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プロパー借換制度で経営者保証を外そう!健全な経営は事業成長の後押しに【教えて!吉田先生】

2024.05.23

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

金融機関が事業融資を行う際、信用保証協会の保証などを利用せずに金融機関の判断で実行するものを「プロパー融資」と呼びます。2024年3月15日より、プロパー融資借換特別保証制度(プロパー借換制度)が開始されました。現在、政府は「経営者保証に依存しない融資」を積極的に推進しており、本制度は2022年12月23日に公表された経営者保証改革プログラムに基づく施策になります。

新しい制度ですから「よくわからない」「不安」と感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、経営者保証に依存することなく融資が受けられるということは、中小事業者の事業発展を促進につながります。結果的に金融機関にとっても、企業にとってもメリットのある制度なのです。

今回はプロパー融資借換特別保証制度(プロパー借換制度)について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。

※本記事は2024年4月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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プロパー融資借換特別保証制度(プロパー借換制度)とは何ですか?

本制度は、民間金融機関よりプロパー融資(信用保証付き融資ではなく、金融機関が独自に行う融資)を受けている中小企業等を保証制度で「借換」することにより、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速させることを目的としたものです。取り扱い期間は、2024年(令和6年)3月15日~2027年(令和9年)3月31日(保証申込受付分)となっています。

小規模・中小企業も実績と信頼が高まると民間金融機関からプロパー融資(信用保証なし)を受けることができるようになりますが、やはり多くの中小企業は経営者保証を提供しています。今回創設されたプロパー借換保証制度を利用することで、金融機関側からすると、プロパー融資を信用保証制度に借換できるので、貸し倒れリスクが軽減できます。企業側からすると、経営者保証なしの信用保証制度に借換できるというメリットがあります。

プロパー借換制度の概要について教えてください。

一例として、佐賀県信用保証協会によるプロパー借換制度の概要を紹介し、こちらをベースに本制度のポイントについて解説します。

本制度のポイントは、以下の通りです。

保証限度額については、2億8,000万円(組合などは4億8,000万円)となっていますが、申込金融機関における保証限度額は「経営者保証なしのプロパー借入残高の範囲内」となっています。対象資金については「借換資金」です。条件としては、申込金融機関における「経営者保証ありのプロパー借入の事業資金の借換」に限定されます。

無条件に借換を認めると、一部の金融機関において業績が悪い融資先を保証付に付け替えるといったケースも出てくる可能性もあります。したがって、保証限度額を「経営者保証なしのプロパー借入」の範囲内にしたと想像できます。

次に返済方法ですが、一括返済または分割返済が設定されています。本保証制度に関しては一括返済も可能となっていますが、一括返済の保証期間は「1年以内」となっています。なお、分割返済の保証期間は10年以内(据置期間1年以内)と設定されています。

必要書類としては、信用保証協会所定の申込資料の他に「財務要件等確認書」「借換債務等確認書」の提出が必要です。特に難しい資料でありませんが、不明な点については申込金融機関などに相談するようにしましょう。

要件さえ合致すれば利用可能ですか?財務状況などは問われませんか?

要件が合致すれば、すべての中小企業が利用できるわけではありません。経営者保証なしの信用保証制度ですので、以下のような一定の財務の資格要件を満たす必要があります。

〈財務4基準〉

  • 資産超過である
  • EBITDA有利子負債倍率が15倍以内
  • 法人・個人が分離されている
  • 返済緩和している借入金がない

「資産超過」とは債務超過でない状態のことです。貸借対照表の純資産の部がプラスの状態であれば資産超過であることを示し、マイナスの場合は債務超過となります。

「EBITDA有利子負債倍率」とは、「(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)」で算出される指標であり、返済能力の指標の一つです。

「法人・個人が分離されている」というのは経営者保証のガイドラインに即した基準であり、例えば「事業者から経営者への事業上の必要が認められない資金の流れ(貸付金、未収入金、仮払金など)がない」などを意味しています。

(参考)
個人保証は外せる?「経営者保証に関するガイドライン」3つの要件【中小企業経営者必読】|弥報Online

「返済緩和している借入金がない」に関しては例外があり、「申込日が危機関連保証の指定期間である場合、新型コロナウイルス感染症に係る経営安定関連保証4号の指定期間である場合は、要件の確認基準日について」は緩和措置がありますので、該当する場合は、取引先の金融機関または信用保証協会などに確認するようにしてください。

その他、借入時の要件などはありますか?

はい、あります。プロパー借換制度は、申込金融機関において、以下のいずれかの要件を満たす必要があるとされていますので確認が必要です。

  • 経営者保証を提供せず、かつ保全のない保証協会の保証を付さない借入(プロパー借入)を借り入れること。
  • 本制度による返済部分を除く保証協会の保証を付さない借入(プロパー借入)の全部または一部について経営者保証を解除し、かつ解除した借入について保全がないこと。

本保証制度は、経営者保証に依存しない融資を促進させるための制度です。よって、金融機関において「経営者保証なしのプロパー融資の実行」、または「プロパー融資の経営者保証の解除」などの要件を満たす必要がある、という要件が課せられています。

本制度を利用したい場合、まずは取引先の金融機関に相談すればよいのでしょうか?

できれば取引先の金融機関に相談する前に、金融機関以外の顧問税理士や融資の専門家などの意見を聞いてみることをおすすめします。また、現時点で要件に合致しない中小企業の場合は、本保証制度が利用できるような財務状況まで改善を目指してください。

プロパー借換制度は、金融機関、中小企業の双方にメリットがあるため、金融機関としてもさまざまな営業戦略を構築できる制度だと予測されます。また本保証制度の要件に合致する中小企業側としても、さまざまな利用方法が検討できそうです。

本保証制度の詳細については、地元の信用保証協会などのWebサイトに掲載されています。またリーフレットも公表されていますので、ご確認ください。

(参考)
「保証料の上乗せという経営者保証の機能を代替する手法を活用した制度等の取り扱いを開始します」内【プロパー融資借換特別保証制度】|全国信用保証協会連合会


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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