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売上拡大、利益確保はできた!では次に取り組むべきことは?【船井総合研究所が解説】

2023.06.15

「この時代、サービス業にとって売上拡大、利益確保以外に何かやるべきことはありますか?」という弥報Online読者からの声にお応えしました!

事業が軌道に乗り、一定の売上と利益が上がるようになってくると、経営者は次の一手を考える必要があります。しかし「次の一手」と言われても、具体的に何をするべきなのかがわからない方も多いのではないでしょうか。

考えられる選択肢はいろいろありますが、まずやるべきこととして挙げられるのが「社員の待遇面や、会社の組織力をもう一段階上げていく活動」。人材が最大の資本となるサービス業では特に、ここに力を入れないと倒産につながってしまいます。

今回は、船井総合研究所の大道 賢作(おおみち けんさく)さんに、利益確保の次に取り組むべきことについて、具体的に伺いました。


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売上拡大、利益確保の次なる一手は?考えられる選択肢

中小企業が売上拡大、利益確保の次にまずやるべきことを教えてください。

社員の待遇面や会社の組織力をもう一段階上げていく活動を推進しましょう。

例えば、営業利益が2,000万円ぐらい残る会社があったとしましょう。このとき、平均年収1,000万円の社員が10名いる場合と、平均年収300万円の社員が10名いる場合では、同じ2,000万円の利益確保だとしても状況はまったく違います。

近年、最低賃金の値上げが全国各地で行われるようになり「優秀な人にはお金を出す」という風潮が、日本企業にも少しずつ浸透しはじめている状況です。そのため社員の待遇を改善しなければ、長く働いてもらえなくなる可能性が高いと考える必要があります。

特にサービス業などの場合、人材が最大の資本になりますから、重要度は高いです。労働集約型のビジネスモデルなので、人材がいなくなると売上や利益を確保できなくなり、倒産してしまいます。

例えば、美容師業界においては、30歳前後で退職される方が多い傾向にあります。低賃金が課題となっている業界のため、結婚や出産などを機に、別の業種へ転職する方が増えることが主な理由です。その結果、新しい人材を採用して、育成するためのコストが実は多く必要となり、これは大きな課題といえるでしょう。

したがって、中小企業は利益が確保できているときこそ、社員の待遇面を改善し、長期的に働いてもらえるようにすることが大切と考えてください。

上記以外でやるべきこととしては何が考えられますか?

事業拡大や事業転換に取り組むこと、次なる危機に備えることなどが考えられます。また、借金を減らすなどの財務状況を改善する施策や、固定資産への資金投入なども重要ですから、余力があるタイミングで取り組んでいきましょう。

施策1.事業拡大&事業転換にトライ

中小企業が「次の一手」として事業拡大を視野に入れる場合、何から取り組むべきでしょうか?

既存事業の拡大や拠点展開と、第二本業のバランスをどのようにしていくのかを考えることをお勧めしています。今までやってきたビジネスで売上や利益を伸ばせているということは、ある程度勝ち方が見えているということでしょう。そのポイントをルール化し、採用や育成の速度、拠点展開の速度を上げ既存事業を拡大していくというのが一番、成功確率も目標達成速度も速いです。

一方で弊社では、数年前から次の一手としてお客さまに「第二本業化」を提案しています。相乗効果の得やすさから、多くの企業が本業の横展開に挑戦したいと考える傾向はあります。しかし安定性を求めたい場合は、違うターゲットの顧客にアプローチするべきでしょう。

本業に近い領域の新規事業は、比較的広げやすい反面、本業の収益が悪くなったときに共倒れするリスクも高いです。そのため、現業とは技術を収益化するポイントやターゲットがまったく違う事業の柱を立てたほうが、経営状況を安定させやすいでしょう。具体的には、リアルで接客をするビジネスと、オンラインで完結するビジネスを切り分けることなどが考えられます。

また、既存事業の複合化といったアプローチも考えられます。例えば美容室の場合、カット・パーマ・カラーといった施術のパターンがあり、一定の売上と利益を計上することは可能ですが、収益の上限が決まってしまう点は課題です。そのため、スキンケアグッズを販売したり、脱毛サロンを紹介して紹介料をもらったりするなど、同一リソースでさらなる収益拡大を模索するケースが増えています。

サービス業で売上を拡大する場合には、新規店舗を出店するという方法もありますが、初期投資が数千万円レベルで必要になる点や、競合店舗も多くなる点が課題です。しかし新商材の開発であれば、数百万円レベルの投資で実施でき、かつ同じ坪数における売上になるため、既存事業の利益から資金のねん出がしやすく、ハードルは低くなります。

事業を拡大する際には、既存のリソースだけでは厳しくなることが予想されます。どのような人材を確保・育成する必要がありますか?

売上と利益が確保できている状態で事業を拡大したいときは、社長の右腕となる人材の確保、育成を始めてください。例えば、小売店や飲食店などの業態で、社長自身が1~2店舗マネジメントしている場合、どれだけ自分が手離れできるようにするかが重要なポイントです。

社員数が5~15名程度の会社の場合、部長や課長という役職が付いていたとしても、実質、社長以下が横並びの組織であることも少なくはありません。そのため、新たなプロジェクトを任せられるマネジメント人材の確保が難しいケースが多いのです。

しかし、このステージを越えられなければ、社員数30~50名規模の組織へステップアップすることは困難となります。

最近は、既存事業を別の社員に任せて社長が新規事業に振り切るケースがある一方で、自社とは違う職種から事業マネージャーを採用するケースも増加傾向にあります。例えば、ビズリーチなどマネージャーとしての即戦力が集まるサイトを活用して優秀な人材を採用する方法などですね。

こうした場合、既存事業とは別の事業部を立ち上げて、社長と協力して推進することが一般的となっています。事業を展開する地域は離れず、別の事業を行える責任者を採用するという方法は、近年増えている印象です。

中小企業が事業拡大をする際に注意するべき点や、デメリットを教えてください。

一番のデメリットは「必ず勝てる保証がない」というリスクがあることです。

例えば、10年間同じ業績を継続して、キャッシュが溜まっている会社が、月商の3~5倍程度の手元資金を投資する場合であれば、大きな問題にはならないでしょう。しかし、実際にはそれは非常に稀なケースです。そうでない場合、あるだけの資金を投資に回すのは非常にリスキーですから、自社にとって最適なバランスを見極める必要があると考えてください。ただし大きなリターンを期待する場合には、それなりの投資も必要になりますから慎重に判断しましょう。

判断材料として、まずは貸借対照表の内容を適正化する取り組みが必要となります。多くの中小企業の経営者は、損益計算書しかチェックしていないケースが多いため、事業を拡大するタイミングで貸借対照表の内容を注視することをおすすめしています。

新規事業が成功しなかった場合でも、新たに雇用した人材をすぐに解雇することはできません。したがって、その分の固定費を現業の利益で賄っていけるかどうかを、事前に把握しておくことが重要です。

具体例をあげるなら、新たに2名の人材を雇用し、新規出店を行って失敗した場合、利益率を下げても既存店舗で雇用し続けられる腹積もりをしておく必要があります。

施策2.次の危機に備える

今後も新たなウイルスや自然災害など、未知のトラブルに遭遇する可能性もあります。こうした危機に向けて、中小企業が備えておくべきことを教えてください。

今後も、どのような事態が発生するかは予測できません。対策として、拠点や展開エリア、展開している事業内容など、ビジネス資産をある程度分散させることから始めてください。

例えば将来、南海トラフ地震が起こった場合、太平洋側の拠点が全滅したとしても日本海側の拠点は無事というケースも想定されます。また、ウイルスの影響などで外出できなくなる場合には、オフラインとオンラインといった真逆のビジネスを準備しておくと、いざというときに有効でしょう。

現業がある程度安定してきた段階で、同じ事業だけで100%の収益を上げるのではなく、例えば30%は違う事業で収益を上げられるようにしておくことが、リスク分散の観点において重要なポイントと考えてください。ただし、実際にはどのようなトラブルが発生するかを完全に予測することはできないため、内部留保や緊急時に損害を最小限に抑え、事業継承や復旧を図るための事業継続計画(BCP)を推進することも必要でしょう。

施策3.働きやすい職場環境の整備や社員教育

会社の組織力をもう一段階上げていく活動として、具体的にどのようなことを実行すればよいでしょうか?

会社の目指す方向性に独自性を持たせることに取り組んでください。待遇面や福利厚生なども重要ですが、会社に対する帰属意識を高めないと、他に良い条件の同業が出てきた際には離職となり得る可能性が高いためです。

会社の独自性や経営理念に社員が共感していると「ちょっと給料は安いけど、やっぱりこの会社がいい」と考えるケースも多くなります。特にサービス業などは、どの会社も本質的な提供価値に大きな違いはありませんから、何を大切にし、今後どんな価値をお客さまに提供していく会社になっていくのかという将来像を明確化しておくことが、人材の採用や育成において非常に重要なポイントになります。

先日、ある美容室に取材した際に聞いた話ですが、昔は学生受けしそうな経営理念を打ち立てて、採用の母集団が非常に多い状況だったそうです。しかし、その美容室は人を育てるのに時間とお金を使った後に、一定数の離職が毎年発生してしまうことが課題でした。

その後、自社の経営理念を整理し、大切にしたい価値を可視化して採用活動を行うことによって、募集数は少なくなりましたが、今までと同程度の人数の理念に共感した方が入社してくれるようになりました。かつ、入社まで残ったメンバーの離職率低減を実現できたそうです。やはり、事業を次のステージに上げたいときには、採用する人材の質を向上させることが必要です。

また、評価制度を見直し、社員が「正しく評価されている」と感じるしくみを作ることが、長く継続して働いてもらえることにつながるのです。評価や給与制度の見直しも含め、人材への投資は不可欠と考えてください。

施策4.借入を減らすなどの財務状況をよくする

借入が多い企業は整理しておいたほうがよいと思いますが、具体的には何から始めるべきでしょうか?

借入が多くても計画的に返済ができていて、計画的に会社にキャッシュが溜まっていっていれば、大きな問題にはならないと思います。しかし、売上や利益が伸びているにもかかわらず、会社にお金が残らない状況の場合は、今の資金繰りを見直す必要もあるでしょう。借入の仕方、返済の計画、金利の条件などを見直したり、業績が伸びたりすることで金融機関からの格付けが上がり、現状に合わせた条件に変更してもらえる可能性もあります。また、そのような情報をしっかり整理するために、経営者自身がファイナンスの知識を高めておくことも大切です。

施策5.固定資産への資金投入

社用車や開発機材などの設備投資を固定資産にすることによって、中小企業が得られるメリットを教えてください。

設備や機器などを固定資産化して減価償却することにより、手元に残るキャッシュが増える点はメリットとなります。また、会社の資産として残せることや、節税効果も期待できるでしょう。

社内の状況を的確に把握したうえで事業拡大や人材確保、リスク管理、財務状況の改善や固定資産への資産投入などの取り組みを続けることが企業成長につながります。積極的に動くことが成果を出す近道と考え、前向きに動くことを意識していきましょう!


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

大道 賢作(株式会社船井総合研究所 ライン統括本部 第四経営支援本部 ライフイベント支援部 マネージング・ディレクター)

冠婚葬祭を中心に、年商規模問わず数多くの顧問先を持ち、全国各地でわかりやすく実践しやすいコンサルティングを行っている。冠婚葬祭、写真館、和装事業者、美容室など幅広い領域の部門を取りまとめている。

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