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「言われたことしかやらない、自分から積極的に動かない」社員を動かすには?
2022.11.29
著者:弥報編集部
監修者:宮本 寿
近年、言われたことしかやらない、自ら考えて行動しない(自走しない)社員が増えていると言われています。自走できない社員を育成するのは難しい課題のため、どうしたらよいのか悩まれている経営者や上司の方も多いでしょう。責任感ある社員を育成するには、仕事を「会社のこと」ではなく「自分ごと」として捉える姿勢が必要です。そのためには、経営者や上司からの問いかけや接し方が大きく影響します。
今回は企業の組織開発や、ビジネスリーダーの支援型リーダーシップ開発などを手掛ける、株式会社クエスチョンサークルの代表取締役・宮本 寿(みやもと ひさし)さんに、自走できていない社員に自走を促す方法などについてお話を伺いました。
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目次
自走を促すためには「問い」が有効
自発的に動くことができない部下が自走できるようになるためには、どのようにすればよいのでしょうか?
自走できる人とできない人の違いは「仕事をどれだけ自分ごと化できているか」という部分が大きく関係していると思います。部下が自走できるようになるために、私たちは問い(クエスチョン)というものが非常に有効だと考えています。この「問い」は「本人がどんな問いを持てるとよいのか」という意味です。
一例として、上司の質問に対して部下が回答する構図を見ましょう。このとき質問された部下には、回答するまでの間に考えるプロセスが発生します。実はこの考えるプロセスが、仕事を自分ごと化するうえで非常に大切なポイントです。
例えば営業部門において、部下が取引先のA社と関係があまり良くない場合には「以前はお客さまと、どんな付き合いができていましたか?」といった質問をしたとします。すると、部下はその理由を自分で考えるわけです。
その結果「そういえば、昔はうまくいっていたな」「アレがきっかけで、最近連絡が取りづらくなったのかも……」「前任の先輩は、こういうところを工夫していたな」というように思考を巡らせ、自分にはない視点が考えるプロセスの中に生まれます。また「A社とうまくいっていないことで、製造部にはどのような影響があると思いますか?」と質問すると、製造部の担当者に相談する機会や協力が得られるヒントが生まれることもあるでしょう。
中でも有効な質問が、If質問です。例えば「もし仮にA社に友だちが勤めていたとしたら、どんなことを聞いてみたいですか?」など、非現実的な質問をあえてしてみます。そうすると部下は、頭を揺さぶられるわけです。
もし友だちがいたら、「最近、会社の方針が大きく変わったことがあるのか?」など、A社を取り巻く環境に何が起こっているのか聞いてみたい、といった視点が部下に芽生えるかもしれません。すると「友だちでなくでも、担当のBさんに聞けばよいだろう!」といったアイデアが生まれる可能性があります。
もちろん、上司が部下に対して指示や命令を出すこともできますが、それでは部下の中に自分で考えるプロセスが生まれません。そのため、理解はできてもなかなか行動が変わらない可能性は高いでしょう。
行動を変えるために、私たちは意見やアドイスではなく、質問をしてあげることが大事だと考えています。自分自身で考えたことは、行動に変わりやすいのです。
上司が部下に投げかけるべき「問い」とは?
上司は部下に対して、どのような問いを投げかけるべきでしょうか?
「どうすればできそうか」「どうすれば上手くいきそうか」という具体的な解決手段までイメージできるような問いかけを心がけてください。これはユーザー目線で製品やサービスの本質的なニーズを見出し、解決する思考法である「デザイン思考」の中にある「How might We?」という考え方です。
例えば、メーカーに勤める開発者であれば「なぜうちの会社では、新製品が生まれないのだろう?」という問いを持ちやすいでしょう。この問いを突き詰めることによって、新製品が生まれない原因はわかるかもしれません。しかし、できない理由がわかったとしても、できないものはできなかったりします。
一方「How might We?」とは「どうしたら新製品が生まれそうか」という問いを持つ考え方です。常日ごろからこういった問いを持っていた方が、行動へのエネルギーが生まれたり、新しいヒントが得やすくなったりするでしょう。
部下に質問をする上司は、答えを準備しておくべきなのでしょうか?
いいえ、部下に質問する際に、上司はあらかじめ答えを持たないほうがいいでしょう。上司が答えを持ってしまうと、部下は上司の中にある答えを探すようになります。悪く言えば、上司の顔色を伺うようになってしまうのです。
上司は自分自身に成功体験があるため答えを持ちがちですが、部下が自分の中から探せた方が行動に変わりやすいので、避けるべきでしょう。
なお上司の側も「自分が上司として答えを持っていなくてはならない」というプレッシャーがあるかも知れません。しかし、上司が提供すべきは「答え」ではなく「問い」です。「問い」を上手く活用できるようになると、このプレッシャーからも解放されます。
上司はどんな姿勢で部下を指導するべき?
上司は部下に対して、どのようなかかわり方をするべきでしょうか?
私たちが推奨しているのは「支援型リーダーシップ」です。
通常リーダーシップといえば、グイグイ引っ張っていく統率型のイメージが強いでしょう。統率型リーダーシップの場合、上司が常に答えや基準を持っており、部下へのコミュニケーションは指示や命令になります。そのため、部下が指示待ちになる可能性が高いです。
上司は「自分で考えて動いてほしい」とは思いながらも、実際は自分の中で答えを描いてしてしまうことがあります。すると、内心は「自分の指示通り動いてほしい」となってしまいます。その結果として育まれるカルチャーは、部下が上司に与えられた問題を解決するスタンスになってしまいます。悪くいえば、指示待ちの部下に育つ可能性が高いということです。
一方、私たちが推奨している支援型リーダーシップは「部下や現場の中に答えがある」という前提に立っています。上司が部下の中に答えがあると思っていると、自分の中に答えがないので部下に聞かざるを得なくなります。その結果、部下の話を聞くために、質問や問いかけというコミュニケーションへと変化するのです。
部下は自分の中に答えがあるので、当然自分の中、もしくは現場から答えを探すようになります。そのため、部下が良い意味で周囲や上司を頼るカルチャーが醸成されます。部下が主体性や創造性を発揮して自ら問題を発見することは、責任感が生まれている状態だと言い換えられます。
新人など経験が浅い方の場合、自分で適切な答えが導きだせないケースもあると思います。そのような場合は、どのように指導するべきでしょうか?
その場合は、まずティーチング的なかかわりからスタートして、部下の成長とともにコーチング的なかかわりへと変化させていきましょう。ティーチングとは、教える側が主体となり、知識やスキルを伝授し、対象となる部下の成長をサポートするものです。
ここまでにお話した問いは、どちらかというとコーチング的に部下とかかわるアプローチになりますが、もちろん万能ではありません。コーチングは、問いかけながら、対象となる部下自身の気づきによる成長を目指すものです。上司が新人に対してむやみに質問をしても、新人の中に答えがないこともあるでしょう。上司は部下の経験やスキルに応じて、コーチングとティーチングを使い分けることが大切です。
統率型のリーダーシップが必要なシーンもあると思いますが、いかがでしょうか?
部下の成長がどのようなフェーズなのかによって、統率型と支援型を使い分ける必要があると思います。
部下の経験が浅ければ、統率型のリーダーシップでティーチング的なかかわり方をしてあげたほうがよいでしょう。部下が成長してきたら、徐々に支援型のリーダーシップに切り替えて、かかわり方を変えるという方法がおすすめです。
1つの事例ですが、太平洋戦争で連合艦隊司令長官を務め、数多く作戦の指揮を執った軍人の山本 五十六の言葉に「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。」という言葉があります。実はこの言葉には、続きがあるのです。
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて」というのは、先ほどのお話でいうところのティーチングのフェーズといえます。そして、次のフェーズである「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」は、まさにコーチングのスタンスです。
相手の中にも答えがあるので、それを聞いて承認し任せてあげることによって、ようやく人は育ちます。さらに言うと「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」は、エンパワーメントのフェーズだといえるでしょう。エンパワーメントとは、組織に所属するメンバー全員が自分で意思決定を行いながら、積極的に行動できるようにすることです。
ティーチングとコーチング、エンパワーメントというフェーズを、部下の成長に合わせて使い分けることが大切です。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
宮本 寿(株式会社クエスチョンサークル 代表取締役)
静岡県生まれ。明治大学商学部卒業。リンクアンドモチベーション、グロービスを経て、2007年に株式会社メロスパートナーズを設立。組織開発プロジェクトのファシリテーション、およびアクションラーニングコーチとして活動。2019年に株式会社クエスチョンサークルを設立。現在は「クエスチョン思考」と称した思考法の体系化や普及を通じて、クライアント企業の組織開発やビジネスリーダーの支援型リーダーシップ開発を支援している。
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