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【2023年版】企業再生などに活用したい政府実施の資金繰り施策を紹介【教えて吉田先生!】
2023.05.24
著者:弥報編集部
著者:吉田 学
新型コロナウイルス感染症の影響の長期化や世界的な物価高騰が続き、依然として多くの事業者が厳しい状況に置かれていると思います。
このような状況を打開すべく、2023年も引き続き政府は資金繰り施策を継続することを決定しました。今回は、2023年に実施される資金繰り施策について、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生に伺いました。
他にも、中小企業が融資を受ける際に経営者が連帯保証人となる「経営者保証」に関して、2022年12月23日に「経営者保証改革プログラム」が公表されています。これは、中小企業の経営者にとっては朗報といえるでしょう。こちらについても、詳しく解説していただきましたので、ぜひ参考になさってください。
※本記事は2023年4月10日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。
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目次
2023年に政府が実施する予定の資金繰り施策を教えてください。
2023年1月以降にスタートしたメインの施策は「コロナ借換保証制度の創設」および「経営者保証を徴求しない創業時の信用保証制度の創設」となります。
資金繰り施策の具体的な内訳は「資金繰り支援:2,981億円」「事業再構築補助金:5,800億円」「生産性革命推進事業:2,000億円」などです。
〈令和4年度補正予算(中小企業・小規模事業者等関連)〉概要
資金繰り施策:2,981億円の具体的な内容を教えてください。
資金繰り施策は、大きく2つの内容で構成されています。
1つ目は「コロナ借換保証制度」です。こちらは、民間金融機関によるゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)からの借換需要などに対応する保証制度です。さらに追加融資も可能となっています。2023年1月10日から開始されておりますので、借換を希望される事業者の方は取引先の金融機関に早急に相談してください。
(参考)
民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。|中小企業庁
2つ目は「創業時に課題となる経営者保証を不要とする信用保証制度」です。正式名称は「スタートアップ創出促進保証」制度といいます。こちらは創業から5年以内の事業者に対しては経営者保証を必要としない、保証上限額3,500万円の制度です。2023年3月15日から開始されています。
詳細については、以下のページにてご確認ください。
「事業再構築補助金:5,800億円」の概要について教えてください。
事業再構築補助金は新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取り組みを通じた規模の拡大などの、思い切った事業再構築に意欲的に取り組む中小企業などを支援する補助金です。第10回公募は2023年3月30日にスタートしています。締切は2023年6月30日18時までです。
第9回から、新設枠として「成長枠」や「グリーン成長枠(エントリークラス)」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靱化枠」などが創設されます。成長枠に対しては、グリーン成長枠と同様に売上減少要件が撤廃されることが決まりました。また、大胆な賃上げに取り組む事業者には、更なる補助率・補助上限の引上げなどが実施されます。
〈全体図〉
「生産性革命推進事業:2,000億円」の概要を教えてください。
生産性革命推進事業とは、いわゆる「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」のことを示します。
具体的には、ものづくり補助金については、「グリーン枠」が拡充され、「グローバル市場開拓枠」が新設されることとなりました。
小規模事業者持続化補助金については、2023年10月より実施されるインボイスに対応した「インボイス枠」の補助上限額が拡充され、課税事業者に転換する事業者の補助上限が50万円上乗せされます。
「IT導入補助金」については、今後もインボイス対応に必要なITツール導入に関して、促進の継続が決まりました。
「事業承継・引継ぎ補助金」については、地域別最低賃金+30円以上であれば、補助上限額が600万円から800万円に引き上げることが可能です。
(参考)
中小企業生産性革命推進事業|独立行政法人 中小企業基盤整備機構
2022年12月23日にスタートした経営者保証改革プログラムとは何ですか?
中小事業者が金融機関から融資を受ける際には、多くのケースで経営者個人が会社の連帯保証人となる「経営者保証」が求められます。この経営者保証は「創業者や経営者による思い切った事業展開を躊躇させる」、「円滑な事業承継や早期の事業再生を阻害する要因となっている」と指摘されてきました。政府はこのような課題を解消するために「経営者保証改革プログラム」を策定し、スタートさせています。
経営者保証改革プログラムは「スタートアップ・創業」「民間金融機関による融資」「信用保証付融資」「中小企業のガバナンス」の4分野に分かれており、経済産業省、金融庁、財務省が連携して実施することになっています。以下、一部抜粋して簡潔に説明いたします。
1.スタートアップ・創業
既に説明した通り、起業家が経営者保証を提供せず資金調達が可能となるよう、経営者保証を徴求しないスタートアップ創出促進保証制度が実施されています。また、日本公庫などにおける創業から5年以内の者に対する、経営者保証を求めない制度の要件緩和なども実施されています。
2.民間金融機関による融資
民間金融機関の安易な個人保証を必要とする融資を抑制するために、経営者保証を要求する際の手続きが厳格化されます(2023年4月より運用開始)。具体的には、保証契約の必要性などに関し、事業者と保証人に対して個別具体的に説明をすることが事実上義務化されます。同時に金融庁に「経営者保証ホットライン」も設置されます。
3.信用保証付き融資
経営者の取組しだいで達成可能な要件を充足すれば、信用保証料の上乗せ負担などにより経営者保証の解除を選択できる制度が創設されます。
4.中小企業のガバナンス
経営者保証を解消するためには事業者側の財務改善なども必要となりますので、そのための官民による支援態勢が構築されます。具体的には、企業体制を整えるためのチェックシートの作成、認定支援機関向けの実務指針の策定、中小企業活性化協議会の機能強化などが実施されます。
経営者保証改革プログラムについては、中小事業者にとっては、“経営者保証”という経営の根幹にかかわる分野ですので、とても重要です。しかし、やや専門的な内容になりますので、詳細や今後自社が取るべき行動などについては、まずは顧問税理士(認定支援機関)などに相談してみることをお勧めします。
※本記事は2023年4月10日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。
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弥報編集部
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吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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