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船井総研に聞く「中小企業、コロナ禍の成功事例【飲食業界編】」

新型コロナウイルス感染症の影響を最も受けた業種の1つが、飲食業です。度重なる緊急事態宣言や時短要請によって、閉店や業態変更などを余儀なくされた経営者も多いでしょう。

今後もしばらくは楽観視できない状況のため、慎重かつ早めに手を打つ必要があります。しかし、先が見えづらい状況の中、具体的にどのような施策を実施するべきか多くの経営者さまが悩まれているかと思います。

そこで今回は、株式会社船井総合研究所 フード支援部 マネージング・ディレクターである二杉 明宏さんに小規模、中小企業における飲食業界の新型コロナウイルス対応における成功事例についてお話を伺いました。今後の店舗経営のヒントになれば何よりです。

<その他の新型コロナウイルス支援・施策関連記事は【こちら】から>

二杉 明宏(株式会社船井総合研究所 フード支援部 マネージング・ディレクター)

1974年和歌山県生まれ。同志社大学大学院法学研究科修士課程修了後、2000年4月に株式会社船井総合研究所に入社。入社後は、外食産業におけるコンサルティング活動に従事。業態開発、新規出店、多店舗展開、既存ブランドのブラッシュアップなどにより、持続的な企業業績向上のプロデュースを得意とする。

コロナ禍でも成功している飲食ビジネスの特徴とは

――コロナのダメージを最も受けたといっても過言ではない飲食業ですが、その中で「堅調に売上を伸ばした企業」にはどのような特徴がありましたか?

コロナ禍でも堅調に売上を伸ばしていたのは、事業が衰退しないように守りを固めつつ、販路の拡大や立地の見直しを行った企業です。

例えば、比較的堅調だった業態としてファストフードが挙げられます。もともと成長市場であったことに加え、テイクアウト需要の高まりも相まって、2020年の実績は昨対比で100%程度を維持しました。一方で店内飲食は需要が激減しており、イートイン主体の店の中でも、テイクアウトやデリバリーの比率を高める努力をする飲食店が一気に増えました。

コロナ禍の飲食業、特に小規模事業者においては、まずしっかり守りの経営をすることが重要です。守りとは経費の切り下げや雇用の調整など、出ていくお金を最小化する施策の実施や、補助金などの活用などが挙げられます。また休業に対する協力金が出ない地域では、資金を補填するために金融機関からの借入なども必要です。

次に重要なポイントが、商売をする立地の見直しです。

例えば、繁華街でやっていた商売を思い切って郊外立地に移転したり、人が住んでいるエリアに近い駅前立地にシフトするといった「リロケーション」の実施によって、事業構造の見直しを図る必要があります。

例えば海外からの観光客をターゲットにしている空港やターミナル立地などの場合、コロナが収束した後もしばらくは客足が戻ってこないことが予想されます。また企業の宴会需要なども、すぐには戻ってこないでしょう。

したがって商売をする立地の見直しを行うとともに、立地に合わせて業態を柔軟に変化させることが求められます。


――具体的な業態変更の事例には、どのようなものがあるのでしょうか?

最近は、居住地エリアに近いところの焼肉店が好調で、居酒屋から業態変更するケースが増えています。例えば、もともと和食中心の宴会や家族の集まりで売上を立てる店を多店舗展開していた企業が、この1年間は焼肉店を一気に増やして、業績を回復させている事例があります。

もう1つが、販路を積極的に広げて成功した事例です。もともと餃子の機械メーカーだった企業が、自社でも餃子レストランの経営をしていたのですが、コロナの影響によって店内飲食の需要が激減しました。そこで、テイクアウトの専門店開発を強化すると共に、コロナ禍でも売上が伸びているスーパーマーケットに商品を置かせてもらうことで販路を広げて新しい売上づくりを実現しています。


――コロナ禍・アフターコロナの世の中で、コストや時間をあまりかけずに、飲食業を成功に導いて行くためのポイントなどを教えてください。

経営者の考え方次第だとは思いますが、やはり協力金が出ている地域の企業は、要請に従いしっかりお休みを取って、協力金を確実にもらうことが王道だと思います。

ただ小規模とはいえ、貝のように固まって待つことが性に合わないような経営者さまもいらっしゃると思います。そのような方々は、コロナ禍で成功した飲食店の事例を参考にして、新規事業開発のアクションを起こすケースが増えています。

例えば、最近だと無人の冷凍餃子持ち帰り専門店が増えていて、関東から始まった雪松というブランドはこの1年間で200店舗ほど一気に増えました。この状況を見た他の飲食店も、「自分も同じような冷凍餃子持ち帰り専門店をやってみよう」と動き始めたケースが、全国各地で増えています。

今後、人員のバランス調整はどうするべきか?

――正社員やアルバイトも含めたスタッフの採用は、今後どのように対処していくべきでしょうか?

飲食店における採用に関しては、コロナの蔓延状態によって右往左往している状況です。飲食店は多くの人員を必要とするサービス業なのですが、やはり売上が立たなければ雇用はできません。したがって今後の経営は最小限の人員で構成し、政府の支援を活用して雇用調整を適宜行っていくべきでしょう。

しかし、いざ経済を動かそうというタイミングになると、途端に人手不足になることが予測されます。新しい人を雇っても、教育が施されない限りは戦力になりません。そのため、今は雇用のバランスを取ることが非常に難しい状況です。

この状況は少なくとも22年の春あたりまで継続することが予想されますが、逆に今は人が採用しやすい時期といえます。実際、新型コロナウイルス前と比べると有効求人倍率もすごく下がりました。コロナ前の東京は、外食業界の有効求人倍率は約10倍ぐらいだったのですが、それが新型コロナウイルスによって一気に下がりました。

アフターコロナを見据えるのであれば、今は採用のチャンスといえるのですが、やはり人を雇用すると支出が増えてしまうため、なかなか採用活動を前に進めにくい状況です。

余力がある企業は今のうちに雇った人をしっかり教育し、アフターコロナで人の採用が難しくなったときに採用力を上げていくために、休日の環境整備や働き方改革、待遇条件の改善を行う必要があります。また、最低賃金が上がり、平均時給が上昇する中でも収益を上げられるような生産性向上を実現するために、デジタルの活用やロボットの導入などを私たちは提案しています。さらに「料理注文をセルフ化」したり、「飲み放題のセルフ化」「配膳ロボットを活用」するなど、店舗スタッフの作業軽減を実現する環境づくりも提案しています。


――「今後の経営は最小限の人員で」とありましたが、最低人員をどのぐらいにしたらよいかという指標はありますか?

例えばコロナ前に日商で30万円くらい、月商で1,000万円ほど売っていて、人件費を仮に300万円くらい使っていたお店があったとしましょう。これは小規模零細とはいえないかもしれませんが、コロナ禍では売上が月500万円になったり、時短要請でお酒が出せない場合には300万円しか売上が立たなかったりするケースもあります。

ただしこのような地域においては、今のこのタイミングであれば協力金が出ますので、それは受け取りつつ300万円の中で、キャッシュアウトしないラインを維持することが大切です。小規模や中小企業の経営者の場合、やはり社員の雇用をしっかり守ることが基本になるので、利益がなかったとしても雇用調整助成金を活用するなどして、300万円の売上の中で出ていくお金をいかに最小化するかがポイントでしょう。

新型コロナウイルスが終わって以前の規模で運営を再開しようと思っても、社員がいなければお店を閉めざるを得ないので、その意味においても雇用を維持することが重要です。後はプラスアルファのアルバイトやパートを、極力最低人員にしておくことも忘れてはいけません。


――目の前の現実と将来を見据えた人員のバランス調整、非常に難しいですね。

目先は最小限スタッフで、いかに守りの運営をするのかが現実だと思います。95%のお店は、その選択が正しいでしょう。

ただし、未来に向けて経済が動く前に採用をスムーズに進めていこうとすると、そのときに提示できる労働環境や待遇面の整備が必要です。また、現在はデジタルでの採用が主流になっているため、採用サイトの整備を今のうちからきちんと進めておくように提案しています。

人以外の投資には補助金の活用も視野に

――新商品の開発や在庫の適正化なども引き続き必要になると思われますが、小規模、中小企業が効率よく実践する方法などはありますか?

事業開発や事業転換を行うときには、やはりハード面への投資が必要になります。そこでぜひ活用してもらいたいのが、事業再構築補助金です。これに申請をして採択されれば、2/3の補助が出ます。

例えば3,000万円の新規事業構築や業態転換の投資に対して、2,000万円の補助が国から出ますので、1,000万円を自己負担もしくは、金融機関からの借り入れで資金を準備すればよいわけです。よって資本のない小規模事業者や中小企業こそ、この補助金を有効活用するべきでしょう。

〈参考記事〉
「事業再構築補助金」は今までにない大型補助金!国のサポートを受けて新規事業にチャレンジしよう
【Q&A】事業再構築補助金の疑問をまるっと解消!申請時に押さえておきたいポイント

一方、中小企業庁の事業予算で実施される中小企業デジタル化応援隊事業を活用して、私たちのような専門家に相談して、身の丈にあったデジタル化の推進を進めることも有効です。


――飲食店における在庫の適正化は重要な課題だと思われますが、ITツールなどの導入によって、時短や省人化へつながるものでしょうか?

はい、つながると思います。ただし、飲食店経営者さまの多くが「ITはよくわからない……」と諦めているケースも多いです。

確かにITツールは種類も多く、細かい違いを理解するのは困難でしょう。技術も日進月歩で新しいシステムやサービスがどんどん出てくるので、情報をアップデートしたり、既存のものと比較検討したりするのは、とても面倒です。また横文字も多くわかりづらいため、比較検討を放棄されているケースが大半だと思います。

しかしITツールの活用に向き合うことは、今後の飲食店経営に必須であるため、食わず嫌いをやめて有効活用するべきでしょう。受発注の効率化を実現するシステムや、お客さまのスマートフォンを使った注文システムなど、さまざまなITツールがありますので積極的に導入してもらいたいところです。


――将来に向けた事業投資として、今のうちから実施しておいたほうがよいものはありますか?

例えば、デリバリーなどコロナ禍で急速に伸びた需要がいくつかあると思うのですが、新型コロナウイルスが終わった後、需要が少なくなるものもあるでしょう。そこはしっかり見極める必要があると思います。

一方、テイクアウトやファストフードなどの業態は、新型コロナウイルス前から長年伸びていた市場です。それが新型コロナウイルスという追い風が吹くことで、さらに需要が伸びているため、こうした市場を選択して事業投資することが大事なことだと思います。

そして、ここに立地の要素を絡めておくことも大切です。

例えば、最近はかつての一等立地が空き物件になっているケースが多くあります。「絶対、ここは良い場所だから」という話はもちろんあるのですが、今後どのように情勢が変化するか分からない部分もあるといえるでしょう。そのため、こうした土地や物件に対して、小規模、中小企業が投資を行うことはリスクが高いと言わざるを得ません。

したがって以前から調子がよい市場で、かつコロナ禍においても堅調な市場や立地を選ぶことが大切だと思います。

コロナ禍中に多かった経営相談とは

――最後に、御社が展開されている無料オンライン経営相談窓口には、どのような内容の相談が多いのか教えていただけますか?

まず長期化するコロナ禍における財務計画の見直しが挙げられます。昨年の緊急事態宣言発令後、相談数が非常に増えました。

次に、事業再構築の補助金を活用して事業の構造転換や業態変換をどうやればよいのかといった、新しい事業策定に関するご相談が多いです。新型コロナウイルスの中でも堅調なテイクアウトの専門店や焼肉屋の具体的な作り方などに関するご相談も増えています。

経営者の中でも「やっぱりこの方法がいいんじゃないか」「こうしたほうがいいかもしれない」というお考えがあるのですが、やはりコロナ禍ということもあり、その考え方が正しいのか正しくないのかをご自身では判断しかねるようです。もちろん金融機関などにも相談はできるのですが、あくまでも財務の観点が中心になるため、融資枠がどれくらいになるといった話になりがちです。

その他、新型コロナウイルス後に向けて人材採用や人材開発のご相談も増えてきました。元々コロナ禍前の外食業界は空前の人手不足でしたので、経済が動き始めると再び人の悩みが顕在化してきます。配膳ロボットの導入や機械化、セルフ化、完全非接触モデルの開発など、ビジネスモデルの設計段階でアプローチを変えていくことも必要になってくるでしょう。

そして食材原価の高騰や最低賃金の上昇もあり、生産性向上に基づく収益力アップも必要になってきています。

今このタイミングでリスクを背負ってトライするべきかどうか、客観的に話ができる相手が社内になかなかいないため、第三者に相談したいのだと思います。こうした窓口を活用して専門家の知恵を借り、コロナ禍にできる最善の策を見つけていきましょう。

参照:無料オンライン経営相談窓口|船井総研

 

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著者:弥報編集部
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