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買ったCDをお店で流すのはNG?店内BGMとして利用したい場合の手続き
2021.11.11
飲食店や美容院、アパレルなどの小売店で流すBGMは、従業員がCDやサブスク(サブスクリプション:定額料金で利用できるサービス)を利用してスマホからそのまま流しているケースもあると思います。実は、こういった行為は違法となる場合があります。このように著作権に関する正しい知識がないと、知らないうちに違法行為をしているケースもあるので、店舗経営をしている経営者や自営業の方は特に注意が必要です。
そこで今回は、中小企業経営者に店舗における適正なBGMの利用方法を知ってもらうために、USEN-NEXT GROUPの株式会社USEN OTORAKU事業推進部の佐藤 慎也さんにお話を伺いました。
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目次
そもそもCDやサブスクの音源を店舗内で流すのは違法なのか?
飲食店や美容院、アパレルなどの小売店で流すBGMは、従業員がCDやスマホなどでサブスクなどを活用して、そのまま流しているケースもあると思います。これは違法となるのでしょうか?
まずお店でBGM を流す場合は「商用利用」に該当するため、著作権の手続きが必要です。購入したCDや個人向けのサブスクサービスについて、利用許諾無しで流すのは違法となります。
また、Apple musicやLINE MUSICをはじめとしたサブスクの音楽配信サービスは個人利用向けのサービスが大部分となっており、各サービスの利用規約に「個人的、非商用目的の利用に限る」といった記載があるため、お店で流した場合は利用規約違反です。
「自分で購入したCDなのに、何が問題?」という意識の方も多いと思うのですが、どのような部分が違法にあたるのでしょうか?
お店で市販のCDをそのまま流す場合、著作権法第22 条に定められている「演奏権」が発生します。「演奏権」とは公衆に対して音楽を演奏する、また公衆に直接聞かせることを目的としてCDやスマホなどの端末から、音楽を再生する権利の専有を指すものです。
「演奏権」を管理しているJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)などの著作権管理団体では、利用場所や用途に応じた使用料規程が定められています。お店で市販CDをそのまま流す場合は「演奏権」の権利許諾が必要となり、許諾無しで流した場合は違法に該当します。
演奏権の手続きには、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。
JASRACが管理している楽曲をBGMとして利用する場合は「BGM使用料」として店舗面積や宿泊施設の定員ごとに使用料が決められています。例えば、店舗面積500㎡まで(宿泊定員100人まで)は包括的利用許諾契約の年間使用料が6,000円、店舗面積1,000㎡まで(宿泊定員200人まで)は年間10,000円です。
TVやラジオを流している店舗もあると思いますが、こちらも同様に違法でしょうか?
TVやラジオの放送をそのまま流している場合は、著作権法第38条3項により、許諾手続きが不要になるため違法となりません。ただし、家庭用受信装置以外を利用する場合や放送を録音して流す場合は、手続きが必要になりますから注意が必要です。
最近は、YouTubeなどの動画サイト上だけに存在するオリジナル楽曲を配信するケースも多いと思います。そういった楽曲をBGMとして利用する場合には、作曲者に直接問い合わせるしかないのでしょうか?
どこの著作権管理団体にも登録されていない楽曲で、レコード会社や事務所にも所属していない場合であれば、その著作者をなんとか調べて直接利用許諾を取ることが基本的な方法です。しかしYouTubeで公開されている楽曲は、著作権管理団体が管理しているものが意外とたくさんあります。
店舗のBGMに音楽を使用する場合は、どのような方法であっても無料ということは基本的にないと考え、確認するようにしてください。なおYouTubeは個人利用向けサービスとなりますので、お店のBGMとして利用する事は利用規約違反となるためご注意ください。
医療施設や介護施設などにおいては、一部BGMを権利者の許諾なく活用できるという話を聞いたことがありますが、本当でしょうか?
JASRACの場合、使用料規程上、当分の間「BGM使用料」が免除となる施設として、医療施設や福祉施設などを定めています。対象施設は、医療法や介護保険法など各法令で定められている施設です。これら以外では、従業員のみを対象とした事務所・工場や学校教育法で定められている教育機関(幼稚園、小学校、中学校など)も免除対象施設となります。
違法にBGMを使った場合の罰則
違法にBGMを利用した場合、どのような罰則を受ける可能性があるのでしょうか?罰金などを支払った事例などがあれば、金額も教えてください。
仮にJASRACの管理している楽曲を許諾なくBGMを流した場合、民事・刑事の両面からさまざまな罰則が与えられる可能性があります。
例えば民事上の請求の場合、以下の内容が求められることも考えられます。
- 「侵害行為の差止請求(著作権法112条1項)」
- 「損害賠償(民法709条)」
- 「名誉回復措置(著作権法115条)」
刑事上の罰則の場合は5~10年以下の懲役か500~1,000万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられる場合もあります。
なお過去事例としては、JASRACは音楽著作権の手続きを行わずにBGMを流していた理容店に民事訴訟を提起し、2018年3月に判決が下されたことがあります。
出典:BGM利用店舗の経営者に対する訴訟の全国初の判決について|JASRAC
無許諾でCDやサブスクを店舗内のBGMとして利用している店舗はいまだに多く、裏を返せば罰せられていないところも多い気がします。具体的に取り締まっている担当者などはいるのでしょうか?
こちらに関する細かい部分については弊社(株式会社USEN)もサービスを提供する側ということもあり、実際にどのようなレギュレーションで、どのような取り締まりをしているかという点について回答することは難しいです。著作権管理団体が全国の拠点を通じて、著作権手続きの案内を行っているというのが一般的だと思われます。
一方で、我々サービス提供者側の視点でお話しすると、弊社サービス利用料の範疇で、お客さまに代わって著作権使用料をお支払いさせていただいております。しかしその事実があった場合でも、お店の外観を見ただけでは第三者が判別することはできません。
そのため、サービスをご契約いただいたお客さまには以下のような、JASRACが発行する「許諾ステッカー」をお渡ししています。
店内の人目につきそうな場所や軒先などにステッカーを貼っていただくことで、万が一指摘を受けた場合に「きちんと著作権処理をしています」と明言できる材料としてご利用いただくことが可能です。
店舗内で合法的にBGMを流す方法と手続き
CDやサブスクの音源を合法的に店舗のBGMとして活用する方法はありますか?
市販のCDはJASRACと直接契約をすればそのまま流すことはできます。この場合は、JASRACのHPから申し込んでください。ただし、好きな楽曲を集めてCDに焼いたり、PCで楽曲をダウンロードしたりしてお店で流す場合は、複製権および著作隣接権の手続きが必要となります。著作権はJASRACなどの著作権管理団体が集中管理していますが、著作隣接権については音源ごとにレコード会社などの権利者から、個別に許諾を得る必要があります。一般の方がこれらの権利者と調整して利用許諾を得るには、かなりの労力が必要になります。
一方、個人向けのサブスクの音源に関しては、利用規約に違反するためBGM利用はできません。そのため、商用利用のTo B向けサービスであることが大前提となります。
なおUSENのBGMサービスを契約していただいた場合、お客さまに代わって弊社が著作権管理団体などへ著作権使用料をお支払いいたします。そちらの著作権使用料には、お店で市販のCDをそのまま流すことも含まれているため、この場合は合法的にBGMとして流すことが可能です。
店舗内で合法的にBGMを流すサービスを教えてください。
現在、弊社がお客さまに提供している弊社BGMサービスは、下記の通りです。
・USENによる音楽配信(提供スタイル:箱型チューナー)
従来の有線放送。弊社編成で提供するチャンネルをお客さまに選びご利用いただける「おまかせ型」BGMサービス
料金:4,500~6,000円(税別)/月
・『U MUSIC』(提供スタイル:専用タブレット+専用機器)
弊社編成をベースにお客さまの希望に応じたAIによる自動編成を加えてご利用いただける
「セミカスタム型」BGMサービス
料金:3,480~5,000円(税別)/月
・『OTORAKU』(提供スタイル:汎用スマートフォン、タブレット端末)
弊社編成内容に加え、独自プレイリストの作成が可能で店舗のこだわりが表現できる「こだわり型」BGMサービス
料金:2,980~3,900円(税別)/月
・オフィス向けBGM『Sound Design for OFFICE』(提供スタイル:箱型チューナー、専用タブレット+専用機器)
弊社と大学教授や作曲家で共同制作した番組を中心とし、集中力向上・リラックス・リフレッシュなど「音楽の効果」に着目した快適なオフィス環境づくりが可能なBGMサービス
料金:5,000円~(税別)/月
いずれのBGMサービスもお客さまからいただく月額サービス使用料より、お客さまに代わって著作権使用料のお支払いをしております。また、お客さまが個人で購入したCDを店内で再生することについても権利処理に含まれておりますので、安心して店内BGMをお使いいただくことが可能です。
貴社のサービスを利用されるお客さまが、サービスの申し込みに至る決め手はどのような部分にあるとお考えでしょうか?
例えばご自身が修行時代に使っていたサービスを、その後店をオープンされるときにも導入するというケースが挙げられます。使い慣れているから、そのまま導入するというパターンですね。
また、最初は自分で選曲や著作権処理もするつもりだったものの、1~2年ほど経過して、結局1枚のCDがヘビーローテーションになるケースもあります。そのような場合、来店されるお客さまに「この店いつも同じ曲だな……」と思われるだけでなく、従業員も同じ曲を聞き続けていると疲れてしまいます。こうした課題を解決するために、オープンから少し時間が経過してからお申し込みをいただくケースもあります。
店のオープン時に他のオーナーからご紹介いただくことや、営業の方が直接商談をする場合も多いです。内装工事をしているときに「今のうちにお申し込みいただければ、線を露出せずに施工ができる」とお伝えすると、内装がきれいになることにメリットを感じてお申し込みいただけるケースもあります。
新規と既存店舗の申し込み割合は、だいたい半々くらいです。今回のテーマである「BGMの指摘を受けたから、すぐ入れたい」というお話も、既存の店舗ではよくあるパターンといえるでしょう。お店のBGMにはなるべく手間をかけず、その時間をお客さまへのサービス向上などに役立ててもらうことが一番だと思います。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
佐藤 慎也(株式会社USEN事業開発統括部 OTORAKU事業推進部 副部長)
2002年 株式会社USEN 入社、音楽配信や光回線などの提案営業を経験
2006年 株式会社USEN 商品企画部門へ異動、カラオケ機器や音響器材全般を担当
2012年 株式会社USEN 人事部へ異動、新卒/中途採用や社内研修運営に従事
2015年 株式会社USEN OTORAKU事業推進部へ異動、OTORAKUサービス企画・開発に尽力
2018年 株式会社USEN OTORAKU事業推進部 企画推進課長に就任
2021年 株式会社USEN OTORAKU事業推進部 副部長に就任(現任)
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