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令和の人材争奪戦!中小企業こそ「第二新卒」に注目すべき理由

2024.05.21

著者:弥報編集部

監修者:古庄 拓

コロナ禍の間は採用熱が落ち着いていた日本の採用市場も、コロナ禍の収束とともに求人倍率は急激に高まり、新卒・中途いずれも“売手市場”の状況が加速しています。最近は新卒や若手採用に苦戦する中小企業も多くなり、若手の採用支援を手掛ける企業への問い合わせも非常に増えています。

採用市場の現状から採用を成功させるための基本スタンス、具体的な採用手法やポイントまで、令和の時代に中小企業が若手・第二新卒採用を成功させる秘訣を株式会社ジェイックの古庄 拓(ふるしょう たく)さんが解説します。


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中小企業が「第二新卒」に注目すべき3つの理由

新卒採用の難しさから、第二新卒や既卒の採用に舵を切る中小企業も増えていますが、まず、そもそも第二新卒とは何かを確認してみましょう。

日本で転職・中途採用が当たり前となった中で、1990年代に登場したのが「第二新卒」という言葉です。第二新卒は、リクルートが生み出して広めた言葉であり、正社員として就職して1~3年で離職した若者を指します。典型的なイメージは、「大卒で就職経験のある23~25歳程度の層」です。

また、採用活動の際に第二新卒に注目すべき理由の1つとして、市場規模の大きさがあげられます。日本の大卒新卒の民間就職者数はこの数十年45万人前後で推移しており、そのうちの3割が入社3年以内に離職しているというデータがあります。

つまり毎年13.5万人程度の第二新卒が転職活動を行っていることになり、第二新卒の周辺層となる既卒や中退者層なども入れると母数はさらに多くなるので、十分採用ターゲットになり得る規模があるのです。

2つ目の理由は、少子化が加速する中で新卒採用が困難になっていることや、新卒採用では得られない効果・メリットがあるからです。例えば、第二新卒は即入社が可能な場合が多く、1~3年程度の正社員経験があることが前提となるため、基本的なビジネスマナーや社会人スキルは身に付いていることが期待できます。

したがって、新卒や既卒ほどの手厚い初期教育を行わずに、現場でのOJTにすぐに入れる可能性が高いです。キャリア採用組ほどの強い価値観がなく、自社の価値観や組織に馴染みやすいのも特徴としてあげられるでしょう。

3つ目の理由として、求人倍率の急上昇があげられます。ここ数年の大卒求人倍率(就職を希望する大学新卒社1人当たりの求人企業数)の推移は、コロナ禍によって2021年3月卒は1.53倍、2022年3月卒は1.50倍と下がりましたが、2023年3月卒で1.58倍と上昇傾向に戻り、2024年3月卒では1.71倍と一気に回復して、ほぼコロナ禍前の水準に戻りました。前年は採用拡大に慎重であった従業員300人未満の中小企業における採用意欲が回復したことも、求人倍率の急上昇につながっています。

つまり、現在は大企業に続いて、中小企業の採用意欲も回復した状態です。本調査は2023年4月に発表されていますが、その後も企業の採用意欲は明らかに上昇しており、2024年4月に発表される2025年3月卒の求人倍率はさらに上昇している可能性が高いでしょう。間口を広げ、新卒だけでなく第二新卒も視野に入れて採用活動を行うことが、自社に合った良い人材を獲得する確率を上げるために必要になってくるといえるでしょう。

(出典)
第40回 ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)|株式会社リクルート

何を重視する?Z世代の価値観を知ろう

若手・第二新卒の採用に取り組むうえでは、採用対象となる“今どきの若者”つまり「Z世代」の仕事に対する価値観を押さえることが大切です。Z世代は、雇用に対してこれまでの世代と異なる価値観を持っています。キーワードは「キャリア安全性」「ワークライフバランス」「ブラック企業への警戒心」です。これらの価値観を解説するとともに、対策も紹介していきます。

  • キャリア安全性

キャリア安全性とは「市場価値が身に付く仕事をしたい」、言い換えると「転職に困らない力を身に付けたい」という欲求です。1990年代後半~2000年代前半に生まれ、終身雇用の崩壊を目の当たりにして育ってきたZ世代は、会社に依存する働き方は危ないと考えています。自分のキャリアを会社が保証してくれるとは思っておらず、自己成長や市場価値の向上を強く意識しています。

つまり「早期にキャリア形成したい」という意向が強く、同時に「成長できない会社は早期に見切って転職する」ことでキャリアを形成していく必要があると考えているのです。

求人情報や仕事説明では「この仕事に就くと成長できる」「スキルや市場価値が身に付く」といったキャリア機会を具体的に記載することが大切です。優秀層ほどキャリア構築に強い意欲を持っているので、どのように成長できるか、どのようなキャリアを築けるのか、具体的な例を示しましょう。

  • ワークライフバランス

彼らは「早期にキャリア形成したい」と考える一方で「仕事中心の人生は過ごしたくない」とも考えています。働き方改革の影響もあり「ワークライフバランス」が取れた働き方を理想としており、サービス残業や休日出勤を強いられるような職場には強い抵抗感があります。

Z世代の若者が好きな言葉の1つに「タイパ(タイムパフォーマンス)」があるように、彼らは「効率良くスマートに働いてほどほどの結果を得たい」という感覚が強いのです。このような価値観をふまえて「ワークライフバランスを実現できるこういう制度がある」といったことをきちんと具体的に示すことが大切です。

  • ブラック企業への警戒心

最近、ニュースで「ブラック企業」という言葉を耳にする機会は随分減りましたが、Z世代にはブラック企業を選んでしまうことへの恐怖心が根強くあります。Z世代は、求人における「未経験歓迎」「アットホームな職場」「頑張った分だけ成長できる」といった抽象的で聞こえの良い言葉はブラック企業の常套句だと思っています。

求人情報や会社説明では抽象的な言葉を安易に使うのではなく、働き方や制度、実際の事例などを具体的に伝えるのが大切です。採用のオウンドメディアを構築したりSNSを活用したりして、複層的に、また手触り感や温度感のある情報発信をすると効果的でしょう。

前提として企業側が知っておきたい採用スタンス

若手・第二新卒の採用は、売手市場の現状やZ世代の価値観をふまえて、大前提として採用企業側が「選ぶ立場であると同時に、選ばれる立場」でもあることを理解しなければいけません。そのうえで、採用活動において持っておきたい認識を紹介します。

  • 「志望度が低い」ことが当たり前

新卒採用でも中途採用でも、求職者が1社のみに応募しているというケースはほとんどありません。つまり、自社で選考している人は、他社にも応募しています。自社が採用したいと思う人は、当然他社でも内定を獲得する可能性が高い人材でしょう。採用選考の段階で、相手を見極めると同時に、企業側が応募者の「志望度を上げる」ことを意識する必要があります。

とりわけ選考前半は、応募者もまだ持っている情報量が少なく、自社は「求人票を見て何社か応募したうちの1社」です。選考前半で「志望度が低いからNG」という判断をしていると採用活動はうまくいかないでしょう。

  • 「選ぶ理由」を提供し、候補者を口説く

選考基準を下げる必要はありませんが、採用選考は候補者を口説く場であるという基本姿勢を持ちましょう。大切なのは「自社を選ぶ理由」を提供することです。

例えば、会社説明をする際に、事業内容、仕事内容、待遇、福利厚生などの情報を淡々と伝えていないでしょうか。説明する中で、他社との違い、成長性や安定性、身に付くスキルや市場価値、安心感といった要素を盛り込み、相手に志望理由や意思決定理由を提供することが大切です。

説明会であれば、情報提供もある程度は一般的なものになることが多いかもしれません。しかし、面接などであれば1対1です。相手の状況や価値観、志向性をふまえて、情報提供することが大切です。成長志向の相手であれば事業の成長性や身に付くスキル・市場価値について、逆に安定志向の相手であれば、会社の安定性や待遇や勤怠管理の部分などをきちんと説明しておくことで安心してもらえるでしょう。

  • 「ワクワクさせる情報」と「安心させる情報」を提供する

応募者に提供する情報は大きく分けると、「ワクワクさせる情報」と「安心させる情報」の2つです。前者は会社の将来性、事業の社会貢献性、身に付くスキルや市場価値、築けるキャリアの可能性、待遇の上昇余地といった要素です。“尊敬できる上司”や“ロールモデルになる先輩”といった社員の存在もワクワクする情報といえるでしょう。

後者は、若手・第二新卒層の会社選びに必要不可欠な価値観をふまえた情報です。残業の発生や休日出勤の有無、繁閑期の状況、会社の安定性、社風や上下関係、また女性であれば産休・育休からの復帰状況を提供する、ロールモデルとなるママ社員との面談を組むなど、安心感につながる情報をきちんと伝えることが大切です。

情報を提供する際は、すべてを良く見せようとしないことも大切です。どんな会社でも未整備の部分があったり、仕事の中できつい部分があったりするものです。「ここは今後整備していきたいけど、いまは未整備です」「繁忙期にはこういうこともあります」といった実態を正直に伝えることで、発信する情報に信頼感が生まれますし、入社後のギャップを防げます。

現状でサービス残業が生じていたり休日出勤があったりする場合は、見直しを図ることも大切です。これらに対して、昭和~平成前期の価値観と平成後期~令和の価値観は大きく異なるので注意が必要です。

若手・第二新卒の応募者を増やす方法

具体的に中小企業が若手・第二新卒の応募者を集める際に効果的な方法は以下の通りです。ぜひ、採用活動に取り入れてみてください。

  • 求職者と「直接会える」採用手法を選ぶ

中小企業の若手・第二新卒採用で大切なことは“接近戦”です。中小企業は外見的な採用力(待遇や知名度、規模など)よりも定性的な魅力(仕事のやりがい、経営者や上司、組織文化など)で、応募者の志望度を高めていくことが成功のポイントです。

したがって、直接顔を合わせて魅力を伝えたり、1対1でアプローチしたりできるような採用手法がおすすめです。具体的には、中小規模の転職フェアや合同企業説明会、面接会やマッチングイベント、ダイレクトリクルーティング、人材紹介、リファラル採用などです。

私が在籍する株式会社ジェイックも、既卒者・第二新卒者を対象とした採用サービス「就職カレッジ 集団面接会」を提供していますのでご興味あればご覧ください。

  • SNSでの発信で手触り感を出す

大手企業の場合、自社のWebサイトや採用サイトを作り込んでいることも多いです。しかし中小企業の場合、リソースが少ないことから、同じような取り組みができないケースもあるでしょう。

そのような中小企業におすすめなのが、X(旧Twitter)の活用です。Xであれば、無料かつ1回140文字の投稿ですので、継続するハードルはそれほど高くはありません。

「SNS経由で応募してもらおう」と考えると活用は大変ですが、求人を見た人が、会社名などで検索したときにSNSにたどり着き、中小企業の魅力である定性面(組織文化や社風など)が伝わるようにしておくと考えると大きな手間や投資は必要ありません。自社のWebサイトや採用ページからリンクを貼る、またアカウントを会社名・実名で運用するだけで実現できます。

  • ポテンシャル採用の応募者を取りこぼさない応募条件の設定

ポテンシャル採用の応募者を取りこぼさないような応募条件の設定も大切です。業務内容によりますが、「○○の有資格者」「法人営業の経験〇年以上」といった定量的な応募条件を多く盛り込んでいる場合は、間口を大幅に狭めるので修正したほうがよいでしょう。応募条件は「必須」と「歓迎」の2つに分け、「歓迎」箇所に理想的な応募条件を記載する方法がおすすめです。

採用企業側は、応募条件を記載する際に「少しぐらい条件に当てはまらなくても、意欲があるなら応募してもらいたい」と思っていることが多いですが、真面目な日本人、特に自己肯定感が少し低い傾向にある若者は、定量的な条件のすべてに当てはまらない限り応募を控える人が多いと予想されます。

志望動機につながりやすい求人票作り

求人票に自社の魅力を伝える内容を記載し、応募者の志望動機となるきっかけ作りを意識的に行いましょう。採用企業側は「入社したいのであれば、志望動機は自分で考えてほしい」と思ってしまいがちです。確かにその通りですが、応募者を増やすためには「採用企業が応募者に“応募する理由”を教えてあげる」という視点が大切なのです。

まずは応募者の気持ちになり、自社の魅力を洗い出してみましょう。外見的な要素だけでなく、内面の魅力についてもなるべく具体的に書き出すことがポイントです。

若手層の採用であれば、採用ターゲットに感性が近そうなメンバーを集めて、皆で話し合うとよいでしょう。魅力の洗い出しが終わったら、求人票を見直し、それらが十分に表現されているかを確認しましょう。大切なのは「応募者の視点」で盛り込む魅力や表現を考えることです。

例えば「経営者がこんな経験を持っていて話を聞くと勉強になる」「中小企業だからこそ仕事でこんな融通が利く」といった定性的な魅力もしっかりと書き出しましょう。また、休日や休暇、残業などの勤怠や就労環境に関する具体的な事実も確認しておくとよいです。「残業は月平均13時間」という要素も、今の若手にとっては重要な情報です。

Z世代の価値観に合わせた人事制度や取り組みの導入

Z世代の価値観に合わせた人事制度や取り組みを導入することも、採用成功に向けては有効です。中小企業の場合、各種制度が整っておらず「本人から要望があれば検討のうえで承認する」といった柔軟な対応になっていることも多いでしょう。そうした対応を「制度」という形に整えたり、求人票に盛り込んだりするだけでもZ世代の応募は増える可能性があります。

例えば、リモートワークや副業OKなどは、Z世代の若手・第二新卒が好む制度です。また、産休・育休復帰後の時短勤務、入社時の引っ越し費用負担なども応募者の増加につながるでしょう。資格の取得支援や資格手当、学習支援といった制度も自己成長につながる印象を与えます。費用がかかるものもありますが、従業員からの申請があれば承認していたもの、費用がかからないものなどを考えて、ぜひ取り込んでみてください。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

古庄 拓(株式会社ジェイック 執行役員)

慶應義塾大学卒。2005年ジェイック入社。Web業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、経営企画、研修事業の商品企画、採用事業のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒メディア事業、キャリア支援事業など、複数のプロジェクトや事業の立上げを担当。グループ会社、株式会社Kakedas取締役・株式会社エフィシエント取締役を兼任。採用×教育チャンネルHRドクター 編集長

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