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SNSでの集客だけでは不十分?和食店の女将が考える口コミや紹介の「アナログ集客」の重要性、顧客と強固な関係を作る方法

2022.08.18

著者:弥報編集部

監修者:小保下 グミ

実店舗の来客数を増やすため、SNSをはじめとするインターネットでの集客に力を入れている経営者は多いかと思います。しかし、お客さまとなりうるすべての人がネットでお店を見つけているわけではありません。ネット集客のみに頼っていると、このような人たちを取りこぼしてしまいます。

こうした方たちに向けては「口コミ」や「知人からの紹介」のようなアナログなアプローチが有効です。このようなアナログ集客はお店とのマッチング率を高め、確実にリピーターを増やすことに繋がります。本記事では、特に顧客との強固な関係に結びつきやすい口コミや紹介を取り付ける方法について、詳しくご紹介します。


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「ネット集客全盛の時代」でも、インスタやツイッターの非ユーザーは意外に多い

今やSNSやインターネットでの集客が当たり前の時代になりました。ですが、お店にお客さまを呼び込んだうえ、さらに強固な関係も作りたいと考えた場合、はたしてこれだけの対策で十分なのでしょうか。

総務省の調査によると、10〜60代すべての年代において、LINEやYouTubeを含むSNSの利用者は8割を超えています。これは、どの世代も何かしらのSNSを利用をしていることがうかがえる結果です。

しかし、店舗集客によく利用されているInstagramやTwitterのユーザーが50%を上回る世代は、実は10〜20代のみ。年代が上がるにつれて、SNSの利用者は減少するというデータが出ています。これらのツールに頼りきりのお店は、残りの非ユーザーの顧客を取りこぼしている可能性があるのです。

ちなみに、当店の顧客層は40~60代のミドル世代が中心なので、InstagramやTwitterはもちろん、インターネット検索自体を利用していない人も少なからずいます。ですから、アナログな集客方法は必須です。

そんな当店が特に重要視しているのが「口コミ」や「リアルな知人からの紹介」です。

昔も今もリアルな知人からの紹介はアツい。その理由とは?

アナログな集客といっても、さまざまな方法があります。当店のお客さまから聞き取りした話によると、お店探しにネット検索やSNSを利用していない方は「雑誌や地域情報誌」「知人からの紹介」「生活圏内でたまたま目に留まったお店をチェックする」などして情報をキャッチしているそうです。ポストに投函されるチラシをこまめに見ている人もいるといいます。

その中でも当店が「知人からの紹介」に重きをおいている理由は、一見さまよりも常連になりやすい傾向があるためです。これはおそらく「蕎麦好きの友人も、また蕎麦が好き」というように、仲の良い知人とは趣味嗜好が合うからではないかと想像します。また、店内の雰囲気や商品の内容などをあらかじめ紹介者から忖度なく聞けることで、自分の好みとマッチしているかどうかを、よく検討したうえで来店できるからかもしれません。

お店側にとっても紹介で来てくださったお客さまは、紹介者の話題などで盛り上がりやすく、信頼関係が築きやすいメリットがあります。さらに、一度お店やスタッフに親しみを感じてもらえると、その後リピーターになっていただきやすい傾向にあるのも、知人の紹介のありがたいポイントといえるでしょう。

 私自身、ネット検索やSNSで調べて訪れた店より、知人から紹介されて訪れた店の方がその後もよく通っている傾向があります。理由はやはり、知人の知人というだけで初対面でも親近感が湧くからです。それにお店側からも、紹介者の顔を潰さないようにと何かと気遣ってもらえることが多く、結果的に満足度が高くなる傾向もあります。

知人からの紹介を集める際に意識したいのは「上流から下流へ」の考え方

では、知人からの紹介を集めるコツはあるのでしょうか。私が意識しているのは、川の流れに例えた「上流から下流へ」の考え方です。

飲食店経営の場合、上流にあたるのは例えば地域の組合やPTA、サークル活動などさまざまな組織に所属し、各方面に知り合いがいる顔の広い人となります。来店するたびに、違うお客さまを連れてきてくださるような方ですね。あるいは、アクティブでコミュニケーション好きな人。定期的に趣味の仲間と集まって食事会を開いてくださったり、情報通で、来店された際には地域の最新情報をいち早く教えてくれるような方たちです。こういった方にひとたび良い評判が伝わると、一気に周囲に広まります。この他、飲み会の際に部下を数多く従えて来店されるビジネスパーソンや、お客さま同士の会話の中で「次はあの店に行こう」と発言するなど店選びの決定権を握っていると思われる人、宴会の幹事なども「上流」のお客さまです。

要するに「上流」とは、SNSでいう「フォロワー数が多く、拡散力と周囲への影響力がある」お客さまのこと。リアルな知人から紹介を取り付ける集客方法とは、実は元祖インフルエンサーマーケティングなのです。

「上流のお客さま」にはどんな対応をしたらいいのか

実際に、上流のお客さまにはどんな対応をしたらいいのでしょうか。

私が普段行っているのは、当店の常連である企業の重役に「今度お客さまをたくさん連れて来てほしいです!」というストレートなお願いです。ただ、闇雲に言ったところで忘れられたり後回しにされたりしてしまうので、歓送迎会、大型連休前、年末や年度末など、人が集まりやすい時期が来る少し前にそれとなく予定を確認します。そうすると、予約を入れていただきやすくなります。

前述のように、店選びの決定権はグループのトップではないこともあります。日頃のコミュニケーションの中からどのお客さまが店選びのキーマンなのかを、しっかりと把握しておくことをおすすめします。

また、上司が部下を連れて来店されるような場合、基本的に連れてこられたお客さまが別の日に単独で来られることは、あまりありません。一方で、例えば上司が出張などで不在のときや、転勤や退任などで来店できなくなった際には、同じグループ内の別の方が引き続き社内の人を連れて来店してくださるケースが多くあります。このように、人の入れ替わりが激しい企業勤めの方々には、数珠繋ぎのように次から次へと店を受け継いでもらえると、売上が安定します。

また、当店では顔が広く拡散力のあるお客さまには、歴史やこだわりなどについても積極的にアピールしています。料理に関するトリビアや裏話なども、関心がありそうなら折を見て伝えていますし、新メニューを出すときは真っ先に試飲・試食をしてもらい、なるべくたくさんの人たちに伝えてもらえるよう依頼します。

なぜこのような取り組みをするのかというと、もともと知り合いが多く話好きなお客さまというのは「あの店のこれが美味しかった」「ここが良かった」というような情報を、いろいろな場面でたくさんの人に提供しているためです。新メニューの情報など伝えたいことがあるなら、より拡散力のある人にお任せしたほうが、自分たちで地道に伝えていくことよりも高い効果が期待できます。加えて、せっかくなら単に「あのお店おいしかったよ」と紹介していただくよりも「戦前からやってるらしいよ」「無添加にこだわりがあるんだって」などと詳しい情報が付随する方が、話し相手により興味を持ってもらえるのでは?と、私は考えます。

「おいしい」だけでは個人の感想になってしまい、自分にとってもおいしく感じるのかどうかはわかりません。人によっては老舗ブランドに信頼を持つ人もいれば、食の安全性を重視する人もいます。来店した際のミスマッチをなるべく防ぐためにも、情報はたくさん伝わるに越したことがないのです。

本来であれば、これらの情報はすべてのお客さまにお伝えしたいところですが、人員的・時間的に現実的ではありません。そのため、川が上流から下流に流れるのと同じように、拡散力のあるお客さまに代表して伝えているのです。

アナログ集客でお客さまと強固な関係を作ろう!

運用しだいで多くの人にリーチできるSNS・ネット集客は、大変便利ではあります。しかし同時に、こうしたツールを頻繁に利用する顧客もまた、次から次へと新しいお店、新しい商品を試したい気持ちを持っており、特定の店に通うことへの足かせとなっているのも事実です。常に新規の顧客を追い求めるのは骨が折れるものですから、リアルな知人からの紹介で顧客と強固な関係を作ることも、同時に目指してみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

小保下 グミ(老舗和食店の女将)

老舗和食店の女将。夫が後を継いだ家業で経営全般に関わる。現在は休業中。
noteにて定期購読マガジン「小さなお店のちいさな女将」を運営。飲食店経営や自営業の生き方・働き方について発信中。

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