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キャッシュレス決済を導入しないのはリスク? ITコンサルタントが教える「小さなお店が今やるべきこと」

2019.08.22

著者:石田 信行

経済産業省が「2025年にキャッシュレス決済の比率を40%に」という目標を掲げ、軽減税率導入にともなうポイント還元もキャッシュレス決済のみが対象とされました。

人手不足対応、業務効率化、インバウンド対応など、キャッシュレス決済対応のメリットが謳われ、QRコード決済事業者の大規模なキャンペーンも話題になる中で「そろそろ考えなきゃ」と思いながらも、一歩が踏み出せない事業者の方も多いと思います。

「手数料を負担してでもキャッシュレス決済に対応した方がいいのか?」、「自分が使いこなせる自信がないのにお客さんに対応できるのか?」

そんな疑問や不安について、ITコンサルタントの石田信行(いしだ・のぶゆき)さんに解説いただきました。

今、キャッシュレス決済を導入しないのはリスクです!

最初にお伝えしておきますが、今、店舗がキャッシュレス決済に対応しないのはリスクです。対応しないということは、消費税アップにともなうポイント還元制度の対象にならないということです。

ポイント還元の開始にともない、消費者の間にはキャッシュレス決済が確実に広まります。想像してみてください。キャッシュレス決済手段を持っている人がお昼を食べようとした時、同じような味、価格帯の定食屋さんが二つ並んでいたとしましょう。一方の店はキャッシュレス決済で5%ポイント還元される、もう一方はされない。どちらに入りますか?他に強い理由がない限り、ポイント還元される方に入りますよね。

「ポイント還元期間が終わるまでの辛抱では?」と思うかもしれません。答えは「NO」です。ポイント還元期間が終わっても、一度キャッシュレス決済の便利さに慣れた消費者の大半は、もう現金には戻らないと予想されます。

今は決済手数料がかかることより、機会損失のリスクの方が大きいのです。

キャッシュレス化には、消費者へのポイント還元だけでなく、事業者にも様々なメリットがあります。

  • レジ締めが楽
  • お会計が早い
  • 現金の盗難防止になる
  • 会計ソフトと連動させれば経理処理が楽
  • 外国人観光客が取り込める

まだ導入していない事業者は、補助が受けられる今のタイミングでキャッシュレス決済を導入しましょう。すでに何らかのキャッシュレス決済を導入している事業者も、この機会に見直しや拡大を検討してみてください。

今後はキャッシュレス決済が中心になると頭を切り替えて、決済手数料も含めて利益率を算出しましょう。消費税アップにともない価格改定を検討している事業者は、決済手数料も含めて採算を検討して、新価格を決定してください。「キャッシュレス化できるかどうか」を考えるのではなく、「どうしたらキャッシュレス化できるか」を考えましょう。

まずは自店の単価に合ったキャッシュレス決済を導入しましょう

キャッシュレス決済は大きく次の3種類に分けられます。

  • クレジットカード
  • 電子マネー
  • QRコード(バーコード)決済

無理に全種類対応する必要はありません。クレジットカードだけでもポイント還元制度の加盟店になることはできます。

導入の優先順位は商品やサービスの単価によって決まります。美容院や高級飲食店など、客単価が1万円以上のお店はまずクレジットカードに対応しましょう。電子マネーは少額決済用ですので、対応はあまり必要ないかもしれません。QRコード決済は高額決済もできますが、現状では少額決済利用が中心です。今のところ高額決済には主にクレジットカードが使われますから、QRコード決済には今は無理に対応しなくてもいいかもしれません。

ランチ単価1,000円程度の飲食店は、クレジットカードと電子マネーには対応しましょう。QRコード決済への対応もできればした方がいいです。キャッシュレス決済の場合、記録としてレシートを欲しがるお客さまが多いので、キャッシュレス決済の導入とあわせてレシートは出せるようにした方がいいですね。

ヨガ教室や整体院など予約時に金額が決まる業種は、予約時にオンライン決済できるようにして、ポイント還元制度の対象になる決済事業者を選ぶという方法もあります。クレジットカード決済事業者、QRコード決済事業者のうちの一部の事業者がオンライン決済にも対応しています。

決済事業者は初期費用とランニングコストで選択を

対応するキャッシュレス決済の種類が決まったら、次は決済事業者を選びます。選択のポイントは初期費用とランニングコストです。ランニングコストはポイント還元期間だけでなく、期間終了後の手数料も含めて検討してください。

以前は、キャッシュレス決済の問題点の一つは入金までのタイムラグでしたが、年々、入金は早くなってきています。例えば、PayPayの場合、提携銀行であれば最短翌日に入金されます。ただし、入金を早めるためには、その月の累計決済金額に条件があったり、特別に手数料がかかる事業者もあったりしますので、それもランニングコストに含めて考える必要があります。

具体的な決済事業者選びにあたっては、一般社団法人キャッシュレス推進協議会のホームページが役立ちます。ポイント還元事業に登録された決済事業者の詳細を調べることができます。

出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会ホームページ

例えば、エリアで「栃木県」を指定し、検索結果から「群銀カード」を開くと下記のような詳細情報が閲覧できます。

出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会ホームページ

ポイント還元制度の加盟店になるための手続きは、決済事業者を通じて行います。

まだキャッシュレス決済を何も導入していない場合は、リストから選んだ事業者に問い合わせをして加入手続きと加盟店登録を依頼します。

すでに導入しているキャッシュレス決済がある場合、加盟店登録にあたって決済事業者を切り替えるか否かの判断基準は、決済手数料が3.25%以上か以下かです。現在の手数料が3.25%を超えているなら切り替えましょう。

切り替える場合の手続きは新規加入と同じです。継続する場合は、継続する決済事業者に連絡して手続きを進めてください。申し込みから加盟店登録までにはおおむね3週間以上の期間が必要です。ポイント還元開始に間に合うように早急に動きましょう。

関連記事:導入費無料!加盟店手数料1/3を補助!「ポイント還元事業」を利用してキャッシュレス決済を導入・拡大しよう

スマートフォン決済は「まず自分で使ってみる!」

電子マネーやQRコード決済などスマートフォンを使った決済に関しては、「自分が使いこなせる自信がないのにスタッフに教育できるのか」という不安もよく聞きます。不安を払拭するためには、まず自分で使ってみましょう。コンビニエンスストアでは電子マネー、QRコードのどちらの決済方法も使えます。ぜひ試してみましょう。自分が使えれば他のスタッフに教えるのも難しくありません。

キャッシュレス決済の新規導入時には、決済事業者がサポートの電話をかけてくることが多いです。指示にしたがって一つひとつ進めていけば30分くらいで導入できますので心配はいりません。地域によっては人がサポートに来てくれる業者もありますので、問い合わせてみてください。

商工会や金融機関、商店会や組合などの業界団体で協力してキャッシュレス決済の説明会や勉強会を開催している地域もたくさんあります。私も地元の商工会でセミナーを開催しました。旅館組合などの業界団体に呼ばれて説明に行くこともあります。

説明会の中には決済事業者のツール体験会が同時開催される場合もありますので、近くで開催されるものがないか調べてみましょう。

また、決済事業者としてポイント還元事業に参加している銀行も少なくありません。日頃から付き合いのある金融機関に相談してみるという方法もあります。

確実に進むキャッシュレス化に備えましょう

先日、地元の西那須野商工会で「キャッシュレス決済対応セミナー」を開催した時、約50名の事業者の方が参加してくださいました。人口4万人の町で商工会主催のセミナーにこんなに参加者が集まったのは初めてと商工会の方も驚いておられ、私自身もキャッシュレス決済に対する関心の高さを改めて感じました。

海外に比べて日本のキャッシュレス決済比率は低いとはいえ、着実に伸びており、利用者も確実に増えてきています。国の施策もあり、今後はさらに増加が加速することでしょう。

出典:キャッシュレス決済の多様化の動向整理(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)第29回インターネット消費者取引連絡会 配布資料より

一度キャッシュレス決済の便利さに慣れた消費者の多くは現金払いには戻らないと思います。

私の経験でいうと、企業勤務時代にいたオフィスビルのテナント店舗のほとんどが電子マネー決済に対応していました。昼休みに昼食を採りに行く際、財布はオフィスに置いたままで、電子マネーのカード、あるいはスマートフォンだけを持っていく人も少なくありませんでした。そしてその人たちはキャッシュレス決済に対応していない店舗は利用しません。カード1枚で済む身軽さに慣れるともう現金を持ち歩く気にはなれず、利用店舗の選択が狭まることよりも利便性の方が勝るのです。

ランチタイムの混雑時の支払いもタッチするだけでスピーディです。たまにカードを忘れて現金で支払うと後ろにレジ待ちの列ができて申し訳なく感じてしまったほどです。

こういった例は今はまだ特殊なものに感じられるかもしれませんが、近い将来、身近な風景になると思います。人手不足対策をはじめ、たくさんのメリットがあるキャッシュレス決済をこの機会に導入し、今後に備えましょう。

この記事の著者

石田 信行(ITコンサルタント)

2001年NEC(日本電気株式会社)に入社。スーパーコンピュータ関連の開発に2年間携わり、その後、同社内のインターネットサービスBIGLOBE(ビッグローブ)でウェブマーケティングや新規事業開発に15年従事。同時に、関連会社のITベンチャー企業でマネジメントや経営に携わる。 子供を授かったことを契機に田舎で子育てをしたいと考え、栃木県那須塩原市に移住。地域の経営コンサルタント会社で経営コンサルティングを2年間学び、2018年6月にITコンサルタントとして独立。ホームページ:フォーアイコンサルタント

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