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採用難から抜け出したい! CSRエバンジェリストが教える「企業が本当にやるべきこと」

2019.12.23

著者:泉 貴嗣

企業が持続可能であるためには、人材の確保が不可欠です。そのためにも採用、人材定着、トレーニングなど、行うべきことは多くありますが、その入口にあたる採用でつまずいている、つまり「採用難」に悩んでいる企業はたくさんあります。

今回は、採用について努力をしているにも関わらず、なかなか効果が表れない中小企業に向けて、優秀な人材確保や効率の良い採用を行うためにも、自社のあり方を見直すきっかけを提供します。

採用難に悩む企業があとを絶たない

業種や規模、事業環境を問わず、企業の存続にとって人材の確保は「必要条件」です。しかし、みなさんもご存知のように多くの企業が採用難に喘いでおり、メディアでも「人手不足倒産」が報じられることがしばしば……。

そのような状況下であちこちに求人広告を出し、ようやく希望者との面接にたどり着き、やっとの思いで採用できたスタッフでも、遠方からの通勤などの理由で、採用後の労務コストが割高になったり、採用されたスタッフ自身のワークライフバランスの両立が難しくなったりすることも決して珍しくありません。

しかし、多くの企業は採用に関して、求人広告の出稿や職業紹介、人材派遣など外部のエージェントに頼らざるを得ず、効果がなければ、追加費用をかけるか、これらのエージェントの組み合わせを変えるほかなく、これといった妙手がないのが現状です。

はたして、この方法が良いのでしょうか? 採用難に悩む企業の多くは、本当に「やるべきこと」をやり尽くしたのでしょうか? この点は、一考の余地があります。

採用難から脱却するためには?

必要な時に必要な人材が確保できる“ジャスト・イン・タイム”の採用が、企業にとっては一番望ましい状態です。だからこそ、企業は労働環境や待遇の改善に努力しつつ、そのことを労働市場にアピールしています。

つまり採用とは、求人広告を出す、ハローワークに求人票を出す、そして希望者と面接・選考するなどの直接的な採用プロセスだけでなく「働きたい人のための環境整備」に関する活動も含むと言えるでしょう。

しかし、問題はそれらの努力を払ってもなお、採用難から抜け出せないことです。では、それらを脱却するためには何が必要か?

それは、「採用環境」を整備することです。大規模なプロモーションを打てる大企業はさておき、中小企業の多くは社会的な認知度が低いのが実情です。知られていないからこそ、採用に苦戦し、希望者が現れたとしてもその数は少なく、選考の余地が少ないのが悩みです。

しかし、まず「知られる」ことこそが採用の端緒であり、日常的に自社の存在を認知してもらう取り組みこそが、採用環境の整備だと言えます。

一方でこのように論じると「中小企業にはそんな余裕はない」という指摘が出てきます。しかし、大企業と中小企業は「知ってもらうターゲット」が最初から異なります。大企業の多くは事業拠点が各地に存在するため、広範なエリアでプロモーションを行う必要がありますが、中小企業の多くは拠点が特定の地域の本社か、わずかな拠点のみで、大企業と比べて相対的に地域社会への依存度が高い存在です。

だからこそ、中小企業が立地する地域社会に対して、戦略的にプロモーションを行うことが求められます。

地域貢献という「投資」を行うのも手

先ほども言及しましたが、遠方からの採用は企業にとっても、採用される側にとっても負担のある人事です。それゆえに、企業は可能な限り拠点付近での採用ができるようになることが、最も望ましいと言えます。

では、それはどうすれば良いでしょうか? 地域社会への依存度が高い中小企業が採用難を解消するためには、何でも良いからメディアに露出して、ひたすら地域社会での認知度を上げる、というのではなく、「戦略的な活動」が不可欠です。その最も基本的な活動となるのが「地域貢献」です。

地域貢献とは、やみくもに良いことばかりをするのではありません。ここで重要なのは戦略性で、自社と地域社会がメリットを分かち合う要素を創れるかがポイントです。つまり、地域貢献を“投資”として位置付け、取り組む必要があります。

この投資で目指すのは「より近くからの採用」です。将来のスタッフは、自社と同じく地域社会の一員です。だからこそビジネスにおけるマーケット・イン思考と同じように、地域社会のニーズを踏まえた地域貢献によって、彼らへの認知度を高め、効果的な採用までの動線をつなげることが重要です。

採用コストゼロを実現した例

ここで実際のケースをご紹介しましょう。神奈川県で産業用ヒーターを作っている、20人ほどの規模の企業の事例です。

同社の経営者は社長に就任して以来、「住工混在地域に立地する自社が地域と共生するためには、自社から積極的に地域社会とコミュニケーションをとる必要がある」と考え、地元の小学校や市民団体を訪ね、地域社会のニーズの把握に努めていました。

それによって小学校の社会科見学の受け入れや、地域の事情を踏まえた防災マップの作製・配布などに取り組み、さらに同地域内で第2工場を開設する際は、同工場にカフェとコワーキングスペースの機能を備え、住民に地域活動の拠点を提供するなど、地域社会のニーズをくみ取り、同社のリソースを活用することで地域貢献に取り組んできました。

これらの取り組みは同社と住民の交流につながり、同社の認知度や評価を高める上で大いに効果を発揮しています。

その結果、起きたこととして、地域社会からの支持を得て操業環境が安定しただけでなく、リファラル採用(スタッフからの紹介による採用)が実現し、採用コストがゼロになったのです。スタッフでもある住民が、ママ友などのローカルなコミュニティを通じて、他の住民に声をかけやすくなったため、外部のエージェントに頼らずに採用が行えるようになりました。

これは、まさに採用環境の整備に資すると言えるでしょう。もちろん、このような取り組みは経営者だけでなく、業務として取り組む、スタッフの理解なくしてはなし得ないことはいうまでもありません。

経営者のアタマの柔らかさ次第

上記のケースはBtoBの製造業ですが、他の業種でも応用できます。例えば、飲食業も典型的な採用難の多い業種ですが、外食することは多くの人がすることですし、現代では食育のコンテンツも多数あり親和性が高いため、地域貢献を通じた住民との接点作りは、むしろBtoBの製造業よりも有利だと言えます。

重要なのは、経営者が自ら「〇〇業は△△をすることだけが業務だ」という固定観念を捨て去り、業務のあり方を再構成することです。地域から生かされている存在だからこそ、地域からリソースを調達するために、戦略的な地域貢献に取り組む必要があります。

もはや、地域貢献が主力業務と言っても良いでしょう。職場と眼前の顧客に張り付くことだけが業務ではありません。この状況に対応できるか否かは、経営者の采配次第です。

だからこそ、経営者が自ら地域貢献の戦略を企画し、それが業務であることをスタッフに理解・協力してもらう必要があります。事業リスクにならないよう、今一度、経営者の方はご自身の経営のかじ取りで、地域の方々に接触することをおすすめします。

この記事の著者

泉 貴嗣(いずみ よしつぐ)

CSRエバンジェリスト、第一カッター興業(株)監査役。大学でCSR(企業の社会的責任)論や産学連携教育などの科目を担当後、独立。「中小企業のCSR、SDGs普及」をテーマに、自治体の中小企業政策のコンサルティングや、中小企業の支援を行う他、東証一部上場企業の監査役を兼務。著述にCSRチェックリスト―中小企業のためのCSR読本―』、『CSR経営推進マニュアル―CSRはSDGsの方法論―』(さいたま市刊)、『[新]CSR検定・3級教科書』(ウィズワークス刊・共著)など

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