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キャッシュレス決済にしてよかった?ITコンサルタントが明かす「導入後の事業者の反応」

2020.06.17

キャッシュレス決済が普及していく中、まだ導入していない事業者は「キャッシュレス決済を導入して実際どうだったの?」が知りたいところ。

前回の記事「やっぱり導入するべき?ITコンサルタントが教えるQRコード決済のホントのところ」に続き、今回はキャッシュレス決済導入後の事業者の反応や利用場面の拡がりについて、ITコンサルタントの石田信行さんに解説していただきました。

「導入したおかげでお客さんや売上を逃さなくなった」

経済産業省の発表によれば、2020年5月21日時点でのポイント還元の加盟店登録は約114万店、その約91%(約104万店)が中小・小規模事業者です。2019年10月1日のポイント還元事業開始時点での中小・小規模事業者の登録数は約41万店でしたから、開始後の約8か月で倍以上に増えています。

私のクライアントさんでもポイント還元事業の開始に合わせて、キャッシュレス決済手段を新規に導入された事業者さんが大勢いらっしゃいます。

導入してみての感想は皆さん口を揃えて「導入してよかった」と言っておられます。まずお客さんからの問い合わせの際に「キャッシュレスで払えますか? ポイント還元されますか?」と聞かれる機会が増えたそうです。忘年会・新年会の予約シーズンの飲食店では「〇〇使えますか?」「使えます。ポイント還元されます」で予約が決まるケースが多かったようで「入れてよかったです!」と喜んでいただけました。

その他に「よかった」点として事業者さんから言われるのは、現金よりレジが早くなったことです。お釣り間違いがないのでレジ閉めも早くなりますし「釣銭の準備が少なくなった」「現金を置いておく量が減って安心」などもよく言われます。

キャッシュレス化と同時に注文はスマートフォンで受けるようにして、レジをタブレットにした居酒屋さんでは会計のスピードが断然早くなり、帰りのお客さんを待たせなくなったという声もありました。

予約制のビジネスをされている事業者さんからは「以前は予約してもらって当日払いだったけど、予約時に支払ってもらうようにしたことで売り上げが立たないことが減ってよかった」と言われます。

困ったことは「スタッフ教育と少額決済」

逆に困ったことは、ご想像のとおりかもしれませんがシンプルに2つです。

まずは「端末やアプリの操作がわからない」という声。これは導入した事業者さん本人というよりは、年配のパートさんや手伝ってもらっている自分の親が使えないという話をよく聞きます。

これに対する解決策は正直ないのですが、知らない機械を触るのが怖いという、いわゆる「食わず嫌い」が多いように感じています。端末にしてもアプリの画面にしても電卓と大して変わりませんので、とにかく自分たちで何回かやってみて慣れるのがよさそうです。決済事業者によっては「トレーニングモード」などの名称で、実際の決済が走らない練習画面がありますので、そちらで慣れるのも手です。

もう1つは「少額で利用されて手数料がかかるのは嫌だ」ということ。「○○円以下のお支払いにはクレジットカードは使えません」としているお店もありますが、これは決済事業者との契約上、厳密に言うとNGなので気をつけてください。

こちらの解決策はあります。頭を切り替えることです。現金で払うお客様のほうが少なくなった未来を想像してください。そうなってしまえば、決済手数料はもはや“原価”です。もちろん原価を削減できることに越したことはないですが、以前の記事「キャッシュレス決済を導入しないのはリスク?ITコンサルタントが教える小さなお店が今やるべきこと」でもお伝えしましたとおり、決済手数料も含めて採算を検討して、商品・サービスの価格設定をしていくことです。

ただし、レアケースではありますが、宿泊業の方からこんな話を聞きました。宿泊費は予約時に支払っていただきますが、入湯税は宿泊時に決済していただく必要があります。「現金を持っていない」というお客さんが入湯税150円をQRコード決済で払われたことがあったそうです。

その時はPayPayを使われたので手数料はかかりませんでしたが、他の決済手段を使われると税金(入湯税は市税。温泉を持つ観光地では一般的ですが、もちろん東京都内でもあります)なのに手数料がかかる可能性が出てきてしまいます。今後、現金を持たないお客さんが増えてくることを想定すると、事前告知を徹底するなどの対策も必要になってくるかもしれません。

イベント会場や訪問先での支払い、BtoB事業者にも拡大中

前回の記事でQRコードをどこかに貼っておけば、訪問先などでその場で決済してもらえるという話をしました。

設備業を営む事業者さんでは、普通のご家庭に行ってちょっと電気の配線工事をした時にお客さんから「この場で払いたい」と言われ、PayPayで払ってもらうことがあるそうです。

BtoBの事業者さんでは、大工さんがちょっとした手直しの手間賃を工務店にQRコード決済で支払ってもらっている例があります。QRコード決済なら数日で入金されるので請求書払いよりも入金が早く、資金繰りが楽になったと言っておられます。

私が暮らしている栃木県では大きなイベントでの活用例もあります。陶器好きの方は、益子町観光協会が毎年春と秋に大規模な陶器市を開催しているのをご存じかもしれません。この陶器市では以前は現金しか使えませんでした。益子焼には高価な作品もあるので、好きな人は財布をパンパンにして買いに行っていたそうです。

最近では個人の作家さんも含めた出展者に、主催者がクレジットカード決済端末を貸し出すようになりました。Square(米国の会社でスマホを使ったクレジットカード決済事業者の草分け的存在です)の端末は、スマートフォンのイヤホンジャックに挿すだけで使えます。

イベント会場でクレジットカード払いが可能となったことで、お客さんから見ると多額の現金を用意していく必要がなくなり、出展者側から見ると釣銭を用意しなくていい、置いておく現金の額が減ったので安心というメリットがあります。

同じように食べ比べ・飲み比べするようなグルメイベント、コーヒーイベント、つまり従来であれば100円玉がたくさん必要になるようなイベントでもQRコード決済の導入が進んでいます。

今後こういったイベントでの利用は増えていくと予想されます。常設の会場を持たない講座や教室系のビジネスをされている個人の方にもニーズはありそうです。

例えば私のクライアントさんでヨガ教室を主催しておられる方が、お寺や河原を会場にしています。青空の下でヨガをするのは気持ちがよさそうですが、その場でお金を集めるとお釣りの準備が必要なのに加え、教室中のお金の保管などの問題もあります。こういうケースにもキャッシュレス決済はおすすめです。

なお、QRコード決済でお客さんに金額を入れてもらう場合、金額ミスがないかの確認は重要です。支払い情報はすぐに事業者のスマホに飛んできますが、飲食店のランチタイムなど忙しい時にはすぐに確認している余裕がないと思いますので、お客さんに見せてもらった時の確認を確実に行うようにしてください。

QRコード決済まとめ事業者も複数登場。国の実証実験にも注目

前回の記事でQRコード決済事業者の動向や選び方について解説しましたが、事業者にとって複数のQR決済事業者とそれぞれ契約を結ぶのは面倒だし、レジ周りにたくさんのQRコードを置くわけにもいかないという新たな課題が生まれます。そうなると当然、複数のQR決済事業者を「1つにまとめたい」というニーズが出てきます。

そこで気になるのが複数のQRコード決済に対応する「QRコード決済まとめ事業者」です。1つのアプリケーションで複数のQRコード決済を利用できます。

QRコード決済まとめ事業者運営会社対応QRコード決済ブランド
AirペイQR株式会社リクルートライフスタイルPayPay、LINE Pay、d払い、au Pay、Alipay、WeChat Pay
Star Pay株式会社ネットスターズPayPay、楽天ペイ、LINE Pay、メルペイ、d払い、au Pay、ゆうちょPay、 QUOカードPay 、J-Coin Pay、Alipay、WeChat Pay、VIA、Union Pay、GLN
フレッツスマートペイQR西日本電信電話株式会社(NTT西日本)PayPay、LINE Pay、d払い、Alipay、WeChat Pay
ALSOKマルチQR決済ソリューション綜合警備保障株式会社PayPay、LINE Pay、メルペイ、d払い、au Pay、はまPay(銀行Pay)、Alipay、WeChat Pay
Cloud Pay株式会社デジタルガレージLINE Pay、メルペイ、d払い、Alipay、AlipayHK、Kakaopay、WeChatPay
UペイQR株式会社USENPayPay、LINE Pay、メルペイ、d払い、Alipay、WeChat Pay
JPQR総務省PayPay、楽天ペイ、LINE Pay、メルペイ、d払い、auPAY、ゆうちょPay、J-Coin Pay、YOKA!Pay、FamiPay、UnionPay(銀聯)、atone、commoney
※2020年5月時点の一覧です。詳細は各HPをご確認ください。

Airレジを展開するリクルートのAirペイQR(旧称:モバイル決済 for Airレジ)はPayPay、Alipayなど6種のQRコード決済に対応しています。Airレジを導入している事業者はこちらが導入しやすいでしょう。

その他にこの分野でまず名前が上がるのがNTTグループです。NTT東日本はPayPay、メルペイ、ゆうちょPayなど11種のQRコード決済に対応しているネットスターズのサービス「StarPay」を自社ユーザーに展開しています。NTT西日本はフレッツユーザー向けにPayPay、d払いなど5種のQRコード決済に対応する「フレッツスマートペイQR」を提供しています。

NTTグループはビジネスホンなどを入れている規模の会社さんを主なターゲットとして展開しており、飲食業の場合は本部があるチェーン店向けという感じなので、スモールビジネス事業者にはあまり縁がないかもしれません。

セキュリティ会社として知られているALSOKも「ALSOKマルチQR決済ソリューション」を展開しています。

キャプション:ALSOKマルチQR決済ソリューションのホームページ

複数の信用組合と提携しており、信用組合が事業者さんから相談されたらALSOKに繋ぐという建てつけになっています。ALSOKはこれまでも小売店や飲食店向けの集配金サービス(現金輸送)を行っていましたが、キャッシュレス化に伴いサービスの需要減少を確信しています。そうであれば、むしろノウハウを活かしてこれからも顧客に「お金まわりの安全・安心を提供していきましょう」という考えでしょう。

ALSOKマルチQR決済ソリューションの読み取り機械は6月30日までは無料です。飲食店など複数店舗を持っている場合、全店舗に導入しても読み取り機械は各店舗1台ずつ無料で配布と言いますから太っ腹です。

その他に総務省が主導するJPQR実証実験というものがあります。キャッシュレス推進協議会が策定した決済用統一QRコード・バーコード(JPQR)の普及に向けた事業として、2019年8月1日から岩手県、長野県、和歌山県、福岡県、栃木県の5県で開始されています。将来的に全国展開する前提で、現在は地域限定で半年間の実証実験を実施しています。

対応しているQRコード決済はPayPay、メルペイ、ゆうちょペイ、J-Coin Payなど11種類に上ります。対象地域では近くの商工会が問い合わせに対応してくれます。商工会の会員ならいくら聞いても無料です。一部のQRコード決済については、JPQRを介して使った方が手数料の安いものもあります。

まずは手軽なQRコード決済手段から早めに導入を!

キャッシュレス推進協議会の調査によれば、どの地域区分でも約4割の消費者が還元事業をきっかけにキャッシュレスを始めた、または支払手段を増やしたと回答しています。ポイント還元される店舗で購入するようになったと回答した消費者は約3割強います。

実際の利用実績については冒頭で触れたとおり、経済産業省の発表で2019年10月1日~2020年3月2日までの対象決済金額は約6.5兆円、還元額は約2,690億円に上っています。

ポイント還元期間は2020年6月30日までですが、キャッシュレス決済の手軽さに慣れた消費者は期間終了後も現金には戻らない傾向が強いでしょう。まずは手軽なQRコード決済で感覚をつかみ、まだまだメインストリームであるクレジットカード決済に対応するために、決済端末無料のキャンペーンが使える今のうちに導入しておきましょう。

※本記事の取材は2020年1月に行いました。本文中に記載がある箇所の内容は2020年5月31日時点の情報に基づいています。最新情報は各社のホームページなどを参照してください。

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この記事の著者

石田 信行(ITコンサルタント)

2001年NEC(日本電気株式会社)に入社。スーパーコンピュータ関連の開発に2年間携わり、その後、同社内のインターネットサービスBIGLOBE(ビッグローブ)でウェブマーケティングや新規事業開発に15年従事。同時に、関連会社のITベンチャー企業でマネジメントや経営に携わる。 子供を授かったことを契機に田舎で子育てをしたいと考え、栃木県那須塩原市に移住。地域の経営コンサルタント会社で経営コンサルティングを2年間学び、2018年6月にITコンサルタントとして独立。ホームページ:フォーアイコンサルタント

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