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人生100年時代の生き方・働き方のヒント 後編:青春時代を思い出すことがライフシフトの「はじめの1歩」

2018.01.10

著者:弥報編集部

人生100年時代の生き方・働き方のヒント 後編:青春時代を思い出すことがライフシフトの「はじめの1歩」

世界的なベストセラーになったイギリスのリンダ・グラットン著『LIFE SHIFT』。そこには「2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される」という衝撃的な予測が記されています。

寿命が100歳まで伸びると、人生80年時代の「教育」「勤労」「引退」という年齢によって変わる3ステージ型の人生が成立しなくなります。仮に60歳で定年したとして、引退後の40年を余暇として過ごすには、金銭的にも大変ですし、生活が苦しくなると生きがいを感じられなくなるかもしれません。

前編では、ライフシフト・ジャパン株式会社代表の安藤 哲也さんに「超長寿時代の人生設計」というテーマで、人生100年時代は読者の皆さんにとって「自分事」であることと、「死ねない時代」を楽しく生きるための心構えを語っていただきました。それを受けて、今回は人生100年時代に求められるライフシフトの「はじめの第1歩」の踏み出し方について、安藤さんに伺います。

前編はこちら

お話を伺った方:安藤 哲也氏

ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役社長。1962年生まれ。出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。「笑っている父親を増やしたい」と講演や企業向けセミナー、絵本読み聞かせなどで全国を歩く。最近は、管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体での研修も多い。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団 共同代表等も務める。著書に『パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版社)など多数。3児の父親。

「働き方改革」がライフシフトのきっかけになる

今までの働き方や生き方を変えるのは勇気がいるものです。ライフシフトを実践するライフシフターたちは、最初の1歩をどのように踏み出したのでしょうか。安藤さんはご自身のライフシフトを振り返ります。

安藤:生き方を変えるのが怖いというのは、私もよく分かります。私はファザーリング・ジャパンというNPOを立ち上げる前は、楽天のクロスメディア事業部で部長をしていました。仕事を辞めるのが怖くなかったかといったらうそになりますが、長い人生を考えたとき、部長職を手放すことなく、ライフシフトをしないことの方がリスクだと感じたのです。

もちろん、ライフシフトをするからといって、安藤さんのように会社を辞める必要はありません。今の仕事をしながらでもライフシフトはできます。ただし、忙しい日本人は、新しいことを始めるための時間が足りないのです。ご存じのとおり、世の中では今「働き方改革」が進んでいます。この「働き方改革」こそが、ライフシフトのきっかけになるといいます。

安藤:働き方改革によって生まれた時間で何をするのかが大事です。会社が残業禁止になったから早く帰るとか、上司に言われたから有給休暇を消化するとか、従業員が指示に従っているだけだったら、それは「“働かせ方”改革」です。本当の働き方改革は人に言われてするものではなく、働く人が主体的にやることのはず。仕事以外で増えた時間で、ぜひライフシフトを試みてください。定年になってから考えるのでは遅いのです。

人生100年時代の生き方・働き方のヒント 後編:青春時代を思い出すことがライフシフトの「はじめの1歩」

迷ったら「10代のときに夢中になったこと」を書き出してみる

「働き方改革」によって生まれた時間でライフシフトを試みるとして、最初は何をしたらいいのでしょうか。やりたいことがある人ならともかく、何から始めたらいいのか分からない人も少なくないはず。そんな人たちに対して安藤さんは、会社と家庭に次ぐ第3の居場所「サードプレイス」に足を踏み入れることを勧めています。

安藤:難しく考えず、自分の好きなことから始めて、そこから広げていけばいいのです。やりたいことがすぐに思いつかない場合は、10代のときに夢中になったことを書き出してみることをお勧めします。スポーツでも音楽でも、アイドルのおっかけでも、ワクワクすることを探すのが大事。そこからネットワークが広がっていくものです。会社で決まったことをやって、帰宅したらお決まりのテレビを見るのが楽しいならそれでもいいですが、それだけじゃ成長できませんよね。

そして、いざサードプレイスに足を踏み入れようと思ったら、会社での肩書や年齢による上下関係、かつての成功体験にこだわらないというのが大原則になると話します。

安藤:定年後、元大企業の部長さんが地域活動をしようとしたのですが、参加者から「何ができますか?」と聞かれて、「部長ならできる」と答えたそうです。もちろん地域活動にそんな仕事はありません。挙げ句の果てに、事務作業をお願いされた元部長さんは、「そんなの女の子の仕事でしょ?」と言ってプイッと出ていったそう。うそみたいな話ですが、こうやって孤立していく人もいるのです。

新しい世界に飛び込むのに、それまでの肩書やプライドは邪魔にしかなりません。ライフシフトを成功させるためのヒントは、ライフシフト・ジャパンの「ライフシフト10か条」にも記されています。

(引用:ライフシフト10か条。各詳細はリンク先でご覧ください)

会社がライフシフトを応援すると業績も上がる!?

ライフシフトをするのは個人ですが、会社もこの動きを無視できません。なぜならダイバーシティが進み、人材の多様性が広がるなかで、画一的な働き方を強いるのは時代に合っていないからです。

安藤:例えば、定年制を辞める、一括採用を辞めるという経営判断があってもいいかもしれません。多様な働き方を認めることで、いい人が採用できるし、イノベーションが起きて会社ももうかると私は考えています。経営者の皆さんに伝えたいのは、ワークとライフは対立するものじゃないということ。ワークとライフは相乗効果を発揮するものだと捉えてほしいのです。

そして、社員のライフシフトを推進して、人生100年時代に対応する会社へと進化させるチャンスは、大手企業よりも小回りの利く中小企業にあります。会社の上に立つ人が変われば、職場がガラリと変わる可能性があるからです。

安藤:これはすべての人に伝えたいことですが、ワークとライフのどっちをとるかというてんびん型の考え方ではなく、寄せ鍋型の考え方をしてほしいのです。寄せ鍋はいろんな具が入ることで味わいが深くなりますよね。人生もこれと同じです。仕事、副業、趣味、育児、地域活動など、いろいろあるから味に奥行きが出ます。ただし、完璧主義にならないことがポイント。いろんなことに手を出して「しっかりやらないと!」って思いこんじゃうと苦しくなるから、ほどほどがいいんですよ。


100年ライフをどうデザインするかはあなた次第。いろいろな色を加えることで、人生を鮮やかにしたいと思いませんか。興味のあること、やりたいことにチャレンジして、人生100年時代を味わい尽くしたいものです。安藤さんの話にもあったように、何から始めていいのか分からないという人は、10代のころ夢中になったことや、ワクワクしたことを思い出してみてください。それがライフシフトの「はじめの第1歩」です。

この記事の著者

弥報編集部

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