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税理士ってどんな相談ができる?会計事務所に直接聞いてみた!

2021.02.05

著者:弥報編集部

監修者:女屋 直之

スモールビジネスにとって税理士さんは非常にありがたい存在。でも、そもそも税理士ってどんなことが頼めるの?税理士と会計士の違いは?会計事務所と税理士事務所、税理士法人って何が違うの?など、意外と疑問は多いもの。

そこで今回は税理士にはどんなことが頼めるのか、会計事務所への依頼の仕方や信頼できる会計事務所の選び方、効率的な相談方法など、300社以上の顧客を持つ会計事務所アイエクシード税理士法人の女屋 直之氏にお話を伺いました。

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会計事務所は「税務申告書の作成」だけじゃなく「経理代行」や「経営相談」もしてくれる

まずは会計事務所が行う主な業務について教えていただけますか?

会計事務所の最も基本的な業務は、税金を計算するために必要な税務申告書の作成です。それに付随して、税務申告に必要な決算書の記帳業務もあります。税金や給与の計算も行いますし、自社内に経理部員がいない会社に対しては経理代行も行います。

そのほか「資金繰りをどうしたらいいのか」「新型コロナウイルス感染症の感染拡大で悪化した財務状況をどうすればいい」といった、経営相談も得意とするところです。

また、「パソコンが故障したから見てほしい」「おすすめの経理・会計ソフトを知りたい」「弥生製品の取り込みの設定がわからない」「インターネットバンキングの入出金データの取り込み方を教えてほしい」など、企業の総務がするような業務でもできる範囲でお引き受けすることもあります。

税務以外にもさまざまな相談を受けているケースが多く、最近では保険に関する相談などです。そのほかにも顧問担当企業の依頼を受け、その顧客に合いそうな顧問先を紹介するビジネスマッチングを実施しているケースもあるようです。

「法律で定められている業務は、特にない」ということですか?

税理士の独占業務は「税務業務」だけです。そのため、税務申告書作成以外の業務については、会計事務所によって異なります。

簡単に言うと、「会計事務所は中小企業経営者や個人事業主の税務申告書の作成を代行するところ」だと考えてください。さらに、中小企業や個人事業主には経理部門がないケースも多いので、経理まで引っくるめて代行する場合も多いと考えておけば良いのではないでしょうか。

税理士と会計士の具体的な違いは、どのようなところにあるのでしょうか。また、「税理士事務所」や「会計事務所」「税理士法人」という名称の違いで、依頼内容が変わってくるのでしょうか?

会計士を正確な呼称で言うと「公認会計士」になりますが、公認会計士でないとできない業務は「法定監査」だけで、税理士でないとできない業務は「税務申告書の作成」「税務代理」「税務相談」となります。他の業務については、特に資格は必要ありません。

また事務所の名称についてですが、実は気にしなくて大丈夫です。個人事業主や中小企業向けには「税理士事務所」、大手企業向けには「会計事務所」と勘違いされる方もいるかもしれませんが、特に棲み分けているというわけでもありません。個人の税理士が運営している事務所は「税理士事務所」、二人以上の税理士が所属して運営している法人の事務所は「税理士法人」と名づける必要がありますが、俗称として「会計事務所」と名づけるのは自由です。そのため、税務相談だけ依頼したい場合に「会計事務所」と名乗っている事務所に頼んでも問題はありません。

会計事務所を見分けるコツは「自分と考えが似ている人かどうか」

信頼できる税理士・会計事務所の見分け方を教えてください。

いくつもの会計事務所を渡り歩く依頼主は、多くありません。一度、会計事務所に依頼したら、多くの場合はそのまま長い付き合いになるというのが一般的です。長く付き合っていくためには「相談しやすいかどうか」という点が重要となりますから、自分とその会計事務所の「相性」を第一に考えると良いでしょう。

「相性」が合わず相談しにくい税理士に依頼していると、いろいろなことを相談しにくいというデメリットが生じます。お互いうまくコミュニケーションが取れないまま付き合いを続けていくと、税務申告書作成などにも影響することが考えられます。ですから会計事務所を選ぶときには、ホームページに記載されている内容だけで判断せず、そこの税理士と一度会って話をしてから判断することをおすすめします。

相性の良い税理士か見抜くコツとしては、自分と考え方が似ている人を選ぶと良いかもしれません。自分が求めていることに的確な回答してくれるかも、チェックポイントといえます。

なるほど!「相性」以外に会計事務所選びの判断材料はありますか?

事務所を訪問したときの事務所員の出迎えの仕方や税理士の仕事ぶりなど、気持ちよく依頼できるかどうか、事務所の「雰囲気」も見ておいたほうが良いでしょう。たいていは税理士が顧客先へ訪問することが多いので、事務所を訪れる機会は少ないかもしれません。

ただ、創業したばかりで自社が手狭というときには自ら会計事務所に出向くことになりますので、そういったときは事務所の「雰囲気」を見るチャンスと考えましょう。

また、会計事務所の規模感も1つの判断材料になります。例えば「万が一、税理士が病気で倒れて、業務がストップしたら困る」と考える企業であれば、複数名以上の税理士が在籍している会計事務所を選ぶ必要があります。

ただし税理士を多く抱えている会計事務所の場合、依頼途中で担当者が変わってしまい、やりにくくなる可能性もあります。このような視点からみると、「1人の税理士に最初から最後まで見てもらいたい」と考える場合には、個人がやっている税理士事務所を選んだほうが良いかもしれません。

そのあたりの見極めは難しいところですが、自分が会計事務所に対して求めているプライオリティに応じて依頼先を決めるといいと思いますよ。

会計事務所が得意としている業種も判断材料になりますか? 

「ご自身の手掛けている業種から、税務相談をいくつも受けているかどうか」という過去実績も、事務所選びのポイントとなります。

「私はこのような仕事をしていて、業務内容はこうこうです」と税理士に話して、その内容をすぐに理解してもらえるかどうか、依頼する前に確認しておいたほうが良いでしょう。具体的に言えば「経営している飲食店の収益がなかなか上がらない」という相談をした時、「原価率をこのくらいに抑えれば、利益が出ますよ」とすぐに答えてくれるかということです。

新たに会計事務所に依頼する際のポイント

実際に依頼する際は、どうしたらいいのでしょうか?

ホームページを見て比較検討し、良さそうだと思った会計事務所に問い合わせてみましょう。また、税理士の紹介会社に依頼して相談内容をヒアリングしてもらい、自社に最適な税理士を紹介してもらう選択肢もあります。

既に税理士に依頼している場合は、知り合いに紹介してもらう形でもいいかもしれません。ただし知り合いの紹介ですと「相性が良くない」と感じても、紹介してもらった手前、簡単に変えずいというデメリットも考えられます。

一つ大事なことは、請求段階になって「この料金はおかしいのでは」とならないよう、会計事務所へ正式依頼する前に「依頼する内容と、その内容に対してどのくらいの費用がかかるのか」といった見積もりを取ることですね。

事前に用意しておいたほうがいいものはありますか?

設立当初の企業や個人事業主の場合は、特に用意するものはありません。ただ、設立してから年月が経っている場合は、決算書や帳簿を用意してもらえるとスムーズに進められます。また、事業内容の詳細が書かれているものがあれば、話も早いでしょう。それは、ホームページ上の事業内容でも、営業用の資料でもかまいません。

帳簿については、すべて手書きのものしかなくても大丈夫です。その帳簿をデータ化し、税務申告書を作成するところまで、会計事務所では対応しています。

もし、過去の決算資料や帳簿などが何もない方や、これまで税務申告をされていない方が依頼に来た場合はどうしますか?

過去の売上状況が何もないと、困ってしまいますね。ただ「今後はちゃんとやります」と1年間きちんと帳簿をつけていけば、今まで無申告であったとしても税務署も酌量してくれます。その場合、過去の税務申告書についても概算で提出すれば問題ない場合もあります。

「今日からきちんと帳簿を付けよう」と決めれば、そこから正常な状態に戻すことは可能です。税務調査が入る前に、自身から先に行動すれば税務署にも認めてもらえますので、会計事務所に相談していただければと思います。

会計事務所から見て「こんな依頼は引き受けられない」という顧客はいらっしゃいますか?

節税なら良いのですが、脱税志向を前面に持ち出してくる方ですね。「どうにかして税金を安くしたい。脱法的でいいから、何か良い方法を教えてほしい」という方とは、お付き合いできません。会計事務所からは脱法的行為を指南することはありませんし、もしそういった脱法行為を推奨してくる事務所があったとしても、後々のことを考えるとおすすめしません。

会計事務所に顧問を依頼する場合、法人と個人でどの程度の費用差がありますか?

一概に「顧問料」といっても「記帳の指導が入るのか」「記帳の入力まで含めるのか」など、業務内容で金額も変わります。会社の規模が大きければ大きいほど、記帳の量も増えますので、金額が上がると考えておけば良いでしょう。

さらに、「でき上がった試算表を基に経営コンサルティングも行う」という内容を含める場合はその費用も入り、費用感が変わってきます。当事務所の場合は、法人であれば記帳も含めた「顧問料」は月3万円程度から設定しています。「顧問料」とは別に「決算申告」だけを会計事務所に依頼した場合には、8万円~10万円程度の設定ですね。

個人事業主の場合、規模的に小さくなりますので、月々の「顧問料」や「決算申告」は法人の八掛け程度の金額になります。

最後に、コロナ禍の中で資金調達の相談も増えていると聞きます。初めての依頼でもこうした相談を受けてもらえるものなのでしょうか?

資金調達の相談は「顧問料」に含んでいるケースが多いようです。当社の場合、顧客から「融資を申し込みたいので金融機関を紹介してほしい」という相談を受けたときには、弊社と提携している銀行を紹介することもあります。

ただ顧問になっていなかったとしても、別途、補助金や助成金、借り入れなどといった資金調達の相談だけ単発で承ることも可能な会計事務所も多くあります。まずは一度、会計事務所へ気軽に相談してみてください。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

女屋 直之(アイエクシード税理士法人 代表社員・税理士)

1972年埼玉県春日部市生まれ。大学卒業後、税理士事務所で勤務したのち、監査法人系の会計事務所へと転職して組織再編や事業再生などのコンサルティング業務などに従事。その後、2010年にアイエクシード税理士法人を設立、代表社員に就任する。仕事をするうえでのモットーは「相手の立場に立って考え最善の方法を見つけること」。
アイエクシード税理士法人 東京都新宿区高田馬場2-8-12 今井ビル西館1F

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