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【インボイス制度】免税事業者から課税事業者になった場合、消費税の計算期間はいつから?計算方法は?適格請求書発行事業者の登録申請について税理士に聞いてみた

2022.03.29

2023年10月1日から始まるインボイス制度。適格請求書発行事業者になるための登録申請は、2021年10月1日~2023年3月31日です。

インボイス制度の影響を受け、免税事業者から課税事業者になると、今までなかった「消費税の申告・納付」が必要になります。では、いつからいつまでが消費税の計算期間なのか。それは「いつ課税事業者になったか」によって異なります。

インボイス制度が及ぼす影響、適格請求書発行事業者の登録申請をしたらいつから課税事業者になるのか、消費税の計算方法などを、未来会計FAMZ 代表の岡崎 純也さんに伺いました。


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岡崎 純也(未来会計FAMZ 代表)

広島大学学校教育学部に入学後大幅に方向転換、税理士資格をとり税理士事務所を開業。税理士だけでは解決できない問題や悩み事をワンストップで解決するためにCFP資格を取得、弁護士や司法書士といった専門家と連携して「LET Group」という士業グループを作り日々奮闘中。大学院の講師や商工会議所の相談員などを務める一方で、FM局のコーナーも担当。スーツより短パンにクロックス、広島で1番話しやすい税理士を目指している。
未来会計FAMZ


【インボイス制度の影響をおさらい】免税事業者のままでもいいの?課税事業者になるか迷ったら税理士に相談を

インボイス制度は、中小企業の経営者にどのように影響するのでしょうか。

まず、インボイス制度はほとんどの事業者に関係する制度です。

インボイス制度が始まると「今まで消費税を納付していなかった人が納付しないといけなくなる」という理解をされている方も多いのですが、影響はそれだけではありません。

まず第一に、適格請求書発行事業者(以下、登録事業者)となることで適格請求書の発行対応が必要になり、手間が増えます。

次に、免税事業者と取引がある課税事業者は、免税事業者との取引を継続するかを検討することになるでしょう。場合によっては、自社の事業を維持するために取引先である免税事業者に課税事業者になってもらうよう、説得することも必要になるかもしれません。

説得としては例えば、建設業の元請会社が下請会社に「下請会社が免税事業者であると、当社では仕入税額控除ができなくなる」ことを理解してもらうため、勉強会を開催することがあげられます。

このようなところまで考えると、インボイス制度の影響はとても大きいものだと思います。

いま免税事業者の方が免税事業者のままでいると、どのようなデメリットがありますか。

仕事を発注してもらえなくなる可能性があるということが、一番のデメリットでしょう。

インボイス制度が始まると、取引先が登録事業者でない場合、仕入税額控除ができなくなります。つまり、課税事業者は免税事業者に仕事を発注しづらくなると考えられるのです。

免税事業者がインボイス制度の登録事業者となった場合のメリットとデメリットについて教えてください。

メリットは、適格請求書の発行が可能になることです。これで、取引先から仕事を発注してもらう段階において、消費税を理由に弾かれることはなくなるでしょう。

デメリットは、今まで消費税の納税義務がなかった事業者に消費税の納税義務が生じる点です。納税義務があるということは、納税金額の計算を行い、申告書を作成する必要があるということです。消費税の計算と申告書の作成を自分で行うと手間がかかりますし、税理士に依頼すると費用がかかります

取引への影響などを考えると、やはり免税事業者から課税事業者になった方がよいのでしょうか。

免税事業者が課税事業者になった方がよいかどうかは、ケースバイケースと言えるでしょう。

例えば美容院などでは、取引先の100%が事業者でない個人であることが多く、その個人の仕入税額控除を考える必要はありません。つまり、そのような美容院は免税事業者のままでも影響がないと言えます。対して、例えば取引先の割合が、仕入税額控除を考える必要のない個人が80%で、仕入税額控除をする事業者が20%であれば、課税事業者になるのは要検討となるでしょう。

実際に「課税事業者になった方がいいでしょうか?」という相談に対し「あまり影響がなさそうなので、免税事業者のままでいいですよ」と伝えることもあれば「影響が大きいので、インボイスの登録申請をして課税事業者になった方がいいですよ」とアドバイスをすることもあります。

インボイス制度の登録申請をした方がよいかどうか迷った場合には、税理士に相談するとよいです。

適格請求書発行事業者になりたい!いつまでに何をすればよい?課税事業者になるのはいつから?

登録事業者の申請について、具体的なスケジュールを教えてください。

適格請求書発行事業者の登録受付は、2021年10月1日に始まっています。登録申請書の提出期限は2023年3月31日で、インボイス制度が開始するのは2023年10月1日です。

公式的には、インボイス制度が開始する2023年10月1日から制度の適用を受けるためには、登録申請書の提出期限である2023年3月31日までに登録申請をする必要があります。

2023年3月31日の提出期限までに「困難な事情」により、登録申請書の提出が間に合わなかった場合には、2023年9月30日までに提出すれば2023年10月1日から登録を受けられるようになっています。

また、困難な事情については、その困難の度合いを問わないとされているので、基本的には認められるのではないかと考えられます。もしも何らかの理由により登録が間に合わなかったとしても、その理由を記載して2023年9月30日までに申請書を提出しましょう。

登録申請自体は簡単で、時間もあまりかかりません。税理士に依頼しないでご自身で確定申告をされている方は、忘れないように所得税の確定申告書の提出と同時に登録申請書の提出を行うのもよいと思います。

なお、2023年10月1日のインボイス制度開始日から登録事業者になるように申請した場合、課税事業者になるのも2023年10月1日からです。

登録申請の他に行わなければならない準備のタイミングを教えてください。

免税事業者は、課税事業者になるかの検討が絶対に必要です。この検討を行うタイミングは早ければ早いほどよいでしょう。

課税事業者になる場合、2023年10月1日から適格請求書が発行できるように準備します。例えば、レジや請求書発行システムなどを買い換える必要があるかもしれません。請求書をエクセルで作成している場合、請求書のフォーマットを変更する必要があります。

インボイスの登録申請について、税理士に依頼する時は、どのタイミングが最適でしょうか。

税理士に依頼するのは、できれば2022年中がよいと思います。(3月は忙しい時期ですので、適格請求書発行事業者の登録申請のみを依頼するのは避けた方がよいかもしれません。)2022年3月15日が期限の確定申告と同時にインボイスの登録申請を依頼するのは問題ないでしょう。

ただし、顧問税理士でない税理士(事業内容をよく把握していない税理士)に、登録事業者になるべきかの判断まで含めて登録申請を依頼するのは、なかなか難しいかもしれません。登録した方がよいかどうかの判断を含めて依頼する場合には、なるべく早めにされることをお勧めします。

インボイス制度が始まるより少し前に課税事業者になっておきたい場合は、どうすればよいのでしょうか。

その場合には、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。適用を受けようとする課税期間の前日までにこの書類を提出します。ただし、インボイス制度が始まる前に課税事業者になると、その期間分の消費税を納付しなければならないので注意してください。

インボイス制度開始後、消費税の計算はどう変わる?新たに課税事業者になったら消費税の計算期間はいつから?

以前から課税事業者だった法人・個人事業主は、インボイス制度が消費税の計算にどう影響するのでしょうか。

課税事業者は、取引先が登録事業者でないと仕入税額控除を行うことができません。ただし、この点に関しては経過措置が設けられています。2023年10月1日~2026年9月30日は80%、2026年10月1日~2029年9月30日は50%の仕入税額控除が認められます。

この経過措置により消費税の申告のしくみが複雑となり、申告書の形式も複雑になるでしょう。また、インボイス制度が始まる前は取引先が免税事業者か課税事業者かを気にかける必要はありませんでした。しかし始まった後は、取引自体が課税取引か非課税取引か不課税取引かという判断だけではなく、取引先を適格登録事業者とそれ以外の事業者に分けて消費税を集計していかなければならず、膨大な手間になると予想されます。

国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで、登録番号から登録事業者かどうかを検索することは可能です。登録番号は適格請求書の記載事項となっています。とはいえ、実際には登録事業者であるかどうかは、取引先に直接聞くことになるのではないでしょうか。

インボイス制度の影響を受け、免税事業者から課税事業者になった場合、いつからいつまでの消費税を計算・申告納付する必要があるのでしょうか。

2023年10月1日から課税事業者となるなら、個人事業主の2023年分の消費税は2023年10月1日~12月31日の3か月分が計算期間になります。2024年3月31日までにその3か月分の消費税の申告と納付をします。2024年以降は所得税と同じく消費税も1月1日~12月31日が計算期間になります。法人は2023年10月1日から期末までが計算期間です。期末の翌日から2か月以内に申告・納付を行います。

2023年10月1日より後に課税事業者になる際は、通常どおり消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。このケースでは翌期から消費税が発生します。

2023年9月30日までに登録申請すれば、消費税課税事業者選択届出書を提出しなくても2023年10月1日から課税事業者になることができるのですが、逆に、この登録期間中に消費税課税事業者選択届出書を出すと、翌期から課税事業者となり消費税が発生します。

インボイス制度の適用を受けるために課税事業者になりたいが、できるだけ消費税の免税期間を長くしたいという方は、登録申請期間中に消費税課税事業者選択届出書を提出しないよう、注意してください。

新たに課税事業者になったら原則課税?簡易課税?消費税の計算に関する疑問を税理士に聞く

消費税の課税方法には原則課税と簡易課税がありますが、新たに課税事業者になったらどちらで計算すればよいのでしょうか。

原則課税と簡易課税はどちらの選択をするかによって税額が変わるので、有利な税額になる方を選択するとよいです。これは実際に計算して、どちらが有利かを判断するしかありません。

原則課税は、預かった消費税と支払った消費税の差額を納付する方法なので、例えば1,100円が預かった消費税で600円が支払った消費税であれば、差額の500円を納付することになります。取引量が多くなればなるほど、計算量も多くなり手間がかかります。

簡易課税は、小規模な事業者(基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者)が「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで、適用できます。業種ごとに仕入税額控除ができる割合が決まっていて、売上金額にその割合をかけて計算します。支払い分の消費税を計算しなくてもよいという点で簡易的な方法といえます。

ただし、仕入税額控除できる割合が業種ごとに区分されているといっても1つの会社について1つの業種と決まっているのではなく、1つの会社のこの取引は1の区分の業種、別の取引は3の区分の業種というように、取引ごとに業種が決まります。

例えば、中古車販売の会社があるとすると、車を購入して売ることになるわけですが、売る相手先が業者なのか個人なのかで区分が違います。さらに、自動車保険の代理店をやっていて手数料収入があるとなると、売る相手先により手数料収入も区分する必要があります。

このように取引の相手にさまざまな区分の業種があると、原則課税より簡易課税を選択する方が複雑になる可能性もあります。

通常は、消費税簡易課税制度選択届出書は、課税期間の始まる前日までに提出する必要があり、消費税の申告時に提出すると原則課税のままになってしまいますが、インボイス制度の開始時には特例があります。免税事業者が登録期間内に登録して課税事業者となる場合は、消費税簡易課税制度選択届出書をその課税期間中、つまり2023年12月31日までに提出すれば、簡易課税制度を適用することができます。

初めて消費税の計算を行うのは大変そうですが、消費税計算のポイントや消費税申告の際の注意点を教えてください。

まず、会計ソフトを利用していない場合には、計算やチェックに非常に手間がかかりますので、おすすめできません。

そのうえで会計ソフトの入力時の注意点ですが、消費税の計算では仕訳の入力時に、消費税の対象かどうかを自分で判断しなければなりません。例えば接待交際費は、店で飲食をすると消費税の対象になりますが、お祝い金を現金で払うと消費税の対象にはなりません。消費税の対象となるかどうかの判断は、会計ソフトの勘定科目にひも付けられた自動入力だけでは完結しないので、自分で必ず確認しましょう

次に、消費税の納税についての注意点です。免税事業者が課税事業者になると、新たに消費税の納税義務が生じ、今までは必要なかった納税資金が必要になります。このことを念頭におかないと、いざ納税するときにお金が足りなくて困る、ということになりかねません。

例えば55万円の売上があったとして、今までは55万円の全額を収入として考えることができたわけですが、課税事業者になると5万円は預かった消費税のため、仮に仕入税額控除できる割合が50%だとすると、2万5,000円については納税資金と考える必要があります。この2万5,000円は、納税資金用の口座を作り預けるなどの方法で、消費税の納税に備えるとよいでしょう。

消費税の納税が遅れると、延滞税などのペナルティがかかります。どうしても遅れそうな場合には、事前に税理士に相談していただければ、税務署との交渉の場に付き添うことが可能です。

適格請求書発行事業者の登録を取り消す方法は?税理士に消費税申告だけ依頼可能?

一度登録事業者になったものの、やはり消費税の納税が大変なので登録を取り消したいと思ったら、どうすればよいのでしょうか。

適格請求書発行事業者の登録を取り消す際は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を税務署に提出することで、提出した日の翌課税期間から、登録事業者でなくなります。課税事業者から免税事業者になるためには「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出も必要です。

ただ、課税事業者のまま単に適格請求書の発行をしたくないだけであれば、その発行を行わなければよいだけなので、あえて登録を取り消す必要はないかと考えられますが、あまり想定されないパターンですね。

所得税の確定申告は自力で行い、消費税の申告だけ税理士に依頼することは可能でしょうか。

クラウドで会計ソフトを共有していたり、同じ会計ソフトを使っていてデータを見られる場合は、消費税コードのチェックや訂正などをすることはできます。しかし、所得税の計算は、消費税の計算があった上でのものです。既に所得税の計算が終わった後で消費税のチェックと訂正をすることはできず、消費税の集計だけを行うことは厳しいでしょう

インボイス制度を含め消費税についてお困りの際は、税理士に相談するのが一番確実です。消費税の計算や申告を依頼される場合には、所得税の計算とは別物とは考えず、合わせて依頼されたほうがいいかと思います。


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