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「売れているのに儲からない」を解消!EC事業の収益構造を可視化するCPO・LTV分析
2026.06.19

「売上は伸びているのに、なぜか利益が残らない」と感じている経営者の方はいませんか?EC事業では広告や販売促進によって売上を拡大しやすい一方、気付かないうちに利益が圧迫されているケースも少なくありません。その原因はどこにあるのでしょうか。
この記事では、CPOやLTVといった指標を活用し、EC事業のコスト構造の可視化や広告費のかけ方の改善方法、成功事例について、日本生産性本部の安藤さんにお話を伺いました。
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目次
売上は伸びているのに利益が出ない理由とは
EC事業で「売れているのに儲からない」状況に陥るケースがよくあると聞きます。なぜそうなってしまうのでしょうか。
主な原因は、コスト構造を十分に把握できていないことです。売上や注文数は日々確認しやすい一方で、その売上がどれだけ利益につながっているのか見えていないケースが少なくありません。
EC事業では、原価だけでなく広告費や送料、手数料などさまざまなコストが発生しています。こうした費用を踏まえて採算を確認できていないと、「売れているのに儲からない」状況に陥ってしまいます。
また、原因を特定するためには、EC事業全体を見るだけでは不十分です。顧客ごとや商品ごとの採算を分析していくことが必要です。
売上だけでなく、利益も把握する必要があるということですね。
はい。EC事業では、広告や販売促進により短期的に売上を伸ばしやすい側面があり、事業は順調だという判断になりがちです。しかし、利益を残すためには売上だけでなく採算まで含めて管理する必要があります。
広告強化で利益が減る3つの落とし穴
広告を強化して売上は伸ばせても、利益が減ってしまう場合の原因を教えてください。
典型的な原因は3点あります。まず1点目は、会社全体で広告の費用対効果を正しく測定して採算を把握できていないことです。
売上が伸びていると成果が出ているように見えますが、その裏でどれだけの広告費がかかり、どの程度の利益が残っているのかまで把握できていないケースが少なくありません。採算ラインを考慮せずに広告予算を拡大してしまうと、結果的に利益が減ってしまうことがあります。
続いて2点目を教えてください。
2点目は、広告チャネルごとのCPO(顧客獲得単価)を把握できていないことです。CPOについては後ほど詳しく説明します。
広告チャネルには、SNS広告、検索広告、アフィリエイトなどさまざまなものがあります。複数の広告チャネルを運用している場合は、どの広告チャネルから獲得した顧客が利益に貢献しているかを把握できていないと、貢献度が低いチャネルに多額の広告費を投じ続け、全体の利益を圧迫してしまう可能性があります。
広告の効果を把握しないといけないということですね。最後に3点目を教えてください。
3点目は、リピートを考慮せず、単発のCPOだけで判断してしまうことです。
EC事業では、一度獲得した顧客が継続的に購入することで利益が積み上がります。獲得した顧客数が多くても、リピート購入につながらなければ、長期的な売上や利益は生まれません。
顧客が長期的にもたらす利益をLTV(顧客生涯価値)といい、LTVを考慮せずに広告の効果を初回の獲得数だけで評価すると、長期的に見て、誤った判断になる可能性があります。LTVについても後ほど詳しく説明します。
このように、広告を運用する際には、売上拡大だけでなく、コストと長期的な利益のバランスを踏まえて判断しないと、利益を減らしてしまう可能性があります。
CPOとLTVで見る“儲かる広告”の判断軸
先ほどCPOを把握するというお話がありましたが、CPOとは何か教えてください。
CPOとは「Cost Per Order」の略で、1件の注文を獲得するためにかかったコストです。顧客獲得単価とも呼ばれます。主に広告宣伝費を新規注文数で割って算出し、広告の効率性を測る基本的な指標です。
ただし、CPOだけでは広告の良し悪しは判断しきれません。EC事業では顧客が継続的に購入することで利益が積み上がるため、単発の取引だけでは本来の価値が見えないからです。
先ほど話にあがったLTVについても教えてください。
LTVは「Life Time Value」の略で、1人の顧客が長期的にどれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。顧客生涯価値とも呼ばれます。リピート購入まで含めて広告の効果を評価する際に活用します。実務では、1年、2年など期間を設定し、その期間の売上や利益を集計して算出するのが一般的です。
広告の効果は、一般的に粗利ベースのLTVがCPOを上回っているかどうかで判断します。目安としては、LTVがCPOの2~3倍以上ある水準が望ましいでしょう。この水準であれば、広告によって獲得した顧客が将来的に十分な利益を生み出すと判断できます。
具体的には、どのように分析を進めていけばよいのでしょうか。
まずはSNS広告や検索広告、アフィリエイトなどの広告チャネルごとにCPOを算出し、どの施策が効率的に顧客を獲得しているかを把握します。
次に、顧客の購入履歴を基にLTVを算出します。平均購入単価や購入回数、継続期間などを踏まえて、顧客一人ひとりがどれだけ利益に貢献しているかを見える化していきましょう。
そのうえで、何回目の購入でCPOを回収できるのかを確認し、広告投資の判断の参考にしていきます。
すべての顧客や広告を同じように見るのではなく、分けて考える必要があるのですね。
はい。特に、広告チャネルごとにLTVが異なる点を踏まえて分析することが大切です。例えば検索広告経由の顧客はリピート率が高い一方で、SNS経由の顧客は単発で終わりやすい、などの結果がわかることがあります。このように分解することで、どの広告に投資すべきか、どこを改善すべきかを数字で判断できるようになります。
広告依存から脱却し黒字化した改善事例
CPO・LTV分析を活用して業績改善につながった成功事例を教えてください。
生活雑貨を扱うEC事業者の事例を紹介します。この企業は広告投資を積極的に行い、売上自体は前年比約150%に成長していました。その一方で利益は出ておらず、営業利益の段階で赤字に転落している状況でした。
分析したところ、CPO(顧客獲得単価)が約4,000円に対して、ある商品を購入した顧客群のLTV(顧客生涯価値)が粗利ベースで約2,500円と、CPOがLTVを上回っている状態になっていました。つまり、顧客を獲得するたびに赤字になる構造だったのです。売上自体は伸びていましたが、その問題に気付けていませんでした。
そこからどのように改善していったのでしょうか。
まず取り組んだのは、不採算な広告チャネルの停止です。売上が伸びている中で広告を止めるのは勇気が必要ですが、数字に基づいて判断しました。
そして削減した広告費を、既存顧客向けの施策へ振り分けました。具体的には、商品に同梱する案内物の工夫や、LINE公式アカウントを活用した情報発信、ダイレクトメールの送付などを通じて、継続的な接点を増やしていったのです。
既存顧客への施策によって、どのような変化があったのでしょうか。
新規顧客数は減少しましたが、既存顧客への施策により、もともと約10%程度だったリピート率が約30%まで改善しました。その結果、LTVが向上し、不採算な広告チャネルの停止によってCPOも改善しました。コスト構造が改善され、比較的短期間で黒字化を達成しています。
成功のポイントはどこにあったのでしょうか。
2点あると考えています。1点目は、不採算な施策を止める勇気を社長がしっかりと持てたことです。売上が伸びていると決断しにくくなるのですが、新規顧客が減り短期的に売上が減少しても、指標に基づき利益の状況を冷静に見直した点が良かったと思います。
2点目は、CPOやLTVといった指標を、計算方法を含めて社内で共有し、共通言語として使える状態にしたことです。社員全員が同じ指標を使い、感覚ではなく数字に基づいた意思決定ができるようになりました。数字に対する意識が変わり、目標を明確にして改善につながったといえます。
CPO、LTVの計算式自体は簡単なものです。ただ、意識的に数字を集計して計算しなければ可視化できません。まずは自社のCPOとLTVを算出し、顧客単位、商品単位の採算を把握することから始めてみてください。そして、分析結果を基に、売上の拡大だけではなく利益を確保する意思決定をすることが大切ではないかと思います。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
安藤 優(公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 経営コンサルタント)
大学卒業後、広告・製薬・化粧品業界でEC・通販事業に約12年間従事。EC統括部長として戦略立案からマーケティング、IT、財務、組織開発まで広く経験。その後、IPビジネスを営む企業の実店舗事業で戦略ディレクターを務め、事業戦略立案・実行、DX推進などを牽引した。
現在は経営コンサルタントとして、企業の診断指導や人材育成に従事。実務経験に基づいた多角的な視点から、事業成長の実行支援を強みとする。
























