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小さな会社がテレワークを導入する方法【必要な機器やソフト、業務の進め方は?】

2020.04.08

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府はテレワーク(リモートワーク、在宅勤務)の推進を強く呼びかけています。出社しなくても業務を続けられるテレワークは働き方改革や台風などの災害対策としても有効ですが、一時的な措置としてではなく、今後はいつでもテレワークに対応できる環境づくりが必須です。

この潮流は中小企業も例外ではありません。とはいえ、突然のことに何をどうしたらよいかわからないという経営者の方も多いといいます。

そこで今回は、フランテック社会保険労務士事務所代表の毎熊 典子(まいくま のりこ)さんにお話をうかがいつつ、テレワークに必要な機器・ソフトなどを具体的に紹介します。

テレワークをはじめるのに最低限必要なハード・ソフトは?

まず、テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)が可能な業務の条件として、一般的に挙げられるのは「パソコンで作業ができる」「1人で仕事を進められる」「物理的作業がない」などの業務となります。今回はこちらの条件を前提に解説していきます。

テレワークを始めるにあたっては、ハード・ソフトの両面を整える必要があります。ハード面としては「パソコン」「コミュニケーションツールとして電話(スマートフォン)」「Webカメラ(パソコンに内蔵していない場合)」「Wi-Fi環境(ルータなど)」などが必要となります。

では、これらのツールは従業員の私物を使用してもよいのでしょうか。

毎熊:「テレワークで私物のパソコンなどを使用する場合は、セキュリティなどの条件を会社が定め、従業員に周知・遵守させることが必要です。また、従業員のセキュリティ意識を高めるため、誓約書を提出してもらうことも考えられます」

私物を使用する場合はセキュリティ面でのトラブルが生じないよう「ウイルスソフトのインストールを行う」「OSを最新の状態に保つ」「データのバックアップを取る」などのルール作りが必須です。導入コストとセキュリティのバランスを見極め、予算が許すのであれば会社専用のパソコンやルータなどの購入も検討しましょう。

ソフト面では「コミュニケーションツール」「管理ツール」「業務ソフト」などを準備します。

毎熊:「コミュニケーションツールとしてはメール・チャット・Web会議ソフトなど、管理ツールにはスケジュール管理ソフトや勤怠管理ソフト、在席管理ソフトなどがあります。そしていつも使っている業務ソフトをテレワーク環境で使用できるようにすることが必要です」

具体的に、どのようなソフトがあるのか見ていきましょう。

チャットツールは「Chatwork」「Slack」、Web会議ソフトは「Zoom」「Skype」「Googleハングアウト」などが人気です。また管理ツールの代表例として「cyzen」「Sococo Virtual Office」などが挙げられます。

毎熊:「テレワーク製品は、一般社団法人日本テレワーク協会が「中堅・中小企業におすすめのテレワーク製品一覧2.0版」を公表しています。また、東京テレワーク推進センターではテレワークに使用できるツールを常設展示しており、試用も可能です。テレワーク製品を選ぶにあたっては、これらを参考にテレワークで行う業務の内容や予算に応じて決めると良いでしょう。

セキュリティを保持するためにも、どのような情報をどのようなツールを使ってやり取りするかについて、あらかじめ会社がルールを定めておくことが大切です」

【参考サイト】
テレワークのガイドライン、事例等(日本テレワーク協会)

自宅でネットワーク構築する3つの方法

いつも会社で行っている業務ソフトなどを自宅で使うためには、ネットワーク構築が必要です。主な方法として「リモートデスクトップ方式」「クラウド方式」「外部持ち出し方式」の3つがあります。

リモートデスクトップ方式は、テレワーク端末からインターネットを経由して社内のパソコンに接続する方法です。クラウド方式はクラウド型のアプリケーションを用いるものですが、使いたいソフトがクラウドアプリでなければ使用できません。外部持ち出し方式では、テレワーク端末に通常の業務パソコンで使用している業務ソフトをインストールする必要があります。

なお、リモートデスクトップ方式の場合は社内のパソコンとは別に、もう1台パソコン(会社支給もしくは社員個人のパソコン)が必要となります。クラウド方式、外部持ち出し方式の場合は社内で利用しているパソコン(ノートパソコン)を社員に持ち帰ってもらうことも社員個人のパソコンを利用してもらうことも可能です

毎熊:「クラウド方式・外部持ち出し方式のメリットは、コストがかからないという点です。ただし、セキュリティ対策が重要となる業務を行うのなら、リモートデスクトップ方式を選ぶのが良いと思います」

現在、リモートデスクトップ方式でもっとも普及している製品は「MagicConnect」ですが、その他にも「Splashtop Business」など選択肢は豊富です。ファイルの転送制限や導入にかかる日数などに違いがあるため、比較して社内のニーズに合ったものを選んでください。

毎熊:「ハード・ソフトの準備やネットワークの構築において、システム担当者がいない規模の小さな会社では人事担当者や総務担当者、あるいは経営者が関わることが考えられます。このような場合、ある程度パソコンやセキュリティについて知識のある人を担当にすることが必要です。

テレワークの実施に必要な機器やソフトの購入については、テレワーク実施対象者の意見をヒアリングしたうえで経営者や経営企画担当者、総務・人事担当者で協議し、決定するという流れになると思います。選定にあたっては「中堅・中小企業におすすめのテレワーク製品一覧2.0版」に掲載されている製品の販売会社や、東京都の場合は東京テレワーク推進センターに事前予約を入れて相談するのが良いでしょう。

また、東京都産業労働局が実施している「ワークスタイル変革コンサルティング」を活用すればIT環境の整備などについて、専門のコンサルタントによるコンサルティングを無料で受けることができます。ただし2020年度については4月以降に募集予定です」

もし何から手をつけたらいいかわからないときは、ひとまず厚生労働省のテレワーク相談センターに連絡してみましょう。テレワークの専門家がノウハウを教えてくれる、総務省のテレワークマネージャーWeb・電話相談事業を活用するのもおすすめです。

なお、新型コロナウイルス感染症対策として、早急にテレワークを実施したいという事業者への行政や民間団体によるサービス提供については「新型コロナウイルス感染症対策 テレワーク導入お役立ち情報」が紹介されています。

家庭内にも漏洩リスク?安全なWeb会議・業務の進め方

テレワークでは日頃のミーティングだけでなく、従業員が遠隔で業務を行うことによるコミュニケーション不足を補うためにも、Web会議がとても重要な意味を持ちます。

Web会議を始めるための準備は、Web会議ソフトをインストールしてWebカメラをつなぐだけ。上記で紹介したZoomであれば希望の時間にミーティングを設定し、発行されたURLをミーティングの参加者に通知するのみ。Skypeのように参加者を招待してグループを作り会話するタイプのものもあります。

また業務を行う際は、情報漏えいに注意しましょう。自宅だけでなくシェアオフィスなどで作業する場合、パソコンやスマートフォンの紛失、のぞき見などのリスクが常につきまといます。従業員一人ひとりがセキュリティ意識を高めることも大切ですが、さらなる備えとして遠隔操作でデータを削除するリモートワイプ、のぞき見防止フィルターなどの使用を検討しても良いかもしれません。

もちろん自宅でともに暮らす家族からも、情報漏えいの可能性はあり得ます。

毎熊:「秘密保持のためだけでなく集中して業務を行うためにも、テレワークは家族が立ち入らないスペースで行うことが望ましいです。テレワーク用の部屋を用意できない場合は、部屋の隅に机を置いて壁を背にして仕事をしたり、簡易のパーテーションを設置してもよいでしょう。

Web会議を行うときはプライバシー保護の観点から、できるだけ家の中の様子が映り込まないようパソコンの向きに気を付けてください。家族の声が聞こえたりすると会議の妨げとなりますので、Web会議を始める前は家族にひと声かけておくと良いでしょう」

その他の注意点は?テレワーク導入時の「よくある疑問」Q&A

ここまでテレワーク(リモートワーク、在宅勤務)の導入方法について説明してきましたが、いざ始めようとなると細かい疑問が出てくるもの。よくある懸念点についても毎熊さんにお答えいただきました。

テレワーク中に発生した書類をデータ化するには、どうしたらよいのでしょうか?また電子印鑑は有効なのでしょうか?

毎熊:スキャナーを持っていなくてもスマートフォンなどで撮影することで、ペーパーレス化が可能です。

なお電子印鑑の効力は認印と同程度といえます。法的効力が求められる場合は、電子証明書が付与された電子署名が必要です。電子印鑑の使用は、社内の承認手続き程度であれば問題なさそうですが、この機会にそもそもこの書類には捺印が必要なのか?ということを検討してみてはいかがでしょうか。

テレワークの導入が、慣習化した捺印手続きを見直すきっかけになるかもしれません。

テレワークを導入したいけど、コストが心配です。

毎熊:テレワークの導入費用の目安は一般的に従業員10名で年間約150万円とも言われますが、もちろん業務内容・人数・使用するツールによって異なります。

例えばすでに会社にあるノートパソコンを貸し出したり、私物のパソコンを使ったりする場合は、パソコンの購入費はかかりません。また、チャットなどのソフトやクラウドアプリは無料で利用できるものも多いため、ほとんどコストをかけずにテレワークを開始することも可能です。

まずはコストがかからない範囲でテレワークを実施してみて、有料ツールの利用が必要と判断したときに、予算に合わせて導入するのが良いと思います。

忘れてしまいがちですが、テレワークを行うことによって削減できる費用もあります。交通費はもちろんのこと、テレワークでは残業が減るケースが多く、人件費の削減も期待できるでしょう。

テレワークに使える助成金を活用することで、導入コストを減らすことも可能です。厚生労働省の「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」は、2020年度分の受付を2020年4月から開始しています。

また昨今の情勢を受けて、新型コロナウイルス対策のための緊急の助成金制度も始まりました。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」、東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」は中小企業を対象としており、支給の上限はそれぞれ100万円・250万円となっています。

助成金の支払いのタイミングはいつなのでしょうか?

毎熊:助成金の支払いタイミングは、審査を経て支給額が確定してからとなります。支給申請が認められたら、定められた期間内にテレワークの実施報告を提出してください。その後審査が行われます。

もしもテレワーク中に従業員がケガをした場合、オフィス勤務と同様に労災の給付対象でしょうか?

毎熊:労災が認められるためには『業務遂行性』『業務起因性』の2つの要件を満たす必要があります。

実際に起きた事例としてテレワーク中にトイレに行き、作業場所に戻って椅子に座ろうとしたところ、誤って椅子から転げ落ちケガをしたというものがありました。休憩時間の外出時にケガをした場合は、業務遂行性および業務起因性のいずれの要件も満たさないため、労災にはあたりません。

派遣社員にテレワークをお願いすることはできるのでしょうか?

毎熊:派遣元と派遣労働者との間で、テレワークでの業務について合意があることが前提となります。そのうえで派遣元と派遣先の労働者派遣契約において、派遣労働者の就労場所として派遣労働者の自宅などを定めることが必要です。

以上、テレワークの導入のための基礎的なポイントをお伝えしました。

新型コロナウイルスの流行で導入が急がれる状況といえ、なし崩し的にテレワークを導入するとかえって社内に混乱を招くことになります。最低限の環境やルールを整えて、従業員と会社を守りましょう。

※記事内で紹介したツール・ソフトは、一般社団法人日本テレワーク協会「中堅・中小企業におすすめのテレワーク製品一覧2.0版」を参考に、一般的に利用者の多いと思われるものを中心に挙げています。必ずしも弥生株式会社がご利用を推奨するものではありません。ご利用にあたっては、それぞれのツール・ソフトの運営会社にお問い合わせください。

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【関連サイト】

【新型コロナウイルス対策】在宅勤務を実施する際の弥生製品の運用に関するご案内(弥生株式会社)

この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

毎熊 典子(フランテック社会保険労務士事務所代表)

慶應大学法学部法律学科卒業。大手電機メーカーの国際取引部門の法務担当者として勤務を経て、平成13年にフランテック法律事務所に入所。
特定社会保険労務士/特定非営利活動法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント/一般社団法人日本プライバシー認定機構 認定プライバシーコンサルタント/日本テレワーク協会中小企業市場テレワーク普及・定着推進部会「人材」サブ部会会員/東京商工会議所認定 健康経営エキスパートアドバイザー/主な著書に『これからはじめる在宅勤務制度』(中央経済社)がある。

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