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【トップの視点】新しい時代に求められるリーダー像とは?激動する社会での経営戦略

2023.07.13

著者:弥報編集部

監修者:山崎 大祐

コロナ禍の終息を待たずに、物価高騰・人材不足などさまざまな社会環境の急激な変化が見受けられます。企業にも大きな影響を与え、これまでの経営方法では太刀打ちできないと感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、発展途上国で企画・生産したアパレル製品や雑貨を販売する株式会社マザーハウス副社長 山崎 大祐(やまざき だいすけ)さんにお話を伺い、今必要とされているリーダーシップ像や、未来を見据えた経営課題への取り組み方を伺いました。

コロナ禍に新しい食ブランド「LITTLE MOTHERHOUSE(リトルマザーハウス)」を立ち上げ、店舗展開も行うなど積極的な取り組みを続けてきたマザーハウス。経営戦略や事業展開に悩まれている方のヒントになれば幸いです。


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変化する社会で「リーダーが持つべき視点」とは

マザーハウスが考えるのは「Think globally, Act locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」という視点です。マクロとミクロ両方の視点、つまり多角的に物事を捉えることを指します。マクロとは、物事を俯瞰して将来のシナリオを描く視点です。一方、ミクロは目の前のお客さまに最大限の価値を提供できるかどうかを考え抜く視点です。

現代は、社会情勢などの全体を見ると同時に、一方で対個人に寄り添い、社員やお客さまとのやり取りも強化する必要がある、いわば究極的な時代です。リーダーはその状況を踏まえ、多角的に視野を持ちながら施策を打つ力が問われていると考えています。

マザーハウス 銀座店

「リーダーの視点」はどのように養えばよい?

多角的な視野を持つために、1つ実践いただきたいのは「教える」ことです。教えることのゴールは相手の成長ですが、これはまず自分が、本当の意味で物事を理解していないと教えることができません。自分のノウハウを体系化し、そこに再現性を持たせる必要があります。教えることで自分自身を振り返り、多角的な視野を持てるようになるでしょう。教えることで自分も教わるのです。

マザーハウスにおける実際の経営手法とは

マザーハウスでは、ボトムアップとトップダウンを適宜使い分けています。個々の課題解決能力が求められる現場はボトムアップの意思決定が効果的ですが、外的環境が劇的に変わる緊急時は、迅速な対応ができるトップダウンの経営方針に切り替えています。

コロナ禍での対策は、まさにこのトップダウンの意思決定が主軸でした。リスクと起こりうる事象を天秤にかけ判断するわけですが、多角的な視点を持ち「これだ」という確信があるからこそスピード感を持って動けるのです。

経営に関して起こりがちなのは「この場合はこうあるべき」という机上の空論が先行してしまうことです。実際は、さまざまな社会情勢変化が起こる中では、規格化された経営手法が最適ではないケースも多いでしょう。経営本来の目的は、その時の自社に合った方法で舵を取ることなのではないでしょうか。リーダーは都度、多角的な視点から経営判断を積み重ねていく必要があると感じます。

社会変動の激しい今、リーダーは何をすべきか

多角的な視点を意識したうえで、今一度企業の課題としてよく挙げられる「ヒト・モノ・カネ」を見つめ直してみましょう。

取り組むべき優先順位は、まず「カネ」の問題。経営者が金策に走る状態は避けたいので、先手を打ち、資金枯渇を未然に防ぎます。

次に組織の健康状態、つまり「ヒト」。慢性的な人出不足の解消や、会社文化の浸透などです。社員のモチベーションを上げるためには、ハードとソフト両方の施策が必要です。ハード面は、人事制度や評価システムなどの仕組み作りを指します。必要であれば、経営者も積極的に参加します。会社の文化は凝り固まりがちですから、外からの人材をバランスよく配置することも1つの策です。

仕組み作りは、試行錯誤をし続けることが重要となります。ソフト面とはマインドを指します。経営者は、社員の本当の意味での幸せを考え「全員でサステナブルに走り続けられる環境を整える」マインドが必要になります。私自身も、自分の考えを押し付けるのではなく一人ひとりの価値観を理解し、それぞれの幸せを考えるようになってから、社内の雰囲気もより良くなったように感じます。これらのフォーマルとインフォーマルな部分の施策を組み合わせることで、皆が気持ちよく働け、志の高い組織となるのです。

バングラデシュ マトリゴール工場で働く方々

そのうえで「モノ」、自社の商品やサービスが今の価値観(需要)に応えられているかを見極めてください。この数年で、人の価値観は急激に変わりました。画一的に「良い」とされてきたゴールに向けて皆が奔走していた時に比べ、多様な選択肢が増え、何をアンサーとするかは、個人の考え方しだいで大きく異なるようになってきたのです。多様化する「豊かさ」に、企業もどのように貢献できるかが問われる時代を迎えています。

その他、今リーダーが気を付けるべきこととは

この数年で大きく変化した世界や、過去の成功体験が通じない状況を踏まえ、現場を改めて自分の目で見てください。そこから気づかされることが多くあるはずです。

最近では、リモートワークにすっかり慣れ、場所に囚われず仕事ができるようになった企業も多いかと思います。たしかに一見オンラインで滞りなく業務が進んでいるようにみえますが、私たちは実際に現場の状況を把握できているでしょうか。

私自身、遠隔で仕事をスムーズに完遂できていたという自負がありましたが、数年振りに海外の現場を訪れた際、そこでしかわからない課題を発見しました。幸い、すぐに対応し事なきを得ましたが、軌道修正しないままに事業展開をし続ければ、どこかに歪みが生じたでしょう。日々の業務オペレーションを遂行することが目的になってしまうと、仕事の本質を見失ってしまいます。我々は何のために働いているのか、本質的な目的を社員に再共有し、そのうえでの軌道修正が肝要なのです。

インドネシア スラウェシ島のカカオ農園でカカオの採取をする山崎さん

仕事場所が限定されなくなったということは、逆をいえば自分がどこにいるべきなのか考えて行動できるようになったということです。オンラインの力が強くなった一面、現場の力もさらに強まったといえるでしょう。

コロナ禍を経て、リーダーとして改めて思うこと

コロナ禍では、未曾有の危機に対峙しなければいけませんでした。そのような状況での危機回避行動は基本的に「固まる・逃げる・戦う」の3つで、各社それぞれ応急的な施策を行ってきたことでしょう。

例えば私たちは、コロナ禍で初の食ブランド「LITTLE MOTHERHOUSE(リトルマザーハウス)」を立ち上げました。フェアトレードの観点から、発展途上国が抱えるカカオ問題に働きかけるプロジェクトです。

LITTLE MOTHERHOUSEの日本の四季を色で表現したチョコレート「IRODORI CHOCOLATE」

この混沌とした時代だからこそ、学び、見出せることも大いにあると考え発足しました。自社にとって何がベストかを考えた結果、今だからこそできることを模索し戦う道を選んだのです。

現在は、少しずつではありますがようやく日常に戻りつつあります。価値観も含めて、決して元通りというわけではありませんが、新たな時代の中で会社の状態を整えつつ、先を見据える経営手法に立ち返る時なのではないでしょうか。改めて「何のために会社を経営するのか」を再考し、施策を行うタイミングなのです。成功するかしないかの一軸だけでなく、長期的視点で見て会社のためになり、活性化するのであれば、それは実行すべきことです。

見通しの立たない状況で、当座の課題解決に勤しむ企業も多かったでしょう。度重なる社会情勢の変化の中で、疲弊している企業は多いと思いますが、ここからが正念場です。改めて経営と向き合い、リーダーとして舵を取る時なのではないでしょうか。


株式会社マザーハウス
LITTLE MOTHERHOUSE


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

山崎 大祐(株式会社マザーハウス 代表取締役副社長)

2006年、山口絵理子と共に「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念とする株式会社マザーハウスを立ち上げ、2007年から取締役副社長として、本格的に経営に参画する。2019年3月より、同社代表取締役副社長に。年間の半分は途上国を中心に海外を飛び回り、マーケティング・生産両サイドを管理している。また、「Warm Heart, Cool Head (熱い情熱と冷静な思考)」この2つを両立しながら社会を変革していくために、挑戦を続けている方々をゲストに招き、対談を通じて現在の挑戦につながるきっかけや、結果を生み出すための戦略・思考を議論する場「マザーハウスカレッジ」や同じテーマで経営者向け経営ゼミなども代表として運営。

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