経営者のための
「いちばん身近なビジネス情報メディア」

  • 顧客獲得・売上アップ

「売れ筋の次」を育てる商品ポートフォリオ設計。安定売上を作るラインアップ戦略の基本

2026.07.31

著者:弥報編集部

監修者:安藤 優

EC事業において、売れ筋商品に依存した売上構造は、安定した売上を確保できているように見えても、大きなリスクを抱えています。市場環境や競合状況の変化によって主力商品の売上が落ちると、事業全体の業績にも大きな影響が及ぶためです。

この記事では、こうしたリスクを回避しながら安定成長を実現するための商品ポートフォリオ設計の考え方と、売れ筋の次を育てる具体的な方法を、公益財団法人日本生産性本部の安藤さんに伺いました。


弥報Onlineでは他にも「顧客獲得・売上アップ」をテーマにした記事を発信しています。
顧客獲得・売上アップの記事を読む

売れ筋商品への依存がEC事業にもたらすリスク

EC事業において、特定の商品に売上が偏っていると、どのようなリスクがありますか。

まず大きいのは、売れ筋商品の売上が落ちた瞬間に、事業全体の業績が一気に悪化するリスクです。

EC事業では、広告のアルゴリズム変更の影響を受けやすく、売れ筋商品の販売が大きく落ち込むことがあります。一方で固定費は変わらないため、利益が大きく圧迫されます。

また、売れ筋商品は競合が参入しやすく、価格競争や類似商品の増加によって値下げを迫られ、利益率が低下しやすい点もリスクの一つです。

売上が減少する以外のリスクはありますか?

売れ筋商品への対応に追われることで、新商品開発や人材育成といった中長期的な取り組みに手が回らなくなり、事業の成長機会を失う恐れがあります。売れ筋商品に依存しすぎると、日々の顧客対応や在庫管理、広告最適化などにリソースが集中しすぎてしまうためです。

さらに、自社で把握する顧客層や購買傾向などのデータが、売れ筋商品に関連するものに偏ってしまうリスクもあります。データが偏ってしまうと「なぜ他の商品は売れないのか」「次に伸びる商品は何か」を分析しづらくなり、次の商品開発に活かしにくくなります。

商品ポートフォリオ設計で目指すべき3つの商品構成

こうしたリスクを避けるためには、どのような商品構成を目指すべきでしょうか。

売れ筋商品への依存にはさまざまなリスクがあります。そのため、複数の商品を役割ごとに組み合わせ、売上の安定と成長を目指す「商品ポートフォリオ」の考え方が重要になります。

EC事業では、主力商品・育成商品・関連商品の3層で商品を構成する考え方が有効です。この3層を適切なバランスで保有することで、売上の安定性と将来の成長を両立できます。

「主力商品」とは

現在の売上と集客を支える土台となる存在です。販売実績があり、広告や検索でも集客の中心を担う、事業の軸となる商品です。欠品や品質のばらつきがないよう、安定的に供給・維持することが欠かせません。

「育成商品」とは

主力に次ぐ規模を担い、将来の売れ筋となる可能性を持つ商品です。選定にあたっては、利益率やリピート率、顧客評価などを基準にするとよいでしょう。現時点で売上規模が小さくても、顧客満足度が高く特定のニーズに応えている商品は、訴求方法や購入導線を見直すことで大きく伸びる可能性があります。

「関連商品」とは

主力商品や育成商品と組み合わせて販売する商品で、単体で大きな売上をつくるというよりも、全体の収益性を高める役割を担います。

クロスセル(関連する商品を追加で提案すること)やアップセル(より高価格・高機能な商品を提案すること)を通じて、LTV(顧客生涯価値。1人の顧客が長期的に購入する合計金額)が高くなる商品を選びましょう。そのためには、顧客の利用シーンに沿った組み合わせを設計することが大切です。

売れ筋の次を育てる商品育成の進め方

売れ筋の次となる商品を育てるための、具体的なアプローチを教えてください。

まず重要なのは、現状の売上構成と依存度を正しく把握することです。そのために有効なのがABC分析です。ABC分析は、商品を売上や利益への貢献度に応じて分類し、限られたリソースをどこに優先的に投下すべきかを判断する手法です。ABC分析を行うことで、自社の商品構成や売上の偏り、依存度を把握できます。

そのうえで、まだ販売数は多くない商品の中から育成候補となる商品を選定します。ポイントは、利益率などの定量データと顧客の声という定性情報の両方を見ることです。特に、レビューやアンケート、問い合わせ内容といった顧客の声を分析すると、満足度は高いが露出が少ない商品や、特定のニーズに強く刺さっている商品などが見えてきます。

商品選定後は、どのように進めればよいでしょうか。

育成フェーズに入ったら、販売機会を意図的に増やすことが重要です。

例えば、セット販売で主力商品と一緒に提案すれば、商品の認知と購入を促進できます。また、商品の魅力や開発背景、開発ストーリーを整理し、商品の価値を改めて伝えることも効果的です。

施策の効果はどのくらいの頻度で確認するとよいでしょうか。

販売数や利益率などの定量データのうち、主要な指標はできれば毎日、高い頻度で確認することが基本です。ただし、商品育成の成果は、半年程度を1つの区切りとしてLTVやCPOなども含めて総合的に検証し、施策の改善につなげることが望ましいでしょう。

育成商品はこれから伸ばす商品であり、リピート率の把握や顧客の声の分析を通じて、成果を判断できるまでには一定の時間がかかります。短期で成果を求めすぎず、改善を積み重ねていくことが大切です。

育成商品の数はどのくらいが適切でしょうか。

新商品を次々打ち出したくなるケースも多いですが、育成対象を広げすぎるとリソースが分散していずれも中途半端になりがちです。

まずは主力商品を安定させたうえで、育成する商品は1〜2商品に絞り、集中的にリソースを投下して着実に育成することが現実的です。

商品ポートフォリオ設計を成功させるポイントと失敗しないための注意点

商品ポートフォリオ設計を成功させるポイントと、注意点を教えてください。

リソースの適切な配分、新商品の開発、在庫の管理、そして顧客の声の収集と分析がポイントになるでしょう。

まず、リソースの配分ですが、よくある失敗が新商品を増やしすぎてしまうケースです。

商品数を増やせば販売機会も増えるように思えますが、実際には商品開発から販売、在庫管理、広告運用までの一連の運用に必要なリソースが分散し、どの商品も中途半端になりがちです。

新たな商品を育成するためには、まず事業基盤を安定させることが前提です。そのため、主力商品の安定供給と品質維持に十分なリソースを確保することを優先しましょう。

次に新商品の開発について、注意点も併せてご説明ください。

例えば、競合商品を見て後追いでラインアップを増やすだけでは、差別化が難しく価格競争に巻き込まれやすくなります。また、流行に依存した商品は、販売開始時には既に需要が落ちている可能性もあります。そのため、自社の強みを軸にした商品開発を行うことが大切です。

在庫面で意識すべきポイントを教えてください。

在庫状況や欠品率を定期的に確認し、適正在庫を維持できているかを把握することが重要です。欠品や遅延は売上だけでなく顧客満足度の低下にもつながり、中長期的なダメージを招きます。

また、ABC分析を活用して売れ筋の変化を定期的に把握し、小さな兆候を見逃さないことも大切です。売上の低下には小さな変化が前兆として現れることが多いため、早期に察知することで迅速な対応が可能になります。

最後に、顧客の声の収集・分析について、注意点やポイントを教えてください。

顧客の声の収集や分析は、日々の業務の中でも比較的取り組みやすい施策です。レビューや問い合わせ、アンケート、SNSでの反応などは継続的に集め、分析しましょう。

これらの情報を商品開発や販売促進に反映させることで、売れ筋商品だけに依存しない商品構成を維持しやすくなります。結果として、売上の安定性を高めながら、継続的な成長につながる事業運営が可能になります。

在庫の動きやレビューの変化は、商品ポートフォリオを見直すきっかけとなる重要な指標です。売れ行きの鈍化や評価の低下といった小さな変化を捉え、定期的に改善を重ねていくことが、安定した売上作りにつながります。


弥報Onlineでは他にも「顧客獲得・売上アップ」をテーマにした記事を発信しています。
顧客獲得・売上アップの記事を読む

【無料】お役立ち資料ダウンロード

お役立ち資料ダウンロード

「弥生会計」がよくわかる資料

法人向けデスクトップソフト「弥生会計」のメリットや機能、サポート内容やプラン等を解説!導入を検討している方におすすめ。

この記事の著者

弥報編集部

弥生ユーザーを応援する「いちばん身近なビジネス情報メディア」

この記事の監修者

安藤 優(公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 経営コンサルタント)

大学卒業後、広告・製薬・化粧品業界でEC・通販事業に約12年間従事。EC統括部長として戦略立案からマーケティング、IT、財務、組織開発まで広く経験。その後、IPビジネスを営む企業の実店舗事業で戦略ディレクターを務め、事業戦略立案・実行、DX推進などを牽引した。
現在は経営コンサルタントとして、企業の診断指導や人材育成に従事。実務経験に基づいた多角的な視点から、事業成長の実行支援を強みとする。

弥生のYouTubeで会計や経営、起業が学べる!

弥生の公式YouTubeチャンネルでは、スモールビジネスに携わる方たちに役立つコンテンツを配信中です。

■弥生【公式】ch チャンネル登録はこちら

■個人事業主ch チャンネル登録はこちら

弥報Onlineからのお知らせ

TOPへ戻る