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ChatGPTはリソースの少ない中小企業でこそ効果が期待できる!活用方法や課題、今後の展望は?

2024.01.11

著者:弥報編集部

監修者:森 一弥

近年、AIを業務に活用する企業が増えています。特に最近では、ChatGPTをはじめとした生成AIのサービスが注目されています。導入のハードルが下がり、中小企業においても「業務に ChatGPT を利用したい」と思う反面、活用方法や課題がわからず躊躇しているケースも多いでしょう。

そこで今回は、ソフトウェアやサービスを開発・販売をしているアステリア株式会社で、高度な技術をお客さまに中立的な立場で解説する「エバンジェリスト」として活躍している森 一弥さんに、ChatGPTのサービス概要や中小企業における活用方法などについてお話を伺いました。


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今さら聞けない?ChatGPTとは何なのか

ChatGPTとは、どのようなサービスなのでしょうか?

ChatGPTとは、パソコンのブラウザやスマートフォンのアプリで利用できるAIチャットサービスです。AIによる会話ツールは数年前から注目を集めていますが、2022年の11月にChatGPTが公開されてからは急速に認知されるようになりました。

ChatGPTは、だれにでもわかりやすく使える仕様となっています。仕組みは下記の画面のように、テキストを入力するだけでAIからの回答が返ってくるようになっており、パソコンやスマートフォンを使い慣れている方なら、だれでも手軽に利用できます。

また、画面を開くと英語で表示されるため「英語での入力が必須なのでは?」と思うかもしれませんが、日本語で入力すれば日本語で返答されます。

ChatGPTの主な特徴を教えてください。

ChatGPTの特徴は、以下の2点です。

  • 自然言語処理のAIチャット
    ChatGPTでは人間が日常的に使っている言語を分析し、データとして活用する自然言語処理を用いています。そのため、人間のように自然な会話をすることが可能です。
  • だれでも無料で使える
    2023年12月現在、だれでもブラウザやアプリで簡単に使うことができます。「SNSなどで利用事例を見た」という方が多いのも、無料で手軽に試せるのが理由といえるでしょう。
ChatGPTと、他のAIチャット(Bing、Bardなど)との違いを教えてください。

各サービスの特徴の違いを説明します。

  • ChatGPT
    他のサービスとの最も大きな違いは、有料版では拡張機能(コンピューター上のソフトウェアに機能を追加できるプログラム)が使えることです。

    複数のデータの情報を基にして質問に回答したり、話し言葉などの自然言語の指示からコードを解釈し実行、データ処理できる機能(コードインタープリター)が搭載されています。私たちが直接的に専門用語を使ったコードを書かなくても、「こうしたい」と伝えるだけで、その対応が可能となるのです。

    また2023年11月から追加された「GPTs」(ジーピーティーズ)では、プログラムを行わずに自分専用のチャット環境を作成、公開することもできるようになりました。
  • Bing
    インターネットの情報からも検索できる点が特徴の1つです。回答をするにあたり参照したWebサイトのURLも表示されます。画像検索や音声検索ができることも特徴です。回答された情報が必ずしも正しいとは限らないAIチャットサービスですが、参照元のURLが記載されることで、その情報の成否を検証することができます。

    無料版ChatGPTの場合、2023年12月現在では学習しているデータは2023年4月までのものとなっているため、最新情報は参照できません。しかしBingであれば、インターネット検索をしたうえで回答してくれるため、直近の情報を活用した回答を得ることが可能です。例えば「今日の天気を教えてください」といった質問をすると、ChatGPTは「わかりません」という回答になりますが、Bingは回答してくれます。
  • Bard
    Google LLC(グーグル)が開発・提供しているサービスで、Bingと同様にインターネット検索が可能となっています。また、画像検索と音声検索も可能です。内部のエンジンが数回刷新されており、その度に精度が上がっていることが話題になっています。

文書の作成が楽になる?中小企業におけるChatGPTの活用方法

中小企業における導入の現状を教えてください。

2023年の2月にアドビ株式会社が発表したデータによると、ChatGPTをはじめとする生成AIを積極的に活用したいと答えた日本企業は、全体の31%だったそうです。

日本企業は保守的なところが多く、まだ警戒している印象があります。リスクを過剰に考えてしまうのが、日本の企業の特徴といえるでしょう。

一方、ITコンサルタント事業などを行うアルサーガパートナーズ株式会社の調査によると、中小企業の1/3程度がChatGPTを活用した経験があると回答しています。ちなみに、大企業は半分以上が「活用経験がある」と回答しているため、中小企業の利用率は低いという結果となりました。

中小企業において、業務でどのようにChatGPTを活用できるのでしょうか。

例えば、以下の5つのようなものがあげられます。

  1. 技術書や論文の要約、文書の翻訳
    言語の壁を越えて文章の翻訳や要約も行うことができます。コミュニケーションを円滑にし、情報の効率的な共有が可能です。ブログ記事や広告のキャッチコピーなど、文章の生成をサポートしてくれます。クリエイティブなタスクにおいても活用できるでしょう。
  2. 記事、契約書・帳票などのひな形作成
    ドキュメントやメールのひな形を作成し、業務効率化することが可能です。
  3. 文書やプログラムのミスを指摘
    簡単なプログラムを生成することや、コーディングのサポートにも役立ちます。さらに、書類や文章の添削のほか、内容の誤りの指摘も行ってくれるため、業務品質の向上も期待できるでしょう。
  4. 文書作成
    記事のレポート作成や長文の執筆、文書の検索などに役立ちます。
    文書作成は企業規模にかかわらず必要です。ゼロから作成したり、部下から提供された文書をチェックしたりするのに利用するケースもあるでしょう。
  5. アイデア出し
    アイデアを練ったり、企画を相談したりする際にも、ChatGPTは有用です。具体的には「今このような課題に取り組んでいます。解決案を5つ提案してください」といった形でアイデアを求める対話や、「私はプレゼンを行う予定です。対象観客やテーマに基づいてどのような目的・議題の設定が適切ですか?」といった相談も行えます。
スライドを自動作成してくれる拡張機能もあるそうですが、実務で使えるものなのでしょうか?

一部の拡張機能では自動生成が可能ですが、その結果に納得しきれないという声もあります。実際に使用してみて、もしそのままの状態で使用できると判断するならば、有用なツールといえるかもしれません。

なお、生成したスライドをそのまま公開したり、外部に提供したりする場合には、まず著作権に関する問題がクリアになっているかを確認するようにしましょう。手間がかかるように感じるかもしれませんが、実際はこうしたアプローチによって処理スピードが向上し、ヒトが介在するよりも効率的に作業を進めることが可能です。

中小企業がChatGPTを活用するときに、注力すべきポイントを教えてください。

中小企業がChatGPTを活用する際に注力すべきポイントは、以下の4つです。

  • 会社として利用を推奨する場合は、利用方針を策定する
  • 情報漏えいなどの不安点を解消する取り組みを進める
  • 具体的な活用シナリオを用意する
  • 社員が利用したくなる環境を整える

1つ目は、会社として利用方針を策定することです。規模が数名から数十名の中小企業では、従業員が自発的に活用するケースもあるかもしれません。特定の従業員だけが勝手に使っていると、たとえ成果を出していたとしても、他の従業員から非難される可能性があります。それを防ぐためにも、会社の方針を決めて周知しましょう。

注力すべきポイントの2つ目は、情報漏えいなどセキュリティとプライバシーに関する不安点を解消する取り組みです。特に、機密性の高い情報がかかわる場合には、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。例えば、学習に利用されないと明言されているAPIを活用した独自環境や、Azure(Microsoftが提供するクラウド・プラットフォーム。企業や個人がインターネットを通じて利用可能なさまざまなクラウドサービスが提供されている)などを使ったクローズ環境での利用などが考えられます。

3つ目に、具体的な活用シナリオを用意することも必要です。どのようなタスクや課題にChatGPTを活用するかを明確にし、その効果を最大化する方法を考えましょう。

そして最後の4つ目ですが、例えばChatGPTを利用したアイデアのコンテストなど、社員が積極的に使いたくなる仕組み作りも必要と考えてください。コンテストへの応募がきっかけとなり利用した結果、「業務が楽になった」「便利だった」という体験が周知できれば、ChatGPTの利用率も上がるでしょう。

ChatGPTをはじめとするAIチャットを導入する費用を教えてください。

まずChatGPTの利用に関してですが、基本的なチャットは無料で利用できます。ただしGPT-4や拡張機能の使用、プラスアルファの機能を追加する場合は、月額20ドルが必要です。また、APIを使用して独自の画面を作成する場合は、従量制の料金体系となり、具体的な金額は利用量によりますが数千円程度の範囲と考えられます。

なおAzureを活用して基本的なチャット環境を自社で準備する場合、月に数万円程度の費用がかかる見込みです。ただし、Azureを使ったクラウド環境をシステムインテグレーターなどに依頼する場合は、数百万円から数千万円の費用が発生する可能性があります。

MicrosoftのBingの場合、基本的な利用は無料です。ただし、Microsoftアカウントがない場合や、月に一定回数を超える利用に関しては上限があります。

Bardについては、現時点ではベータ版扱いということもあり、無料で利用可能です。

総じて、自社での導入や基本的な利用は費用を抑えられる印象です。ただし、高度な機能やカスタマイズを追加する際には、追加料金が発生する可能性があります。

中小企業がAIを活用する際に考えられる課題と展望

中小企業がChatGPTをはじめとするAIを導入する際には、どのような点が課題となりますか。

まず、情報漏えいのリスクが考えられます。これに関しては、APIの利用やオプトアウトの申請(個人情報の収集や利用に対して、利用者が自身の情報を提供しない権利を行使すること)などで対策が可能です。

また倫理的ではない回答に関する問題も懸念されています。この点はChatGPTに限らず、どのAIを使っても検討すべき課題です。特に外部への情報提供や公開物に関しては、厳密な精査が必要であり、上司や専門家のチェックも重要です。

著作権、プライバシーに関しても、同様の取り組みが必要と考えましょう。

最後に、セキュリティ上の注意点として「プロンプトインジェクション」という攻撃方法があげられます。これはAIに対して特殊な質問をして開発者の想定していない回答を引きだすなど、セキュリティの脆弱性を突く攻撃手法の1つで、自社のチャットサービスを公開する場合にも対策が必要です。こうした攻撃への対策を含めて開発に取り組む必要があります。

中小企業において今後AIがどのように活用されていくのか、将来の展望を教えてください。

「中小企業において今後AIがどのように活用されていくのか、将来の展望を教えてください」という質問を、ChatGPTとBing、Bardそれぞれ聞いたところ、それぞれ内容は若干異なりますが、概ね以下のような回答となりました。

  • 業務効率化
  • 売上拡大・コスト削減
  • 従業員の成長
  • 新規市場の開拓

まず、業務の効率化に関しては先述の通り、文章作成や企画などのアシストに役立ちます。また、画像認識や自動化も、拡張機能を活用すれば実現可能です。

また、データ分析や予測を基に収益を向上させる施策の提案が実施できるため、売上拡大・コスト削減にも貢献が期待できます。

さらに、AIは従業員の成長を支援する面でも注目されています。英語学習からセキュリティやコンプライアンスなどの専門知識習得といった、全社的な課題にも対応できるツールとなりえるでしょう。

新規市場の開拓やアイデアの創出にも、AIは貢献します。ChatGPTなどを通じた意見交換やアイデアのブラッシュアップが可能で、新たなビジネス展開のサポートが期待できるでしょう。

従来は大企業しか導入できなかったAIですが、中小企業でも手軽に活用できる時代となりました。低コストで導入可能であり、これまで難しかった課題にも取り組むチャンスが広がっているため、積極的に活用していきましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

森 一弥(アステリア株式会社 エバンジェリスト)

アステリア株式会社にてエバンジェリストを務める。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。その後、ブロックチェーンを活用した実証実験の実施や株主投票では特許を取得。現在はブロックチェーン、AI、IoTなど先端技術の可能性、勘所を業務で検討中の皆さまにお伝えするエバンジェリストとして活動中。

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