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1人で仕事を抱えがちな人は必見!チームで課題解決する「巻込力」とは?

2024.05.28

著者:弥報編集部

監修者:越川 慎司

「たくさん仕事を抱えているが成果が出ない」「自分1人だけ頑張っている気がする」など、組織体制についての経営者やリーダーの悩みは尽きません。効率化を図るためには、周囲を巻き込んで仕事を進める必要がありますが、具体的にどのように「巻き込む」べきなのでしょうか。

今回は『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』などの著者である越川慎司さんに「巻込力」の重要性とそのメリット、さらに実際に巻込力スキルを身に付ける方法などを伺いました。周囲を巻き込む優秀な人の特徴の他、すぐに実践できる具体的なアクションも教えていただいたので、ぜひ参考にしてください。


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「巻込力」とは自分のコントロール範囲を広げる力

ビジネスにおける「巻込力」とは、どのようなスキルでしょうか?

「巻込力」とは、成果を出し続けるために「自分がコントロールできる範囲を広げる力」のことを意味します。

私はこれまで多くの企業に向けて、タイムパフォーマンス向上のため、さまざまなツールやノウハウを駆使して業務効率化を推奨してきました。しかし、これらのビジネススキルは、あくまで自分がコントロールできる領域で活かせるものです。コントロールできないものに関しては自分の力では対処しようがありませんし、悩んでも成果は上がりません。

つまり、さらに成果を出すためには、コントロールできる領域そのものを広げ、周囲の能力を借りながら効率を高める必要があるのです。自分のスキルを活かすための基礎となる技術、それが巻込力の根本的な概念です。

なぜ今「巻込力」が必要なのでしょうか?

かつては成果の出し方が画一的だったことから、指示に従うだけで売上を上げたり、実績を出したりすることが可能でした。従順さが評価され、仮に周囲を巻き込むことがあるとすれば、部署内の縦連携のみでしたよね。しかし現在は、社会も人も急速に変容している背景があります。価値観は多様化し、従来の「正解」が通じなくなりました。

もちろん、課題が単純かつ解決した前例があり、緊急性を要する場合などは、1人で解決したほうがよいことに変わりはありませんが、想定外の課題においては、だれも成果の出し方がわからない状況にあるといってよいでしょう。

実際に、私たちがあるグループ企業のプロジェクト傾向を調査した結果、他部門と連携したプロジェクトがイノベーションを生み出す割合は、年々増加傾向にあることがわかりました。

複雑な課題を解決し、突出した成果を出すためには、より多くの異なるバックグラウンドを持つ人の力を合わせた解決策が必要となり、部門を超えた横連携が求められるようになったのです。

内外問わず、結果を出す良い関係性が築ける

周囲を巻き込むと、働き方やビジネスの成果にどのような変化をもたらしますか?

効率と精度を高めることができ、チームに良い影響をもたらします。

そもそもチームとは、互いの弱みを補いつつ、強みを高め合うことで複雑な課題を解決する共同体を意味します。周囲を巻き込むことで、チームメンバーの得意分野を組み合わせ、全員で目的達成に向けて走るので、組織力も強化されるのです。

巻込力を使った具体例などがあれば教えてください。

例えば1人で3つの仮説を立てると時間がかかるうえ精度も落ちますが、3人で3つの仮説を立てると、スピードも質も上がるでしょう。変化の激しい時代には、「迅速さ」が成功のカギとなるケースも多いです。実際に、すばやく事業を立ち上げるために仮説検証を動きながら繰り返して正解を導き出す「リーンスタートアップ」という手法も支持されています。巻込力はリーンスタートアップにも効果的なスキルであるといえるでしょう。

また、巻込力は社外の取引先にも使えます。昨今では、お客さまも「課題自体がわからない。何をどうすればよいのか見当がつかない」と頭を抱える方が少なくありません。そんな時に巻込力を活用すれば、まず問題を探す段階から一緒に伴走し、課題として捉え解決策を出す「共感・共創」の姿勢を持つことによって、より良い関係性構築や納得いただけるサービスの提供が可能になるのです。

人を動かすのは「信頼と情熱」

周囲を巻き込むために必要なことは何でしょうか。

巻き込むというのは、自分の持つ影響力によって人を動かすということです。人を動かす要素として外せないのは、「信頼」「情熱」です。

私たちはこれまで17万人以上のコンサルティングを行ってきました。その中で周囲を巻き込み、優秀とされている社員の持つ能力を分析した結果、信頼が高く、情熱にあふれた人物であることがわかりました。これは業種業態や企業規模にかかわらず共通している要素です。

周囲からの信頼を得るには、自ら行動することによって相手を動かし、結果を出す実現力を持つ必要があります。もちろん結果はすぐに出るわけではないので、実現力には情熱を持って粘り強く行動し続けるという忍耐力も求められます。周囲は、仕事に対するその姿勢を見て心を動かされるのです。

具体的に、どのようにして巻込力を身に付ければよいのでしょうか。

巻込力は大きく分けて、時間管理術や資料作成術などの業務スキルと、直接的に人を動かすコミュニケーションスキルの2つの能力に分けられます。コンサルティングを行う中でわかった効果的な方法を、それぞれいくつか紹介します。

  1. 業務スキル
  • 巻き込み構文

例えば、全社宛に依頼したメールの件にだれも対応してくれなかった、などということはありませんか。実は、巻込力のある人とない人は相手に依頼するときの内容が違うのです。例をあげてみましょう。

ある中小企業の経理部門の担当者が「支払いスケジュールの変更に伴い、今後の経費精算では承認者名も入れてください。未入力の場合は支払いが遅れるケースがあります。」という内容のメールを送りました。しかし、結果として社員の11%しか対応してくれず、担当者は催促の対応に追われ、業務効率も下がってしまいました。

一方で「1か月早く支払いができるように、今後の経費精算では承認者名も入れてください。承認者は簡単に選択できます。」という文面を送った結果、社内の99%が対応してくれるようになったといいます。

これはどういうことかと言うと、だれかに仕事を依頼するとき、どのように伝えるかで相手の対応は大きく異なるということです。

  1. 冒頭に相手のメリット、もしくは意義・目的を入れること
  2. 最後に相手の行動ハードルを下げる文言を入れること

を意識するだけで多くの人を巻き込めるのです。口頭の場合でも同じ原理ですので、ぜひこの構文を使ってみてください。

  • 進捗20%フィードバック

プロジェクトでも資料作成でも、完成度20%程度で巻き込みたい人へ内容を共有し、意見をもらいましょう。フィードバックを基に軌道修正を行えば「期限日に提示した資料が見当違いなもので、時間が無駄になった」という状況を避けることができます。

1人で未知の課題を抱えて不安なときこそ、制作プロセスに相手の意見を取り入れることで、作業時間が短くなるだけでなく、より良いアウトプットができるようになります。

  • スケジュール共有

「自分がいつ空いているのか」を社内に常に共有し、周囲が声をかけやすい状態を作りましょう。特にリモートワークが増え、オフィスでの勤務割合が減っている昨今、ビジネスツールを通して開示しておけば、信頼感を得ることもできます。対面でなくてもビジネスチャットを活用すれば、効率的にやり取りできますよね。

  1. コミュニケーションスキル
  • 傾聴力

周囲を巻き込む際、相手と対話することが必要になります。相手に興味・関心を持ち、言葉の背景にある感情や意思などを汲み取るのです。会話は一方的になるのを避け、積極的に質問をするなどして双方向の理解を深める姿勢を取ってください。

相手を知ろうという意識を持つこと以外にも、共感する意見には深くうなずく、口角を上げて理解度を表現するなどのアクションを取ると、相手からの信頼度も高まるでしょう。

  • あいさつ&笑顔

当たり前かもしれませんが、良い雰囲気は良い信頼関係の構築に必要不可欠です。特に笑顔は、相手の心を開くカギにもなります。また、結果を出す人は、周囲にどんどん話しかけていることもわかりました。

空き時間や通路ですれ違うとき、会議冒頭など、ポジティブな雰囲気で話しかけ、雑談をすると親密度も増します。腹を割って話しやすい関係作りにつながるでしょう。

  • 感謝する&褒める

日ごろ、周囲に感謝の気持ちを伝えたり、褒めたりしていますか。特に仕事に協力してくれたメンバーに感謝を伝えると、相手は達成感だけでなく、承認欲求も満たされます。間接的に感謝の気持ちを伝えるのも結果として、「また一緒に仕事がしたい」という気持ちも芽生え、自然と人が集まるようになってきます。

日常的に些細なことを褒めることも効果的です。褒める場合は、相手の能力や内面に焦点を当てた褒め方が適しているので、ぜひ実践してみてください。

その他、巻込力を高めるためにはどのような資質を持つべきでしょうか?

周囲を巻き込むときは、相手の興味・関心に注力し、どのようなメリットがあるかが伝わるように意識しましょう。「伝える」と「伝わる」では大きな違いがあり、大切なのは相手を主体とした後者です。

多様な価値観や抵抗勢力を認め、折り合いをつける心構えを持つことも重要です。周囲を巻き込み、イノベーションを起こすための挑戦を続けていただければと思います。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

越川 慎司(株式会社クロスリバー 代表取締役社長)

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。創業当初から全メンバーが週休3日、複業、7時間睡眠を実践。約700社の中小企業に対して年間400件以上のオンライン講座を提供。著書『トップ5%リーダーの習慣』など30冊。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などメディア出演多数。

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