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Z世代の攻略がビジネス成功のカギを握る!「チル&ミー」なZ世代の価値観とは

2023.06.29

ここ数年「TikTok売れ」や「インフルエンサー売れ」など、これまでにない消費傾向で注目を浴びているのが「Z世代」です。これからの時代を担うZ世代への対応強化は、B to C業界だけでなく、あらゆる企業にとってビジネス創出・成功のポイントとなるといわれています。しかし、Z世代と呼ばれる人々の特徴や傾向を知らないがゆえ、対策の取り方がわからないという人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、なぜZ世代がマーケティング業界で注目されているかをはじめ、Z世代の特徴、彼らに対するマーケティングのポイントや注意点を、若者を研究する芝浦工業大学の原田 曜平教授にお話を伺いました。


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次なる大きな購買層「Z世代」対応は、日本でも重要課題

「Z世代」の定義を教えてください。

「Z世代」は、アメリカを中心とした欧米諸国で、一般的に1990年代中盤以降に生まれた世代のことを指す言葉として作られ、ここ数年で広く世界で使われるようになっています。年齢でいうと、2023年現在、だいたい10代前半~25歳くらいでしょうか。しかし、実は「Z世代」の明確な定義はありません。

ちなみにZ世代の下の代は「α(アルファ)世代」といわれています。

なぜ「Z世代」が注目されているのでしょうか。

現在は世界人口の3分の1をZ世代が占めており、近い将来には経済を動かす中心世代になると想定されるため、高い注目を集めています。もともと彼らに注目していたのは欧米諸国でした。世界的に見ると、Z世代の人口割合は他の世代と比べて年々大きくなっています。

少子化や人口減少が叫ばれている日本においては、一見すると「日本では大きな消費層にはならないのでは?」と思うかもしれません。たしかに世界と比較すると大きな動きは少ないかもしれませんが、1つ上の世代であり「○○離れ」と揶揄されていたミレニアル世代と比べると、消費行動は活発になっている傾向があります。

さらには「スマホ第一世代」であることもあいまって、かつてないSNSを活用した購買活動を見ると、彼らの拡散力やブームを作る力は決して軽視できないでしょう。

シニア層ばかりをターゲットに置き、目先の利益を重視していては、新しい特性を持つZ世代が年齢を重ね、消費者の中心となった時に、急に彼らの心をつかめる可能性は低くなります。このような理由から、Z世代は「日本でもマーケティングにおいて重要視しなければいけない存在」として認識されているのです。

Z世代を理解するキーワードは「チル&ミー」

「Z世代」の特徴はどのようなものがありますか。

私が、彼らを表現するときに使うのが「chill & me(チル&ミー)」という言葉です。「チル」とは「chill out=まったりする」を指します。私は普段、研究のためにも学生と連絡を取り合うことが多いのですが、「今何してる?」聞くと「ネトフリ見ながらチルってます」というような回答が返ってきます。シーシャ(水たばこ)などがブームになっているのもこの「チル」が、背景にあり、彼らが持つ価値観の基軸になっているのです。

マイペースでまったり、という言葉を聞くと「ゆとり世代」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、ゆとり世代には第二次就職氷河期世代も含まれており、名前よりも危機的意識が強い傾向にありました。

一方、未曾有の人手不足がいよいよ深刻になってきた現代において、若者を取り巻く環境は超売り手市場となっています。つまり、そんなに頑張らなくても、周囲は手招きをし喜んで迎えてくれる環境で育っているのです。「働き方改革」なども重視されるようになった背景もあり、優しい社会の中で育った結果、彼らはどの世代よりも「チルってる」性質を持つようになったといえるでしょう。

Z世代のもう1つの大きな特徴が「me=私」です。顔見知りの仲間や、同じ趣味嗜好の人物たちとの調和やコミュニティを大切にするmixiやFacebookとは異なり、InstagramやTwitter、TikTokなどの発信型SNSに触れて育ってきた彼らは、発信意欲や自意識が非常に強いのです。否定されることを嫌がり、ありのままの自分を肯定されることを好みます。

発信型SNSは、アカウントに鍵をかけられる機能やブロック機能が充実した結果、自分の言いたいことが自由に発言できるようになり、自己承認欲求をさらに満たせるようになりました。一方で「叩かれたくない」という気持ちは継続してあるので、同調志向と発信志向の両方を併せ持つ世代となったのです。顔をわざわざスタンプで隠して自撮り画像を投稿したり、加工アプリで自分の顔をおもしろく変形させて投稿したり、「流行っているから踊ってみた」動画をアップする心理は、この志向から来るものです。

実際、彼らはほとんどの時間をこれらのSNSに費やしています。Z世代にとってスマホは自己表現に必要不可欠であり、あらゆる情報を収集するツールでもあるのです。

ヒットする商品・サービスのポイントは「身近さ」「動画映え」「体験」

マーケティングにおいて「Z世代」の心つかむポイントは何でしょうか。

さまざまなポイントがありますが、ここでは3つ挙げましょう。

まず大きなポイントとしては「憧れより身近さ」を感じられることが重要となっています。昔はクールでかっこいい俳優に憧れ、テレビドラマや派手なCMを見て、心を動かされていた消費者が大半だったのに対し、現在はSNSで活動をしているインフルエンサーの、リアルな発信内容を通してファンになる傾向があるのです。

企業が若者に好かれようと、CMと見紛うようなクオリティの高い動画をSNSで発信しても、敬遠されてしまいます。逆に、若者からの支持を得ている企業アカウントは、皆こぞって身近さを感じられるようなコンテンツを発信しています。「雲の上の存在の俳優」よりも「親しみの持てる近所の人」というスタンスです。そうした存在の人物が、商品をゆるく紹介したり、マイルドな口調で優しく情報を教えてくれたりする。企業のアカウントでも、そのような要素のあるものがバズっているのです。

もう1つのポイントは「動画映え」です。以前Instagramで使われていた「写真映え」は、華やかな世界観を収めた写真が特徴でしたが、現在は動画がSNSのメインとなってきています。YouTubeショートやTikTok、Instagramリールなど、短尺動画を一度は目にしたことがあるでしょう。Z世代は、この短尺動画からさまざまな情報を得ているのです。

例えば、ただの自動販売機と思ったら実は隠し扉になっていて、中へ入ると居心地の良い空間の居酒屋が広がっているといった演出を行っているお店がありますが、これはまさに動画映えの象徴ですね。他に、一時流行した「地球グミ」も動画映えの象徴といえます。鮮やかな水色のグミをかじると、マグマを連想させる赤いベリーソースが入っていて、そのコントラストが動画に映えます。つまり、短尺動画の中で大きな変化や動きがあることがポイントとなっているのです。Z世代になじみのない商品やサービスでも、身近な顔つきであったり、動画映えを意識したりするなどで、一定数の注目を集められる可能性が高いでしょう。

最後に「体験」です。コロナ禍に入る直前から、もの作りができるショップが流行しています。例えば香水、リップ、アート、キャンドルなどですね。「体験」というキーワードは、長くトレンドではありますが、コロナ禍を経て、そのニーズはさらに高まっています。従来よりも人間関係が希薄になっていますから、なんでもない日を一緒に過ごすという行為自体が、特別なこととして捉えられるようになりました。そうなれば「日常の中で仲間と一緒に体験する」ことの付加価値は、いっそう高まるというわけです。

また、一般的に企業が率先して取り組んでいる、環境に配慮するSDGs訴求は、実はそこまで大きな反響はありません。どちらかというと、LGBTQに関することの方が興味値は高いですから、多様性などの切り口をマーケティングに活用するのは有効でしょう。

「Z世代」をターゲットにした施策を行ううえで、注意すべきことは何でしょうか。

ここまでの、3つすべてのポイントを押さえれば、バズりやすくはなるかもしれませんが、一方で、商品・サービスの本質的部分が良いものでないと、継続して売上を獲得することはできません。当たり前かもしれませんが、食品であれば大前提においしいものであること、サービスであれば、提供できる価値があるかどうか、が重要です。バズりや注目度だけを追っていては一瞬でブームは終わってしまいます。

また、LGBTQに関しては、あまり断定しないような訴求を心がける必要があるでしょう。「LGBTQを受け入る会社です!」とあまりにも堂々とアピールすると、逆にその行為自体が区別していることの表れではないか、と反感を買う可能性もあります。センシティブであるトピックをマーケティングの題材にするのであれば、言い切らないというアプローチを検討することをおすすめします。

「Z世代」マーケティングを行ううえで、コツがあれば教えてください。

繰り返しになりますが、Z世代マーケティングでは「バズり」はゴールではなく前提です。本当に目指すべきなのは「いかに長く好まれるようにするのか」であることを忘れないでください。

そのためには流行したものの共通点は何か、彼らが根本的に求めているもの(インサイト)は何なのかなど、バズっている商品やサービスから読み取る必要があるのです。一時的な調査や表面的なバズりだけで判断してしまうと、マーケティングの舵取りを見誤る可能性もあります。

こうした状況を避けるためにも、長期的にZ世代と並走するように、調査を継続すると良いでしょう。あるいは専門家に頼り、彼らが起こしたブームの傾向や本質であるインサイトを教えてもらうことも有効です。

未来の顧客獲得のために、今から種まきをしよう

「Z世代」をターゲットにする施策を打つ企業に向けて、応援メッセージをお願いします。

中小企業は、大企業に比べると予算やリソースが少ない傾向があり、Z世代のリサーチにも労力をかけられないこともあるでしょう。若者をターゲットにしたところで、やはり母数は減っているわけですから、状況が劇的に良くなるとは限りません。しかし、いつの時代も若者特有の市場があり、ムーブメントを生みだす力があることを認識しておかなければなりません。

とりわけZ世代は独自の価値観を持っているため、これまでとは異なるアプローチ方法を慎重に考える必要があります。彼らを十分に理解したうえで、マーケティング戦略を立てましょう。彼らを軽視することは、未来の損失に繋がりかねません。今の若者は間違いなく未来の消費者の中心になるということを再認識し、エントリー層である今この時から、獲得に向けて施策を打つ必要があると心に留めてください。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

原田 曜平(芝浦工業大学教授)

広告業界で各種マーケティング業務を経験した後、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。
その他信州大学・特任教授、玉川大学・非常勤講師。BSテレビ東京番組審議会委員。マーケティングアナリスト。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究およびマーケティング全般。2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、さまざまな流行語を作り出している。

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