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会社に多くのメリットをもたらす、本学的な「報連相」の教え方
2021.01.28
新入社員にまず教えるのは「報連相」(報告・連絡・相談)という会社は多いと思います。しかし、新人の失敗の大半は報連相ができずに起こります。ではなぜ報連相ができないのか?原因は教え方にあるのです。今回は経営者が会社で徹底したい、インバスケット思考の本学的な報連相の教え方についてお伝えします。
※インバスケット……未決裁の書類の入った「未処理箱」の意。1950年代にアメリカ空軍で導入された能力測定ツール。疑似体験型トレーニングを通じて、自分の能力の強み・弱みを把握・分析できる。
目次
報連相の「方法」ではなく、報連相の「必要性」を教える
ある会社の社長の目の前で、上司と新入社員のこんなやりとりがありました。
部長「なぜ報告しなかった」
新人「報告する必要がないと思いました」
部長「あの場合は報告してもらわないと困る」
新人「でも以前はそんなことは報告しなくていいと……いえ、わかりました」
特に新入社員研修では、入社直後にまず「報連相」(報告・連絡・相談)について教えることが多いと思います。皆さんの会社では、実際にどのように教えていますか?
「ケースごとに、こんなときは報告しよう」と、結果に対するフィードバックの一環で教えることが多いのではないでしょうか。しかしこれはインバスケット思考でいう、末学的な教え方です。本学と末学については「手法を教える『末学』と目的を教える『本学』の違いを知り、社員教育に活かそう」で解説していますので、ぜひご覧ください。
会社で「こういうケースが起きたら報連相すること」と、ルール化しておくのは一見有効です。新人であれば、そうしたルールは素直に守るでしょう。しかし、報連相は問題や変化をきっかけになされることがほとんどです。したがって「どんなときに報連相するのか」を教えるのは間違いで「なぜ報連相するのか」を教えることが本学的なやり方です。
会社で報連相を行うのは「仕事の成果を出すため」です。社員一人ひとりが仕事の成果を出せば、当然、会社の業績アップにつながります。この仕事の成果を出すためには「仕事を効率的に進める」「他の人と信頼関係を作る」「トラブルを起こさない」の3つが重要になります。
「仕事を効率的に進める」ためには他の人と重複する仕事や、ミスによる同じ行動の繰り返しなどの無駄をなくすことです。
上司や周囲との「信頼関係を作る」のは安心感です。この安心感を作るには、いつもと違う何かが起きたら報告、連絡するというまめな報連相です。
そして「トラブルを起こさない」ことです。トラブルの前兆を見つけたときに、正確かつ迅速に報連相をすることで、会社でこれから起こる悪いできごとの対策を打てます。もしトラブルが起きたときも、被害を最小限に食い止めることができます。
これらをチェックし指導するのは現場の上司の役目です。そして経営者の皆さんは上司に対し、新人から報連相がなされているか確認し、できていなければ徹底することが組織作りでは重要です。
報連相は「定性情報」と「定量情報」を分けて考えさせる
これは新人に限りませんが、報連相をするときに、その内容が支離滅裂では会社の役には立ちません。例えば役員から社長への報告で「先ほど取引銀行がやって来まして、どうやらきな臭い雰囲気で、おそらく当社の経営状態を疑っているのではないかと。他の取引銀行も似たような感じがあります」という報告があった場合。役員が心配しているのは伝わってきますが、内容はいまいち伝わってきません。
ここで「事実だけを報告しろ」と指導する経営者も多いでしょうが、それは末学的な教え方です。本学的には「なぜ事実と主観を分けて報連相しなければならないのか」を教えます。
そのためには教育研修や指導の際に、情報には「定性情報」と「定量情報」の2種類があることを教えておくことです。
定性情報とは「人によって捉え方が異なる情報」を指します。「できるだけ早く」「なんとなく気になる」などの主観もそうですし、「安い・高い」「多い・少ない」などの情報も人によって捉え方が異なる定性情報です。報連相の失敗の多くがこの定性情報によって引き起こされます。
そこで報連相の際は、定量情報を基にさせましょう。こちらは売上数値など、だれもが同じ意味で捉えることのできる情報を指します。
ただし、定性情報が必ずしも悪いわけではありません。その事実について、報告者がどんな考えを持っているのかを伝えることも必要だからです。報告を受ける側も、事実だけでは前後関係がわかりません。また報告者の当事者意識も育ちません。報連相で大事なのは「事実」と「考え」を分けて伝えることです。これができれば、会社の報連相のレベルは格段に上がります。
これは報連相の逆パターン、経営者から社員への指示・命令も同様です。「なるべく早く処理してくれ」などという言葉は、定性情報の代名詞のようなものなので注意しましょう。
新人には「許される失敗と許されない失敗の2種類がある」と教える
冒頭で「でも以前はそんなことは報告しなくてもいいと……いえ、わかりました」という例を挙げました。「報連相ができていないケース」よりも「報連相ができないケース」が多いのは「こんなことを報告したら叱られる」「相談すると嫌がられる」といった上下関係や風土があるからです。
ここで新人に教えたいのが、失敗には「許される失敗」と「許されない失敗」の2種類があることです。
許される失敗とは「取り返しのつく失敗」です。「そんなこと報告しなくてもいいと叱られて、失うものはあるのか?」と新人に問いかけてみてください。許されない失敗とは「取り返しのつかない失敗」です。報告しなかったことで不信感を持たれる、連絡しなかったことで広い範囲に迷惑がかかる、相談しなかったことで会社のブランドが傷ついたなど。新人が報連相をためらうのは、失敗は一様に「取り返しのつかないもの」と考えるからです。
社内でスムーズな報連相がなされている部署と、報連相がまったくない部署がある場合、上記のような理由も考えられます。そんなときは経営者が現場の上司に対して、教え方が間違っていないか確認し、改善していきましょう。
報連相は上司や同僚を巻き込むものであるため、新人が失敗したときも孤立を防ぎます。逆に、スムーズな報連相ができるようになれば周囲との信頼関係や団結力を強くしますし、個人の成果も上がります。
報連相は社会人のマナーの基礎ですが、個人の成長に伴って、やがて会社の業績アップにつながるものです。ぜひ皆さんの会社でも、本学的な教え方を徹底してみてください。
この記事の著者
鳥原 隆志(とりはら たかし)
株式会社インバスケット研究所代表取締役。インバスケット・コンサルタント。1972年、大阪府生まれ。大学卒業後、株式会社ダイエーに入社、10店舗を統括する食品担当責任者として店長の指導や問題解決業務に努める。管理職昇進試験時にインバスケットに出合い、自己啓発としてインバスケット・トレーニングを開始。現在は執筆と講演・メディア出演など活躍中。日本で唯一のインバスケット教材開発会社として、株式会社インバスケット研究所設立。著書50冊以上。
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