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従業員に数字を意識して働いてもらうには?教育方法や成功事例を紹介

2023.05.24

著者:弥報編集部

監修者:深沢 真太郎

売上・資金繰りなど、常に数字を追いかけている経営者の皆さん。従業員にも数字を意識して働いてほしいのに、全然そうならなかったり、あげくに嫌がられたり……。そんな経験はありませんか?

一般的には、目標である数字自体を伝えることが多いと思いますが、そもそも、その共有方法はあっているのでしょうか。

今回お話をお伺いした、ビジネスにおける数字を利用した人材育成コンサルティングなどを行う、BMコンサルティング株式会社 代表取締役の深沢 真太郎さんは「数字『で』従業員に何をしてほしいのかを伝えると、自然と数字の意識が芽生えてくる」と言います。

その他にも、従業員に数字を意識してもらうための方法や注意点、実際のオフィスでの成功事例などを伺いました。すぐに実践できる、わかりやすい対策ばかりです。ぜひ参考にしてください。


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数字を意識して働くことの意味や重要性とは?

そもそも「数字を意識して働く」とは、どのような状態を指すのでしょうか。

数字を意識して働くというのは、確実な指標となる数字を活用して経営判断の基準にしたり、会社の変化に気づいたりする状態を指します。従業員の場合は、数字を見てプロセスを見直したり、実績を積み上げたりする働き方ですね。

つまり、数字1つ1つの統計や計算に囚われるのではなく、数字を活用して改善を図り、結果につなげる意識を持つということなんです。

従業員が数字を意識して働くメリットは何でしょうか?

自分の頑張りや成長を明確に示せるのが、数字を使うメリットです。しかし、ただ売上が増えたとか、業務を効率化できたとデータを示すだけではいけません。数字の結果を認めてもらい褒められたとき、人は初めて嬉しいと思えるようになります。子どもだろうが大人だろうが、人間は褒められると無条件に嬉しいんです。

逆に、数字を意識して働くことのデメリットは何でしょうか?

気を付けないといけないのが、数字には思考停止を生むリスクが存在する点です。例えば、ある学生の偏差値が10下がったとしましょう。もしかすると、家族に何か事情があったりして、勉強どころではなかったのかもしれません。にもかかわらず偏差値が下がったという事実だけで、その子は努力していないと短絡的に結論付けられる可能性があります。これが「数字が思考停止を生む」という意味であり、デメリットと言えるでしょう。

なぜ従業員は数字を意識しにくいのでしょうか。

実は経営者自身が、従業員には具体的な数字の話はあまりしたくないことが原因の場合があります。「来年は今年よりも売上を増やします」と「来年は1億円売上を増やします」では、後者のほうができた・できないがより明確になりますよね。一方で、明確ゆえに生じる問題も多いのではと考えたり、数字を説明すること自体が面倒くさいと思ったりする傾向があるんです。そうなると、従業員も同じ感覚になってしまう可能性が高いでしょう。

従業員にも、数字は面倒くさいものではなく自分にメリットをもたらすもので、それが会社の利益にもつながっていくのだと理解してもらうことが重要です。単に数字は大事なんだ、数字を見ろと伝える「べき論」では、現場に響きません。従業員にメリットを感じさせなければ、数字を意識してもらうことはできないと思います。

まずは「数字を会話に取り入れること」から!従業員に数字を意識して働いてもらう具体的な方法

従業員に数字を意識してもらうために、今すぐできることはありますか。

手っ取り早くできることは、数字を会話に取り入れることです。私はこれを「数会話」と呼んでいます。いきなり数値分析をしようとか、財務諸表を読みなさいといった話ではありません。日常の仕事での会話に、数字を交えて話すということです。例えば話を聞いてほしいときに「ちょっと時間をください」ではなく「1分だけ時間をください」にするのは簡単ですよね。数字で具体的に伝える会話を心がけてもらえるように指導して、従業員に実践してもらうのです。そうしていくうちに「数字を伝えたほうが反応がよい」「OKをもらいやすい」という感覚が従業員にも自然と備わっていくと思います。

従業員を育成する観点から、数字を意識してもらう具体的な方法はありますか。

まずはデータなどをしっかり活用し、成果を出した人をこれ以上ないほどわかりやすく褒めてください。社内報に、成果やインタビュー記事を載せるのもよいでしょう。そうすることで、数字を活用して良い思いをしたという成功体験が本人の記憶に残ります。

さらにそれを見た他の従業員が「〇〇さんの仕事の仕方は真似した方がいいかも」と影響を受け、自然に数字を意識し始めると理想的です。数字の話に限らず、従業員全員を同時に変化させるのは容易ではありません。しかし、1人をターゲットにして育成すると、刺激を受けた人が後からついてくる構造が作れます。小さな会社であればあるほど、波及効果が期待できるのではないでしょうか。

さらに、従業員に各自の変化を語らせるのもおすすめです。変化は増減や良し悪しで表現するしかないため、自動的に数字が用いられるようになります。全体ミーティングを活用すると、他の人の話も参考にできて一石二鳥です。

「数字で伝える」が大事。数字の話をする際のポイント

数字の話をする際のポイントや、注意点を教えてください。

一言で言うと「数字伝える」ではなく「数字伝える」ですね。数字そのものを押し付けるのはやめて、従業員に何をしてほしいのかを伝えるための手段と考えてください。

例えば「今月の売上目標は〇億円だから達成させよう」という経営者と、「接客の質を向上させて、商品を購入してくれるお客さまの割合を5%に上げよう」という経営者では、より多くの人を適切に動かし、売上が見込める会社は後者だと言えます。なぜなら、具体的に何をするかがメッセージに込められているからです。数値を単なる目標値と考えるのではなく、適切に動いてもらうためのツールと考えると、やがて会社の利益につながっていきます。

経営者は会社の数字をできる限り開示したほうがよいのでしょうか。

数字の開示が、必ずしもよいとは限りません。なぜかと言うと、従業員は特に求めていないからです。もし開示するとしたら、数字の変化と各部門の仕事がどうリンクしているのかわかりやすく示す必要があります。ただ数字を見せるより「〇〇部門のパフォーマンスが向上したからこの数字が上がっている」などと伝えると、従業員もメリットを感じて会社の数字が気になり始めるのではないでしょうか。「今月は効率化に力を入れたけど、数字はどうなったかな」と、従業員が自発的に数字を確かめる流れができるとベストです。

もし数字に変化がなかったり、マイナスの変化だったりした場合はどうしたらよいでしょうか?

褒めようがないときは、報告してくれたという事実を褒めたうえで「成果を出すには何が必要か一緒に考えよう」と伝えてみてはいかがでしょう。

ポイントは、相談後の対応に関して、結果を短いスパンで報告してもらうことです。そこでうまく行っていたらすごく褒めればよいし、ダメならまた考える。大切なのは、一緒に考えてくれる人がいる安心感です。数字は、そのためのコミュニケーションのツールだと捉えるとよいでしょう。

バックオフィスの貢献度まで数値化した事例

最後に、数字を意識したことによる成功例があれば教えてください。

ある経営者は営業出身ゆえに、とにかく営業が一番偉い、だって稼いでいるから、という考えを持った人でした。バックオフィスへの評価も低く、総務や人事は不満を感じていたんですね。何とか自分たちの頑張りを伝えたい、では数字で示そうと、まずは営業部への貢献度を数値化しました。それを基に、売上の〇%はバックオフィスのサポートによるものだと主張したんです。加えて、効率化による作業時間の短縮で、人件費が削減されたことも明らかにしました。これらの数字を合わせると、営業部よりも経営への貢献が大きいことがわかりました。さすがに経営者もハッとして、その後は態度が変わったそうです。

バックオフィスの皆さんに意見を聞くと、仕事がしやすくなったのはもちろん、社長が認めてくれたのが何より嬉しかったとの声が挙がりました。冒頭からお話しているように、褒められたり認められたりすると嬉しいのが人間なんです。だから数字を使うといっても、結局はハートへのアプローチであり、生身の人間を相手にしているんだという感覚を忘れないでください。


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この記事の著者

弥報編集部

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深沢 真太郎(BMコンサルティング株式会社 代表取締役)

ビジネス数学教育家。数学的なビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、述べ1万人以上を指導してきた社会人教育の専門家。大手企業・プロ野球球団・トップアスリートなどの教育研修を手がけ、一部企業とはアドバイザリー契約を締結し人材開発のサポートを行っている。テレビ番組の監修やラジオ番組のニュースコメンテーターなどメディア出演も多数。著作は国内累計25万部超。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。

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