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コロナで経営が厳しいときこそ、理念の「旗」を掲げよ!『物を売るバカ』著者に聞くストーリーブランディングを確立する方法
2021.11.02
売上回復へのヒントを得てもらうために、前回はベストセラー『物を売るバカ』著者であり、ストーリーブランディングの第一人者である川上 徹也氏に、「売上アップにつながる!『物を売るバカ』著者に聞く『物語(ストーリー)を売る』方法」というテーマで、モノではなくストーリーを売る重要性についてお話を伺いました。
今回は、企業のブランディングに役立つ「ストーリーブランディング」という手法について説明していただきます。
目次
ストーリーブランディングとは?
ストーリーブランディングとは「企業や店をあたかも『物語の主人公』に位置づけたストーリー(物語性)を社内外に発信していくことで、ファンを生み出すブランディング手法」のことです。
例えば、次のように3つのリンゴがあるとしましょう。
- 一般的な農法で育てたリンゴ。
- 葉とらずリンゴ。周りの葉を残して栽培し、十分な栄養をいきわたらせたリンゴ。
見た目は悪いが、味は抜群。 - 木村秋則(世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した日本の農家)さんが作った奇跡のリンゴ。
木村さんは周囲から「絶対に不可能だ」と言われていた無農薬無肥料栽培のリンゴを、10年の歳月をかけて極貧生活と孤立を乗り越え、やっとの思いで実現。
100人の方にどのリンゴが食べたいか質問すると、1はほぼゼロ、2は数人で、ほとんどの方が3のリンゴを選びます。多くの方が奇跡のリンゴにまつわる木村さんのストーリーに共感し「食べてみたい」と強く思うからです。
ストーリーブランディングの活用メリットは、人の感情を動かせることであるため、
- 興味や共感を持ってもらえる
- 記憶に残る
- オンリーワンになれる
- ファンになってもらえる
といった効果が得られるでしょう。
また、人に話したくなるストーリー(物語)を発信することで、口コミ効果も期待できます。
物語の主人公にとって一番重要なものは「何かを成し遂げたいという志」です。しかし、志を文章化すると長くなりがちで読む気も失せますよね。そのため、顧客や従業員に理解してもらいやすいようにキャッチコピー化し、発信していくことが大切です。
次章では、ストーリーブランディングを有効活用することで、売上増加を実現した事例を紹介します。
ストーリーブランディングを活用して1,000億円以上の価値を生み出した事例
「Shave Time. Shave Money.(時間とお金をシェーブしよう)」というキャッチコピーと「無名のメーカーが大手メーカーに立ち向かう」というストーリを発信したことで、起業して5年あまりで1,000億円以上の価値を生み出した会社の事例を紹介します。それがアメリカの会社「Dollar Shave Club(ダラー・シェーブ・クラブ)」で、社名の通り「月額1ドルで安いヒゲそりの替刃を提供する」会社です。
とあるパーティで知り合った2人が「多くの男性が必要としている」「定期的に買う必要がある」「ついつい買い忘れる」ことから、有望な市場だと考えて起業しました。彼らがキャッチコピーとして考えた1行は「Shave Time. Shave Money.(時間とお金をシェーブしよう)」でした。英語のことわざである「Save Time. Save Money.(時は金なり)」をもじったもので、シンプルですが非常にわかりすいフレーズです。
しかし当時、会社の知名度はゼロ。どうやって会員を集めるかが問題でした。そこで2人が考えたのは、YouTubeへ動画を投稿して設立に至ったストーリー(物語)を発信することでした。
動画はコメディアンだったデュビン氏が企画し、自らも主役として出演しました。撮影は1日、予算は4,500ドル(約50万円)程度。動画の中で彼はコメディタッチで放送禁止用語を交えながら、以下のようなことを訴えました。
「大手メーカーは、ハイテクで値段が高いヒゲそりが必要だと思い込ませている。ヒゲそりはもっとシンプルで十分だ。君の親父さんやおじいちゃんの昔の写真をみてみたまえ。ハイテクなヒゲそりなんか使わなくても結構カッコいいだろ?俺たちのヒゲそりはクソいいぜ(Our Blades are F**king great)」
この動画は大きな大きな反響を呼びました。たった48時間で12,000人の新規顧客を獲得。1週間後には会員数25,000人、売上180万ドル(約2億円)を達成したのです。
その後もダラー・シェーブ・クラブの会員数は順調に伸び、4年で320万人の会員を擁して2億ドル(約220億円)の売上を獲得するまでに成長しました。そして2016年7月、世界的企業であるユニリーバが、ダラー・シェーブ・クラブを10億ドル(約1100億円)で買収したのです。
特に革新的な技術があった訳でもない、どこにでも売っているような消耗品を定期的に売るというアイデアだけでした。しかし「(ヒゲそりにかける)時間とお金をシェーブしよう」という強いキャッチコピーを掲げ、大手メーカーに立ち向かうという物語の主人公になるストーリーを発信したことで多くの人の共感を得たのです。その結果、莫大な価値を得ることに成功しました。
ストーリーブランディングを確立する手順
ストーリーブランディングを確立する手順を説明します。大まかな流れとしては、最初にキャッチコピーを作成し、次に独自化ポイントと魅力的なエピソードを追加する作業が続きます。
①:キャッチコピーの作成
ストーリーブランディングで一番重要なのは、あなたの「志」を凝縮した「旗印の1行=キャッチコピー」です。しかし「志」だけでは、不十分でしょう。なぜなら、いくら「志」が素晴らしかったとしても、他社が提供するサービスや商品と同じでは「言ってることは立派だけど……」と思われるからです。
そのため、他社と差別化を図る独自化のポイントが必要になります。
②:独自化ポイントを見つける
独自化のポイントの見つけ方はさまざまな方法があります。今回は「3つのワンをつくる」という方法をお伝えします。
3つのワンとは「ナンバーワン」「オンリーワン」「ファーストワン」のことです。例えば、日本というフィールドであれば「日本一」「日本唯一」「日本初」のこと。あなたのお店や商品、サービスに何か「日本一」「日本唯一」「日本初」のものはありますか?もしなければ、今からでも何か作っていきましょう。それが「独自化」に繋がります。
③:魅力的なエピソードの追加
独自化のポイントが明確化したら、次は「志」を象徴するような魅力的なエピソードを加えましょう。実際にあった「志を具体化した象徴的なエピソード」であることが理想です。具体的なエピソードがあることで「志」「独自化」に説得力が生まれます。いくら「志」や「独自化」がよくできていても、エピソードが乏しいと魅力が十分に発揮できない可能性があります。
「志」に独自化のポイントと魅力的なエピソードが加わることで、ストーリーがより強固になるでしょう。結果として、あなたの店や会社はストーリーブランディングされていき、真の意味で「物語の主人公」になれます。お客さん、従業員、地域からも「何を目指す会社で」「どんな特徴があり」「日々どのような活動をしているのか」ということが、とてもわかりやすく見える化されるからです。
あなたの会社やお店でも、ぜひストーリーブランディングを実践してみてください。
この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
川上 徹也(コピーライター 湘南ストーリーブランディング研究所代表)
大手広告代理店勤務を経て独立。企業や団体の「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られている。著書『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)など、海外にも多数翻訳されている。
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