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これ以上付き合いたくない!厄介なお客さまに「ノー」を伝える方法を老舗和食店の女将が教える

2023.01.12

著者:弥報編集部

監修者:小保下 グミ

接客業を営んでいる人なら、だれでも一度は非常識な相手に困った経験があるのではないでしょうか。そんな時、お金をいただいているお客さまだからと我慢したり放置したりしてしまうと、最終的に事業の存続をも揺るがしかねない事態に発展してしまう恐れがあります。

招かれざるお客さまを遠ざけ、健全な事業運営をするためには、こうしたお客さまにどのように対応すればいいのでしょうか。老舗和食店の女将が解説します。


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優しい性格が仇?!「ノー」と言えない経営者たち

どの業界にも、常識のないお客さまがいるものです。例えば私が身を置いている飲食業界でいうと、たいして注文をしないのに何時間も長居する人や仲間同士で大騒ぎする人、店内で居合わせたほかのお客さまにからみ酒をする人、酔っ払って客席で寝始める人などがいます。

ビジネスオーナーの中には、こうした少々厄介なお客さまに何の対応もせず、そのまま受け入れてしまう人もいます。「お金をいただいているので、言いにくい」「揉め事に発展したら嫌だ」といった理由があるのでしょう。

ちなみに私の住んでいる地域にも、非常識なお客さまを放ったらかしにしてしまっていたのが原因で、マナーの悪い人たちの溜まり場となってしまっている居酒屋があります。そこの店主と話をしたことがあるのですが、やはり厄介なお客さまに対して、相当頭を悩ませているようでした。しかしこの店主もまた、注意するなりルール作りをするなりと、何か具体的な対策を取るつもりはないようです。優しい人ですから言うのが気まずかったり、言い返されるのが嫌だ、という理由があるのかもしれません。

しかし行くたびにマナーの悪いお客さまに出くわすので、私もしだいに足が遠のいてしまいました。当店に来られているお客さまからも、あの店は客層が悪いから行かないようにしていると聞かされたことが何度もあります。おいしいお店なのに、とてももったいないです。

良識のない振る舞いをスルーするのは逃げ!きちんと「ノー」を伝えよう

アメリカや東南アジアなど海外に住む日本人の方々から聞いた話によると、これらの国々では、店のルールに従えないお客さまは問答無用でつまみ出されることがあるそうです。日本ではあまり考えられませんが、海外ではお客さまとお店は対等な関係であるとされている場合が多く、暴言やマナー違反で迷惑をかけてくる方はもちろん、たいした利益にならないのに要求ばかりしてくるようなお客さまを、あっさり切り捨ててしまうことも珍しくないのだといいます。

文化的背景の違う海外と日本を一概に1つの価値観で括ることはできませんが、学ぶべき点はあるように思います。日本では、どんなお客さまでも客は客。差し出された要望には何がなんでも絶対に答えないといけない、といった風潮がありますよね。いただいた仕事を断るなんてありえないと、無理してしまうこともしばしばです。

しかし先ほどの飲食店の例のように、いくらお客さまといえども良識のない振る舞いや行動に「ノー」と言えないのでは、事業の存在さえ危うくなってしまいます。酔っ払いの溜まり場と化したカオスな店に通いたいと思うお客さまはいませんし、わがままだったり横柄な態度を取る人たちに対応するスタッフの心身も疲弊します。長居するだけで注文がなければ売上が減少しますし、そうなればスタッフの給料を上げられないどころか、人件費の削減を検討する必要が出てくる可能性もあるのです。客層の悪さから地域での評判は落ち、口コミでも散々なことを書かれ、新規の顧客も見込めなくなるでしょう。すべてが悪循環になってしまうのです。

非常識なお客さまにノーを突きつけるのは、勇気が必要です。しかし、何の対応もしないことで、結果的にこの方たちを良識あるお客さまより優先する形になるのは逃げ以外の何ものでもありません。頑張るスタッフを守り、大多数の良識あるお客さまに良質なサービスを提供するためにも、招かれざるお客さまに対しては、どんな形であれ逃げずに「ノー」を伝えていくべきなのです。

「ノーを伝える方法」は2種類

では具体的にどんな方法で、招かれざるお客さまに「ノー」を伝えればいいのでしょうか。2種類ご紹介します。

1つ目は、直接相手に「迷惑です」「来ないでください」と伝える方法です。この方法だと、精神的に少し負担はかかりますが、一度伝えればそれ以降は一切のかかわりを持たなくて良いのがメリットです。もう少しまろやかに「すみませんが、今後はうちの店に来ていただくことはできません」といったような伝え方をするのもありでしょう。いずれにしろ明確な意思表示をすることで、きっぱりと関係を断つことができます。

ただし、稀に復讐のような意味合いで、悪い口コミをネット上などに書かれることがあります。ノーを伝えた相手が書いたとみられる誹謗中傷や、事実無根のクレームなどを口コミサイトなどで見つけたら、運営元に連絡して速やかに削除を求めましょう。

なお、ネット上に一方的な批判や事実と異なる悪評を流される可能性は、どんなにまじめに仕事をしていても起こりうるものです。ニセの情報で評判を落としてしまわないためにも「あのお店がそんなことをするはずがない」「何かの間違いじゃないか?」と思ってもらえるように、日々誠実に仕事をすることが何より大切と考えてください。

2つ目は、来店時や予約を受ける際に「満席です」「予約でいっぱいです」などと伝えて特定のお客さまを避ける方法です。何度か断るうちに、相手は自分が拒否されていることに薄々気付くのですが、本当に予約でいっぱいなのか確認のしようもないため、断られれば来店を諦めるしかなくなります。直接的に伝えるよりも精神的な負担は軽くて済むのがメリットです。

ただし、遠回しに拒否していることが相手に伝わらないと、その後も繰り返し来店しようと試みられるケースもあるのが難点です。その度に何度も同じような理由でお断りする必要がありますから、少々負担を感じるかもしれません。

どうしてもお客さまを拒否することに抵抗があるなら、条件付きで受け入れるのも1つの方法です。例えば「◯名さま以上でのご来店はコース料理のみ」のように提供するサービスを限定する、「〇〇円以上のご利用がない場合は席料として〇〇円いただく」のようなルールを設ければ、確実に一定の売上を確保できます。あるいは「◯時〜◯時までは利用時間を2時間まで」といったように時間を制限すれば、オーダーをせずに長居するような利用を防ぐこともできます。

実は当店のお客さまで、お酒にめっぽう弱く、酔うと周囲にからみ酒をする方がいるのですが、私との取り決めでアルコールは4杯までとし、飲み終わったら自動的にお会計を持っていくという約束をしています。しかし、今のところ当店では大きな問題が起こったことはありません。お客さまを拒否することは、だれにとっても気持ちの良い行為ではないはずですが、双方が納得できるような落とし所が見つかるのであれば、それを実行するに越したことはないでしょう。

接客業は何かと受け身になりがちです。だからといってどんなお客さまでも受け入れようとしてしまうと、想定したように利益が上がらなかったり、ほかのお客さまに迷惑をかけるなど、事業に支障をきたしてしまうケースもあります。良識あるお客さまと働いてくれる従業員のためにも、ためらわずに意思表示をするようにしてくださいね。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

小保下 グミ(老舗和食店の女将)

老舗和食店の女将。夫が後を継いだ家業で経営全般に関わる。現在は休業中。
noteにて定期購読マガジン「小さなお店のちいさな女将」を運営。飲食店経営や自営業の生き方・働き方について発信中。

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