておらず、低所得者の人ほど保障が少ない国です。収入や将来の年金額が増えるのは、大きなメリットだといえるでしょう。
社会保険に加入すると、それまで被扶養者だった人は扶養から外れます。扶養を気にしなくなれば自ずと労働時間が増加して、その分給料も増えるでしょう。また被扶養者の中には、本当はもっと働きたいと考えている人もいるのではないでしょうか。特に看護師・薬剤師のように時給が高い職種だと、あっという間に扶養の上限に達してしまいます。年収調整のために、年末は全然働けないケースもめずらしくありません。この機会に扶養という枷を外して、家庭以外での自己実現につなげることを期待しています。
デメリットとなる面はありますか?
まず、会社側にとって保険料の負担が増えることはデメリットといえるでしょう。また被保険者資格取得届のほか、被保険者が同時に複数(2か所以上)の適用事業所に使用される場合には「二以上事業所勤務届」を出す必要もあり、手続きが煩雑になります。もともと条件を満たしていたのに未加入が発覚した場合は、遡って保険料を支払わなければならないこともあるでしょう。
特に懸念されるのが、新たに対象者となった人が辞めてしまうことです。そうなったら人事や採用の見直しも迫られるでしょうし、資格喪失届を出す必要もあります。
労働者にとっては、社会保険の扶養範囲から外れてしまうことが大きなデメリットだと思います。配偶者を扶養にしておきたい人は少なくありません。本人は楽しく働いていても、家庭の方針によって労働時間を削ったり、退職せざるを得なかったりする状況に追い込まれる可能性があります。また社会保険料を引かれる分、単純に手取りが減るという理由もあるでしょう。
会社と労働者のデメリットをカバーできる施策などはあるのでしょうか?
はい。先ほどお伝えしたように、今回の社会保険の適用対象拡大により、厚生年金・健康保険に加入したくないため就業時間を調整して手取り収入が減る、あるいは退職してしまうといった、106万円、130万円の「年収の壁」問題が発生すると予想されています。この問題に対応するため、厚生労働省は2023年10月から、キャリアアップ助成金制度に「社会保険適用時処遇改善コース」を新設しました。会社が新たに社会保険の適用を行った場合、労働者1人当たり最大50万円の助成を受けることができます。
内容としては、事業主が労働者に社会保険を適用させる際に「社会保険適用促進手当」の支給などにより労働者の収入を増加させる場合に申請できる「手当等支給メニュー」、定労働時間の延長により社会保険を適用させる場合に申請できる「労働時間延長メニュー」などが用意されています。
(参考)
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)|厚生労働省
具体的な対策は「把握・周知・面談・手続き」の4ステップ
加入条件の適用拡大に向けて、会社は何をすればよいですか?
まず、会社が適用拡大の事業所に該当するかを確認することから始めましょう。そのうえで1.加入対象者の把握、2.社内周知、3.面談や説明会、4.手続きという手順を踏みます。
パート・アルバイトの方は労働時間が変動しがちですが、日本年金機構では「直近12か月のうち6か月で基準を上回る人」を従業員数にカウントして通知を出しています。支店などがある場合、法人番号が同一であれば1つの事業所としてカウントしてください。
適用条件と照らし合わせて1.加入対象者の把握を行う際に、併せて会社の対応方針を決定します。対象者の人をそのまま加入させるのか、それとも未加入者のままでいてもらうのかということですね。加入させるなら、どれくらい会社の負担が増えるのかを確認します。キャリアアップ助成金を活用するかどうかなども、併せて検討しましょう。
2.社内周知とは、新たに加入対象となる人に法律改正の内容や会社の方針を伝えることです。これは掲示でもよいですし、メールでもかまいません。
従業員とのコミュニケーションを指す3.面談や説明会ですが、できれば個人面談が望ましいです。面談では加入対象者であること・社会保険の仕組みやメリットを伝え、加入を希望するかどうか確認しましょう。希望しない際は労働時間を減らさなければいけませんから、一方的に労働時間を減らすことは労働条件の不利益変更に該当するため、ていねいに説明します。加入する場合も労働時間を減らす場合も、双方合意のうえで雇用契約書を変更してください。
最後に4.手続きですが、加入日以降5日以内(10月1日加入の場合、10月5日まで)に「被保険者資格取得届」を提出します。2024年10月の適用拡大分に関しては、2024年10月7日までに届け出てください。届出はオンライン申請も可能です。
なお今回の適用対象拡大も含め、社内だけで社会保険への対応が難しいときは、社会保険労務士にサポートを依頼するのもよいでしょう。「社会保険労務士 地域名」で検索したり、相見積もりのサイトで候補を探したりして、一度会ってから決めるのがおすすめです。顧問税理士がいる場合は、社労士を紹介してくれることもあります。
社会保険の適用対象拡大についてのよくあるQ&A
従業員数が月ごとに変動する場合、どうやってカウントすればよいですか?
1年間のうち6か月以上で対象人数を上回れば、適用対象です。対象の企業は日本年金機構でも把握しており、事前に通知書類が届きます。
社会保険を希望する人向けにはどのような対応が必要ですか?
事前に社会保険の制度や保険料がいくらになるのかについて説明します。特に、子供など収入のない家族を扶養に入れられる点は重要です。そして、雇用契約書や労働条件通知書を作り直す際は、社会保険の適用があると記入するようにしてください。
「社会保険に加入したくない」と拒否されたらどうすればよいでしょうか?
社会保険に加入した場合のメリットを伝えたり、キャリアアップ助成制度により、社会保険適用後も手取り収入が減少しないことを説明したりしたうえで、それでも拒否された場合は、労働時間を見直して週20時間未満にするしかありません。ただし、そうすると雇用保険も入れなくなります。そのうえで本当によいのかを、きちんと確認してください。どうしても入りたくないというのであれば労働時間を短縮して、会社としては代わりとなる働き手の確保が必須となります。
対象者が社会保険に未加入の場合、罰則はあるのでしょうか?
会社に対して「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則が存在します。なお、従業員への罰則はありません。
社会保険の適用対象拡大に向けて、準備に役立つ取り組みや補助金はありますか?
社会保険労務士を無料で派遣してもらえる専門家活用支援事業、無料相談に対応しているよろず支援拠点といった取り組みがあります。厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトにある社会保険料かんたんシミュレーターは、会社が負担する社会保険料の試算が可能です。将来もらえる年金額を知りたいという要望があれば、ねんきんネットで調べてもらうとよいでしょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
篠田 恭子(社会保険労務士)
1977年埼玉県川越市生まれ。システムエンジニアとして約10年勤務。仕事・子育てをしながら、2011年社会保険労務士試験に合格。2013年1月社会保険労務士事務所を開業。2014年4月特定社会保険労務士付記。 2018年5月移転を機に事務所名を「おひさま社会保険労務士事務所」に変更。 働くすべての人が「楽しい」と思える職場づくりを応援します!を経営理念に掲げ、地域の企業を元気にするために、日々活動している。(所属)全国社会保険労務士会連合会、埼玉県社会保険労務士会、埼玉県社会保険労務士会 川越支部
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