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経営者の接し方次第で社員のパフォーマンスは変わる!『トップ5%社員の時間術』著者に聞く社員のケース別パフォーマンス改善術

2023.06.20

「うちの社員、もしかしてパフォーマンス低い?」と感じたことのある方はいませんか?社員に依頼した仕事が予定通りの期日で完了しなかったり、時間がかかっているわりには思ったような仕上がりではなかったり……。そんな社員のパフォーマンスを上げるために、経営者はどのようなマネジメントを行うのがよいのでしょうか?

社員のパフォーマンスが上がらない原因はさまざま考えられますが、今回はよくある4つの原因に絞って、パフォーマンス向上術を解説します。「納期が迫っているのはわかっているけど、どうにもやる気がでない」「完璧な成果物を目指して作成していたら納期にまでに終わらなかった」など、だれにでもありそうな原因をピックアップしました。

お話を伺ったのは『トップ5%リーダーの習慣』や『トップ5%社員の時間術』の著者でもある、株式会社クロスリバー越川 慎司 さんです。


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社員のパフォーマンスが向上しない原因はどこにある?

社員のパフォーマンスが向上しない原因は、社員自身が完璧な成果物を目指しすぎていたり、時間管理がうまくできない点にあります。良かれと思って取り組んでいることが、逆効果になっているケースです。

成果を出せる人も出せない人も、無駄な時間は1秒たりとも使っていません。無駄だと思って仕事をしている人は、ほとんどいません。

こうした行動を変えるには、経営者は社員の話を聞き、その様子を観察しながらその内なる答えを引き出し、目標達成へと導くコーチングが有効です。

時間管理が苦手な社員のパフォーマンスを向上する方法

時間管理やスケジューリングが苦手で「何から手をつけたらよいかわからない」という社員には、どのようにコーチングするべきでしょうか?

まずは、休日前に振り返りを実施してもらうことから始めてください。これは、時間管理やスケジューリングが苦手な人が、効率よく仕事を行う最も簡単な方法の1つです。休み前に15分だけでいいですから、振り返りを行い、成果がだせなかったこと、効果に繋がらなかったものを自覚させるようにしてください。振り返りを行うだけで、無駄な作業が11%も減らせた実証実験における再現結果もあります。

例えば土日休みであれば、休み前の金曜日に少し仕事を止めて、コーヒー飲みながらスケジュールを見て、この一週間何をやったか振り返ってみましょう。そうすると、移動が多く何もできなかった時間があったことや、資料作りに時間を取られすぎたことなどが見えてきます。

働く時間の75%は資料作りや会議、メール、チャットなど、振り返らないと成果が出たかどうかが判断できない作業です。「会議に参加したけど発言しなかった」「派手なパワーポイントを作ったけど意味がなかった」といったことに気付くことで、無駄な作業か、必要な作業かが理解できるようになります。

仕事の納期も迫っており、やらなくてはいけないのはわかっていても、やる気が出ない……そんな社員にパフォーマンスを発揮してもらうために有効な手法があれば、教えてください。

有効な手段として、仕事の初動を早めに設定することが挙げられます。

成果を出し続けるトップ5%社員と違い、成果が出るときと出ないときの差が激しい人は、やる気に頼っています。やる気があるときは仕事をしますが、ないときはしない傾向が高いでしょう。しかし、これではなかなか成果が上がりません。したがって、やる気に関係なく行動するルーティン(決まった手順)を作ることが重要です。トップ5%社員は、それを実践しています。

例えば企画書を作る場合には、頭の中で内容を検討するだけではなく、とにかく一行目を書く。行動に移すタイミングは、早ければ早いほど高い効果が期待できます。ですから、仕事を受けたらすぐに取り掛かれるしくみを作りましょう。

社員が日々の業務に忙殺され仕事に対して達成感が得にくく、そのためにパフォーマンスが向上しない場合は、どのようなマネジメントやコーチングを行うべきでしょうか?

部下の達成感を高めるためには、2つのポイントがあります。

1つ目のポイントは、行動目標を設定することです。達成感を得るためには目標が必要です。まずは部下と一対一で話しあって、具体的な行動目標を決めましょう。例えば、売上を20%上げるという目標がある場合には「今月は提案件数を1.3倍にする」「提案資料を2ページブラッシュアップする」などです。目標達成時には、フィードバックも忘れずに行いましょう。

2つ目のポイントは、仕事のプロセスを褒めることです。特に中小企業やベンチャーでは、成果だけが評価される傾向があります。しかし、部下が本当に嬉しいのは、結果ではなくプロセスを褒められることです。成果だけではなく、頑張った努力や工夫した方法なども評価し、褒めましょう。これによって、部下のマインドが自己否定から自己効力感へ変化するため、成果をより上げやすくなる効果が期待できます。

納期やスケジュールを守れない社員に遵守させる方法や、対処法を教えてください。

部下に納期やスケジュールを守らせるためには進捗20%で先を見据えて、これからどのように仕事を進めていくかを検討する方法が効果的です。

通常の経営者は、納期までに仕事が終わらないと、部下を一方的に怒ったり叱ったりします。これは外発的動機付けと呼ばれるもので、仕事には必要なことです。しかし、部下が怒られ慣れてしまうと、もうこの方法は使えません。外発的動機付けで、期限内に仕事をさせることは、3回までです。したがって、部下自身が「やらなきゃまずい」と思うように、内発的動機付けへと切り替える必要があります。

そのためには部下の意識を変える必要がありますが、意識は放っておいても変わりません。また納期がギリギリの場合、間に合わなくなるリスクもあるため、早めに確認するためのチェックポイントを作ることが大切です。

そこで、先述したように報告書などの資料作成時に「進捗20%で上司と部下で内容を確認しあう」というルールを作ることをおすすめします。上司が資料の目次やページ数などを、1分程度内容を確認して「この感じでよいから続けて」というフィードバックを与えます。これだけでも無駄な資料作成を抑制できますし、上司が確認することで、部下も「早く仕事を進めよう」と意識する効果が期待できるでしょう。

進捗20%時点でアウトプット制作物の今後の進め方を検討する作業は、非常に効果的です。実際に行ってみると、差し戻しが74%減ることがわかりました。

完璧主義になりがちな社員のパフォーマンスを上げる方法

細かいことが気になる完璧主義で、なかなか仕事が進まない社員に対しては、どのようにコーチング、マネジメントをするべきでしょうか?

完璧主義で、なかなか仕事が進まない人に対しては、2つのアドバイスがあります。1つは、100%を目指さないことで、もう1つは失敗を許容することです。

100%を目指さないこととは、完全な成功を目指さないということです。世の中100%のものなどない、100%の成果物などを作成することは不可能と考えたほうがよいでしょう。なぜなら、依頼された側の100%が依頼した側の100%とは限らないからです。

そして失敗を許容するというのは、その失敗から何かを学び取ることに主眼を置くということです。実は、成果を残す人たちは失敗も多くしています。トップ5%社員のほうが、失敗する回数は多いのです。ただし彼らは、それを「失敗」と表現せず「学び」と呼びます。

成功を目指さないのも1つの方法ですし、失敗してもそれを学びに変えるのもよいと考えましょう。上司からフィードバックされると、部下の精神的なハードルが下がりますし、仕事の速度も上がります。

散漫で仕事に集中できない社員のパフォーマンスを上げる方法

メールやスマホの通知が気になり、仕事に集中できない社員に対しては、どのように対処するべきでしょうか?

仕事に集中できる環境を整えるために、視覚を整理すること、そしてパソコンとスマホの通知設定を変更する方法などで対処してみてください。

仕事をしている環境にスマホやお菓子があったり、YouTubeを見られる状況があったりする場合は、それらに気を取られるのは仕方のない部分があります。スマホを触りたくないのであれば、遠くに置くというように、集中力を阻害するものは物理的に遠ざけましょう。机の上を綺麗にしたり、パソコンのデスクトップやタスクバーを整理したりすることなどは高い効果が期待でき、これを実施するだけでも集中力が確実に高まります。

一方、集中力を妨げるものの多くが、アラートをあげるものです。ビジネスではTeamsやSlackなど、プライベートではInstagramやTwitter、Facebookなど、人とつながるアプリやツールなどが挙げられます。これらから通知が出てくると、人はどうしても気になってしまうものです。まずは、パソコンとスマホの通知設定を変更してみてください。初期設定のままで使っている人も多いかもしれませんが、例えばSlackの設定は自分宛だけを通知するようにしたり、通知時間を絞ったりすることなどでコントロールできます。

テレワークでなかなか仕事に集中できない社員への対策はありますか?

テレワークでも同様に、まずは視覚を整理することから対策してみてください。家庭の環境や関係性が難しくて、集中する時間や場所が確保できない場合は、集中する時間としない時間を切り分けることと、視覚に邪魔が入らない集中できる環境を整えることをおすすめします。時間を区切ることは自分1人で取り組むことが可能ですが、子どもの声やペットの鳴き声などで仕事に集中できないときは、まずそちらに対応してみてください。そうすることで子どもやペットが落ち着き、結果として自分が集中できる時間を生みだすことができます。

理想としては、1人で静かに集中できる場所を準備したいところですが、難しい場合はバランスボールや立ち机で体勢を変えたり、近くのカフェで周りの目を利用したりすることも効果的です。試してみてください。

いわゆる”お局さま”のパフォーマンスを上げる方法

いわゆる「お局さま」のような社員のパフォーマンスを向上させる方法もあるのでしょうか?

方法はありますが、まず、相手に理解させて動かすのは無理だと思ってください。アドラーも言っていたように、人間はわかりあえないものです。必ずしも、仲良くなる必要はありません。そのため、相手の気持ちを上げるテクニックを使うことが大切です。

具体的には、次のような方法が考えられます。

まず褒めるときは、外見ではなく中身や能力を褒めてください。例えば「そのワンピース、素敵だね」ではなく「そのワンピースを選ぶセンスが素敵だね」などと伝えるようにしましょう。

そして、業務を依頼するときは、先に相手にとってのメリットや意義を伝えてください。例えば「これをやるとあなたの評価が上がりますよ」「これはチームのために大切なことです」と伝えることがポイントです。

また、最後に感謝の言葉を入れてください。「ありがとうございます」や「助かります」など、相手がやった前提で話すと、相手もやらざるを得なくなります。最後にもう一度「ありがとう」を伝えるのは、結構パワフルです。最後の「ありがとう」を忘れる人は意外と多いので、ぜひ取り入れてみてください。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

越川 慎司(株式会社クロスリバー 代表取締役社長)

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。創業当初から全メンバーが週休3日、複業(専業禁止)、7時間以上の睡眠を実践。約700社の中小企業に対して年間400件以上のオンライン講座を提供。著書『トップ5%リーダーの習慣』など29冊。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などメディア出演多数。

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