- 人材(採用・育成・定着)
カギは経営トップによる採用活動?中小企業が若年層を採用するためのポイント
2023.02.21
著者:弥報編集部
監修者:大野 達也
「若年層の社員を増やしたいけど、募集をかけても人が来ない……」と頭を悩ませていませんか?
若年層の採用を課題に感じている中小企業は多いです。では、採用がうまくいかない原因は何でしょうか。そして、若年層を採用につなげるポイントはどこにあるのでしょうか。
実は、経営者が採用活動に参加しているか否かは重要なポイントになります。忙しい経営者が自ら採用活動を行うことで「この会社は自分を大切にしてくれそうだ」と若年層が感じるからなのだそうです。
今回は、就職・採用支援のプロフェッショナルとして多くの若年層と企業をマッチングしてきた、株式会社ジェイックの大野 達也さんにお話を伺いました。中小企業が若年層を採用するための方法などを、詳しく解説してもらいます。
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目次
採用をかけても若者が来ない?若年層の採用状況の現状を知る
現在の採用市場において、中小企業の若年層(18~24歳)の獲得は難しい状況なのでしょうか?
中小企業の若年層獲得は、非常に難しい状況となっています。
採用市場は現在、完全な売り手市場です。求職者側が就職・転職先の企業を選び放題の時代に突入をしています。新型コロナウイルス感染症の影響などにより、3年前あたりと比較すると、ここ半年で大きく状況が変化しているのです。
新卒の就職率は軒並み上がっていますが、その多くが大手の新卒採用枠から埋まっていきます。そのため中小企業が新卒を採用するのは難しく、第二新卒と呼ばれる大学を卒業して3年目ぐらいの方々の獲得に移行するケースが増えました。ただし大企業も第二新卒採用を実施していますから、状況はより厳しくなっています。
若年層の採用が難しくなっている要因を教えてください。
少子高齢化で労働人口が減少傾向であること、さらに採用市場が売手市場となった影響で、若年層の絶対数が少なくなっていることが主な要因です。
また、若年層の仕事に対する価値観の変化も理由として考えられます。例えば「自由に働きたい」「テレワークでなければ嫌」「転勤はNG」など、求職者側の要求が高くなっており、選ばれにくい業種が存在することも事実でしょう。
コロナ禍に学生時代を過ごした人は、どのような点が就職先を選ぶポイントとなるのでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で対面での指導を受けにくい学生時代を過ごした学生にとって、直接フィードバックや指導を受ける場があるかどうかが、職場選びのポイントの1つとなっているようです。直接的なかかわりのなかでこそ、自分の成長を実感できると考える学生が増加傾向にあります。こうした学生の意識を念頭に置いた職場環境整備を進めてください。
中小企業は、忙しくバタバタしながら日々を過ごすことが多いとは思うのですが、こうした機会を設けていない企業は、離職率が高くなる傾向にあります。人材育成という意味でも、重要なポイントと考えてください。
業種によって、若年層の採用率に差があるものなのでしょうか?
業種による若年層採用率の差は、存在します。近年、ITエンジニアの枠で未経験者採用を実施する企業が増加傾向にあり、こうした企業は若年層にも人気が高く、応募者が殺到している状況です。
一方で労働環境がハードな業界においては、採用が困難な状況が続いています。最近、弊社にも建築業界の企業から依頼されるケースが増えており、人手不足の深刻な状況がうかがえます。円安の影響で、海外からの労働者が減少していることも影響しているでしょう。
若年層がこない企業にありがちな傾向は?正しい対策で人材の獲得を目指そう
採用をかけても若年層が来ない中小企業の特徴や傾向を教えてください。
求職者がWebで検索した際、そもそも発見すらされない企業は、採用に苦戦する傾向にあります。ホームページを見てもらえても、そのデザインや内容が古い企業は、求職者から敬遠される傾向にあります。ホームページの更新が2014年で停止しているような、メンテナンスが実施されていない企業も、若年層は候補から外しがちです。ぜひ注意してください。
また、ホームページの内容も重要なポイントです。例えば、福利厚生の箇所をクリックしたときに、詳細が記載されていない企業は、求職者からは選ばれにくい傾向にあるでしょう。「年間休日がどの程度あるのか?」などは、求職者が気にするポイントです。必ず明記する必要があると考えてください。ホームページにきちんと記載していれば、求職者に「社員を大切にしている企業である」と認識してもらうことができます。ホームページのように、比較的手軽に企業の姿勢をアピールできるツールはぜひ活用してください。
逆に、中小企業で若手を採用できている企業の特徴や傾向を教えてください。
若年層が利用している媒体を、活用できている企業は強いです。そのような取り組みを行っている企業は、求職者から見ても「今後成長が期待できそう」と判断されるため、応募者の質も高い傾向にあります。
時代に即したツールを活用し、求職者に未来や可能性を見せることによって、ホームページすら見つけてもらえない現状を打開しましょう。SNSを活用するなどして「自由な社風に見える」「自分の裁量で仕事ができそう」だと感じてもらうことが、重要です。
また、経営トップも参加すると「社長自らが採用活動をしている」ことを効果的に訴えることができます。経営トップが時間を割いて採用に顔を出しているということを、企業全体の姿勢の表れと受け取る傾向にあるため、採用には有利に働くのです。忙しいとは思いますが、ぜひ採用活動には積極的に参加するようにしてください。
求人サイトを利用するのも1つの方法かと思いますが、効果はどの程度期待できるのでしょうか。
求人サイトは出稿量に応じて上位表示される設定が一般的となっているため、大手企業がトップページに掲載されるケースが多く、中小企業は思うような効果が得にくい面もあります。ただ、情報を露出する機会を増やすことは、プラスに作用する面もあるでしょう。
若年層に刺さる中小企業のアプローチ方法
若年層の求職者へ効果的にアプローチできる方法を紹介してください。
若い求職者に「この会社に就職したい!」と感じてもらうためには、まず、自社のリクルートページの内容を充実させることが重要です。概要欄も含め、具体的に詳細を記載しましょう。福利厚生は特に具体的に明記します。
しかし、どれだけ内容を充実させても、求職者に見つけてもらえなければ意味がありません。中小企業を専門に扱っているエージェントなどを活用して、効率よくアプローチするのも1つの方法です。求める人物像をエージェントに伝えることで、自社に最適な人材の斡旋を受けることができます。
求人サイトを利用した場合、掲載料として多くの費用を支払っても、必ずしも採用できるとは限りません。その点、エージェントは完全成功報酬型ですから、手間と時間をかけず効率よく自社が求める人材を採用することが可能です。求職者側も自分と相性のよい企業を探している状況ですから、マッチする可能性が高いといえるでしょう。
面接を行う際の注意点があれば、教えてください。
面接は、社長と直属の上司に当たる方が行うのがベストです。中小企業の社長は、多忙な方が多いかもしれません。しかし「会社の成功は、採用が鍵である」と考えている社長は、初回から自分で面接を行うケースが多い傾向にあります。
弊社が実施した「就職するうえで大切にしたいこと調査」によると、1位は「職場の人間関係」でした。面接者の雰囲気や上司に当たる方の人間的な魅力は、就職するかどうかの意思決定につながる重要な要素になり得る、ということです。求職者の志望度を上げるためにも、将来自分の勤める会社の社長と、直属の上司になる可能性がある人と面接するというプロセスは、必ずプラスに作用します。
若年層を採用したい場合、避けるべきポイントがあれば教えてください。
採用条件の部分で、基本給がない完全歩合制のフルコミッションの企業は、敬遠されるケースが多い傾向にありますから、見直しの必要があると考えてください。近年、保険業界などにおいても大きな変化が見られ、固定給を付けるケースが増えてきました。
また飛び込み営業など、昔ながらの足で稼ぐといったやり方をしている企業は、若年層の求職者にとっては抵抗があるようですので、こちらも見直しが必要でしょう。
我々のようなエージェントの視点から見ると、定着率の低い企業は敬遠されやすい傾向にあります。就職・転職系のWebサイトにネガティブな口コミが多数ついている企業も、避けられる可能性が高いでしょう。例えば残業が多い、社内がギスギスしているといった口コミが多い企業はNGといえます。
そのような企業から「何とか若年層を採用したいのですが」と依頼されることはありませんか?
ありますね。そのような場合には、社長や組織の考え方自体を変革しなければ、何も変わらないとお伝えしています。残念ながら、いまだに人を駒のように扱う企業が存在するのも事実です。そうした企業には「まずは社内で教育を行い、風土を変えてから採用してください」と話すことからスタートします。
離職率の高い企業の場合、
- 求職者:採用してもすぐに辞めてしまう
- 企業:多くの費用を支払っているのに無駄になる
- エージェント:マッチングの労力が無駄になる
というように、だれも得をしない状態に陥るケースが多いです。
従業員数が5~15名程度の中小企業で、若年層を採用できた理由があればご紹介ください。
若年層採用の成功の鍵は「社長自らが採用活動を行う姿勢を持つ」ことです。
やはり、経営トップが自ら企業理念やビジョンをしっかり語り、共感してくれた仲間を採用したいという意思を、求職者に示す必要があります。若年層の求職者が持つ価値観に寄り添い、働き方・育て方・活躍のさせ方を理解している企業が成功しますし、長く働ける環境が整っているケースが多いです。
また、学歴ではなく人間性やポテンシャルを見て、採用している中小企業は採用率が高い傾向にあります。過去に囚われず未来をみてくれる企業なら、就職後も大切にしてくれて、成長できそうと思われるケースが多いです。自社の雰囲気を伝える動画やSNSを活用している企業も、採用率は高い印象があります。中小企業は採用しにくいという状況を理解したうえで、すぐにでもできることから取り組むことが大切です。
良いエージェントを探すコツは?中小企業が採用にエージェントを活用する際の流れ
エージェントを初めて利用する場合、どのように手続きを行えばよいのでしょうか?
自社に合いそうなエージェントを探し、商談を実施してください。
一般的なエージェントの活用フローとしては、求める人物像をエージェントがヒアリングして共通認識にした後、データベースから人材をピックアップし、面接を行う流れとなります。
また並行して求職者から見て魅力的に見えるようにするため、企業側に事業や社内のようすをヒアリングしたり、面接がうまくいかない場合は、方法や改善点をアドバイスしたりもします。
弊社の場合は、面接会という場を設けて、事前に5日間の研修を受けた第二新卒の求職者と企業とのマッチングも実施しています。
良いエージェントを探すコツはありますか?
担当営業との相性や、「この営業はウチのためにちゃんと動いてくれるのか」といった視点で判断するのが、コツとなります。
ただ、エージェントによって「大企業専門」「中小企業専門」など、さまざまな種類があります。複数のエージェントと打ち合わせを行い、自社の要望に応えられるエージェントかどうかを慎重に判断することが重要と考えてください。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
大野 達也(株式会社ジェイック 執行役員カレッジ事業部首都圏グループ長)
2009年に入社後、中小企業の若手採用を支援する『就職カレッジ®』の名古屋支店長などを経て、2023年に執行役員カレッジ事業部首都圏グループ長就任。これまで3万社以上(※)の中小企業の採用支援を行ってきたカレッジ事業において、企業と若手人材の双方の声を聴き採用支援に携わる。社内で年間最多の採用支援を達成した社員に贈られるトップセールス賞など、数々の表彰も受賞。(※2009/7~2022/4の当社面接会の延べ参加企業数)
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