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スモールビジネス経営者なら読んでおくべき!企業コンサルタントがおすすめするビジネス書11冊

2018.08.23

著者:若山 修

著者:株式会社スコラ・コンサルト

仕事のヒントを得たいときや自身のキャリアを考えたとき、数多くの成功や失敗の事例、知見や教訓が詰まったビジネス書は頼れるテキストです。しかし、世の中にはあまりに多くのビジネス書があり、本当に自分にとって役立つものを探し出すのはなかなか難しいもの。そこで、さまざまな企業のコンサルタントを行ってきた著者が、スモールビジネスに役立つおすすめの書籍を厳選してご紹介します。

「お店」は変えずに「悦び」を変えろ!(小阪裕司・フォレスト出版)

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「感性マーケティング」というキーワードで多くの書籍を出版している著者のノウハウがわかりやすく詰まった1冊。「変わり者」を自認するという著者は、世の中のスモールビジネスを経営している方たちが大型ショッピングモールや大資本のチェーン店に負けず、自分らしく商売を楽しむことを最も重要視しています。

たいてい「この商品のおすすめ(ポイント)は?」と聞くと、店主は自慢の商品について熱く語ります。商品の魅力をあれこれ見聞きしたあと、著者の小坂氏は言います。「それ、どこに書いてあるんですか?」と。商品POPにはスペックと値段が書いてあるばかりで、さっき店主が夢中になって話した「魅力」が全然見えるようになっていない……。こんなことってよくありますよね。

「それをしっかり書いて、お客さんに伝えましょうよ!」

これが小阪氏のメッセージ。そして、それを実践して大型スーパーの近くでも大繁盛している店や、辺ぴな田舎では考えられないくらいの大ヒット商品を生んだ店の実例がたくさん出てきます。お客様との関係を変えることで、商売がまったく違ったものになる。商売の基本を、一切の精神論を排した自由闊達(かったつ)な理論で教えてくれる1冊です。

ちっちゃな科学―好奇心がおおきくなる読書&教育論(かこさとし・福岡伸一/中公新書ラクレ 551)

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必ずしも資金力が十分ではないスモールビジネスにおいて、“経営者の頭脳”はまったくお金のかからない、それでいて大いなる可能性に満ちた重要な経営資源です。「脳科学」に関する研究や出版物は数多く世に出ていますが、こちらは優れた頭脳を持つ科学者のものの考え方がよくわかる1冊です。

科学絵本の大家である、かこ氏の人生哲学や教育論は示唆に富んでいて、ビジネスの人材育成に応用できるところも多々あります。この本では、さらに気鋭の科学者である福岡伸一氏が、かこ氏の考え方や世界を見る目について随所でわかりやすく解説しています。子どもを理系と文系の2つに分けることの愚について2人が熱く語るシーンなどでは、調査結果やデータもふまえ、「個別化の時代」である現在のビジネスにも大いにヒントになりそうです。

今年、かこ氏は92歳で帰らぬ人になりました。先人が残してくれた大きな遺産の一つとして、この本に書かれているものの見方や考え方を受け継ぎ、次代へと生かしていけたらと思わずにはいられません。

ホンダイノベーションの神髄(小林三郎/日経BP社)

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本田宗一郎語録などは世の中に多くありますが、ホンダイズムの継承者たちの著作としてピカイチなのがこの1冊。トヨタとホンダならホンダに乗りたい、という、ちょっとアマノジャク(?)な経営者たち、そして当たり前のものづくりでは心が満たされないエンジニアたちの魂を揺さぶります。

ホンダのエアバッグ開発者である小林氏は、べらんめえ調の、まさに「ホンダイズム」の生き証人。講演は楽しく刺激的でいつでも大人気ですが、本の中でも規格外のユニークぶりをいかんなく発揮して楽しませてくれています。小林氏は盛んに「オペレーションとイノベーション」という対比を行い、「机の上をきれいにしてたってオペレーションはできても、イノベーションはできねえんだ」と力説。

高度な術や思想はその創始者よりも、身近な弟子によって言語化され、世に広まるケースが多いものですが、この本もまさに第三者の目によって、日本が誇る起業家である本田宗一郎氏の本当の考えを実践的につかむことができます。

マネジメント【エッセンシャル版】―基本と原則(P..ドラッカー著、上田惇生訳)

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「経営」というものを学びたいと思って本屋さんへ行っても、いろんなジャンルに分かれたテーマが並び、聞き覚えのある著名な人の著書が並んでいます。そうした「いったいどこから読み始めればいいのかわからない」というときに私がおすすめしたいのがこの1冊です。世界で初めて「マネジメント」というものを考えた人物がドラッカー。本書はその集大成であり、ちまたにあふれるマネジメント理論のほとんどが本書にルーツを持っていると言っても過言ではありません。

「そもそもマネジメントというのは何をすることなのか」が書かれたパート1、「マネジメントの手法と組織のかたち」について書かれたパート2、そして「トップは何をするのか」についてのパート3。これらを通して、マネジメントというものの全体像をとらえることができます。

ドラッカーはマネジメントを「万人のための帝王学」として書きました。大企業のトップだけではなく、社会のあちこちに正しくマネジメントされた事業が存在することで社会が平和で豊かになると考えたからです。その意味で、この1冊は何千万人といる小規模事業者のためにこそある本と言えるでしょう。

イノベーションと企業家精神(P..ドラッカー著、上田惇生・佐々木実智訳/ダイヤモンド社)

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「何か新しい発想はないか」「今までの延長線上ではない、新アイデアがないものか」と多くの経営者は思っています。何十年もの間、自分が第一線でがんばる個人事業主ならば、なおさらこのような思いは強いでしょう。そんなとき、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」は大きなヒントになる1冊です。しかも、全部を読まず拾い読みをするだけでも十二分にヒントがつかめます。

ドラッカーは世の中に起きたイノベーションの事例を2000件にわたって調べたそうです。その結果、イノベーションのチャンスは7つに集約できることがわかり、その7つを私たちに教えてくれます。しかも、7つのうち、第1番目のチャンス「予期せぬ成功と失敗」が圧倒的多数だと言います。たしかに言われてみれば、有名な3Mのポストイット誕生のエピソードをはじめとして、予期せぬ出来事をうまく活かしたイノベーションの例は枚挙にいとまがありません。

注意していれば誰でもできるはず。これがドラッカーのイノベーション考察の結論でした。そう結論したのは1番目のチャンスだけが理由ではなく、7番目に至るまで「発明」という事例が出てこなかったことにもよります。独創的な天才がなくてもイノベーションは起こせる。私たちみんなにチャンスがある。これが本書の大事なメッセージです。

ローカル線で行こう! (真保裕一/講談社文庫

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『ホワイトアウト』や『アマルフィ』など、重厚な筆致のサスペンス小説で名をはせる著者には軽快なスピード感あふれるビジネス系の作品もたくさんあります。その一つである本書は、廃線寸前に追い込まれた赤字のローカル路線が舞台。ビジネス小説と言えば、最近ではドラマ化されることも多い池井戸潤氏が有名ですが、真保氏の作品は軽妙な文体とサスペンス作家らしい緻密なプロットが特徴です。

赤字ローカル路線の新社長に抜てきされたのは、新幹線の車内販売でカリスマ的な売上をあげてきた若い女性。彼女が直面する、ローカル路線ならではの事業の難しさ、赤字企業ならではのやる気のない従業員たちという組織の問題は、フィクションとはいえ真に迫るリアリティがあります。これをどう解決していくのかと読み進んでいき、ページをめくる手が止まらなくなるでしょう。

「フィクションなんて」と侮らず、頭の遊びのつもりで読んでみることをおすすめします。気分転換にとどまらない発見があるかもしれません。元カリスマアテンダントがその腕前を発揮して最初の成功事例をつくり出すパートや、女性従業員の一言からビジネス成功の重要なヒントをつかむシーンなど、「なるほどな」とうなずけるポイントもあちこちに。

「奇跡」のトレーニング(小山裕史/講談社)

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スモールビジネスを営む経営者にとって「身体は資本」というのはオマケの話ではありません。古い商店街を歩いてみれば、店主が体調を崩したことがきっかけで閉店に追い込まれていく店の多いことを痛感するはずです。かといって、スポーツクラブに通って体力づくりをする時間を取るのもなかなか難しいのが現実。そんなときに小山流の「初動負荷理論」は非常にユニークな突破口になるかもしれません。

イチローや青木功など、年齢のハンディーを感じさせずに活躍したトップアスリートが取り入れていた「初動負荷理論」は、身体の一部(たとえば筋肉)だけを極端に鍛えるやり方ではなく、関節の動きや反射神経なども総合的にレベルアップさせていくトレーニング方法です。イチローはバッティングだけでなく、歩く姿を見ると腰がぶれず、なめらかに前に進みます。その背景には、汗もかかず、血圧も一定に保ったまま、無理せずに身体を動かす理論があったのです。

小山氏の著書にはウォーキングにテーマを絞った本もあり、日常のトレーニングとしてはこちらのほうがより参考になるかもしれません。店に出勤する道すがらの歩き方一つで、身体の使い方を根本から変えていくことが可能です。長く活躍するトップアスリートの隠れた努力から、長く活躍するビジネスパーソンとしての身体づくりのコツを学んでみてはいかがでしょうか。

稲盛和夫の実学 ―経営と会計(稲盛和夫/日経ビジネス人文庫)

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本田宗一郎氏の名言に「理念なき技術は凶器であり、技術なき理念は無意味だ」というものがあります。同様に、私は稲盛氏の「理念なき経営者は存在意義がないが、会計のわからない経営者は悲惨である」という考えにも大いに賛成です。理念や考え方を説いた本をたくさん出版している稲盛氏ですが、この『実学』こそ氏の最高傑作の一つではないかと思っています。

弱冠27歳で京セラを創業した稲盛氏は根っからの技術屋さん。経営も、もちろん会計もまったくの素人からのスタートでした。そんな稲盛氏が世間における会計の常識に負けず、感じた疑問を一つひとつ紐解き、原理原則にのっとって理にかなった独自の会計スタイルを築き上げていく様子は、スモールビジネスを営む身にとって必見です。そこにいくつも示される原則はまさに「机上の空論」とは真逆の「現場の実論」。自分らしさを大切にし、お金に振り回されない生き方をするために、すぐに役立つことばかりです。

難しい数学や複雑な会計の素養がなくても、真の現場人間であり、一つひとつ丁寧に考えていこうとする姿勢を持てれば、誰でもあれだけの偉大な経営者になれる道があるのだと勇気づけてくれるはずです。

外食王の飢え(城山三郎/講談社文庫

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経済小説というジャンルを拓いた城山三郎氏の1982年の作。「起業」と「成長」を考えるための最高のテキストです。私自身が勤めていたベンチャーで、創業当時の社員は全員が課題図書として読まされたという思い出があります。「この本の中に商売に大切なことはみんな書いてある」と、当時、創業社長(今でも元気に世の中で話題になる起業を続けています)がよく言っていたものです。

物語は、倉原という1人の男の野望と情熱で急成長するレオーネと、セントラルキッチンを備え、チェーンオペレーションの団体戦で急成長するサンセットの、ファミリーレストランチェーン同士の戦いです。福岡発で急拡大してきたレオーネに対し、後発ながら首都圏で発展してきたサンセットが激突。モデルはロイヤルホストとすかいらーくという2大ファミレスチェーンで、両社の沿革に出てくる事件も組み込まれたリアリティーは抜群です。

急成長するベンチャーにおいて重要なことは何なのか、オペレーション、サービス、店づくりから経営者としての生き方まで、まったくタイプの違う2社を通して、さまざまなことを学び取れる1冊です。

近隣客をドカンと集める訪問集客のコツ(大須賀智/DO BOOKS同文館出版)

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日本オリジナルのコンサルティングファームとして名高い船井総研。実力主義の塊であるコンサルタント集団の中で、自身も大きな実績をあげつつ、多くの後輩を育成した人情派の実力者に宮内亨氏がいます。その宮内氏の弟子の1人が著者である大須賀氏。本書は宮内氏のエッセンスが存分にちりばめられたマーケティングの実践書。個人経営の飲食店における集客方法が具体的かつわかりやすく書かれています。

折り込みチラシやWebマーケティングなど、販促・PRにはさまざまな媒体がありますが、大須賀氏の問いかけでハッとさせられるのは、狙いを明確にしたアプローチの重要性です。たとえば個人経営のお店では、何万人もの集客はできないのではなく“する必要がない”という点。10席しかない店なら、まず1人に来てもらうことが大事であり、次には2人を呼ぶ工夫。5人も新規客が来ればもう十分すぎるほど。そのために、店の1km圏内にいるお客様候補にどう働きかけるかがポイントだと説きます。その手段がほとんどお金のかからない手製チラシとドアノック。

チラシの作り方から、嫌がられず、やる方もつらくないドアノックの実践方法まで、自分自身で経験を積んでわかったことだからこその説得力とわかりやすさで丁寧に解説しています。特に都市部で飲食店を営む人への贈り物と言っていい1冊。

日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし(白井明大/東邦出版)

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経営管理のスパンには「年次」「月次」「週次」「日次」などがあり、優れた会社はショートスパンでの管理にも秀でている印象があります。小売業などでは1年を52週に分け、1週間ごとにきめ細かい戦略を策定して実行している優良企業が多く存在します。しかし、「そうはいっても、なかなかそこまで手が回らない」というのもまた本音。そこで「1週間は無理でも、2週間くらいなら」という発想が出てきます。そんなときにおすすめしたいのが日本古来の二十四節気という区切りです。

春夏秋冬は1年を4つに分けますが、それぞれの中をさらに6つに分けたものが二十四節気。天気予報で「暦の上では…」という枕ことばでよく耳にしますね。この二十四節気は日本列島の気候風土と深く結びついていて、季節や天候に左右されることの多い飲食業や衣料品店などでは、実は経営管理にマッチしやすいサイクルです。実際に私のクライアントでも、二十四節気で経営計画を立てるようになって1年の流れが良くなったという企業があります。

二十四節気をさらに3つずつ(だいたい5日ずつ)に分けたものが七十二候。都市化する現代の環境の中では見過ごしがちな季節感。本書を片手に、自然の暦で季節の移り変わりを1年間追いかけてみると、これまで見えていなかった新鮮なビジネスの切り口が見つかるかもしれません。


ずっと悩んでいたことが、1冊の本によって霧が晴れるように解決することもあります。気になる書籍があったらぜひ手に取ってみてください。

この記事の著者

若山 修(わかやま しゅう)

ベンチャー企業で草創期から東証一部上場までを経験。その後、株式会社スコラ・コンサルトで組織風土改革プロセスデザイナーを続けながら、2014年に青果店を開業。スモールビジネスに限りない愛着を持つ。

この記事の著者

株式会社スコラ・コンサルト

組織風土改革のパイオニアとして企業・公的機関の支援に30年の実績をもち、実践を目的とした〈プロセスデザイン〉という独自の変革手法に特徴がある。「コンサルタントのいないコンサルティング会社」のスタンスを貫き、「プロセスデザイナー」が現地で現場の人たちと一緒に考える伴走型の支援を行う。本音でまじめな話ができる対話の場、職場や立場を離れてフラットな関係で行う「オフサイトミーティング」は、スコラ・コンサルトの代名詞になっている。

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