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今こそ狙い目!資金調達のプロが教える「補助金や助成金を受給するには?」

2018.08.16

堅実な経営をしている会社は、金融機関からの借り入れを中心に資金を回しているものです。一方で創業したばかりの企業や小規模事業者などは、「あと少し資金に余裕があれば、固定資産の買い替えや人手を増やせるのに……」というお悩みを抱えることもあるかと思います。そんなときは、返済不要の補助金・助成金を検討してみてはいかがでしょうか。

しかしながら、補助金や助成金は基本的に狭き門。受給するには、厳しい審査をパスしなくてはなりません。業種や目的に合った制度の選択や、審査ポイントに合わせた事前の準備が必要です。

そこで、連載第1回「たくさんの資金調達方法があることを知ろう」第2回「小さな会社がスムーズに融資を受けるコツ」に続き、これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超!という財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に補助金・助成金を受けるためのコツを教えてもらいました。

まずは、どのような補助金・助成金があるのかを知ろう

国や地方自治体、財団などから中小企業向けに支給されている返済不要な資金、それが補助金や助成金です。奨励金、給付金などと呼ばれることもあります。

補助金・助成金には、経済産業省が管轄する技術開発や研究開発費を対象にするものと、厚生労働省が管轄する人件費や人材育成を対象に支給されるものの、大きく2つに分けられます。

  支給要件 支給対象
経済産業省管轄 事業の創造性や新規性で判断 
平均5~25%の採択率
主に技術開発、研究開発の費用
厚生労働省管轄 条件を満たせば採択の可能性は高い 人件費、能力開発費

これらの採択率は制度や年度予算によってばらつきがあり、例外(ものづくり補助金など)を除いて一概にどれが採択されやすい、とは言えません。通常、制度ごとに採択件数や予算が決まっており、申請する企業の件数しだいで採択率が変わることもあります。たまたま応募が少ない場合もありますし、件数や金額が達しなければ、2次募集がかかることもあります。つまり、例外を除いては申し込んでみなければわからないのが実情になります。

抽選ではありませんから、応募者数や確率にこだわるよりも、必要な金額と目的に見合った制度を選び、条件や要件を満たすことが肝心です。

補助金・助成金の募集の開始時期は主に春が多いのですが、一部、通年での募集や二次募集をしているものもあります。直近の公募情報は、各省庁のウェブサイトやメールマガジンから収集できます。中小企業庁のTwitter(@meti_chusho)をフォローしておくのもオススメ。直近の公募や採択の状況などを知ることができます。

地方自治体が実施している補助金・助成金制度は、各自治体のホームページで確認するほか、窓口や電話で直接聞いてみるのも良い方法です。

また、中小企業庁が運営する、公的機関の支援情報・支援施策(補助金・助成金など)の情報を提供するWebサイト「ミラサポ」では、施策を実施している機関別や地域別、目的別で助成金や補助金を検索することができます。

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審査ポイントをしっかり押さえよう

公募の要領には、国や自治体がなぜこの補助金を実施するのか、ということが必ず書かれています。制度の目的に沿った事業でなければ、採択されません。たとえば、「生産性の向上」を目的とした補助金なのに、生産性向上のアピールが弱い事業プランで申請しても、採択される可能性は低くなります。補助金制度の目的と審査ポイントを、しっかりと読み込んでください。

中には審査ポイントが詳しく掲載されている制度もあります。そのポイントを押さえて、対応した事業計画書を作りましょう。応募要件や加点される項目を箇条書きにしてチェックリストにするのがオススメです。

公募要領をよく読まない申請者が多いので、繰り返しになりますが必ずしっかりと読み込んで下さい。たとえ、専門家から指導を受けているとしても、出来る限り読み込むことをお勧めします。申請の仕方や注意点、そして採択されるためのポイントなどがたくさん書かれていますよ!

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吉田先生イチオシの補助金とは

安倍政権の目玉政策である、「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」の三大補助金は、政府が大きく力を入れていることもあり、予算が潤沢で採択率が高く、いまが狙い目と言えます。特に、「ものづくり補助金」と「小規模事業者持続化補助金」は、支給対象が幅広く、申請しやすいのでオススメです。

ものづくり補助金は、大変人気があるため、申請経験の豊富な認定支援機関を見つけやすいでしょう。最新情報ですが、平成30年6月29日に「平成29年度補正予算ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」(1次公募)」の採択結果が公表されました。応募数17,275のうち、9,518の補助事業者が採択されました。つまり約55%の高採択率です。これまでの平均が40%前後でしたから、さらに採択率が上がりましたね。

「小規模事業者持続化補助金」は、受給金額は上限50万円と少額ですが、認定支援機関が不要ですので、自力でも申請できます。ウェブページ制作、設備費、チラシや看板製作などいろいろ使えますので、ぜひ商工会議所へ相談してみてはいかがでしょう。商工会では申請書の書き方などの指導もしてくれます。また不安でしたら、顧問税理士や認定支援機関などの専門家にご相談することをお勧めします。

「IT導入補助金」は、経理・会計システムやPOSなど、ITツールの導入費用や1年分の利用料(例.クラウド利用料など)の2分の1を最大50万円まで補助してもらえる補助金です。これは認定を受けたITツールのみが対象となりますが、IT導入事業者が申請を代行(代理申請)してくれますので手続きが簡単。弥生製品をはじめとする主要な業務システム、ECサイトの構築や導入・運用のサービスを代行する業者なども認定されていますので、この機会に導入を検討してみては。

IT導入支援事業者は、「IT導入支援事業者」登録している「弥生ビジネスパートナー」IT補助金のホームページ内のIT導入支援事業者検索から検索することができます。

・ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金)
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/index.html

・小規模事業者持続化補助金
http://jizokukahojokin.info/

・IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/

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申請には専門家の指導が絶対必要?

「ものづくり補助金」など経済産業省系の補助金の申請には、認定支援機関の指導が必要になるものがあります。中には認定支援機関が不要で、自力で申請できるものもありますが、忙しい経営者が調査や資料作りに時間を割くのは現実として難しいのではないでしょうか。顧問税理士など専門家に手伝ってもらうのが効率的です。

顧問税理士さんがいない場合は、自分で探すしかありません。インターネットで探すか、セミナーに参加してみるといった方法が考えられます。

しかし、「専門家や認定支援機関に高額な費用で指導してもらったが、採択されなかった」と経営者さんから相談を受けることがよくあります。中には“自称”専門家の先生もたくさんいます。ホームページなどに記載されている実績の真偽を見極めるのは難しいですが、たとえば、以下のような質問をぶつけてみるのも手です。

「先生は、NEDOやNICT、または経済産業省直轄の補助事業やSBIR特定補助金などの支援実績はどれくらいありますか? その他、競争系の補助金の支援実績について教えてください」

補助金申請の支援に長く携わっていて、実績を積み重ねている専門家であれば、このような具体的な実績についての質問にさらりと回答できるはずです。また、「これらは未経験だが、特定の○○補助金ならいくつか実績があります」と正直に話してくれる先生なら信頼できますよね。

厚労省の助成金は社会保険労務士に相談

従業員やアルバイトの雇用、社員研修などには、厚生労働省系の助成金が利用できます。助成金の申請には、専門の社会保険労務士さんに相談するのが一番。厚生労働省系の助成金は、経済産業省系の補助金とは異なり、事業収益性・将来性などを重視するのではなく、公募の要件に該当し、書類に不備がなければ、採択される可能性が高いものが多いとも言えます。

ただし、提出書類が多く、専門性の高い知識が必要になるので、経営者の方が勉強するよりも、社会保険労務士さんにお任せするのが現実的な選択肢です。経験豊富な社会保険労務士さんは、申請窓口の担当者とも顔見知りであるケースも多いため、手続きがスムーズに進む場合もあるそうです。

理想的な流れとしては、顧問税理士さんが認定支援機関であれば経産省系補助金の申請をお願いし、厚生労働省系の制度に関しては、知り合いの社会保険労務士さんを紹介してもらうのが安心ですね。

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「補助金ありき」にならないように、上手に資金計画を立てよう

補助金・助成金は、制度ごとに使い道が規定されており、うまく活用すれば、設備投資、研究開発費、人件費、販売促進費など、多種にわたる費用に充てることができます。

また、いざ申請しようとしても、普段の事業を行いながら専門性の高い書類と格闘することもなかなか難しいということが現実問題。その点では、どういった補助金・助成金があるのか、審査のポイントはどこにあるのかなど、しっかりと読み込んで調べた上で、申請については税理士さんや社会保険労務士さん、補助金専門コンサルタントなどの専門家に相談をすることが近道です。

とはいえ、申請しても採択されるかどうかはわかりませんし、採択されたとしても、必ずしもすぐにお金がもらえるわけではありません。事業実施期間があり、計画どおりに費用がかかったことを申請して初めて支給されます。

ですから、補助金・助成金を中心に資金調達計画を立てるのは絶対に避けましょう。補助金ほしさに、本来の事業計画を変えるようなことがあっては本末転倒です。会社は融資を中心とした資金計画を立てて成長させていくのがセオリー。あくまで補完的な資金として、補助金・助成金は上手に利用しましょう。

「まるっとわかる資金調達」前回までの連載記事はこちらから

この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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