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中途入社者への「評価」は既存社員の納得感を重視すべし【小さくても最強の会社をつくる 人材戦略講座】

中小企業で、大手企業並みのしっかりした人事評価制度が整備されているところは少ないものです。給与や賞与の額がワンマン社長の鶴の一声で決まることも多く、中途入社者を厚遇しすぎて既存の社員から不平不満が生まれ、業績を悪くする例も見られます。今回は活気ある組織づくりに不可欠な「評価」について考えていきます。

執筆者:田中 和彦

株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社し、4つの情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

活気ある組織をつくるために、人事評価制度のフェアな運用を

以前「入社の条件交渉はへりくだらず、対等(50:50)の関係で!」という記事で、中途入社者に対して「100日のハネムーン期間は温かい目でサポートを」という話をしました。

それなりの採用経費をかけ、労力も使ってせっかく迎え入れた中途入社者が、既存社員との衝突によって短期間であっさり辞めてしまう、という事態はなんとしても避けなければなりません。

中小企業の経営者は中途入社者への評価を急ぎがちですが、過剰な特別扱いをせず、既存社員(特にキーマン)とうまく交流させ、自然な形で現場に溶け込むことができるような配慮が不可欠です。

特に中途入社者への評価は既存社員のモチベーションに大きな影響を与えます。さほど目ぼしい成果が出ていない状態にもかかわらず、高い給与や肩書を与えてしまうと「なぜあの人だけ特別扱いなの?自分たちはこんなに頑張っているのに、やっていられない!」といった不満が必ず生まれます。

中小企業では社長の好みや印象、あるいは一時的な営業の売上の数字を見て、場当たり的に「彼にはもっと高い給料をあげよう」とか「彼女にこの賞与額は高すぎる」などという根拠に乏しい口出しがあります。しかし人事評価制度をないがしろにしていては、社員の納得感を得ることはできません。

会社の評価(評価制度)は社員のやる気を左右し、その結果は良くも悪くも会社の業績に反映していきます。活気ある組織にできるかどうかは、フェアな人事評価制度を運用できるかにかかっているのです。

評価の目的は「処遇の決定」と「能力開発」の2

いきなりストレートな質問ですが、なぜ人事評価制度はあるのでしょうか? 世の中には「できれば人の評価はしたくない」という管理職の方は多いものです。これは正直な本音かもしれません。では、評価しないと社員はどうなるのでしょうか?

評価がなければ、全社員が同額の給与(または昇給額)や賞与になります。頑張りに関係なく給与や賞与が同じであれば、社員は「頑張っても報われないのなら、やる気も出ないし頑張らなくてもいいや」という気持ちになるでしょう。目標も働く姿勢も低いレベルに下げてしまうため、企業の成長など望むべくもありません。

評価を行う目的は2つあります。

①処遇の決定……給与や賞与の額、昇進・昇格などの判断材料にするため。

②能力開発……社員の強みや弱み(課題)を明確にし、本人が何に注力すべきか、上司はどうかかわればいいのかなど、育成方針を見定めるため。

一般に評価というと①「処遇の決定」のためと思いがちですが、実は目標や働く姿勢を高いレベルに上げることにつながる、②「能力開発」が重要なのです。

さて、ここで話は変わりますが「完璧な評価」や「完璧な評価制度」はあるのでしょうか? 身も蓋もないことを言えば、神さまでない以上、完璧な評価は存在しません。それほど人が人を評価することは難しいのです。だからこそ、納得感のある評価にするために最大限の努力が求められるのです。

評価とは、公式や方程式を使えば自動的に答えが出るものではありません。これを納得性の高いものにするには、評価する側の「評価のすり合わせ」が重要です。「本当にこの評価でいいのか?」を複数の評価者の目で確認し、より納得性の高い答えを導き出します。社長の独断ではなく、人事の責任者や担当役員とも話し合い、より広い観点から判断します。

「評価には絶対的な正解」はありません。だからこそ、評価する側には覚悟と責任が求められ、評価者たちの目線を合わせることが重要なのです。

会社の状況や周りの環境によって評価のポイントは変わる

評価基準は会社の状況や周りの環境、評価するタイミングによって変化します。昔、私が在籍していた編集部でもそうでした。以下の問題を、みなさんも考えてみてください。

【問題】編集部にAさんとBさんという2人の編集者がいました。あなたはどちらの編集者を評価しますか?

  • Aさん……ヒット企画は少ないが、コツコツとミスなく安定した記事を作り、常に一定の読者から支持を得ている。
  • Bさん……記事の完成度に波はあるものの、チャレンジ精神旺盛で、新しい企画で年に数回は爆発的なヒット記事を作る。

いかがでしょうか?Aさんが「安定した打率の中距離ヒッター」だとすれば、Bさんは「三振かホームランの長距離バッター」と言えるかもしれません。悩ましい問題ですがおそらくお気付きのように、ここに絶対的な正解はありません。

例えば、編集部が安定期(部数が安定的に伸びている時期など)にあるときには、現状維持を優先し、リスクを極力取らないようにして、会社や部署の方針にふさわしい人を評価します。つまり、Aさんをより高く評価します。

一方、変革期(部数が低迷し、このままではジリ貧になってしまう危機的な時期など)には、現状を変えるうえで新しいことが必要になるので、多少のリスクを覚悟してもチャレンジする人を評価します。つまり、Bさんをより高く評価することになります。

このように、会社がどんな状況にあるのか、何を課題としているのか、会社を取り巻く環境はどうなのか、といった要素によって評価基準は変わります。

さらに中小企業の場合、ワンマン社長の方針が朝令暮改で度々変化します。これは必ずしも悪いことではなく、世の中の状況の変化に臨機応変に対応しているとも言えます。

大事なことは、そこで会社の方針や評価基準をしっかりと示すことです。「今期は○○な状況なので、●●を重視して働いてもらいます」と、社長がきちんと言葉で伝え、全社員の方向性を1つにすることが評価に対する不満を極力抑えることにつながります。

働く側からしても、評価基準があいまいなまま働き、後から「評価ポイントは●●でした」と言われても納得できませんよね。

評価の原則は、「印象ではなく、事実」と「保有ではなく、発揮」

評価には「印象ではなく、事実」と「保有ではなく、発揮」という2つの原理原則があります。

まず「印象ではなく、事実」についてご説明します。とかく人は人を「印象」で評価しがちです。例えば「日焼けしていて体格もよく、体育会系の運動部に入っていた」社員を見て「きっと体力もありフットワークが軽く、営業でも活躍しているに違いない」と思うのは、あくまでも憶測にすぎません。

本当に活躍しているかどうかは、目標に対する売上の数字や顧客からの評判、社内の声など「事実」を元に判断するものです。

次に「保有ではなく、発揮」についてですが、中小企業の社長は「保有」さえしていれば、それをまず評価してしまう傾向があります。具体例をあげると「大手企業での経験があるのだから、当然うちの会社でも成果を上げてくれるはず」とか「○○の資格を持っているのだから、資格のない社員よりは○○の分野に詳しいに決まっている。仕事もできるに違いない」といった具合です。心当たりのある方が多いのではないでしょうか?

しかし、どんな経験も知識もスキルも資格も、ただ「保有」しているだけでは評価に値しません。それを「発揮」してこそ初めて評価できるのです。ここを勘違いしないことが、既存社員からの納得感を得るためには大事です。

中途入社者が持てる力を「発揮」し、目に見える成果を出したなら、既存社員は誰も不満を持ちません。むしろ一目置かれ、頼られる存在になるでしょう。しかし「保有」しているだけで高く評価してしまうと、既存社員は「お手並み拝見」という雰囲気になり、中途入社者は何かと厳しい目にさらされ、成果が出なければ「それ見たことか」と周囲から突き放されてしまいます。

新戦力となる中途入社者と既存社員との融合を図り、共に力を発揮してもらうには、経営者が既存社員の納得感に配慮しつつ「評価」について十分に理解し、人事評価制度をきちんと運用することが肝要なのです。

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田中 和彦(たなか かずひこ)/ 人材コンサルタント
著者:田中 和彦(たなか かずひこ)/ 人材コンサルタント
株式会社プラネットファイブ代表取締役。人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社し、4つの情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

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