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価格改定の上手な店は何が違う?自店の隠れた価値の見つけ方を老舗和食店の女将がご紹介

2023.09.07

著者:弥報編集部

監修者:小保下 グミ

円安や原材料費の高騰などの影響により、あらゆる業界にとって値上げ必至の時代が来ています。しかしいかなる理由で値上げしたとしても、きちんと自店の価値が伝わらなければ既存のお客さまに納得してもらうことは難しいです。

ではその自店の価値、きちんと経営者自身が把握しているでしょうか。

値上げをするのであれば、まずは自店の価値は何なのかを洗い出し、適切にアピールすることが先決です。どうしても見つからなければ、新たな価値を作り出す必要もあるでしょう。

老舗和食店の女将が自店の価値の見つけ方について詳しく解説します。


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値上げをしたいなら、まずは自店の隠れた魅力に目を向けよう

値段を高くしてしまうとお客さまが離れてしまうのでは?と考え、ついつい安めの設定にしてしまう経営者は多いもの。それはもしかすると、価格を上げても納得してもらえるような「自店ならではの価値」に気が付いていないのかもしれません。経営者が自店の価値に気付いていなければそれらをアピールすることもできず、お客さまに商品やサービスの良さが伝わらないまま販売することになってしまいます。これでは高いと思われてしまうのも無理はありません。

例えば以下にあげるのは、お店が胸を張って自慢していい価値なのですが、自店にとって当たり前のことすぎるのか、価値だと気付いていない人が多い印象です。

  • 独自ルートで仕入れている商品がある
  • コンテストで何かの賞を取った
  • 有名な人が来店して絶賛してくれた
  • メニュー開発に数年かかった
  • 100回以上試作した
  • ◯年間修行を重ねた
  • 10時間かけて煮込んだスープ
  • すべての原材料がメイドインジャパン
  • 生産者に会いに遠方まで通っている
  • 江戸時代から伝わる伝統的な製法を採用している
  • 特許を取得している
  • 世界に2つとして同じものが存在しない
  • 有名な料理の発祥の店である

値上げするというとよく「同時に付加価値を上げるべき」だと言われますが、多くのお店には既に上記のような特記すべき価値があります。自店で決定した価格設定で堂々と販売するには、まずは現時点で自店の商品にどんな魅力があるかを掘り起こし、アピールすることが先決です。

自店ならでは価値を探すコツ。「一般的に見ると実はすごいこと」を探そう

自店の魅力や価値に気付くには、前述のような自店ならではの努力や、他とは違う特色を丁寧に洗い出していく作業が必要になります。自分にとってはごく当たり前のことでも、一般的に見るとそれってすごいことですよ!と、言ってもらえるような何かを見つけたいところです。

とはいえどれだけ客観視しようとしても、自分のことは自分では見えづらいものです。ですので家族や友人、お客さまに自店の優れた点を見つけてもらうのも一つの手です。聞いてみると意外と「それがうちの特色だったのか」と気付かされることが出てきます。

例えば当店が提供している、自家製麺とつゆは化学調味料無添加です。創業者から代々伝わる、いわゆる昔ながらの製法で特別だと思ったことは一度もありませんでした。しかしあるときお客さまから「嬉しい!無添加なんだ」と言われ、これはもっとアピールしても良いことなのかと気付かされました。

同様に毎日大量の大根を手作業でおろしていることを、同業の経営者に話したらとても驚かれたことがあります。てっきり機械か既におろしてあるものを購入しているのかと思った、と。私も夫も自分の手ですりおろす以外の選択肢なんて考えたこともなかったので、言われて初めて気が付きました。比べてみるとわかりますが、機械でおろしたものより手でおろしたほうが、風味や舌触りが格別に良いのは明らかです。

あるいは昔から行なっている出前業務に対して、近年改めてありがたがられる機会が増えています。最近はフードデリバリーが活況ですが、使い捨て容器だと味気なく感じたり、客人に出せなかったりと難も多いものです。その点、小規模店の出前だと陶器の器で温かいまま料理を食べることができ、客人にも堂々と出すことができます。ただし出前を行なう飲食店は時代とともに減ってきているのが現状です。当店の周辺でも小規模店で配達業務を行なっているのは、当店ともう1店舗ぐらいしかありません。このような背景から、一部のお客さまからは「貴重な存在なのだからやめないでね」と念を押されるほど。昔からやって当たり前だった出前も、時代が変われば高い価値があることに気が付きました。

自店の価値が見つからない場合は、ぜひ周りの人の意見に耳を傾けてみてください。意外な点が価値として認められていることに気付くはずです。何が価値なのかに気付くことができれば、それをSNSやWebサイト、チラシなどで余すことなく発信します。多くの人に価値を認めてもらえれば、少々高めの値段設定でもお客さまは喜んで来店してくださることでしょう。

自店の価値を作り出すには?3つの例をご紹介!

まずは自店の隠れた価値を探してみて、どうしても見つからないようであれば、そこで初めて価値を作り出すことを考えるべきかと私は思います。

例えば物販の場合だと商品自体は変えられなくても、メンテナンスやアフターケアなどのサービスで価値を上げることができますよね。街の小さな電気屋さんが潰れないのは、そのサービスの充実さからだと言われています。商品自体は大手家電量販店より高くても、運搬から取り付け、丁寧な説明に修理や点検まで行ってくれるとなれば、高齢のお客さまは喜んで個人店で購入してくれるのです。

新たにその分野の資格を取り、スペシャリストを名乗って価値を高めるのも一つの方法です。お客さまは同じ商品ならより詳しい人から買いたいものです。特にインターネットでなんでも買えるこの時代には、商品について丁寧に説明できる人が不足しています。問い合わせフォームからメッセージを送れば一応答えてはくれますが、一般的には尋ねたことにのみ事務的な答えが返ってくるのが関の山です。より詳しい知識を身につけ、商品について説明するだけでなく、商品のケアの仕方やアレンジ方法など、聞かれていないことまでこちらから提案できるほどの知識があればそれは立派な価値だと言えるでしょう。

新しい商品の取り扱いを考えるなら、ある程度市場価格が決まってしまっているものではなく、人によって価値の感じ方が異なるようなものを選ぶといいです。

有名な野球選手が使っていたグローブは、その選手を知らない人にとってはただの中古のグローブですが、ファンにとってはいくら支払っても惜しくないぐらい高い価値のあるものです。こういう商品を見つけられると、高い利益率が設定できるうえライバルも少なくなります。

例えば、飲食店でいうと肉や魚の廃棄部位です。廃棄部位は通常、量が少なかったり好んで食べる人がいないため市場に出回ることがありません。しかしそれらを買い取ってうまく調理し、希少部位だとアピールして提供すれば、物珍しさから注文する人が殺到します。価格だって少し高めに設定できるでしょう。

同じようにオーダーメイド品なども、他人からするとそれほど価値を感じないものでも、注文した本人にとっては自分のためだけに作られた大変値打ちのある商品です。そしてオーダーメイドには往々にして相場というものが存在しないため、ある程度自由に価格設定をすることができます。

(参考)
お客さまごとの好みや希望にすべて応えるのは無理?老舗和食店の女将が考える解決策|弥報Online

このように価値のあいまいなもの、人によって感覚の異なるものを商品にすると、価格を現状維持させるような圧力に屈しなくて済むのでおすすめです。

ただし新たに価値を作り出すとなると、それだけ資金や労力も必要になります。繰り返しになりますがまずは自店の現状と向き合い、まだアピールできていない魅力はないか、人によっては高い価値となりうるセールスポイントはないかを精査してみてください。

昨今の消費者は自分の気に入ったものには、多少高くてもお金を出したいと考える人が多い傾向にあります。価値がわかればお客さまは喜んでお金を出してくれるので、根気強く伝えていきましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

小保下 グミ(老舗和食店の女将)

老舗和食店の女将。夫が後を継いだ家業で経営全般に関わる。現在は休業中。
noteにて定期購読マガジン「小さなお店のちいさな女将」を運営。飲食店経営や自営業の生き方・働き方について発信中。

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