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親族でも従業員でもなかったけれど、老舗眼鏡ブランドの「次の100年」を任されて【連載:事業承継者に聞く】株式会社カメマンネン

事業を承継された側の方にお話を伺う【事業承継者に聞く】シリーズ。今回は福井県鯖江市で1917年から続く老舗眼鏡ブランド「カメマンネン」の土山博史(つちやま・ひろし)社長。

親族でも従業員でもなく直接取引があったわけでもなかった土山さんが、故郷福井県の繋がりから、思いがけず承継することになった経緯と承継のメリット・デメリットを伺いました。

土山 博史 氏

カメマンネン株式会社代表取締役社長。福井県福井市出身。工業デザインを学び、福井市の眼鏡メーカーに勤務後、フリーランスを経てイタリアの眼鏡メーカーでデザイナーを務める。2017年に退職し、カメマンネン株式会社代表取締役社長に就任。2018年に東京都新宿区神楽坂に初の店舗兼ショールームを開設

応援の気持ちで相談に乗っていたら「事業を引き継いでほしい」と

――まず、承継された経緯を聞かせてください。土山さんは福井県福井市のご出身で、卒業後、眼鏡業界に入られたとのことですが、カメマンネンのことはいつ頃からご存じだったのですか?

イタリアの眼鏡メーカーでデザイナーとして仕事をしていた時、海外の展示会でカメマンネンのブースを見たのがきっかけですね。

カメマンネンは元々、福井光器という鯖江市の眼鏡製造会社の自社ブランドで、僕が展示会で出逢った当時はまだ福井光器のブランドとして出展していました。当時、日本の眼鏡製造会社はOEM生産を主体としていて、自社ブランドを展開しているところは少なかったのです。そのため、海外の展示会では福井県のブースの中で展示しているところはあっても自社でブースを構えるところは稀でしたから、カメマンネンのブースは目立ちました。

僕自身は福井市の出身ですが、同じ福井県ということもあり、カメマンネンのブースで、「鯖江からですね、頑張ってますね」という感じで立ち話をしたりしていました。

カメマンネン株式会社は2008年設立。福井光器時代から数えると100年の歴史がある。品質に拘り、チタンフレームを使用。売上は海外が80%

――その後、2008年にカメマンネンが福井光器から独立したとのことですが、海外にいらした土山さんがそれを知ったのはどのような経緯だったのですか?

その前からイタリアの勤務先メーカーから福井光器に製造を発注していましたが、2010年12月に廃業するという連絡があり、今後発注が出来なくなると聞きました。当時、日本の眼鏡フレーム産業が低迷しているのは知っていましたから、「そうか…老舗の福井光器さえも立ち行かない状況なのか」と思いました。

結局、福井光器は国内の大手小売店が受け継いで社名を変えて眼鏡製造を続けていくことになりましたが、自社ブランドだったカメマンネンは社員の方達(実際は社員の方1人と経営者の奥様)が買い取られ、カメマンネン株式会社を設立されたのです。

――土山さんはその方から引き継がれたのですね。「承継して欲しい」と頼まれたのでしょうか?

はい、そうです。展示会等でお会いした時に軽い気持ちで相談に乗っていました。同じ福井県ですし、カメマンネンの品質は素晴らしいと思っていたこともあって応援したかった。当時は「どのように世界で通用するデザインをするべきか」とのことでした。元社員の方は製造と販売を担当しておられた方なので、デザイナーもいないし、どうしていいかわからないと聞かれて、「デザイナーが必要なら紹介しますよ」と言ったりしていました。

最終的に経営も含めてやって欲しいと頼まれ、2017年にイタリアのメーカーを辞め、カメマンネンの株を買い取って社長に就任しました。

故郷への恩返しと「いける」という見込みで引き受け、次の100年をスタート

――ご親族でもなく従業員でもなく、長く海外にいらした土山さんが、そのオファーを受けることにした理由は何だったのですか?故郷への恩返しという気持ちもあったのでしょうか?

恩返しというと大げさかもしれませんが、カメマンネンのある鯖江市を中心とした福井の眼鏡産業を盛り立てたいという気持ちはありましたね。

国内の眼鏡フレームの90%以上が鯖江市で生産されていますが、中学の同級生の2~3割が眼鏡産業に携わっているというほど、眼鏡産業は鯖江の中で大きな存在なんです。100年を超える歴史があり、技術力は高いですが、近頃は海外との価格競争もあり厳しい状況です。

カメマンネンも100年の歴史があります。福井光器がなくなった時にもせっかく残ったのですし、いいものを作っているブランドを残して発展させていくことで貢献したいと思いました。

――承継される時点で、事業として発展させられるという見込みはあったのですか?

はい、もちろんありました。カメマンネンは品質が本当によかったので。チタンの加工技術を眼鏡でいち早く確立したのも福井光器でしたし、「鶴は千年 亀は万年」から取ったブランド名「カメマンネン」には末永く使っていただける丈夫な製品でありたいという想いが込められていて、実際にそういうものを作っていました。品質の高さは以前から海外でもかなり認められていました。

その当時、足りないのはデザインだと僕は思っていました。長く掛け続けていただくために基本的なデザインを変えないのはいいことですが、ただちょっとだけ流れに乗ることも必要で、そこが足りていないと感じていたんですよね。ですから、デザインに少し手を加えればいけると考えてましたね。

また、僕はイタリアの眼鏡メーカーに長くいたので、全世界で売るのは当たり前でしたから、海外での売り上げを伸ばす自信はありました。

――承継されてからはどのようなことを?

まず、デザインを多少時代に合わせました。もちろんカメマンネンらしさは残したままで、ほんのちょっと手を加えています。レンズ枠の部分は変えず、耳当ての部分だけを今の時代に合わせたデザインにするなど、新しく型を起こす必要のないやり方でコストを節約しながら新製品を出す方法も工夫しています。

販売方法に関しても、僕が入る前は海外でも自社で直接販売しようとしていましたが、それをディストリビューター(販売代理店)に任せました。例えば、ヨーロッパでは今はスウェーデンの人に販売を任せて、地域一番店にアプローチし続けるという方法で進めてもらっています。

海外展示会のブースのデザインを変えたりもしています。以前は海外の展示会でカメマンネンのブースの前を通っても中には入らない人が多かったのです。入りづらいというか、見せ方の問題があったんですよね。また昨年、100周年を記念して初めての店舗兼ショールームを開設しました。すでに買っていただいているお客さんのメンテナンス対応とブランドの認知向上が目的です。

承継だからよかったこと、大変だったこと

旧小浜藩の屋敷跡に開設した店舗兼ショールーム。海外で「和」のイメージを打ち出しているので、ショールームもそれに沿ってデザイン

――ご自分で起業されるのと比較して、既存のブランドを承継されたことのよかった点を教えてください。

一番のメリットは最初からお客さんがいたことですね。海外の展示会にもよく出していて、ヨーロッパでも名前はよく知られていました。ヨーロッパでの販売を任せているスウェーデンのディストリビューターもカメマンネンを展示会で知って好きになってくれていて、僕が入ってから販売を頼むことになりました。

国内よりも海外の売り上げの方が圧倒的に大きく、その40%は韓国なんです。福井光器時代からのディストリビューターが継続してやってくれていて、こちらから特に何もしなくても継続して買ってくれています。これも承継で受け継いだ大きな財産の一つです。

――逆に悪かった点というか大変だったのはどんなところですか?

しがらみですね、国内の。卸価格が決まっていて、簡単には上げられないのです。カメマンネンも国内は低価格で卸していて、ここ10年間価格を上げていませんでした。材料の仕入れ価格が上がっていたので、そのタイミングで上げていればよかったのですが、それが難しいところがあります。また、福井光器からの流れで「昔からのお客さんだから安く卸してくれ」と頼まれるといったこともありました。

――これから起業するか、どこかの事業を承継するか迷っている人に、承継は勧められますか?

事業の内容にもよりますが、最初からお客さんがいることが大きなアドバンテージになる場合には勧められると思います。僕の場合、仮に自分でゼロから立ち上げたとしたら10年は儲からないと思っていました。カメマンネンを承継した52歳で始めたら、62歳からしか儲からないという計算になります。それではほぼ無理でしたよね。カメマンネンではすでに売上も伸び、利益も出せていますから、そこは大きな違いです。

――承継されて2年で軌道に乗られた感じですか?

売り上げは伸びていますし、給料を払った後にお金は残りますけど、軌道に乗ったという気はしませんね。僕は元々作る方のプロで経営はやっていませんでしたし、ずっと大きな会社にいたので、小さい会社でどれだけ売れたら「売れた」と思っていいのかわからなくて(笑)。自分で基準を決めないといけないとは思いますが、まだ決め切れていません。

――いつかは逆の立場になって誰かに引き継いで引退される日が来ますよね。その時にどうなっていたら満足ですか?

「丈夫で長持ちするブランド」と広く認知されていたら、「やってよかったな」と思える気がします。すでに100年続いていますから、20年前、30年前に購入された方からの修理の依頼があったり、「父が掛けているので、僕も見てみたい」と言ってショールームを訪ねてくださる方がいらっしゃいます。2代、3代と積み重ねて、さらに広げていきたいと思います。

撮影:Atsushi Watanabe

カメマンネン株式会社

http://kamemannen.com/

本社所在地:福井県鯖江市柳町1丁目10-12

従業員数:6名(パート含む)

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弥報編集部
著者:弥報編集部
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