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来店数を増やすにはお客さまに直接お願いするのもアリ?必要な伝え方を老舗和食店の女将に聞く

2023.05.24

著者:弥報編集部

監修者:小保下 グミ

飲食店や美容室、接骨院などの店舗型ビジネスは俗に「待ちの商売」だと言われますが、あらゆる業界で供給過剰が起こっている現代は、もはや待っているだけでお客さまに来てもらえるような時代ではありません。そんな悠長なことを言っていると、積極的に集客活動を行なっている他店にどんどんお客さまを取られ、果ては閉店せざるを得ない事態にまで発展してしまいます。

では、どうすればよいのか。私のおすすめは、文字どおりお客さまに直接、来店をお願いする方法です。SNSで宣伝したりチラシを配ったりするのも悪くないですが、ライバルのどのお店よりも早く、より確実に来店に結びつけるには、ダイレクトにお客さまに働きかけることがより効果的な方策となります。

実際に直接お客さまに来店のお願いする際にはどのように声を掛け、どのような点に気をつければいいのでしょうか。私自身の経験を元にご紹介したいと思います。


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世の中には「お願いされて初めてその気になってくださるお客さま」がいる

「お客さまに来店のお願いをするだなんて、図々しくて気が引ける」と感じる人もいると思います。私自身も、そうでした。もともと人に頼ることが苦手で、ましてやお客さまに来てください、買ってくださいとお願いをするだなんて考えられませんでした。当店の料理やサービスを気に入ってくださる方だけ来ればいいだろうと思っていましたし、わざわざ嫌われたり鬱陶しがられるリスクを犯してまで、こちらから来店を促す必要がどこにあるのだろうと考えていたのです。

でも、接客の仕事をしているうちに、こうした考えのままでは、来てくれるはずのお客さまを取り逃がしてしまうことに気づきました。

実はお客さまの中には「来てほしいです」とお願いされて初めてその気になってくださる方が一定数います。例えば飲食店だと、外食する機会が多いものの特定の店にだけ通うのではなく、いろいろな店を訪問しているような方に多いです。こういう方が一度来店され、その後自店に再び足を運んでもらえない理由は、気に入っていないからではなく、その他多くのお店に埋もれ存在を忘れられてしまっている、あるいは優先順位が低くなってしまっている可能性が考えられます。

存在が薄くなってしまっているだけで嫌っているわけではないので、思い切ってこちらから「どうですか?来てもらえませんか?」と声をかけることで、思い出したかのように「じゃあ行こうか」と予約を入れてもらえる可能性が高まるのです。

単純に、人からのお願いに弱い方もいます。災害や疫病の蔓延などでお客さまが来られず困っているオーナーがいると聞くと、じっとしていられない性分の方たちです。自分が店に足を運ぶことで何かの役に立つのならと、応援の気持ちで来店してくださいます。こうした場合も、店側がただ黙っているだけでは何も伝わりません。自店の状況はこうで、こんなことに困っているんだと言葉にしないことには、お客さまがこちらの事情を汲み取って来店してくださるなどということは、ほぼないのです。

気に入っている店が複数あったとしたら、声を上げる人のところへ優先して足を運ぶのは自然なことといえます。だからこそ「気が引ける」などと言わずに、多少の図々しさを持ってでも来店のお願いをするべきなのです。

お客さまにお店からのお願いを聞いてもらうには?ポイントは2つ!

では実際に、私が今までどんな方法でお客さまにお願いし、来店に結びつけてきたかをご紹介します。

  • 道端でばったり遭遇したお客さまに「今週待ってますね〜!」と冗談半分で声を掛けたら、後日久しぶりに来てくださった
  • ある企業の偉い方が来店された際に「忘年会の店が決まってないなら、どうかうちで!」とお願いしたら、その場で予約して帰ってくださった
  • 最近ヒマなんで、会社の若い人いっぱい連れてきてください!と頼んでみたら、後日何人かを連れて来店してくださった

どれもダメでもともとのつもりだったのですが「お願いします!」と軽い調子で言ってみると、意外に皆さん快諾してくださり、おもしろいように集客をすることができました。言ってみないとわからないものですね。

このように店側のお願いをお客さまに聞いていただくには、実はちょっとしたポイントが2つあります。

1つ目は、普段からお客さまのちょっとしたわがままやお願いを聞いておくことです。例えば忘年会の例。その季節になったら早めにこちらから予定を聞き、まだ店が決まってないようであればお願いしてその場で予約をしてもらうなんて図々しいと思われそうですが、その代わりに、このお客さまからのメニューのリクエストには可能な限り、ほぼ100%答えるようにしています。日ごろから好みを把握しているので、言われなくても用意することも多々あります。料理を取りわけてほしいとか、量の調整をしてほしいといったようなイレギュラーな要望も、可能な限り受けています。他のお客さまには言えませんが、閉店時間が少し過ぎてしまってもOKにしてしまうこともあります。

おそらくこれらのお客さまにとって、周辺では当店ほど使い勝手の良い店はなく、だからこそ、当店からの少々強めな声掛けも聞き入れていただけているのだろうなと想像しています。お願いを聞いてもらえそうなお客さまとは、持ちつ持たれつの関係を作ることを目指してみてください。

2つ目は、愛嬌のあるキャラクターで接することです。愛嬌とは、ニコニコしていて可愛げがあり、どこか憎めない表情やしぐさをもった性格のこと。老若男女に関わらず、愛想が良くてニコニコしている素直で愛らしい人は、ともするとお願いをしなくても周囲が勝手に手を差し伸べてくれることもあるぐらい、得な存在です。

当店には以前、とても愛想のいい女子大学生のスタッフが在籍していました。彼女はアルバイト経験もそんなになく、おっちょこちょいでケアレスミスも多いスタッフでした。ただ、とにかく愛嬌はたっぷりで、大学を卒業すると同時に当店のアルバイトも卒業することになったとき、常連さまに自ら声をかけ、なんと最終日の予約を満席にしてしまったのです。これは今でも当店の伝説となっています。

愛嬌を後天的に身に付けるのは、なかなか難しいものではあります。しかし顧客ビジネスをするなら持っていて絶対に損はない素質なので、少し意識してみるといいと思います。

相手はあくまでもお客さま。「気をつかわせない&強要しない」のが鉄則です

お客さまにダイレクトに来店のお願いをするに当たっては、注意点も2つあります。

1つ目は、お願いを聞き入れることができなくても断りやすい雰囲気を作ることです。いくらお客さまの立場とはいえ、店側からのお願いを断るのは気を使うものです。気まずい気持ちにさせてしまわないよう、明るい雰囲気でジョークなどを交えながら話をすると良いでしょう。

2つ目は、しつこく強要しないことです。相手はあくまでもお客さまです。家族や友人ではありません。少しお願いしてみて、良い反応が得られなければ話題を変えるなどして、無理に押し通すことのないようにしましょう。お願いを聞き入れてもらえなかったことに対する不満の気持ちを態度に出すなどは、言語道断です。

忘れてはならないのは、お客さまに店側のお願いを聞いていただけたら、きちんと感謝の気持ちを示すことです。何度も言いますが、店側のお願いを聞いてもらえるような関係性になったとしても、相手はお金を払って来てくださっているお客さまであることには変わりありません。本来、店側の要求を聞き入れる義務などまったくないのです。お願いを聞いてもらえることを当たり前だと思わず、その都度忘れずに感謝の気持ちを示しましょう。感謝の気持ちが伝われば、いざというときにはまた必ずや、何かしらの力になってくださるはずです。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

小保下 グミ(老舗和食店の女将)

老舗和食店の女将。夫が後を継いだ家業で経営全般に関わる。現在は休業中。
noteにて定期購読マガジン「小さなお店のちいさな女将」を運営。飲食店経営や自営業の生き方・働き方について発信中。

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