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さらば売上至上主義!会社を黒字体質に変える「粗利マインド」の作り方

2024.04.23

著者:弥報編集部

監修者:中西 宏一

「売上目標を達成した!でも利益は減ってしまった」「お客さまからの値下げ要求が厳しいけど、売上を確保するためには応えなければ」そんなことが続いて、経営が苦しくなる中小企業が後を断ちません。

このような会社には、売上を経営指標の最優先にする「売上至上主義」を取るところが少なくないでしょう。

しかし安定した利益を確保するためには、売上よりもむしろ「粗利」に着目する必要があります。

本記事では、『粗利至上主義』などの著書がある経営コンサルタント、株式会社KCOの中西宏一さんに、粗利に着目した経営のメリットや導入方法などについて伺いました。

会社を継続的に黒字が出るように改善したい経営者の参考になれば幸いです。


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なぜ利益を出す会社は「売上」ではなく「粗利」に注目するのか

まず、粗利とは何でしょうか?

言葉のとおり、販売価格から原価を差し引いた「粗い状態での利益」です。例えば70円で仕入れた商品を100円で売れれば、差額の30円が粗利となります。粗利とは、単純にものの売買において発生した利益となります。

粗利は損益計算書でいう「売上総利益」のことを指します。決算書に表示される利益は、売上総利益、営業利益、経常利益、税引き前利益、純利益の5種類ありますが、このうち、売上高から売上原価を引いたのが売上総利益、つまり粗利です。売上総利益から販管費(いわゆる経費)を引くと営業利益が、そこからさらに利息などの営業外損益などを差し引きすると経常利益が出ます。そして経常利益から特別損益と税金を引いた、最終的に会社に残る利益が純利益となります。

粗利の最大の特徴は、一般社員が認識できる唯一の利益であることです。営業や技術などの現場で働いている社員は、役員報酬や事務所の賃料など実際にかかる経費を知ることができません。しかし粗利であれば、全社員が経営指標として共通認識を持てます。

粗利に着目して経営する「粗利経営」のメリットは何ですか?

粗利の額に絞った「受注判断」に注力できるということです。売上ではなく粗利にフォーカスするだけで、まず黒字体質の会社になることができます。

正反対の立場である「売上至上主義」と比較して考えてみましょう。野球のバッティングにたとえると、売上高を徹底して追い求める売上至上主義は、すべての投球にスイングしているのと同じです。粗利経営はストライクだけを見極めてスイングするようなものです。当然、粗利経営の考え方のほうがはるかに打率を高めることができます。

私は建設業を得意分野としてコンサルティングをしていますが、売上を追求するあまりに、赤字に陥ってしまう中小企業が圧倒的に多いのが現状です。

仮に原価が2億円かかる案件があるとします。受注額を下げれば下げるほど、受注確率は高まるでしょう。しかし、2億円以下で受注してしまうと、売上が立つ一方で赤字が発生することになります。

売上至上主義の考え方では、このように「売上高は確保できるが、利益はほとんど確保できない」といったことが起こります。極端に言えば、現在の99%の経営者は売上至上主義に陥っているとさえ感じています。

しかし粗利を軸とした経営では、利益が出る案件かどうかを最初に確実に見極めたうえで受注に向けて動くことができます。このような受注方式を選別受注といいます。

なぜ、ほとんどの経営者は売上至上主義の立場を取るのでしょうか?

売上が世間的に最も注目される指標だからです。テレビの対談番組に「年商10億円の会社経営者」が登場することはあっても、「純利益3,000万円の会社経営者」といった取り上げ方をされることはあまりありません。金額の桁が大きいほうがやはり見栄えがするからです。

経営者の皆さんも人間ですから「年商◯億円のスゴい社長」と思われたい心理が働きます。「売上高が5億円で営業利益が5,000万円の会社」よりも、「売上高が10億円で営業利益が1,000万円の会社」を目指す経営者が多い実態がありますが、それは理にかなっていません。売上高が低くても利益を出せる会社のほうが、経営効率が良いことは明白です。

売上が注目されることの影響は、企業に対する外部からの評価などにも及んでいます。建設業における入札および経営審査なども、売上高などの会社の規模が、いまだに一定のウエイトを占めています。銀行の融資における審査も同様です。資金繰りも含めて、売上高に比重を置いている銀行もいまだに多くあるという現状もあります。

世の中全体として、売上が大きい会社ほど優良企業とする風潮があると言えます。

どのようなタイプの経営者が売上至上主義に陥りやすいのでしょうか?

売上至上主義の経営者には2種類います。売上という、わかりやすい目標に対してひたすらに突き進んでいくタイプと、得意先からの依頼を断れないタイプです。

ひたすら突き進むタイプの経営者は、大きな損失の受注をしてしまうと、会社が取り返しのつかない状況になることが多いです。また、依頼を断れないタイプの経営者は顧客の言いなりになってしまっている状態で、結局無理な受注が続いて赤字を出し、倒産してしまうケースが少なくありません。

どちらのタイプの経営者も、経営の軸を粗利に路線変更することで、安定した利益を確保できる会社に変わることができます。

粗利経営の導入方法はシンプル!粗利の累計に注目するだけで確実に利益は伸びる

粗利経営の導入は難しいのでしょうか?

導入自体はとてもシンプルです。ただ、売上至上主義から転換するためには、経営者と従業員のマインドを変えなければなりません。ここに抵抗感を抱くこともあるかと思います。

売上至上主義では、価格を安くすれば受注できました。しかし粗利経営ではさまざまな交渉や工夫が求められます。少しでも高い金額で受注するためには、商品やサービス、アフターフォローなどの付加価値などをより強く顧客にアピールする必要があります。そのためにどうすべきかを常に考え、工夫し続けていかなければなりません。

このような社風や精神的な土壌ができれば、粗利経営によって黒字体質に転換することは難しくありません。

粗利経営における目標の立て方について教えてください。

まず考えるべきは損益分岐点である販管費の認識です。単純に、年間における粗利の合計が販管費を超えれば、その年度は黒字になると考えます。例えば新しい期の販管費の見込みが1億円だとしたら、その期の損益分岐点は1億円です。その1億円に必要な利益額を加算した数字が、全社の年間の粗利目標となります。

具体的に、粗利経営では何をすればいいでしょうか?

各案件の受注額と原価、粗利を記した一覧表を作ることです。これは単純に案件を縦に並べて記していけばよいだけです。表計算ソフトに多少慣れている人であれば、簡単に作れるはずです。これを私は「受注現場一覧表」と呼んでいます。

現場ごとの粗利を一件ずつ足していくという、とてもシンプルな表です。極端な話、ノートやホワイトボードに手書きして電卓で集計するだけでもかまいません。

今期の粗利を累計していくだけでいいのですか?

はい。私の経験上、粗利益を累計して、月に1回、目標の達成状況を社内で共有するだけで、確実に利益は伸びます。経費の削減や原価の低減など細かい部分は他にもありますが、まずはこの月1回のミーティングでの利益進捗の共有が最も効果的です。

これを引き続き野球にたとえると、受注現場一覧表はスコアボードのようなものです。得点がわからなければ、自分のチームが勝っているのか、負けているのかすらわかりません。「あと何点取れば勝てるか」がわかれば、皆で知恵を出し合って作戦を立て、1つ1つの打席により目的を持って取り組み、集中していけるようになります。

売上至上主義の会社が「今期目標の売上10億円まで、あと5億円!」と、進捗度を共有して発破をかけることがあると思います。それを粗利で行うイメージです。

粗利率は気にしたほうがいいのでしょうか?

社内での粗利率の基準だけは決めておいたほうがよいです。何の基準もないと、ものすごく低粗利率の物件の受注などが増えていくことになります。業界別の粗利率(粗利が売上高に占める割合)の平均などが発表されていますが、会社の特性や地域性、規模などによって変わるため、あまり目安にはなりません。業界平均が20%でも15%で十分な会社もあれば、30%が必要な会社もあります。まずは社内で、自社の特性に応じた目標の粗利率を決めるのです。

(参考)
中小企業の経営指標(概要)~中小企業経営調査結果~ (7) 業種別主要計数表|中小企業庁

会社を黒字体質に変える「粗利マインド」の作り方

どうすれば選別受注ができるようになるでしょうか?

明らかに粗利が取れない案件の受注を見送ることです。結局はそれに尽きると思います。粗利が取れる物件に絞るという考え方とも言えますが、何より、薄利の物件を勇気を持って見送ることが大事です。「それだと売上が下がってしまう」と考えないことが大事です。

そして、値下げを要求されても、安易に応えないことです。「これが精一杯なんです」と誠心誠意伝えましょう。

得意先から依頼される仕事は、断りにくいのではないですか?

確かに同じお客さまから粗利が出そうな仕事だけ受注して、それ以外は断る、ということに抵抗感を覚える現場の従業員は少なくありません。

しかし、そこは1件1件、誠実に交渉していくしかありません。粗利が明らかに取れない案件は、やはり勇気を持って断るしかありません。すべては断れなくても、まずは少しずつでも交渉していくしかありません。それで注文が来なくなったら、その得意先に見切りをつけるしかないのです。

このように粗利による選別受注をしていくと、得意先に偏りが出てきます。粗利率が高い仕事を依頼してくれるお客さまと、あまり儲からない仕事を依頼してくるお客さまに振り分けられるわけです。売上は下がるかもしれませんが粗利は確保でき、結果として「良いお客さま」だけが残ることになります。

経営者としては、現場の従業員に何を伝えればいいでしょうか?

粗利を確保できない金額を強く要求された場合、「最悪、受注できなくてもかまわない」と伝えることです。現場の営業マンが抵抗感を持つのは、「今までよりも高い見積もりを出して失注したら、自分の責任のように感じる」ということです。会社の方針として割り切らせることで、営業マンのメンタルブロックを外してあげることです。

人間の心理として、折衝は大きな負担になります。家電量販店で冷蔵庫を買う場面を想像してください。数千円を値切るよりも、黙って店頭価格で買ったほうが楽なのではないでしょうか。仕事における顧客が相手なら、その心理的負担はさらに大きいはずです。

精一杯の交渉をして、こちらが提示できるギリギリの金額で受注できないならそれは仕方ない、と許容することが、粗利経営における社内の土壌作りには必要です。

粗利に着目した経営が、社風に与える影響も大きそうですね。

はい。先述したとおり、粗利経営では価格を安易に下げることができない分、その他のサービスやスピードなどの付加価値を訴求しなければなりません。すると思考と工夫を怠らない、やる気あふれる従業員が活躍するようになります。その結果、徐々に活気に満ちた職場になっていくでしょう。

粗利経営はとにかくシンプルです。月1回のミーティングにより、粗利の年間目標と現状の獲得粗利を確認し、その差額を認識、そしてその差額を埋めるための今後の方針を皆で話し合う。それだけで確実に業績は上がります。ぜひ売上至上主義から脱却し、安定して利益を残せる「粗利至上主義」にチャレンジしてみてください。


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この記事の著者

弥報編集部

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中西 宏一(株式会社KCO 代表取締役)

法政大学文学部卒業後、コンサルティングファームを経て経営コンサルタントとして独立。建設業界の利益改善を圧倒的な強みとして、顧問企業の90%以上を2年以内に劇的な業績向上に導いてきた。「必ず劇的に改善する」コンサルティングが顧客に高く評価されている。著書に『建設業のための経営改善バイブル』、『粗利「だけ」見ろ』、『粗利至上主義』などがある。

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