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小規模・中小企業も利用可能?「プロパー融資」のメリット・デメリット【教えて!吉田先生】

2024.09.05

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

小規模・中小事業者がよく利用している公的融資の他に、民間の金融機関による「プロパー融資」があります。プロパー融資とは、金融機関が信用保証協会を利用せず、自己責任で貸し出す融資のことです。プロパー融資は審査が厳しい反面、融資の限度額がないなどのメリットも多いため、メリットやデメリット、注意点、プロパー融資の基準などについて正しく理解し、利用を検討することをおすすめします。

本記事ではプロパー融資について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に解説していただきました。

※本記事は2024年8月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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プロパー融資とは何ですか?利用するメリットは?

中小事業者が民間の金融機関(銀行、信用金庫、信用組合など)から融資を受ける場合、主に「信用保証協会の信用保証付き融資」と「プロパー融資」の2種類があります。プロパー融資とは、金融機関が信用保証協会などの利用せずに自己責任で貸し出す融資のことです。

信用保証協会の保証付きの場合は、万が一中小事業者が返済できなくなった際に信用保証協会が代位弁済してくれますが、プロパー融資の場合は、金融機関自らがリスクを負うことになります。よって、原則として業績が好調で信用力の高い中小事業者でなければ、プロパー融資を受けることはできません。

主なプロパー融資のメリットは、以下の通りです。

融資限度額がない

信用保証制度には保証限度額が設定されていますが、プロパー融資の場合は金融機関の判断によるため、限度額が決まっているわけではありません。そのため数億円、数十億円のプロパー融資が行われることも珍しくありません。

比較的、金利が低い

信用保証付き融資と比較すると、低い金利で設定されるケースが多いです。金利は原則として信用力のある事業者には低く設定されます。プロパー融資はそもそも信用力の高い事業者が利用できる融資のため、金利は低く設定される傾向にあります。

信用保証協会の債務保証の必要がない(信用保証料の必要がない)

プロパー融資は信用保証協会を利用しないので、債務保証の必要もありませんし、当然信用保証料も必要ありません。低コストで融資を受けられるでしょう。

比較的、審査が早い

信用保証協会の保証審査は必要なく、金融機関のみの審査になりますので、相対的に早く結果が出ます。また、信用力の高い事業者が利用できるので、当然審査期間も短くなります。

信用保証協会の枠を利用せずに済む

信用保証協会の枠とは、中小企業・小規模事業者1企業に対して設定されている保証限度額のことです。一般的に、中小企業信用保険における普通保険限度額2億円、無担保保険限度額8,000万円を合算した2億8,000万円が保証限度額として設定されています。プロパー融資を利用した場合、信用保証協会の枠を利用しないため、枠を確保したまま融資を受けることが可能です。

プロパー融資にデメリットや注意点はありますか?

プロパー融資の主なデメリットや注意点は、以下の通りです。

審査が厳しい

プロパー融資は信用保証協会などの債務保証を必要とせず、金融機関が貸倒れリスクを負う融資ですので、それだけ審査は厳しいといえるでしょう。特に最初のプロパー融資を受ける際は、金融機関はとても慎重になります。

返済期間が短い

ケースにもよりますが、比較的短い返済期間にて実施される場合があります。特に最初の取引の場合は、短期(1年)で実行して、実績を積み重ねることによって、1年以上の返済期間も可能になります。これまでの実績や信用力などによって判断されると考えましょう。

事業者側に知識が必要となる

信用保証付き融資の場合は「国が介在しているので中小事業者は守られている」という見方もできますが、プロパー融資の場合は事業者と金融機関の1対1の交渉になりますので、やはり金融機関との交渉ノウハウを有している方がベターだといえるでしょう。よって、顧問税理士や専門家などのアドバイスを受けながら交渉を進めることをおすすめします。

経営者保証や担保は必要になりますか?

プロパー融資=無担保・無保証人ということではありません。当然、経営者保証や担保などを求められる場合もあります。特に中小事業者において、初めてプロパー融資を受ける場合には、経営者保証を求められるケースは珍しくありません。実績を重ねることによって、経営者保証なしでプロパー融資を受けられるようになります。

なお、現在プロパー借換保証制度が実施(実施期間:2024年3月15日~2027年3月31日)されています。「経営者保証ありのプロパー融資を受けている企業」を対象とした借換制度になります。信用保証制度になりますが、“経営者保証なし”を第一に検討されるのなら検討されることをおすすめいたします。

(参考)

プロパー融資を受けるにはどうすればよいですか?基準はありますか?

前述した通り、プロパー融資は原則として信用力の高い事業者向けに実施されます。信用力とは、売上・利益規模、業歴、これまでの返済実績、財務基盤などの定量的な側面と、業歴や経営状況、経営者自身などの定性的な側面などによって総合的に判断されます。そのため原則として、創業したばかりの事業者や実績の乏しいスタートアップ事業者、業績の悪い事業者(連続赤字、債務超過)などはやはりハードルが高いといえるでしょう。

しかし一部の地方金融機関においては、プロパーの創業融資や小規模・中小事業者向けに小口のプロパー融資などを実行する場合もあります。現在取引している金融機関などの状況について、担当者などに確認してみましょう。

「この基準に達すればプロパー融資を受けられる」という全国共通の基準はありませんが、金融機関毎に独自に一定の基準を設けているケースはあると思われます。

プロパー融資を受けるには、やはり一定の売上・利益の規模が必要になりますので成長性も意識する必要があります。絶対的な基準ではありませんが、1つの考え方として、年商5千万円を超えて1億円に向かって成長している企業などは、いずれプロパー融資を受けるという前提で財務改善などを検討するよう考えてみてはいかがでしょうか?

そのうえで、金融機関とのコミュニケーションも重視してください。具体的には「決算報告および経営計画の報告」「期中の試算表、資金繰り実績などさまざまさまの報告」「現在借りている信用保証付き融資の確実な返済」などを心がけましょう。プロパー融資を受けたい金融機関の口座をメインに利用することも一案です。

また、プロパー融資を申請する際に提出する「事業計画の策定」には特に力を入れて作成してください。できれば融資に強い顧問税理士から指導を受けて「決算書の適正化」や「財務改善」なども図り、しっかりと金融機関と交渉することをおすすめします。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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