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市場の先が読みづらい「VUCA」と呼ばれる新時代到来!中小企業が生き残るために必要な企業変革力を船井総研コンサルに聞く

テクノロジーの発展や自然災害、新型コロナウイルス感染症の流行などの影響によって、市場の先が読みづらいVUCA(ヴーカ)と呼ばれる新時代を私たちは生きています。中小企業がVUCA時代で生き残るためには、市場の激しい変化に柔軟に対応することが必須で、経営者やリーダーは新たなスキルを身に付け組織を強化していく必要があります。

そこで今回は、船井総合研究所 HR支援部 マネージング・ディレクター 宮花 宙希(みやはな ひろき)さんに、VUCA時代を中小企業が生き残る方法や、組織強化の方法などについてお話を伺いました。

宮花 宙希 氏(株式会社船井総合研究所 HR支援部 マネージング・ディレクター

2013年船井総合研究所に入社後、採用・育成・評価・組織活性といった人材・組織をテーマにさまざまな業界・規模の企業支援に携わる。現在はグループにて責任者をしており、人材採用から人を育てる評価制度構築支援など総合的なマネジメント強化による業績アップを得意としている。現在所属中のHRD支援部において、人財や組織の観点からコンサルティングを実施。企業の持続的な成長は、事業戦略やマーケティングだけでは実現できず、人財・組織に関する戦略や施策も重要性が日に日に高まっているため、主に「採用」・「育成」・「定着」分野にてお客様の成長をサポート実施。船井総合研究所ホームページ

VUCA時代とは

――VUCA(ヴーカ)とは、どういう意味を持つ言葉なのか教えてください。

VUCA」とは予測困難な状況を示す言葉です。VUCAはもともと軍事に使われていたものなのですが、Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:あいまい性」の頭文字で構成されています。

まず「Volatility:変動性」とは、ライフスタイルや価値観などの大きな変化が起きていることを表します。例えば、スマートフォンの登場によって我々のライフスタイルが大きく変容したことや、働き方改革、女性の社会進出が当たり前になったことなど、新たな価値観が生まれていることを示すものです。

Uncertainty:不確実性」は予期せぬ事態が起こることや、いろいろなリスクを表します。例えば、新型コロナウイルスによってテレワークが実施されるようになったことで、都市部の人が郊外へ引っ越して人口が減少することや、地震や台風などの自然災害のリスクを表すことが一般的です。

Complexity:複雑性」は、いろいろなビジネスが多くの世界と絡みあうさまなどを表します。例えば、リーマンショック時のサブプライムローンの問題などが代表的な事例です。単純なローンの貸付の問題だけでなく、それが証券化するなど、どんどん問題が複雑化するイメージと言えます。

Ambiguity:あいまい性」は、業界や業種の区分があいまいになっていることを表します。例えば、AIや自動運転の技術が登場したことによって、GoogleAIの自動運転に参入するなど、企業が手掛ける事業の区分があいまいになっていることが挙げられるでしょう。

――現在はVUCA時代と呼ばれることもありますが、どのような時代で、何が起きると言われているのか教えてください。

VUCA時代とは、連続性のない大きな変化が速いスピードで起きる時代と言えます。例えば、これまでは10年周期くらいで変化していたビジネスモデルが、5年など短いスパンで変化していることや、早い場合は3年で立ち行かなくなることもある状況です。

例えば、これまで何かを調べるときに百科事典を使っていたのが、今はウィキペディアに変化していることなども、変化のスピードが速いことを示す例として挙げられます。

最近は、新型コロナウイルスの影響で観光業や飲食業などが大きな打撃を受けていますが「外に出られない」「お酒が飲めない」といった行動様式の変化に対して、自分たちがどう対応していくか早急に考え、行動することが必要になりました。

VUCA時代で生き残るために、中小企業経営者はどう舵取りすべきか。役立つ「OODAループ」を紹介

――VUCA時代を生き残るために、中小企業の経営者は、どのように経営の舵取りを行うべきでしょうか?

中小企業は地元の小商圏でビジネスをするケースが多いのですが、VUCAの時代においては、大企業以上にすばやく変化する姿勢が必要となります。時代が変化する波が激しいので、後れを取らないように柔軟に適応できる力がなければ、今後のVUCA時代で中小企業が生き残ることは難しいでしょう。

――VUCA時代に必要不可欠な思考法として「OODA(ウーダ)ループ」と呼ばれるものがありますが、どのようなものなのか具体的に教えてください。

OODAループはよくPDCAと比較されることが多い考え方でObserve(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」の頭文字を取ったものです。

まず「Observe(観察)」は市場や顧客、新技術など、さまざまなものを観察することです。2つ目の「Orient(状況判断)」は、集めたデータをベースに現在の状況を把握・理解することで、3つ目の「Decide(意思決定)」の際に、「Observe」で得た情報を精査し具体的な手段や施策を決めます。そして4つ目の「Act(実行)」は行動するという意味なのですが、結果が出た後、再び「Observe」に戻って「Orient→Decide→Act」を繰り返すことから、OODAループと呼ばれているのです。

OODAループは戦争でよく使われていた思考法の1つで、より変化が激しい状況において、目の前で起きている事象に対してすばやく臨機応変に対応するためのものです。例えば戦時中、飛行機に乗っているときには、いちいち本部や参謀の意見を聞いている暇などないので各自が状況判断する必要があり、OODAループが活用されていました。

市場の変化が速いVUCA時代では、PDCAよりもリアルタイムに意思決定が行える現場寄りのフレームワークが求められることから、OODAループが注目を集めています。

――OODAループを実際に活用して、成功した中小企業の事例を紹介してください。

ある不動産の仲介業者でOODAループを活用したところ、1人当たりの売上が向上し、生産性の向上が実現しました。

こちらの企業の特筆すべき活動としては「社員がやってよいこと10か条」「社員がやってはいけないこと10か条」を作成したことが挙げられます。「迷ったらここに立ち返れ」という判断軸を与えたうえで、現場の社員に判断の裁量を預けたということですね。

現場の社員が自分で意思決定をする場合、誤った判断をしてしまう可能性もありますが、会社としての存在価値や判断基準のよりどころを作ったことで、OODAループを活用して成果を上げることに成功しました。現場で意思決定の権限を委ねられる社員を育成することがOODAループを活用する目的なので、社員に明確な判断基準を与えることはきわめて重要なポイントです。

――OODAループの実際の活用方法を教えてください。また、PDCAとの違いや優位点などについても解説をお願いします。

OODAループの1つ目の「O」であるObserveには、PDCAにおける「CCheck)」のように見ることだけに留まらず、取りきれる情報をすべて取りきるという意味が含まれています。

2つ目の「O」であるOrientは、物事をどう解釈するかという意味です。私個人としては、OODAループの中で最も重要な部分だと認識しています。情報を仕入れて観察し、どのような解釈や判断をするかということですね。

そして、それに基づいて「D」のDecideで意思決定をすることになります。ここで重要なポイントが、施策の焦点をどこに合わせるかという部分です。その後、「A」で実行(Act)して、最初の「O」に戻るループへと続きます。

PDCAとOODAループの大きな違いは、PDCAが品質の改善を目的にしているのに対し、OODAループはあくまでも意思決定に目的を置いている点が挙げられます。

PDCAは計画して実行し、検証して改善することで、新たな計画に結びつけるという品質改善的なアプローチと言えます。またPDCAは実施期間が3か月や半年など、中長期にわたるケースが多い点が特徴です。

一方、OODAループは今現場で起きていることに対して、リアルタイムに状況を判断し意思決定していきます。OODAループを使いこなせる組織は、各個人が自主的に判断して行動できるスキルを持っているため、強い組織と言えるでしょう。

――OODAループを使う際、実施している行動(A)が正解だったかどうかについて、どこかで判断しなくてはいけないと思うのですが、どうやって判断するべきでしょうか?

OODAループを使っていると、意思決定のタイミングや、実際に行動してみたタイミングで「何か違う……」ということが起きます。その際の評価軸は行動によって変わりますが、OODAループは「ループ」ということで、もし間違っていたら戻って再検討すればOKです。

ただし考え方や行動が間違っているという判断を下す場合には、個別に目標到達のために実行すべきプロセスの評価基準となる、重要業績評価指標(KPI)を設定する必要があります。未達であれば、再び情報収集まで戻ってやり直しが必要です。

――従来のやり方が通用しなくなってきたVUCA時代において、船井総研では経営者にどのようなアドバイスを行っているのでしょうか?

すべての社員に状況判断できる能力が備わっているわけではないので、現場の社員が自分で考えて自走する組織を作るためには、人材育成が欠かせません。しかし新卒や中途で入ってきた社員が、すぐにスキルを身に付けるのは困難です。

そのため我々のお客さまには、現場で想定されるケースや状況を作り上げて「お客さまから〇〇の問い合わせがあったとき、どのように対応するか?」といった、ロープレのような訓練をおすすめしています。マニュアルのような画一化した教え方ではなく「これは、こういう風に対処するべきだったよね」と振り返るような、OODAループに近い実践的な教え方をすることが大切です。

例えば営業の現場では、お客さまが求めていることや聞かれたことにその場で対応する必要があります。そのようなケースには、マイクと映像を使ってリアルタイムに上司が現場の社員へ指示を出すという方法なども採用しました。上司が「こういう言い方で答えたほうがいいよ」とリアルタイムに指示を出す司令塔のような機関を本社に持ち、全営業マンの接客している音声をリアルタイムにつないで指示を出す企業もあります。こうした本番環境におけるトレーニングによって、実践的なケースへの対応力向上を図ることが非常に重要です。

もちろん新人研修などの座学で知識を教えることも大切なのですが、現場でどのような対応をするかについては形式知や暗黙知に依存する部分もあり、教えることが非常に困難と言えるでしょう。そのため、実践に基づいたロープレを活用してもらうケースが増えています。

VUCA時代で競争力を高める人材育成と組織づくり

――VUCA時代を生き残るために、経営者やリーダー層に求められるスキルを教えてください。

経営者やリーダーに求められるスキルは、型通りの知識や営業ノウハウなどを教えるのではなく、それぞれの社員に合ったオーダーメイド的な指導ができる能力です。経営者やリーダーが、成長のキーとなるポイントへ適切にアドバイスやフィードバックを与えなければ、社員のスキルは上がっていきません。

例えば、営業であれば売上や契約数といった明確な目標を設定させ、それに対するKPIなどを持たせている中小企業がたくさんあります。「契約率が〇〇%必要」「1か月の接客は15組必要」といった形で、どのような数字が必要なのかを明確化して、それに基づいて営業会議や指導したりするのが一般的です。

契約率が低い営業マンがいた場合「君は契約率が低いので、15組じゃなく18組接客しないと目標達成できないよ」といった指導をするリーダーは多いと思います。しかし本来は個人の課題に対して、さらに踏み込んだアドバイスをしなければ社員の大きな成長は見込めません。

つまりVUCA時代の経営者やリーダーには、社員の課題となるポイントを明確化し、それを克服できる適切なアドバイスができるスキルが必要です。

――VUCA時代に対応できる社員を育成するためには、どのような人材育成を行うべきでしょうか?また、効果的な方法やツールなどもあればご紹介ください。

新人教育やOJTを実施する際には、スキルチェック用シートの活用をおすすめしています。例えば業務内容や必要なスキル、競合他社の情報や業界知識といった事前に覚えておくべき情報など、社員が身に付けるべきスキルを分解して、それぞれについて「できる・できない」を可視化することが重要です。

現場でありがちなのが「何がわからないのかがわからない」というケースです。例えば「なんで営業できないの?」と問いかけても、社員本人はもちろん、上司もその原因を理解できていないことがあります。こうした状況を見える化するために、スキルチェック用シートを活用しましょう。

スキルチェック用シートの導入メリットは、自分に不足しているスキルを認識できる点と、最終的に身につけなくてはいけないスキルの全体像が把握できる点です。通常の研修はパーツごとに進んでいくため、そのパーツが全体のどこに含まれるものなのかイメージできないまま進むことも多くあります。「全体の中でいうと、ここをやっているんだね」ということをお互いに理解しながら、教育を進めることが大切です。

最終的に、すべてのチェック項目が「〇」になることを目指します。スキルチェック用シートは、これによって評価を決めるものではないので「まず1人前になりましょう」といった目標で「〇」が増えることで自分の成長度合いを感じてもらう、ゲーム感覚に近い取り組みですね。

一方、最近は自分が営業しているようすを録画して、アップロードしてフィードバックが得られるアプリなどもありますので、それらを活用して指導している企業も多いです。具体的な説明が必要な項目に対して、どのシチュエーションでどう対応するべきか具体的なアドバイスが行えます。

――VUCA時代に競争力を高められる組織を作るためには、どのようなポイントを押さえるべきでしょうか?

組織の競争力を高めるために大事なことは、自社の競争優位が確立できる強みを正しく認識することです。これが正しくできていない中小企業は、非常に多いです。

例えば、中小企業のオーナーさんに「御社の強みは何ですか?」と質問すると「他の企業に比べて営業力が強いんだよね」という答えがよく返ってきます。しかし、営業力が強い要因がどこにあるのかを分析することこそが重要なのです。

  • 営業力が強い理由は?
    →徹底した顧客分析を行って顧客ニーズを押さえているため
  • 顧客ニーズが押さえられている理由は?
    →営業マンが顧客のヒアリングに多めの時間を割いているため
  • なぜヒアリングに長い時間を割けられるのか?
    →業務効率化が成功しているため

このような分析を繰り返すことによって、潜在化している他社にはない強みがきっと見つかるでしょう。まず、その点をしっかりと押さえることが大切です。とはいえ、自社の強みを客観的に分析するのは困難なので、コアコンピタンス分析やブリオ分析などのフレームワークの活用がおすすめです。

一般的なフレームワークには、外部環境を分析するものと内部環境を分析するものの2種類があります。この2つは内部環境を押さえるためのフレームワークです。自社の強みに模倣困難性があるか、希少価値があるかといった点を深掘りし、顕在化させていきましょう。

慣れていないと大変ですが、最初はこうしたフレームワークに沿って考えていくことをおすすめします。

――従業員数が510名の中小企業においては、経営者自身がOODAループに取り組むケースが多いと思いますが、その際に注意するべきポイントはありますか?

経営者自身がOODAループを回す際には、得られた知見が暗黙知やブラックボックス化させないよう注意が必要です。

OODAループを現場でスピーディーに回していると、状況に応じた柔軟な判断ができるようになる点がメリットと言えるでしょう。しかし、PDCAのようにチェックする工程はないので、ノウハウやデータが蓄積されずブラックボックス化するリスクがあります。

経営者と社員が数名しかいない企業の場合、「わかるだろ?」というケースが増えていくことが予測できます。社員同士が暗黙知でつながっている組織は強いのですが、新しく入ってきた人がそういう感覚に慣れることは困難でしょう。そのため会社や事業を大きくするときなどに、足かせになる可能性があります。

OODAループを活用する際には、こうしたリスクをはらんでいる点に注意するべきです。

――VUCA時代に即した社内体制の構築に事業再構築補助金が活用できそうですが、その他にも有効活用できそうな補助金や助成金などがあれば教えてください。

助成金などは細かいものを含めるとたくさんありますが、事業再構築補助金以外であれば「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」をよくお客さまへ紹介しています。どちらも業務の生産性向上を実現するために活かせる補助金です。

働き方改革やデジタル化など、国としてもどんどん支援したいものであれば、今後も補助金や助成金が増えてくると思いますので、社内のインフラ整備などに活用しましょう。

著者:弥報編集部
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