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要件緩和で対象者が拡大!日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」とは?【教えて!吉田先生】

2024.08.29

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

経営者保証とは、金融機関から中小企業が融資を受ける際に経営者個人が連帯保証人となり、保証責務を負う制度です。経営者個人への負担が大きいことから、政府は経営者保証に依存しない融資を積極的に推進しています。

日本政策金融公庫においても「経営者保証免除特例制度」や「創業者向け融資」の要件などが改定されていますが、その詳細を知らず、利用できずにいる方も多いのではないでしょうか。

今回は、日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。

※本記事は2024年8月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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経営者保証免除特例制度とは何ですか?

経営者保証免除特例制度とは「経営者保証に関するガイドライン」に対応した日本政策金融公庫(国民生活事業)における「経営者保証なし」の特例制度です。経営者保証なしで融資を受ける場合についての要件などが示されています。具体的には以下の通りです。

〈経営者保証免除特例制度〉

「ご利用いただける方」として1~7まであり、いずれかの要件を満たしており、かつ「借入返済が可能」と見込まれる法人を対象としています。

1については「すべて」の要件を満たす必要があります。

1の(1)「法人と代表者の方の一体性の解消」とは、例えば、会社から社長への貸付金がないことなどが典型です。一般的に金融機関は多額の貸付金があると融資しにくくなります。融資をしても経営者が個人的に使ってしまう可能性があると思われるからです。

1の(2)「取引状況に問題がないこと」とは「返済の遅延がないこと」を意味しています。返済のうっかりミスなどしないように十分に注意してください。なお、返済条件の変更(リスケジュール)などを行っている場合は非常に困難になります。

1の(3)は財務要件のことで「ア 最近2期の決算期において、減価償却前経常利益が2期連続して赤字でないこと」および「イ 直近の決算期において債務超過となっていないこと」の「いずれか」の要件を満たしていれば大丈夫です。

3については「知的財産権等を利用した事業」「特定の補助金を活用した事業(ものづくり補助金等)」「VC・ファンドから出資を受けた事業」「エンジェル税制対象企業が行う事業」「J-StartupプログラムまたはJ-Startup地域版プログラムに選定された企業が行う事業」「事業再構築補助金を活用した事業」「新たな技術・サービス等を活用した事業で一定の成長性が認められるもの」など、いずれかの事業を行う方をいいます。

また、5の「事業承継・集約・活性化支援資金」および「ソーシャルビジネス支援資金を利用されるNPO法人の方」は経営者保証なしの対象になります。

これから創業する方や創業したばかりの方は、自動的に無保証人で融資を受けられるということですか?

対象者6にも記載がありますが「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方の無担保・無保証人で利用する場合の融資制度」(旧:新創業融資制度)として、例えば新規開業資金を、無担保・無保証人で新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用する場合は、以下のように拡充されました。

融資限度額や据置期間が大きく拡充され、同時に「自己資金の要件」が廃止されました。

とはいえ、申請すればだれでも自己資金ゼロで7,200万円を簡単に借りられる、ということではありません。やはりできれば従来基準の1/10の自己資金を準備することをおすすめします。そして、しっかりと創業計画書などを作成し、万全の準備をして申請してください。

(参考)
創業融資のご案内|日本政策金融公庫

利率について、経営者保証なしだと上乗せされますか?

基準に合致すれば経営者保証なしで融資を受けることはできますが、利率は上乗せされてしまいます。しかし、上乗せは0.1~0.3%です。極端に高い利率を上乗せされるわけではありません。経営者がどう判断するのか、だと思われます。

また、事業承継・集約・活性化支援資金を利用する場合は、上乗せなしとなっています。政府や日本公庫は事業承継などを積極的に推進している姿勢の表れでしょう。

経営者保証免除特例制度は、具体的にどのように改定されたのですか?

経営者保証免除特例制度の大きな改定箇所は、「財務要件」「対象者」「上乗せ率」の3点です。

1.財務要件

まず改正前、改正後どちらも「財務要件」が2つあります。この点は変更がありません。

具体的には、以下の2つになります。

  • 減価償却全経営利益が直近2期連続赤字ではないこと。
  • 直近の決算で債務超過ではないこと。

経営者保証免除特例制度改正前は、この2つの要件を満たす必要がありました。しかし、経営者保証免除特例制度改正後は、この2つの要件をいずれか1つを満たしていればよいと緩和されています。

2.対象者

また、改定前は「ソーシャルビジネス支援資金を利用されるNPO法人の方」は「対象者」にはありませんでしたが、改正後に追加されています。政府・日本政策金融公庫が「ソーシャルビジネス」の支援を推進している姿勢の表れだといえるでしょう。

3.上乗せ率

最後に「上乗せ率」です。改定前は、原則0.2%の上乗せとなっており、「事業承継・集約・活性化支援資金」などは「上乗せなし」、「技術・ノウハウ等に新規性がみられる方等」の上乗せ利率は0.1%でした。

改定後は対象者ごとに0.3%を上限として設定されています。

経営者保証免除特例制度を利用するにはどうすればよいですか?

ぜひ、経営者保証免除特例制度に基づいて自社の財務状況などを確認してみてください。要件を満たしていない場合は、1つ1つ改善しましょう。なお、要件を満たせば既往融資の経営者保証を外せる可能性が出てきますので、その際は日本政策金融公庫に相談してください。

なお「経営者保証ガイドライン」に沿った形で自社の経営・財務を見直すことを強くおすすめしますが、ガイドラインを理解して経営者が自力で行うのは困難かもしれません。

(参考)

また、一案ですが「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」というものがありますので、このシートに沿って改善されることをおすすめします。

(参考)
ガバナンス体制の整備に関するチェックシート(スタートアップ創出促進保証制度用)|中小企業庁

経営者保証免除特例制度の要件となっている「法人と代表者の方の一体性の解消」などは、わかりにくいかもしれませんので、可能であれば「経営者保証ガイドライン」に詳しい顧問税理士などの専門家から、アドバイスを受けることをおすすめします。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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