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【2024年4月から】求人を出す際に記載しなければならない3つの事項【改正職業安定法】
2024.04.30
2024年4月1日から「労働基準法施行規則」「職業安定法施行規則」(厚生労働省令)および「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(厚生労働省告示)が改正され、労働条件を通知する際の明示事項が追加されました。
今回はその中から「職業安定法施行規則」に関して、改正後において企業が求人をする際の適切な対応方法を、みやた社労士事務所の宮田享子さんに解説いただきました。中小企業にも影響のある内容なので、2024年4月以降の採用活動を開始する前にぜひチェックしてください。
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目次
企業の採用活動に深く関わる、改正「職業安定法」とは?
「職業安定法」について、そもそもどのような法律なのか教えてください。
主に職業紹介・労働者募集・労働者供給について適正なルールを定めた法律です。一般的に広く知られている「労働基準法」が労働条件の最低基準を決めて労働者を保護することを目的とした法律なのに対し、「職業安定法」は求職者に適正な職業の機会を与え、経済や社会の発展に寄与することを目的としています。
過去にあった改正としては2022年10月、Webの求人サービスが増加していることを受け、求人にかかわる事業者、求職者の情報収集にかかわる事業者、採用を行う求人企業それぞれについてのルール変更が行われました。
2024年(令和6年)4月1日から改正された「職業安定法施行規則」について、改正による変更点を教えてください。
求人企業が労働者の募集を行う場合、募集する労働者の労働条件を明示することが必要ですが、新たに以下の事項についても明示することが必要となりました。
【2024年4月から追加される明示すべき労働条件】
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業の場所の変更の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)
以上の3点を加えた労働条件は、求人票を公開する時点で求職者に対して明示されていなければなりません。具体的に明示すべき労働条件は以下を参考にしてください。
追加された3項目について、1つずつ解説していきましょう。
- 従事すべき業務の変更の範囲
入社直後の業務内容だけでなく、将来想定される業務内容も記載します。例えば、担当業務の変更など、少しでも可能性があるのなら記載をする必要があります。
- 就業の場所の変更の範囲
入社後の就業場所についても業務内容と同じく、将来的に勤務地が変更になる可能性が少しでもあれば記載します。
- 有期労働契約を更新する場合の基準
有期労働契約を締結する求職者に対しては、更新上限または通算契約期間上限の有無とその内容、契約更新をする場合の判断基準を明示する必要があります。従来は、「期間の定めあり」という記載のみでしたが、より具体的な契約更新の条件が求められるようになりました。
改正される労働条件明示ルール、中小企業はどう対応すべき?
追加される労働条件明示事項に関して、どのような対応が必要でしょうか?
求人をする前の段階で、業務・場所の変更の有無を明確にしておきましょう。また業務内容については、限定的に表記しすぎると後々変更することが難しくなります。なるべく広い範囲で記載するように決めておけば将来のリスクも軽減できます。例えば、業務の変更の範囲は「製造業務を除く当社の業務全般」、場所の変更の範囲は「全国の支社または営業所」などというような内容にしておくのが得策でしょう。
有期契約労働者を求人する際も、契約更新に関する条件を事前に決める必要があります。具体的には「更新回数は2回までとする」「通算契約期間は3年までとする」というように記載しましょう。判断基準に関しても「総合的な考慮のうえ判断する」などの抽象的な表現ではなく「勤務成績、態度により判断する」「会社の経営状況により判断する」などの記載が適切です。
もし、これらの労働条件の詳細のせいで「応募者が集まらないのでは」と不安に思う場合、求人項目に補足欄などがあれば、「相談可能」と記載しておきましょう。間口を狭めることなく求人できます。
記載したい内容が多く、すべてを求人票で明示できない場合、どのような対応が必要でしょうか?
文字数の都合などですべてを記載できない場合には、求人票に労働条件の一部のみを記載することが可能です。ただしその場合、面接を実施する前までに、応募者に労働条件の全詳細を明示することが必須です。面接前のメールでのやり取りや、オンラインでのカジュアル面談などですべての労働条件を伝えると同時に、双方向の認識をすり合わせることで、入社後のミスマッチも減らせます。
その他、注意すべき点はありますか?
ハローワークの求人フォーマットは法改正に準ずる形式に更新されていますが、自社のホームページやハローワーク以外の媒体を使う際は、必ず追加必須となった項目欄を作成し、記載することを忘れないでください。
労働者側にとって「キャリアプランを立てやすくなる」というメリットがある今回の法改正ですが、企業側は「先行きの不透明な時代に、将来のことなどわからない」と悩む方も少なくないでしょう。しかし逆に言えば、企業側が明確なキャリアプランを明示できれば、求職者が集まる可能性も高まります。自社に合う人材を見つけるためにも必要な改正だという心づもりで、ある程度は柔軟に対応できるように表記を工夫しながら対応するとよいでしょう。
違反した場合に罰則はある?想定される会社側のリスクは?
規則に違反した場合は罰則などあるのでしょうか?
虚偽の募集広告や条件などを提示した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。しかし、労働条件の明示の不足があった場合、現在のところ罰則は適用されないといえるでしょう。
懸念すべきなのは、労働条件の明示不足による求職者や従業員との関係性の悪化、SNSなどでのネガティブな書き込みの誘発が起こってしまう可能性が高いことです。
最近では法改正に詳しい求職者も多いこともあり、会社とトラブルになったり、第3者に対して「この企業は改正規則に準じていない」といった発信をしたりするケースも見受けられます。トラブルを避けるためにも規則を遵守し、業務や就業場所の変更範囲を明示していない求人票で採用した求職者に対しては、部署異動や転勤はさせないなどの対処法があげられます。
また、どうしても入社後の変更が必要になった際には、労働者の合意を得たうえで、労働条件通知書をあらためて発行しましょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
宮田 享子(みやた社労士事務所 代表)
社会保険労務士。産業カウンセラー。
B型。左利き。商社・損害保険会社・ゲームソフト会社など、さまざまな業種の企業で事務職を経験した後、結婚を機に退職。2児の育児中に友人の社労士事務所を手伝ったことが資格取得のきっかけとなった。
2010年4月に独立開業し、労務相談の他講師業や執筆業等にも力を入れている。「お堅い法律の話を馴染みやすく」がモットー。
趣味はオーボエ演奏なので「チャルメラ社労士」を名乗る。
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