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経営者は中堅社員をどう育てるか?育成の重要性や方法、注意点を解説
2022.10.11
著者:弥報編集部
監修者:河野 英太郎
事業の成長の中核を担う中堅社員の育成は大切ですが、その難しさに苦労している中小企業の経営者も多いのではないのでしょうか。
組織における課題解決のプロである、株式会社Eight Arrows 代表取締役の河野 英太郎(こうの えいたろう)さんによると、中堅社員の育成がうまくいかない原因の多くは「任せた仕事につい口出しをしすぎてしまう」ことだと言います。丸投げはNGですが、ある程度は信頼して任せるようにしましょう。
今回は、河野さんに中小企業における中堅社員育成の重要性や育成方法などを伺いました。
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目次
中小企業が中堅社員を育成する重要性
中小企業が中堅社員を育成するべき理由を教えてください。
中堅社員とは明確な定義はないものの、数年経った役職に就いていない社員を指す言葉と捉えられるのが一般的だと思います。しかし、私は新卒以外の2年目以降の社員を中堅社員と定義しています。
この定義であれば中小企業の場合、ほとんどの社員が中堅社員に該当すると思います。つまり、企業活動の根幹をなす社員が中堅社員だと言えるため「彼らの成長=事業の成長」につながります。中堅社員を育成すべき理由は、事業成長に直結する可能性が高いからです。
中小企業における、中堅社員がいない・育たないことによるリスクを教えてください。
「中堅社員が育たない会社は、経営者の能力以上には事業が成長しない」といえると思います。
経営者の能力以上の組織を作るためには中堅社員の協力が不可欠であり、この層の社員が育たないと、組織として大きく成長する可能性が低くなってしまうのです。
私も会社を経営しているので実感するのですが、経営者自身が自分の範囲で見えているものに対していちいち口出しする組織は、経営者の能力以上の組織には成長できません。しかし中堅社員に多くの仕事を任せられるようになれば、経営者には無かった新たな発想が生まれ、新しい顧客を開拓できるなどの可能性が高くなります。
中小企業において、中堅社員が担うべき役割はどのようなものでしょうか?
中堅社員が担うべき役割は、業務の中核メンバーや現場と管理職とのハブ的役割、後進の育成などさまざまですが、最も重要なのは、経営者の分身としての役割だと私は考えています。これは中小企業では特に重要です。
例えば、社員数10名の企業と50名の企業では、社員1人に課せられる役割のインパクトが大きく違います。中小企業においては、中堅社員が経営者と同じ目線を持って業務に携わることが大切と考えてください。
中堅社員には、どのような能力やスキルが求められますか?
中堅社員に求められる能力は、リーダーシップや問題解決力、フォロワーシップ、メンタリング能力などが挙げられますが、最も重要なものはリーダーシップです。
リーダーシップとは、組織の目標を描いて社員をそちらの方向へ導く役割と言えます。ただしリーダーシップを発揮するためには、経営者の意図を理解して同じような発想で動くことができなくてはいけません。
例えば、何か問題が起これば、経営者はすぐに解決に動くと思います。しかし、経営者がたまたま不在だった、病気でいなかったという状況では、そうはいかないでしょう。このときに経営者と同じ方向を見ている中堅社員がいれば、会社の成長を継続できます。会社の進むべき道を理解して自分ごと化し、自走できるスキルを持つ中堅社員が多い組織は、比較的安泰と言えるでしょう。
中小企業における中堅社員の育成方法
中小企業で中堅社員が育ちにくい理由を教えてください。
従業員が5~15名程度の会社であれば、中堅社員が育たないのは多くの場合、創業者や経営者が口出しし過ぎていることが原因です。ある程度は現場の社員に任せて、信頼する必要があります。
身近でもよくあることですが「最終的にはオーナーが決めるんだから、自分が言ってもしょうがない」という考えが蔓延すると、指示がなければ動けない社員ばかりが増えます。その結果、組織のスピード感や新しいものにチャレンジする雰囲気が、どんどん無くなっていくのです。
中堅社員が成長していないと感じたら、口出しし過ぎていないか自分自身を疑うべきです。中には「あいつら全然動いてくれないから……」と言う方もいますが、経営者である自分にも何らかの原因があることを自覚し、改善しなくてはいけません。もちろん忍耐は必要です。
中小企業で中堅社員を育成する方法を教えてください。
社員のスキルや経験、モチベーションなどを鑑みて、少しだけ成長が必要な仕事を任せてみることが大切です。つい口出ししたくなると思いますが、一定の権限委譲をしたうえで基本的にはすべてを任せるスタンスで見守ってみましょう。中には期待値以上の成果を上げてくれる社員もいます。その場合は、さらにレベルの高い仕事を任せてみてください。
中堅社員の育成には、実務経験を積ませることが有効だと言われていますが、どのように経験を積ませるべきでしょうか?
対象となる中堅社員が現場の実務を知っておく必要がある場合は、網羅的に仕事を経験させることを、一定期間継続する必要があります。ただし同じ仕事ばかりやっていると、飽きてしまう可能性があるので、回転は速いほうがよいでしょう。
一方で管理職やリーダーを目指す場合は、実務からなるべく早く離してあげて、マネジメントやリーダーシップを発揮できる環境に置くことが必要です。
経営者が本人のキャリアプランやスキルなどを考慮し、どのように成長させたいかを見極め、最適な業務経験を早めに積ませることが大切でしょう。
中堅社員を育成する際に注意するべきポイント
中小企業で中堅社員を育成する際に、押さえるべきポイントについて教えてください。
仕事を丸投げにしないことです。緊急事態の場合は、経営者自身が仕事を巻き取るなど、リスク管理はしながら任せるスタンスをとること。そうすることで、社員の成長につなげることが可能となります。
任せた結果、失敗するケースもあるので「自分がやったほうが早い」と感じるかもしれませんが、それでは社員の成長にはつながりません。長期的な視点を持って人材育成に取り組むことが大切です。
また中堅社員を育成する際には、本人のキャリア志向や性格に加えて「本来こうありたい」と思っていることを、なるべく早く聞くことが大切です。やりたいと思っていることと任せる仕事の方向性を少しでも近づけることで、仕事を自分ごと化して当事者意識が芽生えるようになります。
「当事者」を読み下すと「事に当たる者」になりますが、その対義語は「傍観者」です。傍観者にしないコツは、やりたいことと今やっていることを一致させることです。本人の志向やキャリアビジョン、キャリアプランなどと、できるだけ合致している仕事を与えることがベストでしょう。社員にモチベーションをもって仕事に取り組んでもらうためにも、不可欠な要素です。
ときには本人の意にそぐわない仕事を与えなくてはいけない場合もあると思いますが、どのような説明をして腹落ちさせたらよいでしょうか?
この場合も、やはり本人のキャリアビジョンを聞いておくことが大切です。「そこに近づくための、こういうシナリオの一環で仕事をお願いしている」と、説明できることが理想でしょう。
どうしても本人の希望に沿わない仕事をやってもらう必要がある場合は「キャリアビジョンに近づけるように、まずはここから始めてほしい」と伝えることが重要です。また、本人にやる気があっても素養が全くない場合には、正直に伝えてあげなくてはいけません。合わない仕事に取り組もうとするケースは意外に多いので、お互いにとって不幸にならないためにも避ける必要があります。
中小企業は社長と社員の距離が近いため、直接中堅社員の育成にかかわることもあると思いますが、この方法は正しいのでしょうか?また、社長が中堅社員の育成にかかわるメリット・デメリットも教えてください。
正しいです。自分がいなくても会社が回るように社員を育成することが、経営トップの仕事だからです。
社員がうまく育てば、経営者は意思決定と責任をとること以外にやることがなくなります。これはあくまでも理想で、実際はさまざまな理由によってそうはいきませんが、中堅社員への権限の委譲を少しずつでも進めることで、経営者が本来やるべき仕事に集中できるようになるメリットがあります。一方、デメリットは育成に時間と労力がかかることでしょう。しかし、これは経営者がとるべきリスクと投資だと考えるべきです。
また、せっかく育てた中堅社員が、ほかの企業に転職してしまうことは会社にとって大変な損失となります。そのため成長した中堅社員にとっても、働き甲斐のある職場にすることが経営者には求められていることを、忘れないでください。
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この記事の著者
弥報編集部
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河野 英太郎(株式会社Eight Arrows代表取締役、株式会社アイデミー取締役COO、グロービス経営大学院客員准教授)
1973年岐阜県生まれ。電通、アクセンチュアを経て日本IBMに16年勤務。金融・IT・製造・通信・教育・複数社の人事制度改革やコミュニケーション改革、研修開発・実施、人材育成、組織行動改革などを推進。東京大学文学部卒業、同水泳部主将。グロービス経営大学院(MBA)修了。
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