- 人材(採用・育成・定着)
【中小企業の採用】適切な人材の「見極め」で、早期退職を未然に防ぐには?【船井総研が解説】
2024.05.07
売手市場が続く採用活動において、自社に適した人材の獲得は年々困難を極めています。
特に中小企業の場合、経営者自身が採用活動を行うことも少なくありません。採用に割ける時間や人員が少ない中で、履歴書や面接から効率的に適切な人材を見極める必要がありますが、多くの企業でミスマッチや早期退職が発生している状態です。
今回は株式会社船井総合研究所HRストラテジー支援部マネージング・ディレクターの宮花宙希さんに、採用活動での「人材の見極め方」について、限られた時間と情報でどのように人材を選べばよいのか、見極める力はどのようにして養えばよいのかなどを伺いました。
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目次
「優秀だから」はNG!本質を見抜く採用を
「採用基準」と「見極め」は何が違うのでしょうか?
「採用基準」は、自社が求める人物の特性やスキルなどを明確にした基準です。だれが見ても「欲しいのはこういう人だよね」と納得でき、その基準に沿って採用活動を進められます。一方「見極め」は、履歴書や面接などを含む総合的な情報から、候補者の本質を見抜き、本当に自社に合っているかを確認することを指します。
人材を見極めていても、なぜミスマッチが発生してしまうのでしょうか?
見極め方が表面的になっている可能性があります。特に候補者と接する面接において、表層の情報で判断してしまっているかもしれません。採用基準を基に、経験やスキルを見て優秀な人材だと思い込み「すばらしい経歴だから良い人に違いない」と判断する企業は少なくありません。もちろん、求める人材にはある程度のスキルや経験を求めることは大切ですが、必ずしも自社に合うとは限りません。
また、面接での雰囲気や回答内容が良い、態度が良いなどの主観で決める方法も注意が必要です。最近では書籍やインターネットで「企業に好かれる面接回答」などの情報も簡単に得ることができます。候補者が、面接で自分を良く見せようとしたり、好印象な回答を用意したりする可能性も否めないため、本質的な見極めが必要です。
さまざまな角度から、自社に合うかを判断する
適切な人材の見極め方があれば教えてください。
人材を見極める際には、的確な判断材料を増やす必要があります。効果的な方法をいくつかご紹介します。
- 掘り下げ質問で候補者の本意を知る
候補者への質問は、回答を掘り下げることを徹底してください。認知バイアスや思い込みに惑わされず、相手の言動のつじつまが合うかどうかを整合するイメージです。特に企業文化や社風に関しては候補者がどのように理解をしているかを確認することで、入社後のミスマッチを防ぎます。
例えば、面談の中で「御社の価値観に共感しました」という回答があったとしたら、その「価値観」はどのようなもので、具体的に「どこ」に共感したのかを掘り下げる追加質問をすることが効果的です。履歴書に記載されている実績についても「なぜそうしたのか」など、行動の背景にある理由を聞くとよいでしょう。
- 適性診断ツールや他者の介入で、多角的視点を持つ
特に中小企業では経営者が自ら採用活動のすべてを担当することも少なくありません。1人で判断する前に、可能であればさまざまな視点を持つことを心がけましょう。経歴や実績などは、先入観を持ってしまうと見極めに失敗してしまう可能性があります。能力的な部分は、適性診断ツールなどを活用することもおすすめです。主に言語分野(国語力)と非言語分野(数字能力)の両方を数値化し、採用の判断材料にすることができます。
また、社員に候補者と話してもらう機会を作りましょう。実際に接した印象はどうだったかなど、社員の率直な感想も重要な判断材料になります。さまざまな視点を持つことで、候補者の客観的な情報が得られ、より的確な採用が可能になります。
- グループワークを取り入れる
候補者が複数人いる場合に限りますが、グループワークや集団面接などを設定し、候補者の対応を観察するのも有効です。1つの課題に複数人で取り組むと、履歴書や面接だけではわからなかった、候補者本来のコミュニケーションスキルや思考力、性質などが見えてきます。
- 最終決定は振り返りの時間を設ける
人材を見極めるときは採用基準を軸にしたうえで、面接内容などの判断材料に加え、所作や表情など細かな部分まで振り返る時間を設けましょう。小さな違和感は、見て見ぬふりをして進めると後々大きな問題になることも想定されます。気になる点は1つ1つ確認してから判断しましょう。
見極め力は「洞察力」。注意深く観察する習慣を
採用すべきか迷ったときは、どうすればよいのでしょうか?
「能力的には問題ないが、何かひっかかる」「社風に合わないような気がする」などの勘所ももちろん重要です。選考を進め、見極めていく中でどうしても消えない懸念があり、自社の採用基準に大きく関わることであれば、もう一度考え直した方が賢明です。
どのようにして「見極め力」を身に付ければよいのでしょうか?
人の内面を見通す「見極め力」自体は洞察力であり、それなりの時間をかけて経験を積むことでしか得られないものでもあります。人が人を見る以上100%確実な手法はありませんが、まずは相手に興味を持ち、知ろうとする意識を持ってください。加えて、物事を注意深く観察する姿勢を持つことが重要です。意識を持つだけでも観察力が高くなり、初対面でも見えるものが変わってくるでしょう。
相手を観察する以外にも、話をよく聞いていれば内容も覚え、疑問を持つ点もあるはずです。思い込みや先入観を捨て「本当にそうなのか?」という健全な批判思考法であるクリティカルシンキングを鍛えましょう。
見極め力は採用だけでなくさまざまなビジネスシーンで活用できます。人に会う頻度を増やし、洞察力を磨く機会を意図的に持つようにするとよいでしょう。
どんな人物が採用の見極めに適しているのでしょうか。
経営者の他にあげるとすれば、営業担当者も採用に適している可能性が高いでしょう。採用活動は営業活動と似ている側面があります。人を観察して知ろうという姿勢が試され、同時に自社を魅力的に伝える力も必要になるためです。営業で成果を上げている人物がいれば、採用にも参加してもらいましょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
宮花 宙希(株式会社船井総合研究所 HRストラテジー支援部 マネージング・ディレクター)
2013年船井総合研究所に入社後、採用・育成・評価・組織活性といった人材・組織をテーマにさまざまな業界・規模の企業支援に携わる。現在は部署にて責任者をしており、人材採用から人を育てる評価制度構築支援など総合的なマネジメント強化による業績アップを得意としている。現在所属中のHR支援部において、人財や組織の観点からコンサルティングを実施。企業の持続的な成長は、事業戦略やマーケティングだけでは実現できず、人財・組織に関する戦略や施策も重要性が日に日に高まっているため、主に「採用」・「育成」・「定着」分野にてお客様の成長をサポート実施。
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