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金融機関へ返済の一時停止を要請可能!原油・物価高や長期化するコロナ禍の緊急時に使える「中小企業に関する事業再生等のガイドライン」とは【教えて吉田先生!】
2022.08.04
2022年3月4日に「中小企業に関する事業再生等のガイドライン」(以下、本ガイドライン)が策定、公表されました。現在、経営が順調であっても、長引くコロナ禍や原油・物価高騰のあおりを受けて、今後業績が悪化する可能性は否定できません。そのような時に、思い出してほしいのが本ガイドラインの存在です。
本ガイドラインを活用することにより「金融機関への返済」「一時停止要請」「債務超過解消目途5年以内の猶予」「経営者の退任回避」「外部専門家支援に対する補助支援申請」などを求めることも可能です。国が用意してくれているものですから、状況によっては躊躇せず活用する道を選んでください。
事業再生における私的整理に関しては2001年策定の「私的整理ガイドライン」がありましたが、本ガイドラインは、中小企業者の実態を踏まえた内容となっています。併せて弥報Online「中小企業活性化パッケージ」の記事でも本ガイドラインに触れていますので、参考にしてください。
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執筆者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
吉田学ブログ「融資・資金調達支援を武器にして法人顧問を獲得しよう!」
目次
中小企業に関する事業再生等のガイドラインとは何ですか?
本ガイドラインは、中小企業者の事業再生を「後押し」するものです。新型コロナウイルス感染症により大きなダメージを受けた中小企業者が、この難局を乗り切るために、金融機関などと密接な関係を構築することで、事業再生を実現するための施策となっています。2022年4月15日より運用が開始されています。
ちなみに、そもそも「ガイドライン」とは政府や団体が指導方針として掲げる大まかな指針であり、本ガイドラインにも法的拘束力はありません。ですが中小企業者、金融機関およびその他の利害関係人によって自発的に尊重され遵守されることが期待されています。
また、本ガイドラインは以下から入手できます。
中小企業の事業再生等に関するガイドライン(ダウンロード)|一般社団法人 全国銀行協会
本ガイドラインの具体的な内容とポイントを教えてください。
本ガイドラインには、大きく以下の2点について書かれています。
1点目は、本ガイドラインの「第二部」で取り上げられている「中小企業者の事業再生等に関する基本的な考え方」についてです。「平時及び有事における中小企業者と金融機関の対応」「事業再生計画成立後のフォローアップ」に関する中小企業者と金融機関の対応などをまとめた内容となっています。
2点目は「第三部」で取り上げられている「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」です。具体的には、本ガイドラインのメインともいえる「再生型私的整理手続(事業再生する場合の手続き)」および「廃業型私的整理手続(廃業する場合の手続き)」について書かれています。
本ガイドラインの主なポイントは、以下の4点になります。
- 事業再生計画案が策定される前に、金融機関などに対して「一時停止」(返済猶予など)を求めることができる
本ガイドラインに基づいて事業再生を行う場合、事業再生計画案が策定される前であっても、一定条件を満たしていれば金融機関に対して返済などの「一時停止」を求めることが可能です。
- 「債務超過」解消までの年数が、実質5年以内を目途とする
本ガイドラインでは、財務基準が「貸借対照表の純資産の部合計がマイナスの状態」である債務超過解消までの年数を実質5年以内とすることを定めています。この他にもさまざまな財務基準が設けられており、これらの基準がクリア可能な事業計画の策定、および事業再生が事業者には求められます。
- 「経営者責任の明確化」がなされれば、退任を必須としない
従来の私的整理ガイドラインでは、ガイドラインの適用条件として経営者の退任が原則とされていました。しかし、本ガイドラインではそれに代わる経営者責任の明確化さえしていれば、経営者の退任は必須ではありません。経営者責任として問われる内容としては、役員報酬の削減、経営者貸付の債権放棄などが考えられるでしょう。
- 「外部専門家」および「第三者支援専門家」の支援が受けられる
中小企業者が独自に事業再生計画などの策定を行うのは、大変困難です。そのため、ガイドラインに基づく再生を図る際には弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、認定支援機関などの「外部専門家」の支援を受ける必要があります。さらに、その計画案の精査をする「第三者支援専門家」の支援も必要となるでしょう。
しかし、これだけの専門家の支援を受けるには、大変高額な費用が必要となります。こういった費用に関しても補助を受けることが可能です。その上限は700万円と設定されています。
外部専門家、第三者支援専門家への補助支援(上限700万円)とは、具体的にどのようなものですか?
ガイドラインに基づく事業再生等を図る際の補助金制度について、概要を以下にまとめました。
- 主な補助対象要件
1)「中小企業に関する事業再生等に関するガイドライン」の中小企業版私的整理手続に基づき私的整理を行うこと
2)認定経営革新等支援機関による計画策定支援等を受けていること - 補助率・補助上限
1)補助率:2/3
2)補助上限:1案件につき、上限計700万円
・デューデリジェンス(中小企業者の事前調査)費用等:上限300万円
・計画策定支援費用:上限300万円
・伴走支援費用:上限100万円 - その他
1)経営革新等支援機関の認定を受けた外部専門家、第三者支援専門家(補佐人含む)の費用が対象
2)複数の認定経営革新等支援機関が関与する場合も上限は計700万円
本ガイドラインは、小規模・中小事業者でも利用可能ですか?また、従来のリスケジュール交渉と何が違うのでしょうか?
本ガイドラインはある程度の規模がある中小企業を想定して、策定されているものと考えられます。その理由として、専門家などへの報酬が上限700万円まで補助される点が挙げられます。これは、ある程度額の大きな報酬に対する補助額と推測されるでしょう。
ただし本ガイドラインには、小規模事業者に関する緩和に関する記述がありますから、小規模事業者の利用も想定されていると考えられます。
次に、従来のリスケジュール交渉などとの相違点ですが、リスケ交渉などにおいては、中小企業者が単独または顧問税理士などの専門家の支援のもと、直接、金融機関に交渉します。この際の報酬は、中小企業者が支払います。特にガイドラインなどはありませんので、金融機関との相対交渉になります。一方、本ガイドラインにおいては、計画策定を認定経営革新支援機関の支援を受けて交渉を進めます。この際の報酬は、先述の通り700万円までは補助を受けることが可能です。
本ガイドラインについて、どこに相談すればよいのでしょうか?
本ガイドラインの内容や活用などについては、非常に難解なものとなっているため、まずは顧問税理士や事業再生の専門家などに相談してみてください。また、本ガイドラインの総合窓口は、2022年4月1日に発足した中小企業活性化協議会および中小企業活性化全国本部になります。本ガイドラインは公表されたばかりですので、詳細については中小企業活性化協議会に質問をしてみてください。
(総合窓口)
中小企業活性化協議会|中小企業庁
また、本ガイドラインは以下から入手できます。
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