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【税理士監修】どれを選ぶのが正解?法人向けインターネットバンキング

2021.02.04

現在、テレワークやキャッシュレス化が進む中、業務効率化のためにインターネットバンキングの導入を検討している法人も増えていると思います。

しかし、実際にインターネットバンキングを導入する際に「どの銀行のサービスを選ぶべき?」といった懸念が頭によぎるのではないでしょうか。

以前、弥報Onlineで公開したインターネットバンキングの記事は、基本的な概要やメリットを紹介する入門的な内容でした。今回はもう一歩踏み込んで、インターネットバンキングサービスを選ぶポイントやメガバンクとネット専業銀行との違いについて、酒居会計事務所代表の酒居 徹地氏に解説してもらいました。

法人向けインターネットバンキングを選ぶポイント

法人インターネットバンキングを導入する際、必要なものと選ぶポイントについて解説してもらいます。

法人インターネットバンキングはどのようなサービスで、企業側にどのようなメリットがあるかについて簡単に説明してもらえますか?

法人向けのインターネットバンキングは、個人向けのインターネットバンキングと同じく、振込などの各種手続きをインターネット上で行うサービスです。振込などのためにわざわざ銀行に行く必要がなくなり、業務効率化につながります。

またネット専業銀行などでは、振込手数料が安く設定されている場合が多く、経費削減にもつながる点がメリットです。さらに最近では、インターネットバンキング上の銀行明細を自動取得する機能を備えた会計ソフトが販売されており、相互連携させることで経理業務の効率化にもつながります。

法人向けインターネットバンキングの口座開設に必要な書類として、一般的なものを教えてください。

法人向けインターネットバンキングの申請に必要な書類は、銀行により若干異なります。例えば、三菱UFJ銀行の法人口座開設に必要な書類は以下の通りです。

  • 履歴事項全部証明書
  • 印鑑証明書
  • 取引担当者の「公的な本人確認資料」
  • 委任状など(取引担当者が、法人の代表権を持っていない場合)

必要に応じて

  • 会社案内、製品、パンフレット、お取引先さま向けご提案書、見積書、注文書、仕様書など
  • 事業の実施自体に各行政機関などの許認可・届出・登録などが必要な業種の場合は、完了済であることを確認できる資料

なおインターネットバンキングについては、法人口座開設後の申し込みになります。

法人向けインターネットバンキングを選択する際のポイントを教えてください。

法人向けインターネットバンキングを選択する際のポイントは、5つです。

①手数料の安さ

インターネットバンキングの振込手数料は銀行ごとに異なります。ネット専業銀行のほうが基本的に振込手数料は安いです。また、ネット専業銀行以外の銀行では振込手数料以外に月額手数料がかかるプランが多いため、事前に確認しておくべきでしょう。

②CSVファイルなどの振込方法に対応可能か

振込件数が多い場合、1件ずつ振込手続きを行うと多くの時間が必要です。メガバンクなどは、振込データの作成方法の選択肢が比較的多くなっています。

一方、ネット専業銀行の場合は振込件数が一定数を超える場合、CSVファイルなどをアップロードする形式での振込方法が推奨されるのが一般的です。自社の経理担当者が、振込方法に対応可能か確認しておきましょう。

③店舗やATMの有無

ネット専業銀行の場合、店舗やATMは基本的にありません。現金での入出金を行う場合、提携金融機関のATMを利用するか、もしくは振込などの方法で資金を移動させなければならず、その都度手数料がかかります。

現金での入出金を考えている場合は、提携金融機関が利用しやすい場所にあるか確認しておいたほうが良いでしょう。

④使用している会計ソフトとの連携は可能か

会計ソフトとの連携を考えている場合には、使用している会計ソフトと連携可能な金融機関か、さらにAPI連携に対応している金融機関か確認が必要です。

API」とはソフトウェアの入出力のしくみのことで、APIを公開している金融機関と公開していない金融機関があります。API連携に対応していると、金融機関と会計ソフトの間で口座明細の取得などスムーズなデータのやり取りが可能です。

一方、API連携に対応していない場合は、銀行側からのお知らせなどにより口座明細の自動取得がストップする場合があります。その際には再ログインが必要です。

⑤税金などの支払い(ペイジー)に対応しているか

「ペイジー」とは税金や公共料金、各種料金などの支払いをパソコンやスマートフォン、携帯電話、ATMから支払えるサービスです。インターネットバンキングからの税金などの支払いは、ペイジーを介して行うことになります。

銀行によってはペイジーに対応していない場合があることから、インターネットバンキングから税金などの支払いを考えている場合は、ペイジーに対応しているか確認が必要です。

税理士側にとっても、顧問先の企業がインターネットバンキングを導入すると何かメリットはあるのでしょうか?

まず前提として、税理士のクライアントがインターネットバンキングに契約していなければ、基本的に銀行口座と会計ソフトとの連携はできません。会計ソフトと連携することで、税理士側には以下のようなメリットがあります。

税理士が会計帳簿の入力作業まで請け負っているケースでは、会計ソフトと連携することで入力作業の効率化につながる点がメリットです。また、会計帳簿の入力作業を法人が行っているケースでもミスが少なくなり、チェックを行う税理士側の負担が軽減されます。

入力作業や確認作業の負担が軽減されることで、税理士はクライアントが必要としているサービスに多くの時間を割くことが可能となり、他の会計事務所との差別化にもつながります。

インターネットバンキングの口座開設までの期間はどのくらいですか?新規と既存の口座を持っている方がインターネットバンキングの口座を開設する場合、法人口座を新規に開設する場合と、既存の口座を持っている場合、それぞれについて教えてください。

ネット専業銀行の場合と、ネット専業銀行以外の場合で少し異なります。

ネット専業銀行は銀行によって若干差はありますが、オンラインから申し込むと口座開設までの期間は12週間程度と比較的早く開設できます。郵送で申し込む場合は23週間程度かかることもあるようです。

一方、メガバンクや地方銀行などのネット専業銀行以外の銀行の場合、インターネットバンキングを開設する前に法人口座を開設しなければなりません。法人口座の開設には面談が必要な場合も多く、通常13週間程度かかります。

なお、法人口座を開設した後でインターネットバンキングを契約する流れになりますが、ワンタイムパスワードカードが手元に届いてからの利用となるため、利用までにさらに12週間程度必要です。

メガバンクや地方銀行などで既に法人口座を持っている場合も同様に、インターネットバンキングを契約後、ワンタイムパスワードカードが手元に届いてからの利用となりますので12週間程度かかります。

実際に、顧問先がインターネットバンキングを導入する動機には、どのようなものがありますか?

「振込のために銀行に行かなくて良い」という動機の方が多いです。特に普段から個人的にインターネットバンキングを利用されている中小企業の経営者や個人事業主の方は、その傾向が強いと思います。

新型コロナウイルス感染症の感染リスクを考えて、インターネットバンキングを導入された方も多いのでしょうか?

当事務所のブログの中に、法人と個人事業主向けのインターネットバンキングのアフィリエイト記事があるのですが、そのデータを見ると新型コロナウイルス後にインターネットバンキングの口座開設者は増えていました。窓口に出向くのをためらう方や、リモートワークで働かれる方が増えたことが、その要因だと考えられます。

銀行系とネット専業銀行系はどちらを選ぶべきなのか

インターネットバンキングは三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行といったメガバンクが提供するサービスと、楽天銀行やジャパンネット銀行などのネット専業銀行が提供するサービスの大きく2種類に分けられます。中小企業がどちらを選ぶべきなのか解説してもらいました。

インターネットバンキングにはメガバンクや地方銀行などが提供しているものと、ネット専業銀行が提供するものがありますが、何が違うのでしょうか?

両者の主な違いとしては、手数料や振込方法の選択肢、ATM店舗の有無などが挙げられます。

まずネット専業銀行は振込手数料が安く、振込手数料以外の手数料も基本的にかかりません。一方、メガバンクや地方銀行などのインターネットバンキングの場合、プランにもよりますがインターネットバンキング導入時の手数料や月額手数料が発生する場合があります。

次に振り込み方法の選択肢の違いとして、メガバンクなどでは過去の振込データが利用できるなど、振込データの作成方法の選択肢が比較的多い点がメリットです。ネット専業銀行の場合は振込件数が一定数を超えるような場合、CSVファイルなどをアップロードする形式での振込方法が推奨されています。

そして、ネット専業銀行には基本的に店舗やATMはありません。現金での入出金を行う場合には提携金融機関のATMを利用するか、もしくは振込などの方法により資金を移動させなければならず、その際には手数料がかかることもあります。

法人の利用率が多いのはどちらでしょう?

融資を受けるためには、銀行との一定の付き合いが必要になります。そのため、中小企業のインターネットバンキングについては、メガバンクや地方銀行など融資を受けている取引銀行で契約するケースが多い印象です。

法人名義のインターネットバンキングの場合、メガバンク系とネット専業銀行系のどちらを選ぶべきでしょうか?それぞれのメリット・デメリットについて教えてください。

手数料の面だけを考えれば、ネット専業銀行がおすすめです。ただ先ほども述べた通り、ATMや店舗がないため、現金による入出金には提携先ATM利用手数料が必要な点がデメリットといえるでしょう。

一方、メガバンクなどは手数料の面では見劣りしますが、既に融資や輸出入などで銀行との取引があれば、既存のサービスを含めてインターネットバンキングを利用できる点がメリットになります。また、いざという時に店舗があるという安心感も得られるでしょう。

既にメガバンクの法人口座を持っている企業も、新たにインターネットバンキングも開設したほうが良いものでしょうか?

銀行に行く機会が多い方であれば、インターネットバンキングの口座も開設することで、工数の削減になるのでおすすめです。

ただし、メガバンクなどのインターネットバンキングの場合、月額手数料がかかるプランが多くなっています。中小企業であれば、わずか数千円程度でも毎月の維持費をできるだけ抑えたいという会社は多いと思います。そのような場合は、ネット専業銀行のインターネットバンキングを利用するのも1つの方法です。

今回は「インターネットバンキングの選び方」について見てきました。さまざまな手間が省けること、手数料が削減できることなど、インターネットバンキングのメリットは多数あります。

コロナ禍において、今後さらなる需要拡大が見込まれるインターネットバンキング導入は、中小・小規模企業にとって新しい生活様式に即した業務プロセスへの一歩となるのではないでしょうか。

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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

酒居 徹地(酒居会計事務所 代表)

関西大学工学部卒業後、大和証券(営業)、証券会社(運用部門)、会計事務所を経て独立。2004年12月税理士試験合格、2015年12月宅地建物取引士試験合格を果たす。2020年6月に認定革新等支援機関として登録し、現在は節税対策のほか、クラウド会計、不動産投資税務、経理合理化等を得意分野として活躍している。ブログの更新にも力を入れており、「酒居会計マネーブログ」は、2020年6月には月間70万PVを達成した。

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