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最大3,500万円まで!無担保・無保証での融資が実現する「スタートアップ創出促進保証」【教えて吉田先生!】

2023.08.01

スタートアップ時期の企業経営者が抱える最大の課題として問題視されてきた「経営者保証」。融資を受ける際、経営者の個人補償が必須となる従来の仕組みでは、経営者への負担が大きく、起業・創業の阻害要因となっているとも言われ続けてきました。

政府はこうした課題をクリアにするために、経営者保証を不要とする「スタートアップ創出促進保証」制度を開始しました。これは信用保証会社が保証することで、最大3,500万円まで無担保・無保証で融資を受けることができる、画期的な創業融資制度です。

今回は「スタートアップ創出促進保証」制度について財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生に伺います。

※本記事は2023年7月7日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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スタートアップ創出促進保証とは何ですか?

スタートアップ創出促進保証とは、創業前~創業後5年未満の事業者を対象とする無保証人の保証制度です。

これまで個人事業主の場合は、個人保証を要求されることはありませんでしたが、法人の場合は、原則として経営者保証が要求されていました。しかし、本制度の創設によって法人も無保証人で融資を受けることが可能となりました。

スタートアップ創出促進保証制度の概要は、以下の通りです。

ポイントは、据置期間が一定の要件を満たす場合は最大3年となっている点です。これは、スタートアップ時期の企業にとってはとてもありがたいものといえるでしょう。

申請には、指定の「創業計画書」を作成する必要があります。また、自己資金要件として「創業資金総額の1/10以上の自己資金を有していること」という要件がありますので、注意してください。

融資後3年目および5年目には「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた助言を受ける必要がある点も、自治体などが実施している通常の創業保証制度とは異なり、大きな特徴といえるでしょう。

「創業計画書」および「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」とは、どのような資料ですか?

スタートアップ創出促進保証制度には、指定の「創業計画書」があり、申請する際はしっかりと作成する必要があります。

「創業計画書」には、金融機関による【確認状況記載欄】が設けられています。確認年月日や確認時間、確認方法、金融機関本支店名・確認者などの記入欄がありますので、金融機関からのアドバイスを受けながらの作成が必須です。

〈創業計画書〉

次に「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」についてです。本制度により融資を受けた後、会社を設立して3年目および5年目のタイミングで、中小企業活性化協議会による本チェックシートに基づく確認、および助言を受ける必要があります。

ガバナンス体制の整備に関するチェックシートについて不明な点がある場合は、取引先金融機関や顧問税理士などにアドバイスを受けるようにしてください。

〈ガバナンス体制の整備に関するチェックシート〉

対象に「分社化」と書かれていますが「分社化」とは何ですか?

「分社化」とは、中小企業者である会社(親会社)が自らの事業の全部または一部を継続して実施しつつ、新たに会社(子会社)を設立することです。支社や工場、一部署などを別会社(子会社)として独立させることと考えてください。

スタートアップ創出促進保証制度は、単に「これから創業する方」「創業後5年未満の法人」ばかりでなく「分社化予定者」(中小企業にあたる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある者)、「分社化後5年未満の法人」なども対象となります。経営戦略上、分社化などによる事業拡大を検討している企業や分社化後5年未満の法人にとっては、大変利用価値の高い制度といえるでしょう。

しかし、新たな会社への出資比率が著しく低く、かつ既存会社の資金以外の経営資源を活用していない場合は対象にならない可能性もあります。事前に金融機関または信用保証協会に確認してください。

スタートアップ創出促進保証の申請手順を教えてください。また、申請すれば必ず経営者保証なしで融資を受けることができますか?

スタートアップ創出促進保証制度の申請フローは、以下のような流れになっています。

国はスタートアップ創出促進保証に力を入れて実施していますが、申請すればだれでも融資を受けることができるわけではありません。当然ですが、各種審査を経て融資が実行されます。

スタートアップ創出促進保証制度を申請する場合は、まずは、指定の「創業計画書」をしっかりと作成することが大前提です。さらに事業計画の内容が伝わる追加資料(損益計画書、資金繰り計画書)などを揃えて提出することも、お勧めいたします。

既に創業されていて、顧問税理士がいる場合は税理士に相談しましょう。これから創業される方は、顧問税理士と契約されるのならその方に相談してください。融資の専門家や申請する予定の金融機関などでも相談に応じてくれます。とにかく丁寧に、しっかりと準備をして申請してください。

なお、スタートアップ創出促進保証についての詳細は以下をご確認ください。

(参考)
経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。|中小企業庁

※本記事は2023年7月7日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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