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コロナ融資の返済に困ったら……リスケジュール・条件変更交渉のコツ【教えて吉田先生!】

2024.03.12

コロナ禍の影響で、業績が悪化した事業者を支援するために実施されたコロナ融資や補助金。多くの企業を救った一方で、業績回復が見込めず返済ができない状況にある事業者は、どのような対策を取ればよいのでしょうか。

原則として、政府は借換を推奨しています。借換が無理な場合や借換をしてもさらに返済が困難になった場合は、最終的にはリスケジュール(条件変更、リスケ)という選択肢があります。

今回は、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に、融資の返済条件の変更や、リスケジュールのポイントについてお話を伺いました。

※本記事は2024年2月19日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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リスケジュール(条件変更)とは何ですか?

リスケジュール(条件変更)とは、銀行取引において、融資の返済条件を変更することを意味します。具体的には毎月の返済額の変更(原則元金棚上げ)や返済期日の変更、利率の変更などが該当します。

借入金の返済を止められれば、返済分の資金を運転資金に使うことができます。結果としてキャッシュフローの改善につながり、事業の再建に効果を発揮するというものです。例えば、毎月100万円の返済を行っている事業者の場合、1年間の返済停止を行うと、100万円×12か月=1,200万円の資金調達と同じ効果があります。

最大のメリットは「キャッシュフロー、資金繰りの安定」ですが、リスケジュール後は原則として「新規借り入れができない」というリスクも伴います。一長一短であり、最終的な対応策だといえるでしょう。

リスケジュールの注意点があれば教えてください。

原則、全取引先の金融機関に対して、同条件によるリスケジュールを依頼する必要があります。これは日本政策金融公庫も同じです。もし、1行取引でしたら、その金融機関1行だけと交渉すればよいのですが、複数行と取引している場合は全行同条件による交渉が必要です。

交渉する順番ですが「メイン行」→「サブメイン行」→「その他」で交渉するようにしてください。まずは、メイン行を説得して、他行に対しては「メインからはリスケの承諾を得ている」というような流れで交渉をしていきます。また、状況によっては、政府系金融機関から最初に了承を得るという進め方もあります。

なお、取引先金融機関が多い場合はバンクミーティングなどを開催することもありますが、その際は、顧問税理士や専門家などに相談してください。ただし、小規模事業者などの場合、バンクミーティングは必要ないケースが多いと思われます。

条件変更は、まず「1年間、元金棚上げ、利息のみ支払い」で依頼するとよいでしょう。この点についての判断は事業者の状況によって異なりますので、できれば専門家と相談のうえ、意思決定されることをお勧めします。万が一、金利の引き上げ要求がされたとしても断固として断るように粘り強く交渉してください。

具体的にはどのような流れ、作業になるのでしょうか?

流れとしては、以下の通りです。

  1. 条件変更依頼書を作成して打診する(まずはメイン行より)
  2. 再生計画書(改善計画書)などを提出する
  3. リスケの実施  

上記の流れを「メイン行」→「他行」に交渉するようにしましょう。

返済ができない場合は、なによりも「返済を停止して資金の流出を止める」ことを意識してください。まずは「条件変更依頼書」という簡単な書類を作成して、金融機関に申し出ます。そして、返済を停止して資金の流出を防ぎます。なお、具体的な再生計画などの詳細資料については、リスケジュール後に提出することも可能とされています(金融庁から要請も出ています)。

条件変更依頼書にはどのような内容を記載するのでしょうか?

専門家によってさまざまな考え方がありますが、基本的には、A4の紙1枚でのビジネス文書形式でかまいませんので、金融機関宛てに以下の内容を簡潔に伝えます。

〈参考例〉

  1. 条件変更期間
    ○年○月返済分から向こう1年間
  2. 現在の返済状況
    ・毎月返済元金:○○円
    ・利息:○○円
  3. 変更後
    ・毎月返済元金:○○円
    ・利息:○○円

実際のところ、このような書類がなくても口頭で依頼をすると金融機関指定の書類が渡される場合もありますが、事業者側としては、事前にこのような文書を作成しておくことをお勧めします。

本当に金融機関はリスケジュールなどに対応してくれるのですか?

定期的に金融庁より「貸付条件の変更等の状況について」という調査結果が公表されています。直近の実績ですと、申し込みから実行に至った割合は98.9%と高い結果となっています。

出典:金融機関における貸付条件の変更等の状況について|金融庁

また政府、金融庁からは定期的に金融機関向けに条件変更などの支援要請が発せられています。過去の要請については、以下の金融庁のホームページで確認することができます。

(参考)
金融機関への要請等(資金繰り支援等関連)|金融庁

具体的には、以下のような主旨の内容が定期的に発せられています。

貸付条件の変更等の実行率は極めて高い水準で推移しているものの、事業者からの返済期間・据置期間延長の事前の相談において、すでに元金返済を開始している事業者や2度目、3度目の条件変更の相談の事業者も含め、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、返済期間・据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既往債務の条件変更や借換え等について、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続すること。

このような要請が定期的にあるものの、あくまで「要請」であって、「強制」ではありません。よって、リスケジュールをするかどうかについての最終判断は金融機関側の判断にゆだねられています。

金融機関から断られたらどうすればよいのでしょうか?

リスケジュールを行う場合や金融機関からリスケジュールを断られた場合は、できる限り専門家に相談をして対応策を講じてください。

まずは顧問税理士に相談しましょう。もし、顧問税理士が対応できない場合は、中小企業活性化協議会に相談することも可能です。現在、事業再生ガイドラインによって、公的補助なども実施されています。

(参考)
経営サポート「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」|中小企業庁

また、できれば事業再生や融資、資金調達の専門家に相談することも検討してください。やはり有償にはなりますが、事業再生の専門家などに相談するのが確実だと思われます。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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