- 人材(採用・育成・定着)
採用難時代を乗り切る!中小企業の採用力アップ術
2025.02.13

採用の売手市場化が進む中、人材獲得はますます難しくなっています。特に母集団形成が難しい中小企業が採用を成功させるためには「独自の採用ターゲット」を設定することがポイントです。
今回は、株式会社ジェイックの佐藤裕康さんに「独自の採用ターゲット」の要件を見いだす具体的な方法や、応募者の志望度を高める情報発信のポイントなどを紹介いただきました。ぜひ参考にしてみてください。
弥報Onlineでは他にも「採用」をテーマにした記事を発信しています。
採用の記事を読む
目次
採用成功のカギを握る「2つの準備」
中小企業が採用活動を成功させるためには「2つの準備」がカギを握ります。1つ目は「独自の採用ターゲット設定」、2つ目は「応募者の志望度を高める情報発信」です。
自社独自の採用ターゲット設定で、競合他社とのバッティングを避ける
母集団形成力の弱い中小企業の場合、売手市場化が進む中で採用ターゲットを「一般的に優秀とされる人材」に設定すると、競合企業との人材争奪戦に巻き込まれ、採用活動が苦戦しがちです。
「どれぐらいの大学レベル」「素直かつ元気で明るい」「○○経験があればなおよい」など、どの会社でも評価されそうなありがちな採用ターゲットには注意が必要です。人材を採用するには、自社で定着・成長する「独自の採用ターゲット」を設定することが重要です。
応募者の志望度を高める情報発信
採用活動に成功している中小企業は、採用活動を「企業が応募者を見極める場」ではなく「応募者の志望度を高める場」として捉え、応募者に自社の魅力を伝える仕掛けを設計しています。これは見極めを甘くする、採用基準を緩めるということではありません。むしろ自社が「選ばれる」立場であることを認識して、応募者の志望度を高めるプロセスをきちんと設計することが大切です。
面接の場で魅力を伝えることはもちろん、選考に入る前の段階から「応募する理由を作る」「自社への親近感を生む」情報を積極的に発信しておくことが重要です。また、候補者が気にしそうなネガティブ要素についても整理し、それを企業側から適切に発信する、あるいは質問があった際の的確な対応を準備しておくことも、採用活動の成功につながります。

「独自の採用ターゲット」を設定する2つのステップ
「独自の採用ターゲット」の要件を見いだす具体的な方法を紹介します。
ステップ1:経営戦略・業務特性から採用要件を言語化する
採用の目的は、将来の会社の成長を支える存在を確保することです。そのため、まず応募者に求める採用要件を、自社の経営戦略や事業特性から逆算して言語化してみましょう。
例えば、小売業で店舗拡大を目指している場合、採用の目的は店長候補の確保となるでしょう。この場合、新卒採用であれば学生時代に組織での活動経験がある人材、中途採用であればマネジメント経験者などが採用要件としてあがるかもしれません。
さらに、パートやアルバイトを効果的にマネジメントできる人当たりの良さや、リーダーシップなども必要となる可能性もあります。このように、経営戦略や業務の実態から必要なスキルや人物像を具体化することが、採用を成功させる第一歩となります。
ステップ2:必要な採用要件の“本質”を見いだし絞り込む
ステップ1の段階で言語化した採用要件は、おそらく「一般的」なものであり、また、「理想像」に近いものになっているでしょう。中小企業が採用を成功させるためには、ここから採用要件の“本質”を見いだし絞り込む必要があります。ポイントは、言語化した採用要件が業務のどのような場面でどのように発揮されるのか、行動や姿勢を具体的に掘り下げて考えてみることです。
例えば、ある人材業界の会社では、営業職の採用において「オンラインゲームの経験者」をターゲットにする取り組みを実施しています。採用活動を始めた当初は「同業もしくは無形商材の営業経験者」を探していましたが、会社規模も小さい中で採用活動に苦戦していました。そこで、採用ターゲットの変更を考えて、たどり着いたのがオンラインゲームの経験者です。
一般的に人材ビジネスの営業職というと、人当たりの良いタイプをイメージするかもしれません。ただ、この会社はITエンジニアのマッチングを行っており、対面・オンラインでの商談や打ち合わせはほとんどありません。営業活動の大半はメールとSNS・ビジネスチャットなどで実施されており、一般的な「対人コミュニケーション力」や「営業力」よりも「ゲームをプレイする感覚で知識習得しながらプロセスを積み重ねる」ことが成果につながると分析しました。最近のオンラインゲームはテキストや音声で知らない相手とコミュニケーションしたり、時にオフ会をしたりすることもあります。そうした点が自社の業務特性に合っていると考えて採用ターゲットを変更し、結果として若手営業職の採用に成功しています。
また、ある個人向けの店舗運営をしている会社では、当初は店長・店舗経験者を探していましたが、なかなかうまくいきませんでした。採用が難航する中で、業務内容を見直した結果、自社店舗では、パートやアルバイトのマネジメントはほとんど必要なく、ホスピタリティもそれほど求められていないことに気付きました。そこで「目を見て話せる最低限のコミュニケーションスキル」と「1人で黙々と仕事できる真面目さ」を採用要件とし、未経験者の採用に切り替えたところ、若手採用に成功したといいます。
「採用基準を緩める」と考えるのではなく「自社で定着・成長するための本質的な要件は何か?」を考え抜き、他社と競合する一般的な採用要件をなくすことができると、採用成功に一気に近づきます。
「要件整理→ターゲット属性の拡大」が、採用成功の突破口に
売手市場化が進む中、採用に成功している中小企業では先に紹介した要件整理をふまえ「その設定は本当に採用後のパフォーマンスに必要な要件か」という視点でターゲット属性の見直しを進めています。
例えば、先ほどご紹介した個人向け店舗運営を行う企業の事例では、これまで「経験者」を条件として採用活動を行っていましたが、「未経験でも研修で育成できる」と判断し、要件を緩和した結果、採用活動が成功に結びつきました。また別の中小企業では「業務内容的に学歴は必須ではない」との結論にいたり、大卒者を条件とした新卒採用をやめ、既卒者や第二新卒、大学中退者も採用対象に含めることで、多様な人材プールへのアクセスを可能にしました。
特に若手採用を目指す企業では、新卒学生に限らず、幅広い層をターゲットにすることで応募者数を大幅に増やし、その中から自社に適した人材を採用できる可能性が広がります。自社独自の採用ターゲットを見極め、ターゲット属性も柔軟に変更することが、売手市場での採用成功につながるでしょう。
応募者の志望度を高めるために、情報発信の「量」を増やす

前述した通り、売手市場での採用活動は応募者から「選ばれる場」となっています。中小企業が母集団形成を成功させるためには、情報発信の「量」と「質」を増やすことが大切です。いくつか効果的な方法を紹介します。
採用サイト・採用ページを充実させる
企業サイトの採用ページを充実させることは、採用活動における最優先事項です。当社の調査では、26卒学生の68.2%が企業情報を得る際に「企業ホームページ」を活用しているとう結果となりました。応募者がナビサイトやダイレクトリクルーティングなどで求人を見つけた際、必ずと言っていいほど企業の採用ページを確認します。特に社名を知られていない中小企業で、企業サイトや採用ページが整っていないと応募者に不安感を与えます。多くの選択肢がある中では、応募者は「迷ったら応募しない」選択を取ります。
ただし、採用ページの作成や更新にはコストと手間もかかるため、ポイントを押さえて作成するとよいでしょう。成功している中小企業の採用ページに共通するポイントとして、「採用メッセージ」と「社員インタビュー」の掲載があげられます。「なぜ採用活動を行っていて、新しい働く仲間とどのような未来を作り上げるのか」など、採用の背景や新たな仲間と描く未来を伝えることで、応募者に共感を与えられます。
また、社員インタビューでは、仕事内容やキャリアパス、社風を具体的に掲載し、応募者が「働くイメージ」を持ちやすくすることが重要です。採用ページに掲載される情報は、応募者の「応募するかを決める判断材料」「面接前後に見返す情報」になります。
採用目的に特化した「経営者SNS」を活用する
中小企業の場合、XなどのSNSを活用することも効果的です。「経営者と近い距離で働ける」「経営者の価値観や考え方が社風に色濃く反映される」といった中小企業の特性、またSNSの特徴を考えると、経営者や経営幹部が個人のアカウントを作成して情報発信することが効果的です。SNSでは、採用情報に限らず、経営者個人のプライベートや会社や仕事のトピックなどを発信して、更新頻度を高めることが大切です。
企業サイト内の採用ページで「更新頻度は低いが質の高い情報」を発信し、SNSで「情報の発信頻度」と「温度感のある情報」を補完する感覚が適切です。経営者の言葉が直接届くことで、企業の信頼性や透明性も伝わります。SNSを活用する場合は、企業サイトや採用ページ、求人票等にSNSへのリンクやQRコードを貼り、応募者がアクセスしやすい導線を作りましょう。
社員からの情報発信を増やし、リファラル採用に結びつける
社員からの情報発信を増やすことは、リファラル採用を促進するために効果的です。リファラル採用とは、既存の社員が自分の知人や友人を会社に紹介し、その紹介された人材を採用する手法を指します。社員が自社の魅力を発信することで信頼性が増し、応募者に企業の文化や働きやすさが伝わりやすくなります。
社員による採用目的のSNS発信を奨励し、知人や友人に自社の採用状況について積極的に伝えてもらうことも有効です。社員が会社に紹介した候補者が採用された場合のインセンティブを設けると、紹介が増えるきっかけになります。また、社員がリファラル採用のことを思い出してくれるように、定期的に社内で求人情報を発信することも重要です。
ネガティブ情報を整理し、選考に備える
現在の採用活動では、応募者が抱く「ネガティブな印象」を解消するための事前準備も不可欠です。中小企業においては、労働条件についての不安を抱えている応募者が多いことも考えられます。特に待遇や働き方、労働時間などについては、応募者に不安を与えないように情報を整理して、きちんと提示しましょう。
また、「在宅勤務制度がない」という点であれば、将来的な柔軟な働き方の導入計画や、対面での業務を通じて得られる迅速なフィードバックなど、応募者にとってのメリットも合わせて伝えることも大切です。ネガティブな情報でも、改善策やメリットを伝えることで応募者の不安を解消し、ポジティブな印象を与えられます。
また、オープンワークなどの口コミサイトに自社の口コミが投稿されている場合は、必ずチェックしておきましょう。応募者は口コミサイトも必ずチェックする情報源となっているため、自社に関してどのような情報が書かれているのか、ネガティブなコメントはどのような内容かを把握しましょう。「応募者はネガティブコメントを見る」という前提で事前に対策を講じておけば安心です。選考過程で自社からそれに言及するかどうか、質問された場合にどう回答するかなどを整理しておくことなどが重要です。
採用難が続いている今だからこそ自社の採用要件の本質を見極め、応募者確保を成功させることが重要です。また中小企業は知名度がなく、応募者が調べられる情報も限られるからこそ、自社の志望度を高めてもらえるような情報発信を、できるところから始めていきましょう。ご紹介した採用ターゲットの設定方法や情報発信のポイントを参考に、ぜひ採用活動を成功させてください。
弥報Onlineでは他にも「採用」をテーマにした記事を発信しています。
採用の記事を読む
この記事の著者
弥報編集部
弥生ユーザーを応援する「いちばん身近なビジネス情報メディア」
この記事の監修者
佐藤 裕康(FutureFinder®メディア事業部長)
ジェイック入社後、中途採用支援からキャリアをスタート。その後は、マーケティング部門の立ち上げ、組織マネジメントを経て、2016年にダイレクトリクルーティングと求人メディアの2つの特徴を併せ持つ新卒採用メディア「Future Finder®」の立ち上げを担当。2020年に同事業部の事業部長に就任。
「やよいの青色申告 オンライン」でおトクに確定申告!
資金調達ナビ
弥報Onlineでは「読者の声」を募集しています!
弥報Online編集部では、皆さまにより役立つ情報をお届けしたいという想いから「読者の声」を募集しております。
「こんな記事が読みたい!」「もっと役立つ情報がほしい!」など、ご意見・ご感想をお聞かせください。
皆さまからのご意見・ご感想は今後、弥報Onlineの改善や記事作りの参考にさせていただきますので、ご協力をよろしくお願いいたします。
弥生のYouTubeで会計や経営、起業が学べる!
関連記事
事業支援サービス
弥生が提供する「経営の困った」を解決するサービスです。